12次元 蒼穹を包む夢幻な木の葉が抱く次元
如何も今日はー。今回は早く公開出来ました。スレイさんに殺される事なくやり遂げましたよ。
え?期間の割に話が短い?寧ろ遅くなってる?
・・・・・。
まぁ仕方ない!そんな事もある!毎月何かとハプニングがあるんです!予定通りに行かないのが人生。何が起きるか分からないのが此の世界!次行きましょう!
後理由としては余り筆者が乗り気にならなかったから。(最悪)
いや、読めば分かると思うんですけどね。めっちゃ短いんですよ、本当に。スクロールなんてほら、たったこん丈!過去最短。まさか設定を垂れ流した一話より短いんです!何てこったい!
やっぱ好きな子とか出して行かないときついですね。一寸反省。戦闘時間はまぁまぁ長い気がしますけど、彼を戦いと言えるのか。
今回は伸びしろを残している(設定を遊ばせて余り煮詰めていない)二柱の話です。うん、もう適当だね。
然う言えば話が変わりますが、此の間知人に、
「結局彼の話は無事解決したの?」
(前話のセレがスレイに乗っ取られて暴れていた所です。)
と聞かれたので、
「はい!大丈夫です!皆で一丸となって致命傷を与えて気絶させました!」
「解決してねぇ!」
・・・良い突っ込みでした。笑顔が一蹴されましたよ。其処で自分も始めて我に帰りました。
いやー仲間も増えてハッピーハッピーじゃん、と思っていたら、ねぇ?
さーて、今回はどんな次元でしょうか。どうぞ御楽しみに。
熱い血汐の絶えた地に
枝葉を伸ばして雲華分けよ
彼の皓の悪魔を遠避けて
根を伸ばして岩を割れ
此の地を閉ざさない様に
例え此の命全て捧げても、護る可き物はあるだろう
生きた証を残す遺志が
・・・・・
「・・・・・。」
六花に覆われた蕭森の中。猛吹雪を直に受け、ガルダは無言で旻を見上げた。
寒い。兎にも角にも寒い。
薄着だからつい震えてしまう。ハリーなんて跣同然なので何度も足を激しく上下させて積もる銀雪を散らしていた。
周りの木々は低木で、視線の先に途轍もなく大きな碧樹がある。
幹は十人位が輪になって囲っても余る程、皓い幹は自由に枝と根を伸ばし、見上げても果てが見えない程だ。細々と水色の華葉を付けており、まるで旻を支える柱の様。
何より目を引いたのは丁度ガルダの背と同じ位の高さの所。碧樹は其処で一度区切れ、巨大な淡い水色の水精の様な物が埋め込まれていた。水精は丸く、木の幹より少し許り大きい。中で気泡が躍って渦を描き、銀河系の様だった。
其は中心で自ら曦を放っている様で、旻色の曦が周りを照らす。そんな水精が入っている為、碧樹は其の瓊の上と下、其々から生えている様に見えた。根なのか枝なのか、大事そうに水精を抱えている様にも見える。
「此の碧樹が・・・次元の主導者か。」
吹雪の中何とか足を動かしてガルダは碧樹に近付いた。そしてそっと其の水精に触れる。
「いっ!?」
すると突然酷い倦怠感に襲われた。まるで此の水精に全生命力を奪われて行く様な。
直ぐ様水精から手を離し、蹌踉めいたガルダは銀雪に力なく座り込む。
足に力が入らない。手が震えて心臓が早鐘を打つ。
反動か何時の間にか背には皓く輝く八翼が、長い尾が投げ出され、手足は獣の其と化していた。
「ぬ、ガルダよ。一体如何したのだ?」
気遣わし気にハリーが気付いてガルダと碧樹を交互に見遣る。手は貸せないので忙しなく視線を彷徨わせる許りだ。
「何か・・・彼の碧樹に触ったら力が、生命力が凄い勢いで吸われて、此の姿になれなかったら危なかったぜ。」
此の感覚だと後十回位死んだらアウトな気がする。今は常人の姿に戻るのも辛いし、仕方ないけど暫く此の儘の姿でいよう。
いやでも此丈で済んで良かった。若し死んでいたら・・・。
「留守番終わった?じゃあ行こう!」
・・・とか言って絶対セレを止められなくなる所だった。馬鹿にされて逃げられるとか最悪だ。
守護神の癖にあっさり死んでやんの、って思われたら其丈でもう一回死ねる。
まさかもう既に店にセレが居ない事等露知らずガルダはそっと溜息を付く。
翼を広げて何度か振っていると突然碧樹が大きく震えた。
中心の輝石が輝かん許りに曦を放ち、幹を皓い筋が其処を中心に何本も光り乍ら駆け抜ける。
碧樹は急激に成長を始め、柯葉を倍以上増やし、根が動くのか絶えず地が揺れた。
暫く揺れが続いていたが、其は輝石の曦が緩やかになる頃に止んだ。そして碧樹は華葉を落とし、華葉は幽風も無いのに舞って規則正しく陣を描く様に旻に張り付いて行く。
水色の華葉が旻を覆い尽くすと、陽光が透き通る様はまるでステンドガラスのホールの様だった。
碧樹を中心に一通り蕭森を囲む様な其の巨大なドームは外の吹雪から中を護ってくれた。
地熱を取り戻した様に温かくなり、銀雪が溶けて行く。
呆然と只眺める二柱の目の前で蕭森は四季が変わる様に目まぐるしく変化して行った。
「何・・・だったんだ今の。」
銀雪は溶け、温かな陽気に包まれる。
木々は若々しい華葉を沢山付け、先迄銀雪に閉ざされていたのが嘘の様だ。
もう此以上の変化はないらしい。
ガルダは再度輝石には触れないよう気を付け、碧樹に近付いた。
「助かった助かった。」
「蕭森が生き返った!」
甲高い声が幾つも囁いて碧樹の華葉を揺らす。警戒の色も顕にガルダが眺めているとひょこっと所々の華葉から何匹かの虫が頭を出した。
全長30㎝程の薄翠の甲殻に覆われ、鋭い針を備えた頭部は石竹色をしている。背には複数の翅が広げられており、何本もある短い足で華葉にしがみ付いていた。鳥の尾羽に良く似た大きな尾を振り上げ、飾羽の様な装飾のある大きな瞳をガルダ達に注ぐ。
「同族の匂がするのだ。」
「・・・と、言う事は、」
素早くガルダが時空の穴からスカウターを取り出し掛けてみると早速其の虫に向けて様々な文句が並べられる。
「コルトル、碧樹に集団で棲んで、碧樹を護る性質を持つ。」
こんな如何見ても虫っぽいのも龍族なんだよなぁ。本当世界は広い。
「名前知ってる。物識りなのね。」
「今日は、今日は。」
たどたどしくも友好的な彼等にガルダも多少警戒を解く。
コルトル達は尾を上下に振って歓迎している様だった。
「我はハルスリー・ション。隣に居るのがガルダリューなのだ。次元龍屋と言う店をしているのだ。」
「知ってる!僕達を捜してくれてる所!」
意外な返答に僅かにガルダは目を張った。
知名度なんてあってない様な物だ。未だ活動も小さいし。だのに知られているなんてとんだ早耳だ。御喋り然うではあるし、情報通なのかも知れない。
「色んな次元行ってる。」
「恐い店主が居るんでしょ。」
「どんなのどんなの?」
「黔日夢の次元でしょ。黔日夢の次元を起こしたの。」
「じゃあ罪滅ぼし?変わってるー。」
ひそひそと話し合うコルトル。少し不穏な方に流れている。変えないと。こんな話・・・聞きたくない。
俺には、こんな神語を解する虫の方が怪物か化物に思える。セレなんかよりずっと。恐いよ、此奴等の方が。だのにそんな怪物にも恐がられたらさ、彼奴は何処に行けば良いんだよ。
前彼奴が言っていた、誰も居ない世界に行かなきゃいけないのかよ。そんなの、余だろ。
「此の次元は何があったのだ?急に碧樹が元気になった様に見えるのだ。」
ハリーが一歩前に出て碧樹を見上げる。
コルトル達は御喋りを止めてハリーを見詰めると尾を振り上げて揺すった。
「黔日夢の次元が起きて変な奴来た。此処の地核凍らされた。」
「銀雪が一杯降った。」
「蕭森の主、守護の碧樹も弱っちゃった。」
「主は僕達の棲む此の碧樹だよ。」
「でも先ガルダ神が生命力分けてくれた。」
「御蔭で蕭森元通り。」
「葉っぱの結界が張られた。」
「地核に根が届いて温まった。」
「助かった助かった。」
其からは助かった、良かったと連呼するコルトル達。
何となく事のあらましは分かった気がした。
「生命力を分け与えたってより、奪われたんだけど。」
御蔭でこんな姿にされちゃったし、良い迷惑だ。
「ぬぅ、でも良かったではないかガルダ。此はガルダでないと出来なかったんだから。」
蕭森を生き返らせる生命力が一体何の位か分からないが、並大抵ではない事は確かだ。
自分には勿論、彼のセレでも出来ないかも知れない。其をあんな一瞬で成し遂げた。
適所適材と言うか、ガルダだからこそ此の次元に呼ばれたと言うか。
「うーん。・・・え、じゃあ彼か?次元の主導者も助かったし、若しかして此の次元、クリア?」
でも然う言えば此が本来の姿か。抑次元の主導者は次元を動かす力がある。黔日夢の次元によって壊された丈なんだから元を繋ぎ止めてやれば後は自分でするか。連鎖破壊されていない限り。本の一寸した切っ掛けで世界は変わる。大なり小なりそんな物だ。
「でも未だ変な奴居る。」
「彼が居る限り又蕭森凍っちゃう。」
「変な奴?其ってセレの事じゃないのか?」
セレを変な奴呼ばわりするのは癇に障るけれども、黔日夢の次元を起こしたのはセレなんだから然うとしか思えない。
「ん、君達か。其の碧樹を助けてくれたのは。」
頭上から声が降り、見上げると一柱の騎士が宙に居た。
皓と銀の甲冑に身を包み、旻色のマントをはためかせている。手には此又厳つい大きな鑓が握られていた。皓い驚霆を研いで其の儘鑓に加工したかの様な其と、胸元には銀色のクルスの様な印が施されていた。そして兜からは燃える様な長い絳髪が零れていた。
陽光に映える其の騎士の声は良く通り、面は見えないが正女であろう事は想像出来た。
「・・・若しかして変な奴って彼?」
ガルダがこそっと聞いてみるとコルトル達は揃って首を横に振る。
・・・あーぁ、招かれざる客って訳か。出来れば会いたくなかったんだけどな。だって此奴、十中八九さぁ、
そっと溜息を付くガルダの前へ其の騎士は降り立った。
翼もないし、其の鎧が特別な力を持ってる様に思えない。恐らく飛属性なんだろう。
然う冷静にガルダが分析していると騎士は兜を外して其を小脇に抱え、鑓を地に突き刺した。其の面は頭頂部辺りから垂れた兎の様な耳、鮫の様な尖った鼻先に剥き出しになったギザギザの歯を有していた。肌の色は上部は紺碧色、鼻から喉に掛けては旻色で、迚も精悍な顔付きだった。真紅の瞳が凪いでじっとガルダ達を見遣る。
「此の次元に代わって感謝申し上げる。私では余りに生命力と魔力が足りず、何も出来ずにいたのだ。」
「此の次元の者なのか?何か匂が違う気がするのだが。」
ハリーの鼻が動き、少し首を傾ける。
騎士は目をぱちくりとさせていたが何に気付いてか急に其の牙だらけの口を開けた。
「噫申し訳ない。自己紹介が遅れてしまった。私は光の国、ライネス国、クルスティード尖塔の戎兵、神族の楪(ユズリハ)だ。此の次元には調査で参った。そして芳しくない状況と知り、残っていたのだ。」
はきはきと元気良く、宣誓する様に告げる楪の話を聞き、さーっとガルダは青褪めた。
矢っ張り彼の刻印、見た事があると思ったら光の使者だったのか。
本格的な調査は未だ先の筈だろうし、次元の状態を知って留まったと言う事は・・・。
最悪だ。一番会いたくないタイプの神種に出会してしまった。間違いなく彼女は絶対従王主義、光万歳だ。
光の、ままいる奴。自分達の行いを絶対正しいと信じて行動するタイプ。
・・・揉めたら面倒然うだな。
ハリーも察したのかそっと視線をガルダに向ける。応じる可きか悩んでいる様だ。
「御疲れ楪神。」
「其処の二柱は御客さん。」
「ガルダ神と同族のハリー。」
「次元龍屋ってとこで働いてるんだよ!」
「・・・っ!」
彼の御喋り虫余計な事を。
テレパシーでも送って口止めしとくんだった。
あ、いやでも光の国だし、鎮魂の卒塔婆程情報通じゃない筈。店名なんて知らないんじゃあ・・・。
「其の名、覚えがあるぞ!まさか貴様が光であり乍ら終末の化物に手を貸す異端者だとは!」
わーばれちゃったなぁ。
畜生、何で変な所で許り知名度があるんだよ。
キッ、と穏やかだった空気が一転。楪は、敵意剥き出しに瞳を紅に燃やし、二人を睨め付けた。
「何と罪深い者共よ。此の次元も滅ぼす気だったのだろう。私がそんな事させないぞ。成敗してくれる!」
・・・斯う言うタイプの奴は無用な戦いは避ける可きと言う双方に利益のある提案をあっさり断る。
利益だとか、そんな話じゃないんだ。正義、正しいのは何方だ。
世界を壊した神と、其の神を断罪する神、殺す事は罪?護る事は正義?
世界はセレを罪と、殺す可きだと言うだろう。彼女を殺せば皆幸せになるんだろう。
でも多数決が正義なのか。大多数が正しいのか。味方が少ない方は誤りなのか。
分からない。俺にはそんなの、分かる筈ない。
でも戦う理由は出来た。
終末の化物、なんて都合の良い正義。流石光の国。
其の言葉は廻り廻って何時かセレを傷付ける。
だから俺が止める。
セレを傷付ける者は俺が滅する。
其が俺の使命で、傍に居る為の代償だ。
「別に此の次元を滅しに来た訳じゃないけど、やり合うんだったら俺は構わないぜ。」
「うむ、不遜な小娘を罰するのは我等の方だ。」
「世界の均衡を狂わす者。・・・何とも度し難い。終末等起こさせない。化物を誅するのが私達神の務めだ!私と此のフォディータルで其を果たそう。」
楪が兜を被り、鑓に手を掛けた。
「止めろよ、其の化物っての。セレはセレだ。彼奴の事、知りもしない奴が適当な事言うなよ。」
突如駆け出したガルダが地擦れ擦れを滑空する様に疾走し、楪の目前で目を合わせる。
「御前も化物だろ。だからそんな鎧して偽善者振ってるんだろ。」
「っ、ふ、不意打ちとは卑怯な!」
楪が脇に刺していた鑓を引き抜く頃にはガルダの尾が大きく撓り、彼女の腹に叩き付けられていた。
躯をくの字に曲げて楪が吹き飛ばされる。そして其の儘背中から碧樹に激突し、フォディータルを持った儘呻いた。
状況が読めないコルトル達は囁くのを止め、視線を彷徨わせている。
「ガルダよ。そんな出方も見ずに突っ込むのは余り得策だとは思えぬぞ。」
「御免。一寸苛ついていた丈だから、もう大丈夫だ。」
目元を押さえて息を付く。
落ち着け俺。何で急にこんな荒れるんだ。
・・・化物、噫初めてセレが目を醒ました時の事を懐い出す。彼の言葉を聞いた時に浮かべた顔。前の次元で俺と話した時に浮かべた苦笑。
俺は、前世に犯した罰がある。彼女を殺した。信じてくれた奴を、裏切った。
其の償いを、せめて又俺が裏切ってしまったセレに。
彼は裏切りじゃないと、一緒に居て欲しいと、赦してくれた事全てに報いる為に。
然うだ。だから俺は此奴を斃さないと。セレが其の呪われた言葉を耳にする前に。
偽善者・・・か。ずっと昔、誰かに言われた気がする。前世に、彼女から。
其の瞬間、ガルダの目前に懐かしい景色が在り在りと浮かんだ。
其は自分が未だ幼い時の事、何処かの物置の様な木の小屋の中で彼女と居た。
窓からは陰霖が打つ音と、天気雨だったのか夕暉が柔らかな緋を投げ掛けて、其の御蔭で仄かに小屋の中は明るかった。
二人の子供の声が聞こえる。ガルダの意識は忽ちの内に其の緋に流れて行った。
・・・・・
「だったら、如何したら良かったって言うんだ。」
彼女が声を荒げる。何度も同じ言い争いをされたのか酷く疲弊した様子だった。
「だから、殺しちゃいけないんだよ。痛いのは嫌でしょ。だからしちゃ駄目なんだって。」
「先に向こうからして来たのにか?」
此の時の俺は、其の意味を理解出来なかった。
何もしていないのに傷付けられるなんて事、ある筈ないと思っていたから。
「若し然うでも駄目ったら駄目だよ。又やり返されるでしょ。終わらないじゃんか。」
「だから殺すんだって。殺したら終わるだろう。」
「っ、もう!だから殺しちゃ駄目だって。殺したらもう会えないんだよ?何も言わなくなっちゃう。其でも良いの?」
「良いじゃないか。皆死ねば静かになる。もう彼の声を聞かなくて済むのなら十分だ。」
然う言って嘲笑う彼女の目はまるで霄闇の冷たい刃の様で。俺は咄嗟に言ってしまったんだ。
「なんでそんな酷い事言うの・・・。信じられなくなるじゃん。恐いよ、何だか。一緒に居るの、恐くなっちゃうよ。」
僅かに目を見開いた儘、彼女は何も言わなかった。酷い事を言ったのは俺の方だったのに、其の時の俺は全く気付かなかったんだ。
「話してみなよ。ねぇ、殺しちゃう前に、良く話してみてよ。屹度勘違いとか、ある筈だよ。」
未だ殺意の一つも向けられた事のない俺は誰かを殺したい程憎む事があるなんて知らなかった。
だから軽々しくもあんな事を言った。
「其で私が殺されたら?彼奴等の仲間をもう沢山手に掛けた。今更話し合いなんて。」
「でも未だ、試した事ないんでしょ?」
「・・・・・。」
うんざりとした目を向けられた気がする。でも当時の俺には其を嫌々乍らも納得してくれたんだと思って。
後日、彼女が大怪我をして命辛々帰って来たのを見て、流石に俺は自分の愚かさを知った。
彼女の言葉は全て正しかったんだ。
何時もはそんな大怪我をしない彼女が、如何して今回あんなに痛め付けられたのか、其処迄鈍い俺じゃない。
「御前等皆、偽善者だ。」
其の時に吐き捨てられた彼女の言葉。
罵詈雑言の嵐と、留まる事を知らない暴力の数々、其の全てを彼の幼い躯全てで受け止めて、呪いの言葉を吐く。
屹度其の呪いの筆頭は、俺だったんだろう。
・・・・・
懐かしい、懐かしい日々を辿る。緩りと彼女の声を反芻する。
胸がちくりと痛む。顔も懐い出せない彼女への罪悪感。
でも彼女の口振り、境遇・・・あれ、何だか。
・・・いや、流石に気の所為か。其処迄の偶然、ある訳ないよな。
セレと良く似ているなんて、そんな事。
なぁセレ、でも、若し本当に然うなら教えて欲しい。
俺は今でも偽善者か?
御前が嫌う人と同じか?優しくて、普通の一番残酷な人達と同じ様に。黔日夢の次元によって最も被害を被った者達と同じ様に憎む可き者なのか。
でも、さ、其は屹度仕方のない事なんだ。誰も進んで悪になんてなれない。絶対の正義が無い様に、悪にもなり切れない。
皆、悍くないんだ。御前の様に悪であると自覚して、傷付き乍ら生きるなんて、俺には堪えられない。
罪悪感、葛藤、嘲笑、自棄、咆哮、俺なら屹度狂ってしまう。
だから死にたがりの神か。
皮肉だよな。死にたがり同士が殺し合う世界なんて、そりゃあ死にたくなるのも頷けるよ。
「ぐぅぅ・・・。一筋縄では行かないか。でも私は諦めないぞ。次は私からだ。」
楪の躯がふわりと浮かび、鑓を旻中で構えた。
「良いぜ。何処からでも来いよ。」
傷一つない皓銀の爪が伸び、揃えられた釼の様である。地を掻いても猶伸びる其をガルダは持ち上げた。
集中、集中しろ。干渉力を少しでも生命力に。此の姿が化物になればなる程、俺の生命力は伸びる。
楪はフォディータルをガルダ目掛けて突いた。すると鑓の穂先が蒼皓く灯り、驚霆の様にジグザグに衝撃波が放たれた。
咄嗟に地を蹴り、身を低くする。衝撃波は散った羽根を巻き込んで地面に刺さった。
諸食らうと腕の一本位持って行き然うな威力だ。加えて落下地点が予測し難いから回避が間に合うか如何か。
顔を上げたガルダの目前で蒼皓い曦が弾ける。僅かに身を引いたが間に合わず、尾の先が弾け飛んだ。
「ってえええ!!」
初めての感覚に尾を振ると鮮血が飛び散った。持って行かれたのは10㎝位先。斬られたりする事は多かったけど、弾けるのは初めてだ。ぐちゃぐちゃになった傷口が凱風に触れて痛む。
でも再生を待ってる暇はない。楪は次々とフォディータルを突き出し、彼の衝撃波を放って来る。
ぼさっとしていたら次は尾ごと持って行かれる。
駆けるガルダの傍で土が爆ぜる。急いで爪を出し、急ブレーキを掛けると目前の土が破裂した。
やり難い。動きが読み難いし、本神は上から見下ろしている。視線が追い付かない。
だが突然衝撃波の幾つかが進路を変え、楪に狙いを付けた。急に角度を変え、楪を囲む様に走る衝撃波に彼女も目を剥く。
「な、何だ突然!?ぐぅ、敵は其処だ、間違えるな!」
楪が鑓を振るって衝撃波を弾いて行く。だが幾つかの衝撃波に避けられてしまい、中々離れてくれない。
攻撃が止んでガルダは楪を見詰めた。
良く見ると彼の衝撃波、躱しているのではなく、透けている様にも見える。
ハリーの幻か!
楪の衝撃波の中にこっそり紛れ込ませたんだろう。見分けが付かない程精巧な動きだ。
地に居るのは不利だ。飛ぶのが苦手でも的になるよりはマシだ。
ガルダは助走を付けて一気に羽搏いた。
ハリーを探すと木々の隙間を縫う龍の姿があった。幻を解いたハリーは身をうねらせて飛ぶと、楪に突進する。
「グォオオォ!!」
「な、何だ此の怪物は!?」
ハリーの咆哮に気付いた時には遅く、牙を剥いたハリーが丸呑みにせんと許りに迫っていた。
楪がフォディータルを前へ構えると其の鑓に咬み付いた。するとハリーの躯が縹色の焔に包まれた。其の焔の中で潤み色の瞳が楪を射貫いて放さない。
「う、あ、此は火か!?く、来るな!」
其が幻の焔とも知らず、楪は手を払うとフォディータルを放して跳び退った。
「こんな恐ろしい怪物も居るとは、何が目的なんだ御前達は。そんなに世界を壊したいのか!」
「いや、次元を正している丈だけど、まぁ信じないだろうなぁ。」
光の国は英才教育だからな。悪鬼羅刹の集団だってない事色々尾鰭付けて教えているんだろうし。
「当たり前だ!そんな戯言誰が、・・・え、御前飛べるのか?」
ガルダに人差し指を向けて咬み付く楪だったが、其の指先が自分より高い位置を指している。
目をぱちくりとさせて楪の動きが止まった。
「え、そりゃあこんな翼があったらな。下手だけど飛べるよ。」
セレみたいに此の姿を使うのは無理だけど、飛ぶ事位は出来る。急旋回やホバリングは苦手だけど。
「な、なな何と。卑怯だぞ!私が飛属性と知っての行いか!」
「え、御前此の翼、飾りだと思ってたのか!?まぁ飛属性は不憫だと思うけどさ。」
楪が絶望的な顔をするのを見ると少し可哀相になって来た。
俺もハリーも飛べるし、唯一の特徴と言うか、長所が否定されたんだから。
御負けに唯一の武器と思しき鑓、フォディータルも今はハリーに取られているし、啖呵を切った割には直ぐ決着が付いた。
「くぅ、まさか此処迄強敵だったとは。一対二だし、不意打ちだし、化物だし、翼もあるだなんて、卑怯極まりない手段に出るとは。私は油断し過ぎた様だ。」
「何だか嫌な言い方だな・・・。正義貫きたいなら其位のハンデ呑めよ。此方も真面目に戦ってるんだから。」
翼がある事が如何して卑怯になるのか分からないけど、正義には見えない人間臭い言い訳だった。
素直に勝てないって言えよ。まぁ鑓取られたら御手上げなんて油断以外何物でもないけど。二手、三手位考えとけよ。急な戦いだから準備出来なかったのか?
「でも此丈大差があるとちと可哀相な気もするが。抑我等と戦おうと思うのが誤りなんだから当然の報いなのだ。此でもうセレに近付こうとも思わんだろう。」
ハリーが銜えていた鑓を手に持って其の大きな口を開く。此の姿の時は本当に割と器用な事が出来るハリーである。
「斯くなる上は・・・真の姿になって一矢報いるのみ!私の後を追う者達の為にも一撃丈でも食らわせよう!」
「お、おいおい命は大切にしろよ。追い込み過ぎるだろ。其に俺光属性だから一撃で殺せなかったら綺麗に治癒するぞ。」
まぁ向こうが其の気なら別に良いけど。使命の為に誰かを殺す覚悟は出来ている。
でも此奴、質が悪い丈で、俺達にとって非常に質の悪い善良な一般兵な丈であって、心根が悪いって訳じゃないんだよな、多分。だから殺そうと迄は思わない。其が最良だとしても、俺は全く同意出来ない。
「中途半端な奴だな。では如何しろと言うのだ。御前達にそんな説教されても説得力無いぞ。」
然う言って楪はガルダを指差す。恐らく其の兜の下では彼の鋭い牙を剥いているんだろうけど、其で咬み付いて戦うと言う選択肢はないのかな。
「引いてくれ。そして出来れば二度と俺達の前にも出ないでくれ。特にセレの前では。若し御前とセレが会う様な事があれば、俺は今此処で御前を殺さなかった事を後悔しないといけなくなる。そんなの、うんざりなんだよ俺は。」
「引け・・・だと?何を甘い事を。だが如何して、彼の化物に近付いてはいけないのだ。彼は世界の敵だ。誰かが滅ぼしてやらないと世界が危ない。罪は償わないといけないのだ。」
ハリーが喉の奥で唸る。もう一、二言喋らせたら喉笛を咬み斬ろうとするのかも知れない。
其は俺も同じ気持だけど。
正義の独善的な主張はうんざりする位聞くに堪えない、唾棄す可き話だ。
「御前の然う言う所が、だよ。会わせられない理由は。セレに敵意を向ける奴は、化物って言う奴を俺は赦しちゃいけないんだ。彼奴の傷付く姿は見たくない。守護神として護ると誓った。でも俺は、御前も被害者の一柱だと思ってるんだ。然う言う教育を受けちまったんだから仕方ない。だから出来れば会わずに済みたいんだよ。俺、バトル苦手だしさ。」
「・・・御前も、護る可き者がいると、其が彼の終末の化物だと言うのか。彼は未だ未だ屹度殺し続けるぞ。其の行為はどんな訳であれ、過ちだ。其でも、御前は容認するのか。」
「容認なんて、する訳ないだろ。でも今彼奴は頑張ってるんだよ。本気で、次元を正そうとしている。殺すのが罪なら御前がしようとしている事も悪だ。然うだろ、償いの邪魔をする方が余っ程悪いだろ。」
「・・・・・。」
予想だにしていなかったのか楪は視線を下げて押し黙った。
無理もない。悪を断罪するのが正義と教えられて来たんだろう。でも其の悪にだって理由はあるんだ。
世界は多数決丈では出来ないから、俺達みたいなのがいる。神ってそんなもんだろ。
「・・・私は未だ見ていないから、其の化物、いや、失礼、セレが本気で頑張っているかなんて分からないから、見定められない。でも確かに君達の言う通り、償いの邪魔はしてはいけない。其が悪だと私も思う。だから・・・今回は其の提案を呑もう。」
可也言い淀み乍ら楪は然う静かに告げた。
「抑私が此の次元に来たのは偵察の為だ。其も達成は出来た。取り敢えず任務は完了だ。」
「偵察って彼か?次元に黔日夢の次元の跡があれば次元の主導者を殺せって言う。」
「随分と詳しいな。そんな事も知られているのか。なら隠しても仕方がないな。私は其の一兵に過ぎない。と言っても本格的な始動は未だ未だだが。取り敢えず現状の世界を見て来る様命じられている。」
随分と御喋りの様だけれども意図が今一読めない。情報提供か?
「其の任務は任命された訳ではなく、私が志望した物だ。自分の目で見れば、少しでも世界を救える方法が分かるのではないかと。そして君達と会って色々話を聞けた。彼の国に留まっていれば永久に聞く事のない事だったろう。」
「まぁ其は仕方ないよな、彼の国だったら。」
情報操作だとか平気でするだろうし、疑う事すら禁じられている国なんだから。
「此は一つの前進だ。現に君の御蔭で此の次元は助かった。もう次元の主導者を殺す必要はないだろう。国からは殺すよう命を受けた。でも其以外の方法で救えるのなら私は其の方が正しいと思う。・・・思いたい。此の景色が奪われて良いと、罪があると、信じたくない。長くはなったけれども、然う言う事だ。」
本当に随分と長い言訳を得て、楪は一つ息を付いた。
まさか、説得が通じるなんて思わなかった。其の決断は少なからず今迄の彼女の生き方を否定する物の筈なのに。
彼女は俺の言葉を良く聞いて、良く考えて、己なりの結論を出した。・・・彼女は実は迚も賢いのかも知れない。少なくとも只頓に正義を掲げる、俺が良く知る彼奴等よりはずっと。
だったら俺も、誠意を見せないといけない。
「ハリー、其、返してやれよ。」
「うむ。自分の目で見た物を信じると言うのなら良かろう。話が分かる小娘は嫌いではないのだ。」
ハリーが楪に近付いてすいと右手を差し出した。恐る恐る楪も近付いてハリーの手からフォディータルを引っ手繰る様に掴んで離れる。
「良し、じゃあ取り敢えず平和的解決って事で。」
「む・・・まぁ然うだな。平和は良い事だ、では私は帰るとしよう。報告書の内容を考えないと・・・。」
「ま、待って帰らないで!」
甲高い声がしてガルダが振り返ると何時の間にかハリーの頭にちょこんとコルトルが留まっていた。
尾を激しく振って翅を震わせている。良く見るとハリーはすっかり止まり木にされて十数匹のコルトルが手や背に掴まっていた。
不服なのか面倒なのか、ハリーは半目ではあったがしっかりと止まり木の役目を果たして動かないように努めていた。
「コルトルよ、未だ何か用があるのか。もう次元は大丈夫然うだが。」
「俺、もう生命力はあげれないぞ。」
「彼、彼見て!」
ハリーの頭に乗っていたコルトルが尾でハリーの頭を叩いて彼る方へ頭を向ける。
渋々とハリーが顔を上げると其処は何て事はなく、華葉の結界に護れている旻があった。
其の外では吹雪が吹き荒れているが、結界は確かで其の冷気は一切入って来ない。
「外は未だ吹雪!」
「此の次元、本当は寒くなかった。」
「変な奴の所為。」
「彼奴がずっと凍らせている。」
「碧樹を枯らすつもり。」
「碧樹弱ってる、弱ってる。」
「結界長く持たない。早く吹雪止めなきゃ。」
口々に騒ぐコルトル達。事が重大な様で忙しなく語り掛けて来る。
「あー忘れてた。変な奴が居るんだっけ。此の吹雪を創った。」
其、一寸不味くないか?結構な吹雪だぞ外。其をずっと保っているってどんな魔力だ。
涼属性だろうけど、神か?でも多分黔日夢の次元の影響だよな。じゃあセレが?時差で未だ此の次元に居るとか?いや、其はないか。そんなの時空が歪み捲っているし、有り得るとしたら力の影響丈残っていると思うんだけど。エンエンの所の黔い焔宜しく。でももうあんな真似出来ないぞ。今したら凍え死ぬ。そんな生命力、残っていないんだよ。
―おや、こんな所に結界なんてありましたか?―
静かな声が響いて視線を彷徨わせる。今のテレパシーは一体何処から。
「彼所、彼所!」
「来た、変な奴!」
「噂しちゃったから来た!」
ハリーの背にコルトルの一匹が尾を其の方角へ向ける。
其処には結界の外で漂う一頭の異形の姿があった。
全長5m程の龍の落とし子を彷彿させる姿。全体的に黔く、仄かに蒼く光る筋が明滅する位だ。
其の異形は細長い口の下部が氷柱の様に幾重も尖り、右の鰓は自身を包める程細長い布の様で、対する左は笠子の様な棘で象られている。下半身はドレスの様に幾重もの鰓が重ねられ、丸まった尾は珊瑚の様な突起が幾つもあった。
そして異形には目が無く、代りに周りを漂っていた六つ程の紫の宝石に瞳の様な物が刻まれていた。
其の宝石の瞳がガルダ達に注がれる。
―見ない顔です。次元外からいらしたのですね。初めまして。―
台詞の友好的な物良いとは別で其の瞳は獲物を狙う様に鋭い。声も何処か無機質に感じられた。
「・・・噫、初めまして。御前は一体、誰なんだ?」
此の感じ、同族でもなければ龍族とも違う気がする。此の次元外の者である事は言わずともがなだ。
―私はトキコロシ。此の次元に居る者を殺しに来ました。―
「え、な、何言って、」
「彼奴が仲間を殺した!」
コルトル達が声を上げ、慌てて碧樹へ戻って行く。其の間も彼等は沢山の囁きを残した。
「沢山沢山死んだ。」
「蕭森を凍らせたのも彼奴。」
「勁い、勁い。」
「勝てない、逃げないと。」
コルトルの話から先の彼は効き間違いではないと悟る。
「一体何の為に、そんな殺戮なんて。」
彷彿したのは黔日夢の次元の時のセレ。何となく・・・似ている気がする。其より機械的で、冷たいけれど。
黔日夢の次元の代行者みたいな、でも彼は、セレの目的は殺しじゃない。根本が違う。
―其が私が受けた命だからです。掛けられた願いには答えなければ。次元の主導者も何もかも殺して、世界を壊します。―
トキコロシの口元が蒼皓く光る。其の先が震えて蒼いレーザーが放たれた。レーザーは結界に打ち当たり、忽ち華葉を凍らせて行く。そしてトキコロシがレーザーを吐き終えた頃には結界の一部が崩壊し、トキコロシは緩り身をうねらせ乍ら入って来た。
「罪なき者を危める等、何と卑劣な怪物だ。私が止めてみせる!」
楪がフォディータルをトキコロシに向ける。其を特に意に介した風もなくトキコロシは見詰めていた。
「ぬ、小娘も一緒に戦うのか。」
「勿論だ。見捨てられる訳がないだろう。私は次元を救う為に来た!ガルダと、ハリーと言ったな。今丈、協定を結ぼう。共に彼の悪を打ち滅ぼす!」
「願っても無い提案だな。良いぜ楪。」
後ろから刺される心配はないだろうし、純粋に戦力が上がった。
「では私から行こう。行くぞフォディータル!」
楪が鑓を振り上げるとジグザグに衝撃波が放たれた。
だがトキコロシは一切避けようともせずに漂う許りだった為、全弾命中した。
如何もトキコロシの外皮は金属の様に硬質らしい。多少の傷は付いていたが、ダメージを負った様子はなかった。
俺の尾が爆ぜる威力はあったのに。余り頑丈だと面倒然うだ。
―攻撃確認。敵視認。戦闘開始します。殺戮します。―
宝石の瞳が楪を凝視し、トキコロシのドレスの様な鰓が翻る。
其の下の鱗が逆立ち、良く見ると其は無数の小さな砲台となっていた。
トキコロシがレーザーを吐くのと同時に其の砲台から蒼い球体のエネルギー弾が撒き散らされる。
楪が慎重に鑓を振るって衝撃波をレーザーと重ねた。レーザーは霧散したが衝撃波は氷付けになって砕け散った。
「何!?技が凍るだなんてそんな事。」
「おい!じゃあ彼の弾全部こんな具合か!そんなの蕭森に落ちたら、」
弾速はそんなに速くない。だから躱すのは容易だ。だけど蕭森が枯れてしまう。
次元の主導者が死んだら此の次元は御仕舞だ。
何としてでも碧樹を護らないと。俺の生命力が尽きる前に。
「皓鎮遮!」
翼が曦を放ち、大きくなって行く。
もっともっと大きく。此の蕭森を包める位に。
魔力は未だある。生命力が足りなくなっている分、魔術で護らないと。
守護神になったんだろ。蕭森の一つ位護れないで如何するんだよ。
「おぉおおぉ!!」
曦が弾けて輪を描く。翼が巨大化し、羽根一枚一枚が曦を放つ。
各々の翼を広げると何とか蕭森の大部分を包める形にはなった。
翼は軽く、少し羽搏いた丈で浮いてしまう。此ならずっと翼を広げた儘蕭森の上旻に陣取れるだろう。
でも此の術、維持するのがやっとだから俺、全然攻撃出来ないじゃん・・・。
本当に只の壁だよ。護る丈じゃあじり貧なんだけど。
光属性なのに面目ない。何方かと言えば戦闘向けの筈なのになぁ。
愚痴るのも束の間、放たれたエネルギー弾の大半が翼に打ち当たる。
「っつぅ・・・っ!」
彼の焔程じゃないけど此、結構きつい。
当たった弾は弾けて翼を凍らせて行く。意識を向けないと砕けた部分の修復が間に合わない。
「ガルダ、そんなに受けて大丈夫なのか。」
気遣わし気にハリーが顔を覗き込む。
苦い顔を呑み込む。汗は止まらないけど、強がりは言える。
「今の所大丈夫。でも多分余り長くは持たないから其のつもりで。」
ハリーは無言で頷くと一気に高度を上げて天へ昇って行った。
「何と、まさか彼を耐えるとは。護りも勁いのだな。」
「全然。全部は防げなかったんだ。早くしないと、枯れるぜ、此処。」
ちらと眼下の蕭森を見遣る。端々の碧樹が枯れてしまっている。多分彼の弾に当たれば碧樹の十本其処等は凍り付いて枯れてしまうのだろう。
俺がくたばるより先に蕭森が駄目になる可能性もある。俺が何も出来ないのが歯痒い。
「グォオォォ!!」
ハリーが咆哮と共に縹色の焔を放つ。
トキコロシは一回転して布状になった鰓を纏って振るった。
だが焔は霧散せずにトキコロシを包み込む。熱くもない其の焔をトキコロシは不審に思った。
そして又彼の弾幕を放つが、大部分が火の粉を凍らせて崩れてしまう。
幾重も編まれている焔は其丈だと凍らせ切れない。
もう一度鰓で払っても矢張り焔は消えなかった。
透けてしまって空しく布が翻るのみだ。
其の布が振り回された瞬間、狙い澄ましたかの様に楪の鑓が突き出される。
其は見事布を突き破り、払うと同時に布は引き千斬れた。
「時間が無い。一気に決めるぞ!」
布を放って楪は狙いを付けてフォディータルを放った。鑓の先が蒼皓く光り、鑓其の物が驚霆と化した様にジグザグに飛び交う。
そして其は狙い通りトキコロシの口に深々と刺さる。千斬れた鰓を気にしていたトキコロシは完全に反応が遅れ、突き刺さった鑓を見る事しか出来ない。
フォディータル全体が曦を帯びて行く。そしてフォディータル自体が衝撃波と化し、トキコロシの頭が爆裂した。
激しい閃光が迸り、一同は目を瞑る。
だが目が慣れた頃に見上げると、鑓がトキコロシから外れて落下して来たので直ぐ様楪は其を掴んだ。
「ぬぅ、大分壊れた様だが、未だ動くのか?」
ハリーが焔を吐くのを止めて注意深くトキコロシを見遣る。
トキコロシは完全に動きを止めていた。頭部は彼の爆発で吹っ飛んでおり、長く伸びた口から上はない。
だが壊れた内部からは細長い砲台が幾つも新たに突き出していた。
―損傷大、損傷大。好戦的。高戦闘力。障害になる可能性あり。抹殺します。―
トキコロシが左の鰓を振るうと千斬れた右の鰓が光り、蒼く光る直釼を形成する。
其を横薙ぎに払うと幻の焔が凍り付き、罅割れて瓦解した。
「一突きでは無理か。後数回今のを試せると良いが。」
トキコロシが躯を震わせ、増設された頭部の砲台から一度にレーザーを発射する。
其と同時に又躯中の鱗の砲台からエネルギー弾を満遍なく放つ。
「っ!こ、こんな一度に捌くのは無理だ!」
楪がフォディータルを振るって衝撃波をぶつけるが、幾つかのレーザーが脇を抜けて行く。
自分の身を護るので精一杯だ。
「幻術でも追い付かぬ。護って許りでは埒が明かぬぞ!」
トキコロシを中心に玻璃の檻を形成するが、閉じ込めた所で敢え無くエネルギー弾に砕かれる。
今回の様な防衛線に、幻覚は向かないのだ。幻にすると透けてしまう。防がなければ意味がないのだからずっと現実にして置かないといけない。標的のダミーなら作れるが斯うも全方位隈なく攻撃されては効果も薄い。
其に幻での扱いに長けている許りに如何も現実丈だと精細さに欠ける。
何度術を掛けても一度に消せるのは精々五、六発だ。迚も彼の鱗全てに対応出来ない。
空しくも落ちて行った砲撃は全てガルダの翼が受け止めた。
「っぐぁぁぁあぁ!!」
翼が凍り付いて砕け散る。血迄も凍ってしまって紅玉の様な輝石が飛び散った。
翼は穴だらけになり乍らも又再生をする。
でも広範囲に掛かったエネルギー弾よりレーザーの方が厄介だった。エネルギー弾で凍らされた所は即座に其の羽根を落とせば其以上凍らなかったが、レーザーの方はしつこく纏わり付き、じわじわと翼を凍らせて行く。翼ごと斬り落とせば良いかも知れないけど、果たして其をして俺の生命力が保つか。術も解けるだろうし、こんな状態でもう一度此の術を使うのは・・・。
「っぐ、が、ギャオォオォオオ!!」
ガルダの喉が震えて咆哮が旻に轟く。
余韻を残して響く其の声に驚いた一同がガルダを見遣った。
其の視線を受けてガルダは初めて自分の意識が飛び掛けていた事に気付いた。
慌てて顔を逸らし、訳も無く昂ぶる気持を鎮めようとする。
不味い、俺の生命力がカンストし掛けている。
実の所、生命力は未だ未だ温存している部分がある。でも俺が意識を保って操れるのは残り僅か。
其を超えると生存本能が理性に勝って、只生きる為荒れ狂う獣になる。
多分、完全に呑まれたら俺は真の姿になってしまう。今の取って付けた様な人の姿を失ってしまう。
嫌だ、そんなの。只の化物になるなんて。
でも、でも、噫頭の中で声が谺する。生きたい、生きろと。其の為に何でもしようと。生命の雄叫びを上げろと。内で荒れ狂っている。
屹度此は、神様なのに生きたいだなんて願った俺への代償だ。
「ウ・・・ヴ、ア、・・・ぐっ。」
自分の躯が作り変わって行くのが分かる。
背骨からポキポキと音がする様な、爪が伸びて、毛が硬質化して行く様な、口元が歪んで、龍の様に伸びて行く様な。
い、嫌だ。俺は化物なんかにならない。
こんな所で化物になったら俺、使命を果たせない。彼奴の傍に居られない。
終わりたくないよ未だ。俺は為可き事がある。其を放棄するなんて。
「ガ、ガルダ、其方まさか、」
「た、頼むハリー、楪!俺、た、多分・・・もう、余り長く、な・・・あ、ああ゛あ!!」
躯がむず痒い。まるで一匹の獣を丸呑みにした様に。其がこんな人の皮なんて狭苦しいと其の爪で、牙で、突き破って来そうな。
―成程、随分大掛かりな魔術が展開されていると思いましたが、維持出来ていなかったのですね。でしたら先に次元を滅しましょう。貴方達の時を凍らせるのは其の後です。―
「っく、折角正した次元を然う易々と壊させてなる物か!」
―では全て防いでみせて下さい。―
又トキコロシは全身からエネルギー弾を放出する。回転し乍ら繰り出される其は緩急が付いて全体像が掴み難い。
「む、無理だこんな数!」
「黙れ小娘!兎に角鑓を振るうのだ!」
ハリーの背の玻璃が蒼く光り、氷柱の様に伸びて行く。
身をくねらせてハリーはエネルギー弾と鬣を交わらせると呆気なく鬣が凍って砕け散った。
だが砕けて針の様に尖った鬣は弾け飛んで周囲のエネルギー弾を相殺して行く。
細部迄実現させる細かい幻覚は扱い難い。うっかり幻にしてフェイクに成らないよう気を遣うのが厳しかった。
「私も・・・戦える!フォディータル行けぇ!」
楪がフォディータルを薙ぎ払うと衝撃波が尾を引いて放たれる。トキコロシを中心に弧を描く様に走る衝撃波は複数のエネルギー弾にぶつかり、消滅した。
だが幾ら消した所でトキコロシは弾切れにならないのか未だ未だ砲撃を続けている。
立て続けに幻を実現させ続けた所為でハリーの集中も切れ、楪も魔力が安定しなくなって危な気に飛行していた。
二柱の脇を幾つものエネルギー弾が擦り抜けて行く。
防ぎ切れない。魔力に差があり過ぎる。
終にガルダの翼にエネルギー弾が触れた。其は羽根を瞬時に凍らせて砕いて行く。
穴だらけになった翼も抜け、エネルギー弾は蕭森を凍らせ始めた。
「あぁ゛あ゛ぁあ゛ぁ!!・・・っ、ま、不味い・・・っ。」
痛みについ胸元を押さえると眼下の蕭森が目に付いた。木々が華葉を付けた儘凍らされ、所々で細かく砕け散って行く。そして良く良く見ていると彼の碧樹が元気をなくしている気がした。
華葉が萎れている様な、其に中心の水精の曦が弱々し気に・・・噫然うだ。周りの結界は彼の碧樹が創った物だ。其を傷付けられたら、
蕭森の事しか考えていなかったけれども、然うだよ。俺達が本当に護る可きは次元の主導者、結界迄も対象だったんだ。
そんな、でも、分かっていても無理な話だ。蕭森丈で手一杯だったのに旻迄護るなんて、
俺の実力不足だ。若しセレが居たら彼奴に攻撃される前に、前見せて貰った彼の零星で仕留められただろうに、守護神の俺には到底届かない。護る事すら出来ないなんて。
気付いた所でもう遅い。見る間に其の碧樹は華葉を落とし、そして、水精が砕け散るのと同時に縦に真っ二つに裂けて立ち枯れてしまった。
まるで己の無力さを見せ付けられる様に、あっさりと。
「な、何と言う事だ・・・。」
呆然とした様に楪が言葉を漏らす。
其を聞いてトキコロシは回転を止めて、ガルダの翼の下に見え隠れする哀れな姿となった碧樹を見遣った。
―・・・ふむ、時間は掛かりましたが上手く行った様ですね。次は貴方達の番です。此の次元が滅ぶ迄其の命燃やして下さい。―
「こんな状況で戦えだと。何が目的か分からないが、だったらせめて御前と此の次元を道連れにしてやる。其の罪、必ず償わせてみせる!」
―目的、いえ、此は別にそんなのではありません。しなければいけないからです。私はトキコロシ、時以外は殺せません。凍らせて時を止めて殺さなければならない。だから次元の崩壊で勝手に死なれては困るのです。私に殺されて下さい。―
「随分と悪趣味な奴なのだ。何が何でも殺したい様だが。」
トキコロシの砲台が曦を放つ。もう一瞬もすれば彼の無慈悲な氷の陰霖が降る。
「あぁ・・・あぁあ。」
もう無理だ。駄目だ。絶望が緩りと俺を溶かす。俺が消えたら残るのは皓の化物丈だ。
死ぬ、死ぬ。彼を食らったら俺はもう。其は駄目だ。死ぬ事は赦されない。使命を果たす迄、殺され然うなら殺すしかない。
守護神の御前を殺すのは、御前の主を殺す為だ。然うだろう。御前は主を護る為の壁だ。御前はセレを護らなければならない。化物になれば護れるのなら・・・安いだろう?
「ギャオォオォオオ!!」
捩じれた角が生えて来る。ざわざわと皓銀の毛に全身を覆われる。刃が鋭くなって口が裂ける。目がぎらついて、熱い鉛を呑み込んだ様に喉が焼ける。
咆哮と同時にガルダの口からレーザーが放たれた。
其は真直ぐトキコロシの腹部を捉え、又大きくトキコロシの躯は爆裂に震えた。
鱗の砲台の大部分が剥がれ落ち、装甲が砕けたトキコロシの内部からはコードなのか内臓なのか絳や蒼の紐が垂れ、千斬れた先からは血を流していた。
―あ・・・あ、主の刻印。破壊してはいけない。殺しは禁止。―
トキコロシの目の宝石が忙しなく回り、瞳孔を広げる。
―損傷率56%。殺しを遂行するのに極めて困難な状態。退避します。退避します。―
「逃がすか!今こそ攻め切って打ち滅ぼしてやる!」
楪が鑓を振るい、衝撃波を放つ。だが即座にトキコロシの姿が霞んで行き、無意味に衝撃波は旻を裂いた。
「もう次元を去った様なのだ。」
「く、逃げ足の速い奴だ。辿るのは厳しいな。」
「・・・も、もう終わった、か?」
緩りと滑空して来る楪とハリーを見遣り、掠れた声をガルダは上げた。
「うむ、逃げられてしまったが、もう大丈夫なのだ。」
「そ、か、よ・・・良かった・・・。」
俯いたガルダの翼が次第に小さくなり、何時もと同じ大きさ迄戻った所でガルダは地に降り立つと両手を突いた。
「っ、はぁ、はぁっ、あぐ、はっ、はっ。」
動悸が、酷い。理性と本能が綯い交ぜになって吐きそうだ。落ち着かないと、息を整えて、術を解いたんだ。多少は理性が効く筈。もう少し回復すれば。
「ガルダよ、随分と無理をさせてしまったのだ。役に立てず済まなかったのだ。」
ガルダの隣に降り立ったハリーはそっと其の細い腕で背を撫でた。
龍身の時のハリーは其の風貌に、又何時もの姿からは想像も出来ない位器用だった。
でも今其を言ってやる余裕もない。汗が幾重も伝って地に落ち、染み込んで行く。
其を只じっと見詰めていると少し丈、呼吸が楽になった。
荒れ狂う魔力の渦を緩りと呑み込んで慎重に、息を吐く。
段々と感覚が戻って来た。
生えていた角は引っ込んで、毛むくじゃらだった躯は何時もの皓い肌に戻る。顔も、もう元通りの筈。
「っはぁー、やっと元に戻れたぜ。」
翼や尾は出ているけれども仕方ない。其以外は戻ったんだから良しとしよう。
「・・・で、若しかして再戦か楪。突っ立って如何したんだよ。」
ガルダとハリー、二柱の向かいに下りた楪はじっと兜越しにガルダを見遣っていた。鑓をしっかり握っている。不意打ち対策だろうけど、俺もうそんな力、残ってないぜ。
「否、そんな事はしない。此の次元を一番護ろうとしたのは間違いなく君だ。そんな状態になって迄尽力してくれた。認めない訳には行かない。君の言葉を信じるには十分だ。君達は此の次元を壊しに来たんじゃない。私と同じ、護ろうとした丈だ。其を疑った事は申し訳ない。」
折り目正しくと言うか、きっちりと兜を取って礼をする辺りは矢っ張り光の兵だった。
悪い奴、じゃないんだよな。意外と柔軟性あるし、頑って訳じゃない。自分の道は自分で考えて決める程度の融通はあるんだ。
「只・・・な。本当に申し訳ない。私の、実力不足だ。折角君達が一所懸命に此の次元を護ろうとしたのに、私は其の懐いに応えられなかった。次元の主導者を死なせてしまったんだ。其が、不甲斐無い。」
「いや、勝手に其処迄気負わなくても。反省点は俺も一緒だぜ。セレだったら、被害なんて一切出さなかっただろうに。・・・駄目だな、其の時点で他神に頼っちゃってるんだ。」
「うむう、然うだな。もっと勁くあらねばと思う許りなのだ。其の懐いを如何活かすかが大事なのではないか?」
「・・・然うだな。此度は色々な経験をした。其を忘れてはいけないな。・・・コルトル達も済まない。棲み処を荒らしてしまって。でも早く此の次元を去った方が良い。でないと直・・・ん?」
「あれ、然う言えば・・・壊れてないぜ此の次元。」
黔日夢の次元の時に何度か崩壊した次元を見たけれども、もっと斯う輪郭や物理法則、理が、見えない物が崩れる感覚がある筈なんだけど。
「時差があるのかも知れないな。兎に角早く避難しないと。コルトルは、ん、何をしているんだ?」
コルトル達は碧樹が折れた根元に集まっていた。楪が近付くと皆一様に尾と顔を上げて楪を見る。御蔭で彼等が囲っていたのが何か見えた。
其は小さな翠の芽。未だ芽吹いた許りの其は小さな双葉を精一杯広げて紅鏡の曦を浴びていた。
「此は・・・まさか。」
「何か其処にあるのか?む、此は芽か?何のかは分からぬが。」
「ハリー何だ。何があるんだ?」
横着だけど動いてくれたハリーに聞いてみよう。少しの間とは言え、化物と言うか、真の姿になり掛けた気配があったから、体力の消耗が激しい・・・。此は当分動けそうもない。力を使い過ぎた。
「何かの芽が出ているのだ。彼の碧樹の割れた所から。」
「其って、若しかして。」
此は寝ていられない。躯が鉛みたいに重たくて関節が痛むけれど、何とか這う様にして其の輪の中心を目指す。
コルトル達が道を開けてくれたので視界が開ける。其処には確かに一つ芽が出て居て紅鏡に照らされて其の幽かに薄水色の透明な華葉と芽の上に乗る瓊が輝いた。
「ガルダ神の御蔭。」
「生命力、とっても一杯貰ったから。」
「碧樹は完全には死んでいなかった。」
「種を残した。」
「次元の主導者は次の代、此の子。」
「次元助かった、有難う!」
「そんな事、あるんだな。」
何と言うか、まぁ結果オーライだった訳だ。そりゃあ然うか。次元の主導者は不死な訳じゃないから受け継がれる事もあるのか。何かと感慨深い。
「・・・例え黔日夢の次元の爪痕があっても、次元は正せると言う事か。見捨てなくても良い。助けられるのなら。」
「其方のボスへの報告は良く気を付けろよ。有りの儘報告してくれたらそりゃあ俺達は嬉しいけどさ、下手したら反乱分子で裁かれるの御前だぞ?」
「気遣い、感謝する。でも私は別に上を疑う訳じゃない。上には上なりの正義があるのだ。こんな一々救っていたら時間が足りないのだから。質と量、何方を取るかと言う事だろう。私は私の正義を信じている。其を見定める丈だ。」
息を付いて楪は旻を見遣る。華葉の結界は未だ幽かに残っているが、其の外の吹雪も何時の間にか止んでいた。此の次元はもう大丈夫だ。壊さずに済んで本当に良かった。
「只一つ聞いてみたい。何故彼女は黔日夢の次元を起こしたんだ。彼女の同士である君達を見る限り、只の悪とも見難い。何か訳があったのか。」
「其聞いて正当な理由だと思ったら御前はセレを赦してくれるのか?」
「否、どんな理由でも悪は悪だと私は思うだろう。君達を信じた丈で又時が経てば君達と刃を交える事も屹度ある。だから、再発防止の為だ。こんな事は何度もあってはいけない。」
・・・彼女は本当に正義に、自分の信じる物に正直だ。
余情報をあげる可きじゃないんだろうけど、彼女なら間違いなく言い触らしたりはしないだろう。
同士は無理でも協定位なら出来るだろう。
「質問で返して悪かったな。其位なら話すよ。・・・セレが言うには、何かを捜していた然うなんだ。其を捜す時に次元の色んな物が邪魔になって壊して行ったと言うか、力が勁過ぎて、少し退けたつもりが壊してしまった。そんな事を言っていたぜ。余り憶えてない様だけど。」
「では殺意は無かったと、彼は事故だったと言う事か?でも一体何を捜していたんだ。そして其は見付かったのか?」
ハリーは苦虫を噛み潰した様な顔で首を廻らせた。
ハリーは其の辺りの話を余り聞いていない。セレと直接話して、黔日夢の次元を見た俺じゃないと分からない。
「ん、何を捜していたかは分からないんだ。見付かったかも。でも黔日夢の次元の時の彼奴は哭いていたよ。迚も辛そうで、疲れ切っていた。見ていられない位辛そうだったんだ。其に彼が終わった後、セレは黔日夢の次元を自分の罪だって言っていた。其を出来る限り償うって。だから俺も其を信じて一緒に居るんだ。」
「・・・少し要領を得ない話だが、取り敢えずは分かった。私は帰るとしよう。あ、いや待て、未だ次元の主導者は脆弱な幼子だ。面倒を見ないと。」
「其は大丈夫。」
「自分達で護れるよ。」
「蕭森は無事。だったら生きて行ける。」
「然うか、まぁ然う言った事は君達の専門だな。頑張ってくれ。」
「又先みたいな奴が来たら依頼してくれよな。直ぐ来るからさ。」
コルトル達はパタパタと尾を上げ下げして一様に有難うを連呼した。
「良し、じゃあハリー帰るぞ。」
「うむ、如何にかなって良かったのだ。此でセレに良い報告が出来るのだ。」
「あー・・・。大人しくしていると良いけど、然うだな。じゃあな、コルトル、楪。」
「噫達者で。」
微笑し、手を挙げる楪に手を振り返し、ガルダ達は其の次元を去った。
「私も、私で道を決めねばな。」
其の為にはやる事が沢山ある。
再度見上げた旻は玻璃の様に薄く翠に透ける華葉が瞬いて煌く。
其は祝福の印の様だと楪は思うのだった。
・・・・・
翠の揺籠はそっと君を包む
眠る君を起こさないよう陽も穏やかに投げ掛けて
微風に乗せて揺籃歌を
私の愛した世界を産まれた許りの君へ
此の贈物を君も何時か温かく抱き締めて欲しい
私が嘗て然うした様に
此の温かな世界と君を私は心から愛している
やった!書き切った!と言う事で如何でしたでしょう今回は。ガルダ視点での御届でしたが、色々思う所があったりなかったり。
毎回書いてる気もしますが、若し違和感を感じたら大切にとって下さいね。何時か屹度素敵なラフレシアになります。そして今回ばばっと(実質二日)で打ち込んだ話なので久し振りにちょこちょこっとNGが・・・。
特に語る事もないですし、其を公開しちゃいましょう!(酷い)
駆けるガルダの傍で乳が爆ぜる。急いで爪を出し、急ブレーキを掛けると目前の乳が破裂した。
これぞ本当の爆乳・・・済みません。何方も正しくは土です。一体彼はどんな所を駆けているんでしょう。文字通り酒池肉林の肉林みたいな所に居たとしか思えません。
動機が、酷い。理性と本能が綯い交ぜになって吐きそうだ。
此は正しくは動悸、ですね。此処丈見ると一体どんな志望動機だったんだろうかと思ってしまいました。下心しかなさそうですね。ガルダ君、とっても大変な時だったのにネタになってしまいました。
いやー見事に変態に成り上がりましたねガルダ君。
「え、あ、俺コメントあるのか?呼ばれたのは良いけど見てる丈だと思ったぜ。紹介もないし。」
ま、書く事ないからゲストとして呼んだ丈だしね。
「俺、帰って良いか?後俺自身は変態じゃないから!そんな間違いもしなかったぜ。あんな生死が掛かってる時にそんな間違いしないって。」
セレ、あんま胸ないしね。戦い難いから仕方ないよ。
「いやいや噛み合ってないし!何でセレをそんな目で見るんだよ!そんな事したら俺確実に殺されてるって!」
とか言いつつ御執心な気もするけど、結構気に掛けてくれてるね。
「ーっ!もう帰る!二度とこんな依頼受けないぜ。セレがちゃんと家に居るか確認しないといけないし。」
ははー無意識に気にしてますね。まぁ筆者、次の話、全く書けていないので幾らガルダ君が急いでも公開は遅いけれどね。
多分、此が今年最後の投稿かな・・・?相変わらずの更新スピードで申し訳ないです。ま、身体壊さない様に頑張りましょう。
では今回は此の辺で。又御縁があらん事を。




