11次元 天より悠久の憐憫垂れたる次元
※今回はR18に相当する非常にグロテスクな表現が含まれております。苦手な方は呉々も御注意下さい。
はい、どうも。見事にフラグりましたね。八月中に書けるかも、だって?ド屑が。(にっこり)
いや、でも此には大きな、非常に大きな訳があるのです。八月、一寸色々と病気を拗らせてしまって、一月に二度掛かる丈じゃなく御盆の影響で病院にも行けず、結果二週間以上はベッドの上でした。彼さえ無ければ、ええ、彼さえ無ければ間に合ってたんです!余裕で!
あ、後イレギュラーな演出を入れたのもありますね・・・。先々月から入れる予定はあったのですが、いざ書くと・・・。
其の子の登場によりストーリーは倍の長さになり、上記の注意も入れる事になりました。
最初は「いやー此でやっとずっと形丈になっていたR15を発揮出来るわー。」と思っていたのですが、只急に、唐突にグロ表現が入ったので、一応友人知人に「此、セーフだよね?R15だよね?」と十名程に聞いて回りました。
結果、一名を除き「R18」で一致。何てこったい。然も残った一名からは本気で引かれる始末。「そんな趣味があったなんて・・・。」あんなにダメージがある言葉なんて初めて聞きました。
つまりはまぁ今回、そんな話です。筆者はわっくわくしているのですけど、共感者はいないと言う、痛イ痛イ。
と言う訳でそんなの全くOK!と言う方丈御進み下さい。心配のし過ぎだと思いますが、如何なる影響を受けたとしても筆者は一切責任を負いませんので。一緒にフィーバーするのは大歓迎ですけどね。
時を数えて早幾年
神に時は無意な物
其は次元から切り離された所
只々、語り紡いで触れられない世界
噫不満も不幸も何一つ或る筈ないのだけれど
一度で良いから此の世界に交わりたい
其は赦されざる憖いですか
・・・・・
「そーろそろ、次元行こうかな。」
リビングのソファーを独り占めしてガルダは宙を見遣る。
前の次元が無事終わって二日経った。
皆疲れていたのもあって、たっぷり休みを取る事になったんだ。
・・・主に其の休みを俺は脱走を試みるセレを捕獲するのに費やしたけど。
次元に行くんだーって駄々っ子かよ、本当。
御蔭で結構此方も傷を負った。直ぐ治るからセレには殆どばれていないと思うけど。
全身凶器だな。触れる物全てを物理的に傷付けて来る。モフモフ愛が高じて彼奴自身がモフモフにならないかなぁ。そしたらもう少しは・・・いや、セクハラになり然うだから止めよう。モフモフになったら如何するんだよ俺。邪な事しか考えられないだろ。
仕事に一所懸命なのは良いけど、気負い過ぎも考え物だ。此処二日だと其の素振りは見せないけど前の次元での彼奴の体調は普通じゃなかった。
如何にかしないといけないよな、多分。時間が解決するって楽観視出来ない。
フォードが色々実験をしたとか何とか言っていたから其の影響があるかも知れないし。
医者に診せるか?でも普通のと構造が大分違う気もするしなぁ、ちゃんと診てくれるかな。其に彼奴は絶対医者嫌いだ。連れて行く頃には俺も受診しないといけなくなるかも知れない。
後頼れるとしたら・・・嫌だなぁ其、却下だ。
仕方ない。もう一寸、もう一寸丈見ていよう。最終判断は御預けだ。
意気地なしで結構。慎重派なんだ俺は。
ちらっと彼奴の部屋を見遣る。今は・・・大人しくしている筈だ。何かあったら丗闇アラームが鳴り響く筈。
まさかこんな形で丗闇と話す機会が出来るとは思っていなかった。
良し、ハリーでも誘って二柱で行こう。セレの御守りはドレミに御願いしよう。セレはドレミの事気に入ってるんだし、流石に独り法師にして脱走しようとは思わないんじゃないかな。
意地が悪いのは知ってるけど、其処迄悪鬼羅刹じゃないだろう。新神一柱で御留守番は流石にな。結構ドレミも疲れてたし、緩りさせてくれるだろ。
「ハリー一寸良いか?」
「仕事か?」
暖簾を潜ろうとした所で自分の部屋のドアを少し開け、セレが顔を出した。面倒臭いなぁもう。地獄耳め。
「然うだよ。ハリーと行くからセレとドレミとローズは御留守番だ。店主なんだからしっかりと二柱を護るんだぞ。モフモフもいるんだからさ。」
「勿論だ。モフモフは私の物だ。」
「私物化させるなよ。御前の奴隷じゃないぞ。」
「む、ガルダよ。何の用なのだ?」
「二柱で仕事しようかと思ってさ。御前の都合が良ければだけど。」
「うむ。構わぬぞ。今直ぐでも問題ないのだ。」
「お、然うか。じゃあ直ぐ行こう。ドレミに一応言って置こうか。」
結構安請け合いしてくれた。やる気がなくなる前にさっさとドレミに話して置こう。
ノックすると此又元気良くドレミが出て来た。取り敢えずホームシックとかになってなさそうだ。
「何々ガルダ君。何か仕事来た?」
行き成り辛い所突いて来た。御免ね、新しく来てくれたのに暇あげちゃって。
「あーえーっと、来てはないんだけど、俺とハリーで仕事行ってくるからさ、留守番宜しくな。」
―特にセレの御守りを御願いするぜ。絶対に、絶対に外へ逃がすな。閉じ込めててくれよ。頼むから。―
「わ、分かった!ドレミ頑張るよ!」
良し、此で大丈夫だ。後はちゃっちゃと次元を救って帰って来よう。
・・・セレが迚も大人しいのが気になるけど、屹度上機嫌な丈だよな、うん。本当は良い子なんだよ屹度。
「じゃあ行ってくるな。」
緩りと扉を開け、又閉まって行く。
店に残された三柱は少しの間扉を見遣っていたが、其と無くついと視線を逸らして行く。
「さて、行くか。」
「え、セレちゃんど、何処行くの?」
物凄くあっさりガルダとの約束破ろうとしてない?気の所為かな。
「何処って次元に、だ。私は迫間も良く知らないからな。」
―でも留守番中だよ。―
開始一分も経っていない。
「留守番なんて無意味だ。店主の私が言うんだから間違いない。干渉力もあるしな。此処は寧ろ宣伝も兼ねて此方から行く可きだろう。其に正直ドレミ達も暇を持て余しているんだろう?ギルドは依頼に事欠かなかった筈だからな。」
「うーん、確かに然うだけど、でも。」
急に態度が凄く大きくなったけど、でもガルダ君と約束してるし・・・。
「其に私は早く次元に行きたいんだ。三柱でだったら迚も楽しいと思うぞ。何処かの草原とかでも。・・・うん、三柱で行きたいんだ。」
―其は魅力的な提案だけど。―
ローズが上目遣いに私を見る。
うぅ、私が責任者なの?何か・・・何か・・・。
こんな嬉しい事言われたら、セレ凄く生き生きしてるし、一柱じゃ断り切れないよ。
「でもセオちゃんは?セオちゃんも居るよね?何て言ってたの?許可取ったの?」
そんな名前の神様がセレに付いてるってガルダが前言ってた。数える位しか話してないけど、と言うより声を聞いた丈だけど。
多分彼女もセレの御目付役の筈。
「噫丗闇か?もう許可は貰った。大丈夫だ。ガルダは過保護だったと丗闇も言ってくれたんだ。」
「そ、然うなの?じゃあ・・・行って良いのかな?」
「良し、行こう、直ぐ行こう。思い立ったが吉日だ。」
本当の所丗闇は今寝ているのだけれども、ずっと自分を見張って疲れたんだろう。でも裏を返せば寝ていると言う事はもう大丈夫だと自分を信頼していると言う事だ。じゃあ其の信頼を最大限に活用するとしよう。
折角ガルダと言う監視の目が消えたんだ。寝るのも飽きた。少し暴れたい位だ。
「うーん・・・でも矢っ張り待ってセレちゃん。駄目だよ其。ガルダ君はセレちゃんの事想って留守番を御願いしたんだよ。帰って来たガルダ君を安心させてあげようよ、ね。」
「ドレミ・・・然うか。分かった。じゃあ大人しくしよう。悪かったな、悪い役させてしまって。一寸落ち着きがなかったみたいだ。」
右手で頭を掻いてセレはドレミの部屋のドアを開けた。
良かった。セレ、思い留まってくれたみたい。私頑張ったよガルダ。
「良いよ、別に。じゃあセレちゃん、何かあったら呼んでね。あ、其ともドレミの部屋来る?一緒に喋ろうよ!」
―然うだね。えっとモフモフ?しても良いからね。―
「噫良いな其。外の空気でも吸って御喋り会へ参ろうか。」
セレが悪い笑みをしている事に気付いた時にはもう遅くて。
私とローズはセレに背を促されて一歩足を出してしまったのだった。
・・・・・
「え・・・あれー!ドレミの部屋ー!」
一面に広がる茜色の草原に突っ立ってドレミは両手を広げた。
ローズも驚きの余り尾を上げて固まっている。
其処は碧樹一本無い大草原。旻も透ける様な透明で、雲華一つない。
真皓な旻と茜の草原が地平線を隔つ様は中々幻想的だった。
心地良い薫風が止む事なく吹き続けている。
「ククッ、こんな事も出来るのか。イメージさえ出来れば何の扉でも次元に行けるんだな。いや、もう扉と言う媒体も要らないか?もっと早くにしてみれば良かったな。」
「もうセレちゃん!酷いよドレミを騙すなんて!」
後ろで手を組んで満足気に頷いてたセレに詰め寄った。
「騙す?何を言うんだドレミ。私は気を利かせて景色の良い所を選んだ丈だ。此処で御喋りでもしようじゃないか。」
「え、こ、此処で?」
―気持良い所だから僕は良いけど。―
「噫此処でだ。其とも矢張り店が良いか?でも折角次元に来たのに見捨てるのは一寸心が痛まないか?此も何かの縁だ。此の次元が私達を欲しているのかも知れないぞ。」
「え、う、うー。」
セレは意地悪だ。機嫌が良くなると性格が悪くなるってガルダが言ってたけど本当だった。
御免ねガルダ。でも私頑張ったんだよ本当だよ。
「・・・はぁ、分かったよセレちゃん。一緒に仕事しよ。無茶丈はしないでね。取り敢えず如何するの?」
生物の気配が一切しない気がするけど、何もない次元だったら直ぐ帰れるかな。
―僕は一寸周り見て来るね。―
「然うか。うん、有難うドレミ。取り敢えずは・・・いや、向こうから来てくれた様だ。」
薫風が流れてくる方を見遣る。
薫風は次第に集まり、固まって一頭の異形の姿を取った。
其は蛇の様な頭にリボン似の触手。虫か華葉の様な翅を有した者だった。只胴はなく、瓊が点々と繋がり、尾迄象っていると言った具合だ。
全長2m程の彼は目を閉じた儘此方に顔を向けた。
次元の主導者の気は感じない。此の感じは・・・同族か?
「御前は・・・神か?此の次元の。」
―噫久しいな。薫風以外の音を聞くのは。―
彼は薫風と一緒に宙を舞い、少し見降ろす形で宙に留まった。
―然う、懐かしき同族よ。私は神族、ハイカーン。もう真の姿にはなってしまったがな。何故此の次元へ参った。観光なら帰ると良い。此処には私以外誰も居ないし、世界全てが此処と同じ景色で満たされている。―
「其が真の姿なの?じゃあ確か・・・此の次元から出られないって事だよね。ずっと此処に居るの?本当に何も・・・無さ然うだけど。」
―斯く言う其方は新神の様だな。・・・時は数える事も忘れたな。感覚は次元毎に異なるから正確には言えないがもう数万年は優に数えるだろう。―
「万!?す、凄い!本物だよセレちゃん!本物の神様だよ!」
「いや私と御前も本物だが。」
さらっと言ったが、一応ドレミには神の定義をぼかして話してある。死んで成っている者も居る、程度の伝え方だ。
其にしても好戦的じゃない真の姿の神は初めて会ったな。別に姿が変わった丈だから如何って事はないが。生前の姿も知らないし。
こんな温厚そうな奴でも矢張りガルダは恐れるだろうか。其が一般的なのかも知れないが。
・・・どうせ自分達だって皆異形なのにな。化物か如何かは別として。
自分は如何なんだろう。真の姿は矢張り此の手足の似合う姿になるのだろうか。其とも全く別の物なのか。
「ハイカーン、私は次元龍屋に所属しているセレ・ハクリューだ。そして二柱はドレミとローズだ。此処に来たのは仕事なんだが黔日夢の次元の事は知っているか?」
数万年も居れば黔日夢の次元位経験しているんじゃないだろうか。其とも其処迄時差があるのか。
―黔日夢の次元・・・残念だが此処は私以外何も居ないので話す機会が無いからな。名称には乏しいのだ。其は一体何の事だ?―
「然うだな。ある神が色々な次元で破壊活動を行ったんだ。天変地異等も多く起こしてな。何か変化はなかったか?其か何か見たとか。」
―そんな事が。何とも物騒な。でも其なら心当たりがあるな。私が此の姿になる前、此の次元が行き成り荒れに荒れたのだ。黔い雲華に地が覆われたと思ったら地は罅割れ、嫩草は枯れ、旻が裂けた。私も前世の姿では死に掛けてな。迫間へ戻る気力も無かったからもう終わったと思ったんだが。・・・気付けば此の姿になっていた。もうずっと前の事だ。―
其を聞いて少し丈ドレミが視線を下ろす。
然うか、黔い雲華。・・・自分の所為で彼は此の次元に縛られたのだ。
―死ねると・・・思ったんだがな。其から私はずっと此の次元に薫風を送り続けている。そしてやっと又此の世界は本来の姿を取り戻した所なのだ。―
「然うか。其は大変だったな。済まなかったな、色々と。」
―何故其方が謝るのだ?其に私は別に現状を然う悪いとは思っていないのだ。探していた死に場所をやっと見付けられた。後は此の身が朽ちる迄使命を全うする丈だ。何も悩む事もない。―
「そんな考えもあるか。・・・じゃあ次元の主導者は?矢張り居ないのか?」
―其の様な者も居たな。だが此の次元には居ない。嫩草以外生命も無い。でも私は其で良いと思っているのだ。此の次元は閉ざした方が良い。此の儘何時か泡の様に消えてしまえば。だから干渉は不要だ。如何様な仕事かは聞かないが、用が無いなら去ってくれ。―
少し話し疲れた様でハイカーンは溜息一つ付くと黙り込んだ。
干渉を嫌う。己を閉じる。其も又、神としての本能の一つかも知れない。
死にたがりの神。
世界を嫌って、己を呪って、他者を避けて、死にたい動機は色々ある。
其から導ける心を護る方法の一つは屹度世界を閉ざす事だ。
自分丈で世界を満たして、緩りと朽ちて行く。
穏やかなそんな終わりを夢見るのは勝手だろう。
「分かった。色々有難うハイカーン。邪魔したな。私達は帰るとしよう。」
私の予感通り、此の次元の仕事はないみたい。一寸腑に落ちないけど、セレが帰るなら良っか。
「おーいおい、もう帰っちまうのかよ。だったら俺の仕事でもしてくれよ。」
振り返ると其処には青年が居た。
背丈は自分より少し高い位。銀のピアスを耳に差し、橙掛かった黔の短髪。
フードコートを羽織り、揶揄う様に紫の瞳を寄越す。其の瞳は四ツ目だった。肩からエレキギターに良く似た楽器を掛け、押さえる手は不揃いの何十本もの色皓な触手だった。
同族だ。波紋も映らなかったし、今し方此の次元に来たのだろう。距離を取って声を掛ける辺り、仕事なんて知れている。
「仕事か。私達も仕事で来ているんだ。用があるならせめて名乗ったら如何だ。」
「言うなぁ。ま、用っつっても大した事じゃない。フォード、分かるか?彼奴の手伝いさ。俺は鎮魂の卒塔婆の噪音、吟叫 韻(ギンキョウ イン)。御前がセレで間違いないよな。」
「鎮魂の卒塔婆・・・想像通りだな。確かに私がセレだ。でも彼奴の実験を手伝ってやれる程暇はないぞ。」
「そーだよ!三対一で勝てると思ったら大間違いなんだから。単身で来た事、後悔させるよ!」
「如何して言うんだドレミ。黙っていれば相手の狙いは私一柱になるのに。」
「もうセレちゃん!ドレミももう仲間なんだよ!其にドレミ、そんな弱くないよ。戦えるよ!」
「其は重々承知しているが・・・。」
「ん?餓鬼と獣が増えたのか?おいおい聞いてないぞ。まぁ良い。仕事は至ってシンプルだ。俺一柱でもやれんだろ。」
―僕は獣じゃないぞ!―
「ドレミも餓鬼じゃないよ!」
憤慨する二柱を見て心底吟叫は面倒臭そうな顔をした。鎮魂の卒塔婆の出の割に子供は嫌いらしい。
「じゃあ取り敢えず一曲聞いてくれよ。It´s musicだ。」
吟叫が冥い笑みを零してギターを弾く。多くの触手が複雑に絡まって一度に複数の音を立て、其が途切れる事なく波打つ。
曲はエレキギター丈あってか少しテンポの速い、激しい物だった。曲と言うよりは雑音に近い気もするが。
「・・・っ!?」
身構えていると突然激しい頭痛に襲われた。目を開けていられない程。平衡感覚を失って足が砕けた。片膝を付き、頭を押さえる。
何て音だ。頭の中で爆音になって破裂する様だ。頭が如何にかなる所か吹き飛びそうだ。
乱れた波紋は其でも現状を伝えてくれていた。
如何やらドレミやローズ、ハイカーン迄も地に伏して同じ様に頭を押さえている様だ。
何・・・だ、此は。頭に流れる記憶。滅茶苦茶に浮かぶ様々な景色と遠くから聞こえる破壊の音。
―おのれ、前世等、もう二度と懐い出したくもない物を此奴は。―
然うか。此の記憶は黔日夢の次元の物だ。忘れたい記憶を無理矢理開放する、其が吟叫の音。
気付いてしまうとより記憶は鮮明にリアルになって行く。手に甦る血の温かさ、断末魔の響き、死の凱風、乾いた景色。
「あ、あ・・・あぁ。」
駄目だ、呑まれたら。動け、立て。
「キシャィィィイイ!!」
突然甲高い声が響き、振動が地を伝う。
吟叫の隣に10mは優に超えるだろう巨大な蜈蚣が地を掻き分け、上体を現していた。
絳黔く甲殻が光り、其の禍々しい牙からは紫の毒液が滴った。
「紹介するぜ。俺のトラウマ、元い下僕共だ。さぁ此奴等を食い殺せ!」
ギターを弾く手を止めず吟叫が命じると先の蜈蚣を皮切りに蜘蛛や蜥蜴、天牛が次々と地中から顔を覗かせた。其の何もが巨大で自分等一呑み出来然うだ。
「ぐっ・・・う、ハイカーン!動ける内に逃げろ、狙いは私だ!」
無関係な彼奴を巻き込む訳には行かない。今も既に自分の所為で此の地が汚れてしまった。
蜘蛛や蜈蚣の毒液が地を腐敗させている。未だ湧き出しているし、手を打たないと。
「御前達も退け!無用な争いだ!」
頭が痛い。押さえ乍らも蜈蚣達に命じてみるが聞こえていない様だ。
退かないんだったら・・・殺すしかない。
晒を取って翼と尾を開放する。此で少しは動けるか?
「ガァアアァ!!」
大蜥蜴が立ち上がり、押し潰そうと両手を広げる。
跳躍して其の腕を掻い潜り、尾を頸に巻き付けて其の儘縊り殺した。
「早く行けっ!」
―・・・っ、分かった。―
蹲っていたハイカーンは少しずつ浮遊し、其の姿は掻き消えた。
薫風が頬を打つ。上手く離脱出来た様だ。
蜘蛛が動けずにいるドレミの元へと這い寄る。八つの目がドレミを捉えた時、其の足の一本にローズが咬み付いた。
―御免セレ、出遅れた。ドレミは僕が護るから自分に集中して!―
煩わしそうに蜘蛛が足を放ると其を弾みにローズは跳び退った。
―IF=13I―
胸元に紅玉が煌めき、羽耳と鬣が燃え上がる。
紅の体毛に生え変わったローズは其の儘空中で巨大な火焔を吐いた。
「キィイィ!!」
諸食らった蜘蛛が火達磨に変わる。其の焔は飛び火し、周りに居た蜥蜴達は怯んだ様だった。
―うぅ、躯が重い。彼の音を如何にかしないと長くは続かないよ。―
集中が切れたら終わりだ。黔日夢の次元の事が絶えずフラッシュバックしてしまう。
灯の鎧を選んだのはミスチョイスだった。
火力があるのをと思って咄嗟に選んだけど、下手したら此処を焼き払ってしまう。
威嚇程度に抑えないと。
息を思いっ切り吸って旻に吼える。
真直ぐ燃え盛る火柱が放たれて旻を焦がした。
焔は矢張り恐れの対象の様で蜥蜴達が後退して鼻先を火柱に向ける。
動きが止まった所で焔を薙ぎ払う。何体かが燃え上がり、嫌な臭を立てた。
頭痛が酷くなる。迚も操っている本神迄手が回らない。ドレミも動かないし、此の儘だとじり貧だ。
「限がないな。」
尾で蜈蚣の頭を潰してセレが後退し、ローズと並んだ。
尾に付いた液を振り払う。何匹かはやった。でも蹴散らすのが精一杯だ。
近付いて来た大蜘蛛の下に潜り込み、尾を回転させて足を捥ぎ、取って投げ捨てた。
頭上で構えている大蜈蚣の背に羽搏いて飛び乗る。
「シャアアァ!!」
力任せに爪を振るって一刀両断する。生死を確認する間もなく、真横から天牛が大顎を鳴らして飛び掛かって来た。
尾を真直ぐ構え、一突き食らわせる。
串刺しになった天牛は痙攣を繰り返す許りだ。
尾を振るって放った所で地に伏していた蜥蜴が紫の毒液を吐く。
毒々しい其は拡散し、全て躱すのは厳しい。肩を掠めてしまい火傷の様な跡を残して一部付着する。
「ぐ・・・っ。」
熱い。加えて粘着性があって張り付く様だ。神経毒が入ってもいけない。乱暴に腐敗した肩の肉を多少抉って投げ捨てた。
其の間に躙り寄って来た蜈蚣が突進を繰り出す。反応が遅れて硬質な刃に似た足が何本も掠めて、斬ってしまった頭から黔い血が流れ出た。
駄目だ。全く集中出来ていない。黔日夢の次元の幻影が纏わり付く。何方が現実か幻か分からなくなって来る。
集中出来ない所為で術も放てない。吟叫さえ如何にか出来れば此の群も消えるだろうが迚も手が回らない。
リーチも手数も足りな過ぎる。一度引かないと不味い。
―ローズ、一度離脱するぞ。ドレミは私が連れて行くから大きい威嚇を頼む。―
―然うだね、此以上は・・・魔力が持たないかも。早くドレミを!―
今一度息を吸ってローズが火焔を束ねて放つ。積まれていた玄焦の死体を熱風で吹き飛ばして行く。
「ドレミ、一旦退くぞ。掴まってくれ。」
ドレミの肩に手を置いてそっと耳元で呟く。
先からドレミは蹲った限り顔を上げない。震えて何か呟いている様だ。
懐い出しているのは屹度黔日夢の次元の事だ。後悔してもし切れない彼の日を。
「御願いだドレミ、私の声を聞いてくれ。ほら、立つんだ。」
「い、嫌っ、来ないで化物!」
突然ドレミに突き飛ばされてセレは転けてしまった。
「え、あ、ご、御免セレ、私・・・。」
―ド、ドレミ!―
震えてへたり込むドレミは両手で頭を押さえた。
頭痛が酷い。息が詰まって胸が苦しい。
慌てて擦り寄って来たローズを撫でると少し丈落ち着けた。
―落ち着いてドレミ。早く行かないと。―
「うん。セ、セレちゃん御免なさい!ドレミ酷い事、」
「ヴヴヴ・・・。」
付き飛ばされた儘動かないセレに手を伸ばすとローズが威嚇の声を上げた。毛を逆立てて焔が猛る。
「如何したのロー君。」
―離れてドレミ!―
「クッ、ククククク、ヒャハ、アヒャヒャヒャヒャヒャ!」
躯を震わせて緩りとセレは起き上がった。
口元を若月みたく細めて嗤い乍ら。
絳みが差して血の様な瞳がどろりと濁ってドレミを見詰めた。
「やぁ御嬢さん、御機嫌如何?・・・なんてね。」
「え、あ・・・セ、セレちゃん?」
一歩二歩と後退り。ローズが前に出て一層威嚇の声を強めた。
セレは何が楽しいのか口元を隠して忍び笑いを漏らすが其の瞳は獲物を狩る様に鋭くドレミを睨め付けては離さなかった。
頸に見えない鎌を掛けられたかの様な視線。
何此・・・黔日夢の次元の時と違う恐怖は。
黔日夢の次元の時は物を物と見ていなかった。でも今は自覚されてる。
認識をした上で其の首を欲しがっている様な。
周りを囲っていた蜘蛛や蜥蜴達は少しずつ後退し始めていた。
其を一瞥して又笑う。
「アハハッ、何、此何かの御楽しみ中だった?玩具も一杯あるし。ねぇ、私も混ぜてよ。」
突然蜈蚣達の影から真絳な手が何本も生えて来た。
其は影の主を捕まえ、影へと押し込む。
「ガギァキギギィィイ!!」
一匹の蜥蜴が手を振り払ってセレに躍り掛かった。
だが其の手が届くか如何かと言う所で影から更に無数の腕が伸び、蜥蜴を仰向きに拘束した。
腕は人の持つ其と似ていたが関節が倍以上あり、複雑に絡んで這っては蜥蜴の自由を奪って行く。終には尾の本の先迄蜥蜴は動かせなくなっていた。
「御前煩いから黙れよ。」
そして迷いなくセレは蜥蜴の腹部に自分の手を突き刺した。
漆黔の手は易々と柔らかい皮膚を貫く。
「ハハッ、温かいね。丁度良いや。」
肩迄腕を突っ込んで中を弄って行く。蜥蜴は気持悪いのか口を開け、舌を垂らして眼球を彼方此方忙しなく動かしていた。
セレは無造作に又其の手を引っ込める。手には真絳に塗れた太い紐が握られていた。蜥蜴へと伸びている其は胎動しているかの様に痙攣していた。
影の手が伸ばされ、蜥蜴の穴を開けられた腹部に手を掛ける。そして、
「ギィィイイィイ!!」
穴を無理矢理広げられ、蜥蜴は中身を全て引っ繰り返された。
真絳な血しぶきが思いっ切りセレに掛かり、内臓を全て打ちまけて引き裂かれた蜥蜴は痙攣を残して絶命した。
鮮血を浴びて又セレは笑う。
掴んでいた腸に付いた滑った血を一度舐め取ると其を放った。
「ククッ、クハッ、アハハ!ハハハハッハハハハ!!噫綺麗ね、綺麗。ククッ、ギャギャギャギャ!!」
「うっ・・・あ。」
気持悪くて吐きそう。
目の前の凄惨な光景にドレミは口元を押さえて震えていた。
動けない、彼は良くない物。分かってるけど、身動きが取れない。
セレじゃない。彼女が離れて行く。でも私じゃあ何も出来ない。
他の蜘蛛や天牛等は断末魔を残して影の中へと沈んで行った。
でも暴れて腕を振り解く者は先の蜥蜴と同様血しぶきに変えられた。
地獄を歩む彼女は只々哄笑する。
「何てこった。変なスイッチが入ったみたいだな。此は報告か?」
ギターを鳴らし乍ら吟叫は意識を放つ様目を細める。
彼奴の注意が下僕に向いている今が絶好のチャンスだ。
テレパシーが苦手な吟叫はギターに良く良く気を付けて意識を集中させた。
―フォード、御前の言った通り彼奴に曲を聞かせたら変になったぞ。次は如何するんだ?―
―具体的に、如何なったんだ彼女は。―
―あー・・・俺の下僕をばらして笑ってやがる。妙な術で他の奴も皆殺しにされたしよ。要は気狂いだな。―
此のギターを弾いている限り下僕は這い出て来る。だがもう彼に恐れをなして皆逃げてしまった。
―妙な術・・・然うか。其は直接見た方が良さそうだ。絶対に手は止めるな。其の儘でいろ。―
「彼か。」
「あ?・・・うおぉ、早えな。そんな見たいか此。」
テレパシーと重なるかと思う位早い御出座しだった。隣で腕を組む灰色頭の少年がじっとセレ達を見遣る。
「・・・相変わらずの雑音だな。せめて聞こえる奴が選べればもう少し使えるのに。」
「うるせぇよ。俺が一番の被害者だっての。あんな下僕を干渉力で思い浮かべちまう位の悪夢を俺だって見てるんだから我慢しろよ。」
「仕方ないな。もう少し・・・弾いてくれ。実験開始だ。」
頭を押さえて目を眇めつつもフォードは視線を逸らさず彼女を見詰め続けた。
「ヒャハ!!アハハハハハハハッ!!」
堰を切った様に笑い続け乍らセレは追い詰められて蹲る大蜘蛛の目を踏み潰した。
今の彼女の爪には何か毒でも塗ってあるのか其に触れた者は皆絳い液体へと中身が変わって行く。
体液や視神経の様な物が掛かるが何が可笑しいのか壊れた様に笑う許りだ。
セレは残った目の内大きいのを一つ引き千斬ると紅鏡に翳して眺めていた。
「噫綺麗。何時迄見てても飽きないね。」
そして其の儘目を握り潰し、飛び散る液を思いっ切り顔に浴びた。
絳に塗れた面でも其の双眸丈は未だ濁らず、鋭い絳を照らした。
・・・未だ満足出来ていない様だ。塗れた爪を舐めて声を漏らす。
「あれ、もう君丈?」
次の獲物は無数の手に捕まって動けなくなった天牛だった。
幾多もの同胞の屍を作り、踏み締めて近付く彼女を恐れて幽かに震えている様にも見える。
「君は如何しようか。もうシンプルに行こうかな。」
迷いなく彼女は天牛の触角を引き千斬った。其を大して興味無さ気に放ると次は背甲に手を掛けた。そして無理矢理其を剥がすと翅を毟り取り、足も折っては放った。
粗方解体し終わると仕上げと許りにセレは天牛の頭を思いっ切り尾で弾き飛ばした。
声を上げず放物線を描いて転がる頭にもう生気は無い。
「フフッ、ハハハッ。楽しいね、楽しいね。」
彼女は其の天牛の瞳に映る自分に笑い掛けた。
「・・・もう良い。其の音を止めろ。」
落胆した様にフォードは溜息を付く。
「噫やっとか。じゃあmusic endな。」
吟叫はギターを弾く手を止めると其を背負った。手持無沙汰になったので如何するのかフォードを見遣る。正直、眼下の地獄は見たくない。
下僕に対する感情はないけれども見て良い物じゃないのは言わずともがなだ。
「違う。矢張り彼女は偽物だ。黔日夢の次元をフラッシュバックさせたのに何だ彼は。」
「何だって言われても俺は何の事だか。」
「其に彼は一体何の真似だ。あんなの破壊じゃない。如何して黔日夢の次元の真似事をしない。彼は只無邪気に遊んでいる様じゃないか。違う違う。僕の実験結果が此だなんて認めない。何が起きた、否、何があったんだ。斯うなる要因は少なくとも僕が観察していた限りでは見受けられなかったのに。」
「あーぁ、此方も変なスイッチは入っちまった。」
此は収まる迄待つしかない。彼女が此方に興味を持たない事を祈る吟叫だった。
「さぁ準備は整った。邪魔者は消えたよ!ねぇ御嬢さん、君可愛いね。一緒に遊ばない?」
全身真絳に濡れそぼって其でも猶雫を散らし乍ら彼女は笑みを浮かべてドレミに近付いた。
震えて一切動けなくなってしまったドレミの傍で膝を折る。
「い、嫌、来ないで。嫌だ、嫌なの。」
気持悪い光景をずっと見せられた。彼の不快な音は止んだけどそんなのもう関係ない。目の前にもっと大きな不穏な物が蟠っている。
逃げられない。
恐い。
「ハハッ、キャハハハッ、良いね其の顔。矢っ張り可愛いよ君。恐い?私の事嫌い?ククッ、ギャギャッ。ねぇねぇ遊ぼうよ。そしたら大丈夫。恐くなくなるよ。一緒になれば恐くなくなるよ。私と同じ真絳にさぁ!」
「ヴゥ゛ヴヴヴ。」
ローズが唸り声を上げて一歩前へ出た。鬣の焔が揺らめいた。
「あれー狐さん。何の用?私今御嬢さんと話してんの。邪魔すんじゃねぇよ。」
「や、止め、ロー君には何もしないで!」
近くの蜘蛛の屍から流れた絳い体液から濡れた蜈蚣が何匹か這い出て来た。
其はローズの尾に絡み付くと一気に引っ張り、巻き上げて締め付け始めた。
―な、何だよ此。触るな、彼方行けよ!―
「ハハッ、君綺麗な目してるね。後で抉ってあげるから其処に居なよ。」
繊月の様に笑い、彼女の瞳が絳く煌めいた。
逸らせない視線。頸に縷を掛けられた様に無理矢理見詰めさせられる。
「さぁて何して遊ぼうかな。逃げちゃあ寂しいからなぁ。先ずは邪魔な其の両足を踠いじゃう?御嬢さんも屹度血は絳い色だよね。良いなぁ、君の中、其の絳いので詰まってるんでしょ。引っ繰り返すの楽しいかも。屹度すっごく綺麗だよ。キャヒヒヒ。引っ繰り返すんなら先ずは御中裂かないと。早く見たいからさ、わくわくして手元少し狂うかも知れないけど御愛嬌だよね。じゃあ暴れられない様に手に杭でも打っとく?屹度痛いもんねぇ。綺麗な爪だし、其の爪一枚一枚に穴開けてあげる。ハハッ、あ、悲鳴は幾ら上げても良いよ。叫んだ方が華やかで良いでしょ。会話大切だもんね。一杯御喋りしよう。話し易い様に口も裂いてあげる。噫でも遊んでてショック死しても嫌だな。じゃあ其の目も潰してあげる。見えなきゃ恐くないでしょ。此処は一寸肌寒いから君の腸をマフラー代わりに頸に巻こうね。長いと良いなぁ、だったら私も一緒に巻けるけど。そしてちゃんとおめかししてさ、彩には事欠かないでしょ。紅を綺麗に塗ってあげる。髪も御嬢さんの肋で梳いてあげる。ハハハハッ、ギャギャギャギャギャギャ!!」
頭の中で声が乱反射して、気持悪さに思考が追い付かない。
でも一つ丈分かる。私、殺されちゃう。セレに屹度迚も凄惨な殺され方を。
「矢っ張君残して正解だったね。良いよ其の顔。もっと近くで其の顔見せてよ。怯えてるね。震えてるよね?潰しちゃう前に良く見せてよ。」
―音が・・・止んだか?―
目を強く強く瞑っていると一陣の幽風が吹いた。
目を閉じても分かる黔い幽風。脇を擦り抜けても其は蟠っている気がした。
緩りと目を開けると何時の間にかセレの背後に黔いセレが居た。
髪も服も黔くなって、少し宙に浮いてる所が違うけど、後は全部同じ。
「何だ此処は。一体何が起きたんだ。」
「・・・・・。」
ちらと此方を見遣るとセレは音も立てず緩り後退していた。其の瞳は先迄の笑みではなく迚も殺気立った明らかに敵意の滲んだ物だった。
「も、若しかしてセ、セオちゃん?」
「・・・妙な名で呼ぶな正女。だが丁度良い。現状を説明しろ。彼奴は店に居た筈だが何があった。」
「え。セオちゃん知らないの?セレちゃん許可取ったって言ってたけど、此処は次元だよ。三柱で仕事に来たの。」
「何、彼奴は又適当な事を。全く懲りん奴だな。」
鬣の焔を激しくさせ、ローズは蜈蚣を振り解くと起き上がった。尾で躯を叩いてドレミと並んだ。
―鎮魂の卒塔婆だって言って彼奴が襲って来たんだ。・・・あれ、一柱増えてる?ねぇドレミ、彼の子って。―
「ずっと前に鎮魂の卒塔婆で会った子だよ!何時の間に?」
「彼奴は・・・鎮魂の卒塔婆の長か。色々聞こうと思っていた所だ。」
「随分と悠長に話しているな。僕は今回傍観者だよ。」
丗闇の視線を受け、緩りとフォードは近付いた。少し距離を取って丗闇の顔色を窺う。
「僕も君と話をしたいけれども今回は場が悪い。若しかして今の状況を分かっていないのか?君が今相手を為可きなのは僕じゃない。彼女だ。」
促されて振り返ると自分を睨め付けているセレと視線が搗ち合った。
「如何した。何をしている。」
彼の目は・・・危険だ。淀んだ殺意が刺さる。彼奴がそんな目をする等、何が起きたんだ。
「殺してやる殺してやる。何時も良い所で邪魔許りしやがって。むかつく、御前なんて御前なんて。」
呪詛を吐き乍らセレが飛び掛かった。其を片手で去なして手を組んで動きを封じた。
「誰だ御前は。まさか・・・夢の奴か。」
答えの代わりに尾による突きを放たれ、思わず手を離してしまう。
セレは跳び退くと口を歪めた。
笑っているのか、其の笑みは酷く冷たい。
「あーぁ、ばれちゃったなぁ。矢っ張り御前には隠し通せないか。然うだよ。久し振り、私だよ。ククッ、ヒャハハハハッ!」
「前より気狂いになったか。まさか現実に迄出て来るとは。道理で眠っている間煩いと思っていたが御前が出ていたのか。神を操るとは。」
「セオちゃん何か知ってるの?急にセレちゃん、変な嫌な音を聞いたらおかしくなっちゃって、先迄沢山虫さん達を殺してたの。わ、笑い乍ら、あんなのセレちゃんじゃないよね?御願いセオちゃん、セレちゃんを助けて!」
嫌な音・・・我が外から聞こえていた彼の雑音か。御蔭で中も外も煩くて動けなかったが。
「彼は前彼奴の夢に出た絳の化物だ。狂っている事しか我も知らない。彼奴を助ける義理はないが彼の化物は別だ。彼は良くない物。彼を滅するの位はしてやる。」
「あぁー若しかしてバトル?私苦手なんだけどなぁ。殺すのは得意なんだけど、楽しくね、やりたいじゃん。ま、私を止めようとするなら御前もバラバラにしてやる。関節ごとにばらして綺麗にラッピングして地獄にギフトとして送ってあげるよ。ギャギャギャギャ!!あーでも化物呼ばわりは酷いよ。私折角影貰ったし、別の・・・然うだぁ。名前があれば良いよね?然う然う、其、すっごく良い。噫彼女に決めて欲しかったけど良いや、自分で考えよう。」
考え込む様に彼女は皓い旻を見上げる。瞳が虚ろに廻り、冥くなった。
「アティスレイ。うん、安直だけど良いね。私の事はアティスレイって呼んでよ。・・・あれ、一寸待ってね。何、如何したの?何か言いたいの?」
セレに憑り付いた絳の影、アティスレイは自分を抱く様にして俯いた。其の声音は迚も優しくて、読めない彼女の行動に丗闇は一手を決められずにいた。
「あぁああ可哀相に。又受け入れて貰えなかったんだね。独りになるしかないんだろうね。うんうん、如何したいの?私に聞かせて?」
「も、若しかしてドレミが突き飛ばしちゃった事・・・?」
青褪めた面持ちでドレミはアティスレイを見遣るが、彼女は何か聞こえるのか一柱頷く許りだ。
「噫そっか。分かったよ。」
唐突にアティスレイは両手を離し、優しい笑みを浮かべて捧げる様に其の手を宙へ広げた。
「何?何かセレちゃん言ったの?お、御願いドレミにも教えて!」
「おい刺激するな。構えてろ。」
「要らないんだってさ。」
笑みを深くし、アティスレイは本当にうっとりする程優しく微笑んでドレミ達へ手を向けた。
「皆要らないんだって。だからさよならしようよ。」
上体を一気に低くし、アティスレイがドレミに躍り掛かった。
歪な爪が迫る。引き裂こうと其が振られた所で丗闇が其の手に手刀を叩き込んだ。
「散玄。」
アティスレイの胸元に手を置き、短く唱える。
玄の波動が一気に弾け、吹っ飛ばされたアティスレイは旻中で羽搏いて体制を整えた。
「うーん、矢っ張り邪魔だなぁ彼。今の私一柱でやれる自信ないしなー。」
「我此よりkradlaを告げる。」
丗闇を黔い幽風が包み、咲き添う様に彼女を黔に染める。
「resin」
丗闇の影から黔い鎖が幾つも生え、真直ぐアティスレイに伸びて行く。
「向こうは手加減してくれないっぽいね。うーん・・・良い事思い付いた。」
突然アティスレイの八翼の翼は燃え上がった。
真絳にまるで背から焔を吹いた様にも見える其は火の粉を散らして猛った。
其の儘彼女は躍る様に一回転。其の焔は彼女自身熱くはない様で、余りにも絳い焔は欠片を零し、驟雨の様に降り注いだ。
「まぁばれちゃった物は仕様がないよ。」
アティスレイの爪が異様に伸びて首斬り鎌の様に反り返った。
其を交差する様振るって近付いて来た鎖を斬り裂いた。
「止められるもんなら止めてみなって。ギャヒヒヒ!」
「・・・御喋りな奴だな。」
―ドレミ下がって!―
ローズが旻に向かって吼え、落ちて来た焔を散らした。
「踊って散電華!」
旻に手を伸ばし、雷を散らして瓊にする。其は旻を不規則に舞ってたり、繋がったりを繰り返した。
「闇闇闇・・・。」
闇の空間が丗闇を包み、焔を弾く。一気に羽搏いてアティスレイと並んだ。
「っ次から次へと来るねぇ。上は驚霆、下から嫌な奴が来るし、私余り頭良くないから苦手なんだよね、斯う言う状況。」
「cryst」
黔水精の欠片を散らし、アティスレイの周りに敷き詰める。其は一斉に破裂し、より細かな欠片を散らす。
其の隙間を縫ってアティスレイが出た所へ透かさず踵落しを脳天に刺す。
額を割ったか絳い血を吹き出させてアティスレイは地面に叩き付けられた。
「早くセレちゃんから出てってよ!そんな悪い事しちゃいけないんだよ!」
「あ゛ぁ゛ーうざったいうざったい。面倒臭いなぁ本当。何だよ一寸遊んでやろうとしたのに酷いよね。っかつくんだよ。あー殺したい殺したい。バラバラにしたい。私は只絳が好きなんだよ。あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛殺してやる殺してやる!」
「っ・・・。」
何、急に様子が・・・。
「もう本心を出したか。夢丈じゃなく現実迄出るなんてとんだ迷惑だ。消えるのならさっさとしろ。」
「何だよ何だよ。一寸彼女が弱ってたからさ、心に隙間が出来たからさ。一気に乗っ取ってみた丈なのに。此処迄本当に操れるなんて思ってなかったんだよ。同意が無きゃ無理なんだよ。私は認められている。彼女も黙認している。私丈、私丈なの。彼女を救えるのは。だからだからさぁ、期待を裏切る様な真似、出来ないんだよ。信じられてるなら応えないと。私の夢、絳の屍、詠うのは冷酷な死神の詠。舞うのは枯れた華束。あぁ、あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛。」
頭を押さえてアティスレイが咆哮する。声を枯らす程の濁声で、慟哭する様に叫び続ける。
流石の丗闇も如何手を出せば良いか分からず只じっと見詰めていた。尾が警戒する様に弧を描き、先端を毳立たせる。
「・・・彼が何なのか君は知ってるのか?」
三歩程下がった所でフォードが声を掛けて来た。予想外の事態だったのか少し熱の籠った目で興奮気味な彼は少年らしい笑みを幽かに浮かべていた。
敵同士なのを気に留めない位研究が大事らしい。
「然う簡単に教えると思うか。」
「君達も手を焼いてるんだろう。僕なら何か力になれるかも知れない。期待は出来ないけどね。僕も斯うなる事態は予期出来なかったんだ。」
「其よりも元はと言えば其の子の所為でしょ!セレちゃんに酷い事して、見てないで止めるの手伝ってよ!」
「子供呼ばわりするな。僕はフォードだ。手伝うから教えろと言ってるんだ。彼は何だ。」
未だ膝を折って呻くアティスレイを冷めた目でフォードは見遣る。実験は好きだが彼女自体は嫌っている様だった。
「彼は前夢に出た奴だ。夢を現にする力を持っている。属性も素性も一切分からない。分かっているのは精々気狂いな事位だ。」
「ちょっセオちゃん、そんな奴に教える事ないよ!敵さんなんだよ!」
「だから妙な名で呼ぶな。我にとっては敵味方関係のない話だ。其に彼奴と利害が一致しそうだ。だったら拒む事もない。」
「然うか。うん、矢っ張り君は賢い神だ。でも夢か・・・聞いた事もないな。黔日夢の次元の時に何かあったのか?見た所寄生タイプの様だね。でも彼は大事な宿主を乗っ取って如何するつもりなんだろう。黔日夢の次元の代行者か?でも力が足りな過ぎる。系統も全く違う。面白いね、益々不思議だ。彼が現象ではなく、何らかの生命体なら一匹欲しい所だね。色々実験してみたい。」
「つまりは御前も知らないと言う事か。話す丈無駄だったな。」
「だから言っただろう、余り期待は出来ないって。僕は今回手伝えそうもないね。僕の力で彼女を消し飛ばしてもいけないし、僕は傍観者を務めるよ。」
「一寸!狡いよ其。聞く丈聞いて逃げるなんて!手位貸しなよ!」
「全く、先から喧しいな。抑僕等は敵同士だ。彼女は僕から逃げた実験体だし、ガルダは裏切り者だ。君達も其と与して黔日夢の次元を修復しようとしているんだろう。手伝う方が如何かしてる。実験の事が無かったら抹殺す可き所だ。君は彼の時研究室に忍び込んだ鼠だろう。連れの龍族も見覚えあるしね。僕はずっと君に聞きたかったんだ。壊れた彼女に会った感想と、一体如何言う経緯で彼女の味方になったのかをね。」
―答える事ないよドレミ。彼の時の事は忘れた方が良い。―
「分かってるよ。こんな状況でそんな事聞くなんて不謹慎だよ。先から良く分からない事言ってるし・・・。」
「僕としては迚も貴重な意見だから是非聞きたいんだけどね。君達の様な部外者が加わる事で彼女に変化が起きただろうか。君は元気そうだし、良い刺激になったんじゃないかな。変化は大事だ。少なくとも未だ彼女には其の兆しがある。僕は其を良く観察したい丈だよ。何十年もしてる実験だしね。だから・・・。」
「なーに先からくっちゃべってんだよ。私を無視してさぁ、あぁー煩い煩い煩い!如何すれば此の声は止むの?じゃぁああぁ殺さなきゃ殺さなきゃ。引っ繰り返せば静かになるかな、脳髄ぐちゃぐちゃにしたら黙るかなぁ、舌を引き裂いたら良いのかなぁああぁ、噫殺したい殺したい。」
呻き乍ら立ち上がったアティスレイの半身は異形の物へと姿を変えていた。
「ひっ・・・あ。」
其の姿の悍ましさについドレミは尻餅を付いた。ローズも怯んだのか尾を下ろして二、三歩下がる。
アティスレイの半身は異様に膨れて大きくなり、節榑立った手足が痛々しそうで目に付く。
「何て姿だ・・・。彼が奴の真の姿か?元の姿に戻れると良いが。」
でないと仕事なんて迚も行けない。化物と言われて争うのが落ちだ。
「此デ多少は戦エル?殺セる?殺セル?ギャギャギャギャ!」
裂けた口を大仰に開けてアティスレイは笑い続ける。そして地を蹴って一気にドレミの目前迄跳び掛かった。
「阻かって壁霆!」
両手を前へ伸ばして雷の壁を創る。其処に振り翳したアティスレイの爪が突き刺さった。
何時の間に変化したのか右手の爪は絳く、首斬り鎌の様に長く伸びていた。腕も先見た時よりも節榑立って細くなっている。でもだからと言って腕力が弱まっている訳ではないらしい。
「ギャギャギャギャ!」
―ドレミから離れろ!―
ローズがアティスレイに火焔を打つけた。真絳な其は瞬く間にアティスレイを包み込み、燃え盛る。
「ア゛ァ゛あ゛あ゛ア゛!!邪魔すんじゃネェ獣風情ガぁ!!」
尾が捻じれ、複数に分かれて口の様に開かれる。其が一気に伸び上がってローズを搦め捕り、持ち上げた。尾には逆刺が幾つもある。搦まった時点でローズの躯中に細かい斬れ目が入った。
「キャウゥ!」
「此の儘刻んで喰イ殺してヤロうか。大好きな絳ヲくれタ御礼ニサァ!ギャギャギャ!」
アティスレイを包んでいた焔は燃えていた翼に吸収されて焦げ目一つ残ってはいなかった。
「花火!」
ローブから取り出した小瓶の中身を打ちまけて軽く静電気を流す。
余り時間を掛けずに発動させたけどあんな笑ってたなら少し位吸ってる筈。
ドレミが飛び退ると撒かれてた火薬が爆発し、アティスレイを巻き込んで爆風が吹き荒れる。
「ガギャグガァア!!」
アティスレイが奇声を発し、尾の力が緩んだのでローズは何とか尾の檻から抜け出せた。
舞い上がっていた土埃が晴れる。アティスレイは躯が脆いのか爆発を諸に食らい、喉から裂けてしまって上半身が二つに分かれてしまっていた。
真絳な体液を垂れ流し乍ら無言で残った片目をドレミに向けた。肩が震え、半身に大量の目が生え、同様にドレミを見詰める。
「shoise」
丗闇の手から黔の刃が無数に放たれ、開いた許りの目を潰して行く。絳い液を撒き散らして其はあっさりと潰れて行った。
「遠慮はするな。未だ此奴は動く。」
「酷いナァ。君の友達ダよ?こんな醜くしチャって。慈悲ノ一つ位無イのぉ。」
潰れた目が次は口になって開く。目の残骸を食んで舌舐りをする。呪詛の言葉を吐いて甲高い声で嗤い出した。
両手で頭を押さえてアティスレイは無理矢理躯をくっ付けた。そして髪を数本引き抜くと器用に爪を使って躯を縫い付けた。縫い目は滅茶苦茶で蠢いている様にも見える。
そんな出鱈目な縫い方で引っ付く筈も無く、ずれた傷口からドロッとした何か混ざった様に軟泥性のある血が溢れ出た。
「ネェ痛いヨ痛いよ。助ケテよ、見てなイデさァ。死んじゃウヨォオ。此ノ儘だったラサァ。」
大量の口が生えた半身と反対の面が変化し、目の無い蛇か龍の様に細長くなり、紫の舌を垂らした。髪は絳黔い無数の蜈蚣に生え変わって各々が勝手に動いては牙を鳴らした。
「う・・・あ、何なの彼、如何してこんな・・・。」
気持悪くなってドレミは口元を押さえて視線を逸らした。
花火があんなに効くなんて思ってなかった。でも彼は未だ生きている。あんなぐちゃぐちゃになったのに殺意が全く減っていない。
戻るの?此処迄来たらセレに戻っても、助かるの?こんな怪我負った儘だったら直ぐ死んじゃうんじゃあ、
「ねぇネェ、此の儘ジャあ君の願イが叶わなくなるヨ。彼奴等が邪魔するンダ。君も憎いダロウ?ダッたラさ、一寸位協力シテくれよ。殺シたくて堪ラナいんだロォオ!!」
枯れているのか金切り声なのか、色んな音が混ざり合ってアティスレイが地に吼える。
すると唐突にアティスレイの足元の地に細かな罅が入り、瓦解した。
割れた底はもう地面ではない。暗闇が口を開けていた。崩れた砂が落ちて行くが何処に続いているのかは分からなかった。空間が無理矢理捻じ曲げられて繋げられているみたいに不可解な罅。
「ヒッ、ヒヒッ、ヒャハッ、ハハハッ。」
そろそろと穴から離れるとアティスレイは丗闇を睨め付けて一気に跳び掛かった。
考え無しの一直線。愚弄にも程がある。
でも先の罅は何だ。魔力が高まり過ぎて空間が歪んだ?否、奴の魔力自体は上がった様には見えなかった。だったら一体・・・。彼奴の何らかの能力か、其とも、
「fetice」
地面から黔い鎖が生え、示し合わせたかの様に自分を包む檻を形成する。
我には闇の空間も張られている。妙な術であれ、簡単には侵入出来ない。彼の爪を振り下ろそう物なら逆に搦め捕ってしまう迄だ。動きさえ封じれば彼を追い出す方法を考える暇位出来るだろう。
両の爪を交差してアティスレイが正面から斬り掛かる。鎖に掛けた爪が嫌な金属音を立てた。そしてアティスレイを捕らえようとした鎖は其の儘膠着してしまう。
鎖は何時の間にか罅だらけになっていた。そして其の罅は空間に迄及んで、気付いた時には額が薄く裂かれていた。
「な、」
絳い血が溢れて左目に掛かる。
繊月が絳く嗤う。長い舌が舌舐りをして誘う様に揺らめいた。
吸い込まれそうな其奴の絳に魅入られた瞬間、横薙ぎに振られた左手が迫る。
次の刹那に澄んだ玻璃の割れる音。
欠片になって散って行くのは鎖とまさか闇の空間か。
左手に鋭い痛みが走り、腕を上げると何ヶ所も大きく裂かれて血が噴き出していた。
「cryple」
咄嗟に足元を囲む一輪の大輪の様に玄の釼山が展開される。
だが既にアティスレイは後退しており、数歩離れた所で癇に障る高嗤いを上げていた。
何を・・・された。
一瞬で術を破られるなんて。只の鉤爪だぞ。魔力が全く釣り合っていない。術を放った様子もなかったのに。
完全に油断していたか。馬鹿にしたから馬鹿な目に合った。未だ未だだったのは自分だったか。
「ハハー凄い凄イ。スペック高いジャん、ヒャハハハ!!」
先の感じ、前彼奴と手合わせをした時と似ているか?我の空間を破った時と似ていないか。彼の妙な罅、術にも空間にも及んでいたが彼奴の力を此奴が乗っ取りつつあるのか。
高じ過ぎた干渉力が何かを引き起こしている?原理は分からないが危険な力だ。属性も分からない分対策が為難い。
「御前も良い具合に染まって来たじゃん!黔なんて味気ないよ。一緒だよ一緒。絳の下で私達は繋がるの。ヒャヒャヒャヒャ!!最高だ、打っ壊してやる!其の間抜け面浮かべた儘飾ってやるよ!」
「戯けが、其の下品な口を閉じる事も出来ないか。」
「ハッハー何ー嫉妬してルノぉ?あっサリ私なんかニ乗っ取らレてるもンネェ。アッハハ!じゃあ良イよ。何か言ってミタら?言イたい事アルんじゃなイの?届けてアゲるよ私が彼女に。御前いっツモ黙っテて何考えてるカ分かんないしサァ、はっキリさせちゃイなよ。言イ方次第デハ彼の子、自力で私ヲ抑え込むかもヨ。」
「こんな力・・・又黔日夢の次元を起こす気か。同じ過ちを繰り返す気か。」
「其モ・・・良イカもね。」
口が歪んで朔月の様な笑みを浮かべる。舌舐りをしたアティスレイの頬は上気した様に絳かった。
此は、何方の声だろうか、自信が無くなる。今我が対峙しているのは誰だ。
「だったら御前を殺さないといけない。其でも良いのか。」
「殺すぅ?臆病者ノ御前ニ出来る訳なイじゃン!恐いから何時モ内側で見テルんでしょ?見てル丈じゃん役立たズ。殺スのはねぇ、覚悟が要るんダよ。度胸、力じゃナい。デも、御前には何方モ足リなイ。冷静振ってル丈で何も言わない人形ト同じジャん。だっタラ私が操ってあげるヨ。此の髪で括っテさ。言う事聞かなキャ引き千斬ってヤルから分かり易イデしょ。最後ニハ全部踠イでさ。髪で括って細斬れにしテアげる。人形にハ御似合いの末路でショお!」
「煩い。喋るしか能がない気狂いが。」
「独楽回し!」
ドレミがローブから小さな金属製の円盤を取り出し、放った。其は激しく回転してアティスレイに迫る。
アティスレイが跳び退くと円盤も追撃を開始する。良く見るとドレミとアティスレイの間には何時の間に張ったのか細い静電気の縷が出来ていた。円盤は其の上をまるで独楽の様に回転し乍ら電気を散らして追尾していたのだ。
四方から独楽が近付き、陣を描いてアティスレイの上から驚霆の網の様な物を作り、押さえ付ける。
「アギャギャアッ・・・。」
網が絡み付いて強力な電力が内を駆け巡る。
アティスレイの躯に十字の火傷の跡が幾つも刻まれた。
其処へ透かさずローズが火焔を打ち付ける。
独楽を巻き込む熱風が渦巻き、アティスレイを中心に火柱が昇る。
「ア゛あ゛あ゛ァ゛・・・噫そっか。避ける必要ないンダっけ。」
独り言ちてアティスレイは尾を滅茶苦茶に振り回した。焔に包まれていた尾は火の粉を散らすのみで其の焔が消える事はない。
だがアティスレイが喉が焼けるのも構わず旻へ咆哮すると火柱も電気の網も急激に罅が入り、一気に砕け散った。
「あーヤっぱ此の力ベン・・・ガッアギャッ。ガギャガハッ!!」
突然アティスレイは大量に吐血し、左肩に細かな罅が入った。其の肩を怨めしそうに押さえる。痛むのか手に力を込めるが却って罅を広げている様だった。
「力を・・・扱い切れていないのか。」
反動が帰って来たのか。自身迄もを滅する自滅の力になりつつある。彼は効くのか?
「うルセェうルせぇ、私だっテ使エる。上手に殺セるよ。私じゃなイ、私ヲ殺すな。私が殺スんダ。行けよオイ、言う事聞ケッつっテンだぁ!!」
アティスレイが刃を振るい、空間に罅が入る。其はローズに命中してしまい、ローズの纏っていた灯の鎧は砕け散った。
「キュゥゥ・・・。」
「ロー君!」
ドレミが駆け寄って抱き寄せると未だ纏わり付いていた罅に触れ、頬に裂傷が入った。
―ドレミ、離れて。ひ、罅が・・・。―
「大丈夫だよロー君。ドレミが傍に居るよ。未だ諦めてないから。こんな所で死んだりなんてしないよ。」
力を込めた両手にも罅が入って行く。其は塞がらない傷となって血を流し続ける。
「あーぁ、やーット二柱捕マえたよ。一寸勿体無イけド此の気持ニは代えラレないよね。後悔しない様、打っ殺シテあげるから。原型モナイ位ぐちゃグちゃにして食ベテあげるヨ。チェリーみタいに甘然うな絳だカラさぁ!」
「はぁ・・・もう見てられないわ。」
背後から正女の声がし、アティスレイは緩りと不自然な角度で頸を廻らせた。
其処には真皓な飾り程度に華をあしらったワンピース丈を纏い、素足の正女が立っていた。
皓い肌に腰に届きそうな先が淡い水色の透ける金髪。旻色と浅黄色に染まった瞳は迚も優し気だ。正女の手足の甲や頬には輝石が埋め込まれていた。其は曦の角度で様々な色に変わり、今は仄かに絳く灯っていた。
突然現れた正女はアティスレイに対して身構えつつも唱えた。
「聖境。」
正女を中心に淡い曦が広がり、草原の六丈程先迄を包んだ。そして地に緩りと染み込み、仄かな曦の粒を放出させた。
「此は・・・聖の術か。」
「えぇ、地の穢れと貴方達の傷を癒せるわ。範囲内に居る者を無差別に対象としてしまうのが難点だけれども、今回は其の心配は不要だわ。」
確かに正女の言う通り、腐敗したり焼け焦げていた莽蒼は見る見る内に元の茜色を取り戻して行った。自分の腕や額の傷も修復して行く。だが彼奴丈は血を流し続けていた。彼の罅が聖の術をも破壊してしまうからだ。全く力を扱えていないと思える。
「御前は誰だ。」
「噫挨拶が遅れて済みません。私は大神の巫女、ロードと申します。貴方は闇の神、丗闇漆黎龍様ですよね。噂は予々より存じております。御会い出来て光栄です。」
「彼奴の巫女か。話が分かる奴なら・・・まぁ良いだろう。」
「えぇ、私、彼女と一寸した間柄なので微力乍らも助太刀しに来ました。私は聖しか扱えませんが。・・・其にドレミの危機でもありますし。」
「あ、あれ、怪我が治ったけど若しかして御姉さんの御蔭?神様なんだよね、屹度。あ、有難ね!」
ドレミが手を振るとロードも微笑んでそっと胸元で手を振った。
「斯うして会うのは初めてね。フフッ、元気そうで何よりよ。フレス、彼女に迚も御世話になったから少しでも返したかったの。」
「え、あ!若しかして姉ちゃんの言っていた神さん!えっと確か、ローちゃん!ローちゃんなの?」
「えぇ、さてと、色々話したい所だけれども先ずは彼を止めるのが先だわ。」
ロードが地を蹴り、一気に間合いを詰める。
アティスレイは中途半端に罅を纏っている。彼を如何にかしないと真面な攻撃が浴びせられない。近接で乱せるか試さないと。
拳を握り、顔面擦れ擦れに振り下ろす。危な気なく上体を逸らすアティスレイに今度は回し蹴りを食らわせる。蹌踉け乍らも躱すアティスレイに次は踵落しを決める。流石に大技丈あってあっさり躱されてしまい、地面が陥没する丈で終わった。
「・・・威力ハ恐いね。当たンなキャ意味無いケドさ。」
「貴方も力を使わないと私を殺せないわよ。避けて許りじゃ意味無いわ。」
「うるせぇ、力位使エる。私は認メられてイる。託されタ力。邪魔させない。殺す。御前も彼奴等も皆殺しテやる。助けとか馬鹿ナ事をしに来タ事後悔サセてやる!」
アティスレイの両肩から大きな捩じれた角が生えた。其は驚霆の様に罅を放出し、空間を破壊する。反応が遅れたロードの右足と腹部に裂傷が走り、真皓だったワンピースを斑に染めてしまう。
だが罅はアティスレイの角にも広がっており、脆くなった所が崩れ始めていた。
「アァガァギギギィ!!」
「癒聖。」
痛がり悶えるアティスレイは余りにも隙が大きかった。彼の罅に真面に触れれば此方は一撃でやられてしまう。でも上手く使えていない内なら近接で攪乱させれば勝機はある。
安い挑発に乗る程度の知能みたいだし、実戦は初だけど、油断しなければ勝てない相手でもない。
自身に二重に聖の術を掛け、治癒速度を速める。罅自体は治せないけれど、怪我や痛みなら止められる。
「lanour」
黔い陰霖が刃となってアティスレイに降り注がれる。
大半の刃は罅割れて壊れたが一部はアティスレイの躯を掠めて行く。御蔭で半身の口は裂かれて爛れてしまった。
「一気に行くわよ。」
拳を押さえて一気に突く。でもアティスレイに触れる直前で納める。触れてはいけない。あんな中途半端に罅を纏っているなら。余り物理攻撃が効いている気もしないし、此処は寸止めを繰り返して向こうの集中を削いだ方が賢明だ。
アティスレイの脇に逸れて踏み込み、蹴りを放つ。敢えて頬を掠める形で。罅が僅かに足に入ったけれども此の程度なら聖で直ぐ治せる。
「uphelin」
アティスレイの足元の地面が黔く光り、真直ぐ鑓が突き出される。
直ぐ罅割れて壊れてしまうがアティスレイは一瞬避ける可きか悩んだ様だった。
上体が傾いだ所で透かさずロードの蹴りが目前を掠める。
「詠え雷響轟!」
一瞬上旻が光り、大きな雷の音が轟く。
情報処理能力は低いらしい。アティスレイは一度にされた攻撃の全てを把握出来なかった。加えて今の己の力が未知な物である為、限度が分からない。
完全に混乱してしまった。
「ア゛ァ゛ぁ゛あぁア゛ァ゛面倒臭い焦れったイナァもう!黙れよ黙レ!死んでシまエ、殺しテやる!脳天裂いて中身を啜っテヤる!もう生き急がないデ済む様に心臓も刻んで喰ッテヤる!大っ嫌いなンだよ御前等!」
アティスレイが咆哮すると潰れて膿んだ口が朽ちて真絳な華が咲き乱れた。そしてアティスレイを取り囲む様に罅が急激に広がり、掛けられていた術が一気に砕かれた。ロードが既の所で後退し、何とか難を逃れた。
「うぐっ・・・ガァアァ゛ウゥッ・・・っ!!」
罅がアティスレイの脇腹に広がり、大量に吐血する。其の拍子に罅割れた所から真絳な液体が流れ出て上体がぐらついた。半身の華から蔦が伸び、其の腹部を中心に巻き付いて締め上げた。蔦には棘があり、其が絡み付いて複雑に結び付く。
「あ・・・ぁ、チ・・・ガ、魂・・・が。こ、壊レちゃう。う、動ケ、コンナ所デヘばっテンじゃないヨ。ネんねするニハ早いだロうガぁ。」
蔦で無理矢理上体を繋ぎ止めてアティスレイは緩りと歩みを進めた。罅が其に付いて行き、少しずつ華を蝕んで行く。
「丗闇漆黎龍様、最後は御願いします。」
ちらと見遣って頭を下げると僅かに彼女は頷いた。
今のメンバーで一番火力が高いのは間違いなく彼女だ。
でも其は相手も分かっているから一番彼女の攻撃に警戒している。彼女の攻撃丈は必ず向こうは過敏に反応している。其で自滅を計るのもありだろうけれどもそんなのを待っていたら又何か向こうに変化が出るかも知れない。未知の者との対峙は気を抜けない。
多分丗闇漆黎龍様の攻撃を諸に加える事が出来るのは一度が限界だと思う。彼の罅を如何にかして、其の一瞬のみ。
あんなに混乱していたら軽い挑発位出来る筈。
彼の全力の殺意に私が一瞬堪え切れれば・・・行ける。
「そんな威嚇じゃあ私を捕まえられないわよ。」
「アあ゛!?手前も避けテバッかだろウがぁ!?大人シく殺サれろ!此の世界ごト打っ壊しテヤるんだ!逃ゲラれない逃ゲラれなイ!追い詰めテバラバラにしテやる!皆道連れだ!御前ノ所為ダ!皆の所為ダ!」
「世界を壊して私達を捕まえる迄貴方の躯が持つかしら。」
「・・・・・。」
其の時初めてアティスレイは黙った。じっとロードの方に顔を向けて何か考えている様だった。
「抑私達の為に随分大層な力を使うのね。そんな大掛かりな力を使わないと私達に届かない程貴方鈍感なのかしら。」
「あ・・・アぁ・・・。」
こんな所で冷静になられても困る。ロードが言葉を重ねるとアティスレイは頭を抱えて呻き始めた。
鋭利な爪が己の頭に刺さって血が噴き出す。
「お、お、御前達に何が分かル!偽善者ガ!誰も救えナい癖に!誰かノ願い一つ叶えらレなイ世界の塵ノ様な奴等が!私ニ指図スるな!ああ゛あ゛ア殺すンだ!殺さナいと!やれる!私一柱の力デモやれる!やっテヤる!」
もう会話等到底出来ない。滅茶苦茶に喚き立ててアティスレイは上体を低くした。翼が大きく広げられて火の粉が散った。
「嗤うギロチンの刃、華瓶ニ浮かブ枯れた華弁、首吊り縄ノ穴の底、血ノ雫、髑髏の削れル音、翼ヲ捥がレタ鳥、夢を見れナイ大人達。」
意味不明の単語を並べてアティスレイの歪んだ口が繊月の様に細められた。
尾が地を叩き、其の衝撃でアティスレイは飛び上がり、ロードに刃を向ける。広げられた尾が口の様に広げられ、蠢いた。
其をロードは避けず、真向から見据える。濁った殺意。屹度彼女は私達を殺しても些とも満足しないのだろう。其程迄に歪んで、澱んでいる。憎み過ぎて狂った様、そんな躯になって迄只々殺そうとする彼女は狂っているとしか言えなかった。
同時に少し間合いを離れていた丗闇が一気に羽搏き、ロードの脇を抜けた。
実に軽い挑発に乗った。否、自棄になった丈かも知れない。
でもこんな大きな隙を逃せる訳もない。彼の妙な罅を解いている。
騙し討ちなんて手段は今の彼奴には取れないだろう。
本気で、殺す気で行く。
もう彼は立つのもやっとだ。身動きが取れなくなれば良い。
体術は苦手だ。少し動く丈でも魔力を消費する。我にとっては動かず詠唱する方が楽だ。でも先迄の奴の反応で分かっている。
我の術に対する警戒が強い。つまりは我の術なら殺せると言う事だ、彼奴を。加えて近接戦には頭が付いて来れず対応が追い付かない。彼奴の巫女が聖遣いでは珍しい格闘タイプで助かった。苦手な戦術でも勝算が出せた。
「cuord」
爪が鋭利に伸びて逆刺が幾つも逆立つ。黔い渦を抱いて旋律の様に腕に添えられる。
今の彼は巫女しか見ていない。こんな冥い殺意に気付かない程彼は澱んでいる。
ロードの目前で両手を広げて嗤ったアティスレイの胸元に深々と黔の刃が突き刺さる。貫通しそうな程の其を引き抜く訳ではなく、更に一歩丗闇は足を踏み出した。すると刃の黔が弾けて荒れて斬り裂き、アティスレイの背を突き抜けて其の肉を抉り、引き千斬った。そして丗闇の手に因り斬り裂かれる。逆刺が内臓を裂いて細斬れにした。
でも未だ笑みを絶やさないアティスレイに丗闇は止めと頸を斬り裂いた。
斬り落とさない迄も口の様にパックリと開いた傷口は生温かい息と血が止め処なく溢れた。
腹から臓物を零し、己の血で真絳に濡れそぼったアティスレイは流石に立ち止まり、緩り頸を下ろした。
見る迄もない致命傷。死以外は無い。
躯を震わせたアティスレイは哭いているのか悔しいのか色々な物が綯い交ぜになった声を上げた。
「も・・・ウ、魂・・・ガ、限界・・・無理、無理、此以上動か・・・したラ・・・怒らレル。失敗、不完全、事故、不注意。無駄、無駄無駄無駄だダだ。終ワる、私が・・・エンド、ガ、アグあ゛ぁガガ・・・。」
喉から息が漏れ、満足に話せない儘アティスレイは言葉を紡ぐ。
誰にも届かない詠を。壊れた人形の様に。譫言の様に呟く。
「セメて・・・一柱位殺しトキたカッたノニ・・・う、役立タズ、期待外れ。要ラない力、望マれナい末路。私の実力不足。ウア、でも、終わらセナい。こんな所デ消エナいから。私の・・・絳ノ夢ハ・・・ずっト・・・君ノ傍に・・・。」
其の言葉を最後にアティスレイの全身から一気に血が溢れ出た。其の血に洗われるとアティスレイの躯は次第に崩れて行った。
燃えた翼は鎮火し、蜈蚣の髪は抜け落ち、角は崩れ去って、絳い刃は剥がれ、龍の面は溶け出し、纏わり付いていた華は枯れた。
全てが洗い流されると残ったのは満身創痍になったセレだった。
其の儘セレの躯は傾ぎ、前のめりに倒れ込む。意識はなく、ぐったりとしていた。
怪我が其の儘反映されていた様で己の血で真黔に染まっており、裂かれた頸元や剥き出しになった内臓、焼け焦げた翼や裂傷だらけの腕と、痛々しい姿となっていた。
「・・・っ、未だ息がある。」
如何見たって致命傷所か死相の浮かぶ面だったが屈んだ丗闇がそっと口元に手をやると僅かに青白くなった唇が震えた。
「おい、巫女。」
「えぇ、分かってるわ。もう術は掛けてあるわ。」
そっと肩に触れてみると酷く冷たかった。血が滑って気持が悪いけれどもそんな事言ってはいられない。術は効いている。少し治りが遅いけれども少しずつ出血は抑えられている。
「セ、セレちゃんは!セレちゃんは大丈夫!?」
ドレミが駆け寄って血が付くのも構わず屈んでセレの頭を膝に乗せた。下手に動かすと不味いかも知れないけれど地べたに置いた儘も傷に良くないだろう。
ローズも動ける程度には回復した様で、付いて来ると腰を下ろした。
「大丈夫かは何とも。様子を見ないと難しいわ。」
「・・・やり過ぎたか。」
「いえ、此は仕方なかったでしょう。斯うでもして止めた方が彼女の為だったでしょう。其より私は貴方様が殺さない様手加減したのが意外だったので。」
「殺して迫間でも然うなったら困るだろう。」
「其も然うですね。今は・・・もう大丈夫然うですが。」
「ふーん・・・中々面白い物を見せて貰ったよ。」
丗闇が振り返るとフォードと其の後ろから吟叫が付いていた。
少し面倒然うだと丗闇の目の険が鋭くなる。
「然う怒らないでくれ。僕は今回何もしない。傍観は終わったんだ。此の儘帰るとするよ。」
「おいフォード、今ならやれんじゃないのかよ。彼奴、死に掛けてるし。」
「無理だよ。今の状態の彼女にすら僕達は勝てない。退いた方が賢明だよ。」
「いやいや買い被り過ぎだろ。幾ら御前の実験生物だからってさ、動けねぇ奴をやれないって事はないぜ。御前がやらないなら俺がやろうか。」
「一寸、未だやるつもりなの。手伝わないし、邪魔しかしないなんて本当質悪いよ。」
「別に二柱位なら相手をしても良い気分だ。目障りだ。」
「ほら、怒らせちゃったじゃないか。僕は全くそんな気ないのにね。良いから帰るぞ。此は命令だ。実験は未だ終わってないんだ。又考えを改めないと。」
「ケッ、此奴等殺す命令も御前が出したってのに面倒だぜ。次はやり合うからよ、覚悟しろよ。」
二柱は本当に去ったらしい。姿が掻き消え、気配も遠退いた。
―・・・取り敢えずは仕舞いと言った所か。―
入れ替わる様に現れたのはハイカーンだった。上旻を流れる様に泳いで弧を描く。
「あ、ハイさんだ。御免なさい。折角直してくれていたのに又此処駄目にしちゃって。」
ロードの力の御蔭で大部分は元に戻ったけれども彼の罅の影響丈は消し切れなかった。
ぼろぼろになった華葉が目立つ。此の儘枯れなきゃ良いんだけど。
「貴方は此の次元の神ですね。巻き込んでしまって済みません。」
―いや、良い。此の程度なら然う何年も掛からん。其より先の話、黔日夢の次元だったか。彼を起こしたのは其処の正女だな。―
「・・・うん、然うなの。騙す訳じゃなかったけど。」
―・・・不憫だな。そんな力を持ってしまって。望んでいた訳でもなかろうに。私はこんな形でも薫風しか使えん。だから正女の思う事等、分かろう物もないだろうが。若し私がそんな力を持ってしまったら屹度今より死にたいと思うだろう。殺す事でしか生きられぬのは辛い事だ。力は其丈で御前を形作ってしまう。当神が如何思おうが否定してしまう。―
「過ぎた力の代償、と言う事ですか。」
―力と世界の均衡と言う可きか。兎にも角にも正女は大事にされよ。―
「心遣い感謝します。」
ロードが頭を下げるとハイカーンの姿は掻き消えた。後は心地良い薫風が吹く丈だ。
「ど、如何しようセレちゃん、どんどん、冷たくなってる気がする。迫間に帰ったら良いんだっけ。早く如何にかしないと。」
ローズもそっと頬を寄せるのだが余りにも冷たい様で少し丈身を引いてしまう。
「其は如何かしら・・・下手に迫間に帰って魄が傷付いてもいけないわ。干渉力が強過ぎるから何処迄引き摺られるか分からないの。然うね・・・大神様の宮処へ行きましょう。彼所なら手当を出来るわ。」
「其が賢明だ。彼奴の所だったら邪魔も入らないだろう。正女、早く案内しろ。」
「えぇ、皆さん目を閉じて下さい。今から道を開きます。」
ロードがそっと胸元に手を置く。すると淡い曦が漏れ出し、瞬く間に景色を皓一色に染め上げたのだった。
・・・・・
「・・・っ、あ・・・。」
幽かに息が漏れて視界が開ける。
其処は透明な箱の中に居る様で、薄桃の靄が周りに立ち籠めていた。波紋は何処迄も広がって行くが、此の箱の外は屹度又別の世界の気がする。一つ一つの空間を切り取って膨らませたかの様な世界。
そっと手をずらすと毛布が背に掛けられていた。俯せに寝かされていたのか。でも此処は一体、何があったっけ・・・。
「目を醒ましたか。」
「・・・丗闇か。」
覗き込んで来たのは丗闇だった。隣に居たのか。彫像の様に動かなかったから気付かなかった。
酷く寠れている気がするけれども・・・何処か体調が悪いのだろうか。
「丗闇、大丈夫か?具合悪そうだけれど。」
「其は此方の台詞だ。我の事は良い。御前は如何なんだ。」
「頗る元気だ。」
「・・・・・。」
「い、いや本当だって!何でかは分からないけれども一寸眠たかったのも治まったし、頭が凄くすっきりしている。ストレス発散したみたいだ。」
「ストレス・・・まぁ良い。戻ったのなら我は寝る。」
少し溜息を付くと丗闇の姿は掻き消えた。矢っ張り凄く体調悪そうだったけど・・・大丈夫かな。
「と言うより此処は何処だ?」
こんな所知らないし、迫間でもなさそうだ。其に何かあったっけ・・・。
上体を起こして座り直してみたけれども・・・変化ないな。
「っあ!セレちゃん起きたんだ!」
突然四方の透明の壁が歪んでドレミとローズがやって来た。そして姿を認めるなり抱き付かれた。
「ちょっドレミ!?そんな行き成り抱き付かれたら・・・っ!?」
懐い・・・出した。
何でこんな事忘れていたんだ。自分はアティスレイだとか言った彼の絳の夢の奴に躯を乗っ取られて、皆を・・・皆、を・・・。
堪らなくなって咄嗟にドレミを突き飛ばした。蹌踉めいたドレミはローズの背に支えられて目をぱちくりさせていた。
「ど、如何したのセレちゃん、若しかして未だ・・・。」
「駄目・・・だ。私に近付いたら・・・。私、何て事を。ごめ、御免なさい。此の手で、皆を・・・っ。」
突如生温かい息が耳元で吹き掛けられた気がした。嗤っている、絳が。血に塗れた真絳な腕を伸ばして、後ろから抱き締める様な。狂った瞳で、視線を絡み付かせ、頬を舐められた様な感覚が・・・。
「・・・此は貴方の所為ではありません。そんなに脅えなくてももう大丈夫ですよ。」
背後の壁が揺らいで正女が入って来た。手足の輝石が淡く藍色に光る。
何となく、憶えている。確か途中で加戦してくれた正女だった気がする。
「御加減は如何ですかセレさん。皆さん貴方の事、心配していたんですよ。だから逃げようとしないで下さい。避けられた方が傷付く物ですよ。」
「で、でも・・・。」
「本当だよ!良かった。セレちゃんもう起きないんじゃないかってすっごくドレミ恐かったんだよ。生きてて良かった、本当に。」
再度ドレミが抱き付いたが其の瞳が濡れていたのに気付き、振り解けなかった。
手が当たって背中がぞくぞくするけれども、迚も温かくて。
そっと其の髪を撫でて宥める事にした。
無言でローズも擦り寄って来て頭を擦り付ける。背を軽く叩くと尾を振って返してくれた。
「・・・有難う皆、心配してくれて。」
「あれ、然う言えば丗闇様は?てっきり此処に居ると思ったのですが。」
「噫丗闇なら先私の中に戻ったぞ。体調が悪そうだったからな。」
「然うですね。四日も出続けていたら嘸魔力を消費されたでしょうし。」
「四日!?私、そんなに寝ていたのか!」
然も丗闇がずっと出ていたって、噫、悪い事したな・・・。丗闇の事だから屹度ずっと看病していたんじゃないだろうか。想像出来る。だのに礼の一つ言わずに帰すなんて。今寝ているだろうし、後でちゃんと言って置かないと。うぅ、不甲斐無い。明らかに彼の顔色、病神だったぞ。
「・・・たった四日で治った方が驚きですけどね。幾ら此処が魔力の流れが良いから回復し易いにしても。」
「あ、然うだ。此処は何処だ?私は前迄彼の次元にいた筈だが。」
「此処は大神様の宮処です。怪我の具合が芳しくなかったので此処迄運ばせて貰いました。」
然う言ってロードはそっとセレの前へ腰掛けると薄く微笑んだ。其の面は見た事が無かったけれども声は聞いた事があった。
「然うか、有難う。世話掛けたな。でも・・・其の声何処かで、噫懐い出した。鎮魂の卒塔婆から帰った後に夢で会った正女か。」
「あら、憶えててくれたんですね。えぇ然うです。私は大神様の巫女のロードです。斯うして姿を見せるのは初めてですね、セレさん。」
「噫矢張り然うか。何だか助けられて許りだな。」
「然うだよセレちゃん。ローちゃん、ドレミの姉ちゃんの知り合いの神さんだったの。姉ちゃん、ローちゃんの話し方が大人っぽいからって真似してたんだよ。ヘヘッ、だから余計懐かしくて。」
「然うね、そんな事もあったわ。・・・如何かしらセレさん。本当に具合は大丈夫ですか?行き成りあんなのに憑かれてしまって大変だったでしょう。」
「躯は・・・もう本当に大丈夫だ。凄く楽になった。でも大変だったのは皆だろう。私は操られていた丈だ。・・・はぁ、あんな簡単にやられるなんて。夢に出たのも一、二回程度だったから若しかして何処か行ったかと思っていたけれども、ずっと此処に居たんだな。多分、今も。」
そっと胸元に手を置く。何となく絳い手が絡み付いて来る気がする。気の所為だとは思うけど。
「又あんな事になったらいけないし、私は・・・矢っ張り店、向いてないな。何時次元の主導者を、皆を殺してしまうか分からない。そんな可能性がある時点で最悪だ。私では全く止められなかったし、不甲斐無い話だけれど。」
「そんな!止めるなんて言わないでよセレちゃん!大丈夫だよ。又あんな奴が出て来たらドレミが止めるから。セレちゃんに殺しなんてさせないよ。セレちゃんが頑張ってるのに、あんな酷い事して来たんだもん。」
「・・・一番ドレミには恐い思いをさせたな。恐かっただろう。あんな事、本当に実行する前に丗闇が止めてくれて助かった。本当に、良かった。」
緩りと息を吐く。僅かに手が震えた。
本当にドレミを此の手で・・・。そんな事をしたら、例え自分に戻れたとしても其は決して自分ではなかっただろう。罪悪は神をも殺す、正に其の通り。全てに向けた敵意が悪意なのだから。自分も、其の内の一柱と言う事だ。
「然うだな。じゃあドレミ、御願いがある。若し又私があんな事になったら、私を殺してくれ。彼を自由にするよりはずっと其の方が良い。其が厳しいなら逃げてくれ。無茶丈は絶対にしないで。自害位なら・・・出来る。彼はアティスレイと言っていたか。力を上手く使えてはいなかった様だからな。可也無理もしていた。だから何時か勝手に崩壊する。ずっとは乗っ取れない筈だ。先の感覚でも明らかに自壊していた。・・・ガルダには生きろと言われたがな。然う迄して生きたいとは思わない。出来ない、私には。」
「・・・駄目って言っても無駄だよね。セレちゃんが店を出ちゃう丈だよね。」
一つ溜息を付くとじっとドレミはセレの瞳を見返した。瞳孔も皓眼も無く黔一色の瞳。何も映さず、何も見ていない。
如何しても其の瞳で見詰められてると悪寒が走ってしまうけれども、何時も何時も辛くて悲しそう、然う思うのも確かで。
八翼の翼が前へ撓垂れ、そっとドレミの背に降り掛かる。
温かい。優しく抱かれて、赦されている様。艶やかな黔が流れて添えられる。
「分かったよセレちゃん。ドレミちゃんとやるから、セレちゃんも頑張って。未だ初めた許りだよ。簡単に捨てちゃ駄目。」
「まぁ・・・然うだな。噫、分かった。一寸ペシミズムになっていたみたいだ。もう大丈夫だ。」
―流石にもう次の次元には行かないよね。帰らないと。―
「此以上したら彼奴が出る迄もなくガルダに殺されそうだしな。残念だけれども帰るよ。罰が当たったみたいだな。ガルダの呪いだ。間違いない。」
「其の責任転嫁はしちゃ駄目だよセレちゃん・・・。」
「あ、ではセレさん。帰る前に病み上がりで申し訳ないんですけど、大神様と会ってくれませんか?如何しても一度、話してみたいと。」
「其は構わないが・・・ん、大神って確かクリエーターが最初に創造した神と言われている・・・。」
前ガルダが創世記を話してくれた。でも大神って・・・なぁ、うん。沢山同名っているだろうし、丗闇位の名前じゃないと被らないって事は・・・。
「はい。一応現在の最高神ですね。此の世界を末永く見護っている有難い神様です。」
「お、おぉぉおお・・・。」
そ、其ってやばくないか。凄い事だけれども、でも、
話って一体・・・自分の胸に手を当てて考えてみようか。
・・・絶対黔日夢の次元だ。其しかない。加えて巫女さん傷付けちゃったし。世界を見護る神なら殺されてもおかしくない。
何てこった。安請け合いしちゃった。今直ぐ帰りたい。でも絶対に逃げられないよなぁ。只でさえ生き難い世界だったのにより辛くなった。
いや、全て相手するって誓ったよ。でもこんな、一寸チュートリアルして、感覚掴んだ程度でラスボスはないだろう。死亡確定イベントだ。そして屹度リトライは出来ない。DEAD ENDだ。
微妙な笑みを浮かべた儘青くなるセレだが、ロードは一切気にしていない様だった。
では付いて来て下さいと促してさっさと此の空間から出てしまう。
「えっとセレちゃん大丈夫?何だか只ならない感じだよ。」
「此処は迫間じゃないから1killされても助かるか。よ、良し、行こう。」
―立てる?僕に乗って行く?―
「問題ない。大丈夫だ。」
本当はすっごく乗りたいけれども、乗る所か抱き締めたいけれども、そして其の儘寝たいけれども今は駄目だ。
現実逃避は赦されない。せめて生きて帰って来れた暁に、と慰めよう。
ふらつく事もなく起き上がるとセレはロードに続いて透明な箱を出た。
出てみると矢張り別空間で、地面があるのか如何かも疑わしく思える程の靄に包まれた空間が広がっていた。
只一つ先の空間と違うとすれば旻を数多の淡く皓い華がくるくると舞い躍っている位だ。まるで夢を見ているかの様な景色、神の棲む地と言われれば成程、納得も出来る。
「あら、随分と足取りもしっかりとしているのですね。良かったです。傷が残っていないか心配でしたから。」
向かいに立っていたロードが微笑む。此処に合った穏やかな笑みだ。
「こんなに元気だと寧ろ気持悪いだろう。私は生命力が可也高いらしいからな。ガルダみたいに再生力が高いなら未だ良いが、もう先は本当に動く死体状態だったからな。」
尾が緩りと揺らめいて地を擦るのをロードは何気なく眺めていた。中々歩き出さない所を見ると何か二柱丈で話したい事でもあるのだろうか。自分もあるにはあるが・・・聞き難そうだな、今は。
「・・・今でも貴方は死にたいと思っていますか。」
ロードの頬の輝石が碧く煌く。其の声音は迚もか細く小さかったが、此処は音一つない。
鮮明に、はっきりと聞こえた。
今でも、其は一体何時から指すのだろうか。
「其は難しい話だな。死ねない理由は沢山ある。でも死にたい理由は増えて行く。抑私には其を選ぶ権利はない。」
「生きたい理由は・・・無いんですね。如何して死にたいんですか?私には・・・その、色々確かにありますけど、でも少なくとも皆さんと一緒に居る時の貴方は楽しそうに見えました。其とも、矢張り其が神の性ですか。」
視線を僅かに逸らし乍らも躯はしっかりと此方に向けられている。逃げる事は出来ないな。
「私は、不出来な神です。生まれ乍らの神ですから貴方の様な前世のある神とは屹度感じ方が違います。だから私には分からないんです。ずっとずっと色んな物を見て来たけれども、矢っ張り理解出来ない。大神様は分からない方が幸せだと言いましたけれど、でも・・・。」
―私は・・・世界に嫌われている。―
自分が死にたい理由は簡単だ。たった一つの理由丈だ。だから其を突き付けられる度に死にたくなるんだ。最初は自覚が無かったけれども、何時しか当たり前になった死。其は自分にとって軽くなり過ぎた。
何時も敢えて気にしない様にしていたけれども、彼女は欺けなかったらしい。丗闇とかは知ってて其の上で黙っているのかも知れないけれど。
命を粗末にするなとか、難し過ぎる。使い道が無いんだ。捨てても良いじゃないか。腐らせた方が余っ程惨めだ。
「じゃあロード、御前は私の前世を見たのか?」
「え?いいえ、見ていないです。」
「なら良い。見ない方が良い。」
「如何言う事ですか?抑憶えていたのですか?私てっきり忘れているのだと。」
「憶えていないよ今も。でも分かる。あんな碌でもないの、見ない方が良い。つまりは其が、死にたい理由だ。」
こんな冥い感情しか持っていないんだ。前世なんて知れている。前、嫌な所を断片だけど懐い出したし。
「・・・?如何言う事ですか?私良く分からなくて、」
「其処が幸せだって事じゃないのか?独り善がりな意見の気もするけれど。然うだな・・・何時も御前が食べている物は何処から来ているか、そんな話と似ている気がするな。私も誰かの受売りだけれども。」
多分前世の。反復する様に緩りと。
食べている・・・かなぁ。生まれ乍らの神って言っていたけれど。其に屹度自分よりずっと長生きだし、伝わるか?此の話で。
「食べ物と言うと・・・パンや肉や魚の事ですか?」
「噫、次元にも因るんだろうが、魚は友達や家族、契った者、若しくは独りでかも知れないけれども其の仲を裂かれて、又は道連れにして攫われるだろう。そして凍らされて無理矢理腐らない様にされて、並べられて御前達にじろじろ見られたり触れられたりして買われたり、捨てられたりする。売り易い様に捌かれたり飾られたりもするな。そして食べ易い様切り刻まれたり、時には生きた儘焼かれたり、茹でられたり、仲間の死体で飾られたりな。然うして漸く死体だらけで作られた美しい食卓の完成だ。料理は要は殺し方と、死体の後始末の仕方だ。で、其処から初めて御前達の口へ運ばれる。大方、そんな具合だろう。」
「・・・嫌な言い方しますね。事実然うですけれど。」
・・・永く生きた神でもそんな風に思うんだな。
其は一体、食べられる側が己が此からされる拷問に対して思っているのか、食べる側が其よりも愉快な詠や華やかな照明の方がつまらなくないと、退屈しないと思う気持、何方寄りか知らないが。
「今のでも大分オブラートに包んだ言い方を選んだつもりだが、まぁそんな事知ったら食べ難いだろう。感謝は出来ても増してやそんな情景を見せ乍ら食べさせられたら下手したら喉も通らないかもな。つまり私の前世は其の過程と同じだ。美味しく食べるには不要だ。害悪だ。だから不幸だった、其の一言で完結する位の物だったら要らない。でも其を否定したら私は如何なる。自分を自分で捨てる様な奴が、皆と一緒に居られる訳がない。皆を巻き込むし、不幸にする。長くはなったけれど、然う言う事だ。」
彼女は優しい。そして屹度其が世界の大部分の反応。
そんな目を背けたくなる話か?御前がしないと言う事は、何処かの誰かが代わりに毎日其をやってるんだぞ。別に非日常でも何でもない。でも嫌な言い方、事実は、正論は何時も誰かを傷付ける。
確か自分は前世で同じ話をされた時、あっさり漏らした物だ。
―まるで私達の様だ。で、御前は私を食べるのか。其とも皮を剥いで剥製にするか。―
食べる側とは思わなかった。自分が捌かれる事しか想像出来なかった。結局は誰かの、世界の食い物にされると漠然と思っていた。
「何だか何時もと雰囲気が違う気がします。真面目な話をしているからですか?」
「私は何時も真面目なつもりだったが・・・。そんなに違うか?見ていた私と。だったら何方の私が素だと思う?」
「其は・・・私には答え兼ねます。私には良く分からないんです。貴方の事。斯う言っては悪いですけど、如何したいか分からないんです。色んな意見が混ざっていると言うか、流されているかと思いきや、自分の意見ははっきりさせるし、他神を受け入れていない時もあるけれど、押さえ付けようとはしないし、」
「言う御前も割とはっきり言うタイプだな。分かり易くて良いけれども。」
「あ、済みません。余り、面と向かって誰かと話す事、余りないので、つい言い過ぎたりと言うより、あの・・・者を物と見てしまうと言うか・・・。大神様にも注意されたんですけどね。不甲斐無いです。」
しゅんと項垂れるロードは確かに余り話し慣れていない風だった。夢の時と感じも違うし。
結構落ち着いている様で焦っているのかも知れない。色々はぐらかした様になっているし、追及されないなら楽で良いけれど。
「でも見ている丈にしては良く分かっているな、私の事。使命の事を聞くのはタブーかも知れないが、如何だ。此処の日々は。抑巫女とはどんな事をしているんだ?」
「え、然うですね・・・。巫女と言っても幼い私を大神様が拾って育てて下さったんです。其から大神様は好きに生きろと言っていますけれども。だから私は私の使命に従っている丈です。色んな次元を見て、時々声を掛けたりだとか。」
「成程、少し丈私達と似ているな。噫然うだ。前、夢で世話になったな。その、励まして貰って。」
鎮魂の卒塔婆を抜けた後の夢、彼女は自分に生きる様、願ってくれた。御蔭で店もある訳で、今の自分がいる。
其が自分を戒める呪いの鎖だったとしても、其の不自由さを呪う程捻くれてはいない。
「そんな、彼は御節介だと思われていないだろうかって、私、大神様と一緒にいる丈で、特別な力も何もありませんから。」
「御節介なんて全く。でも然うだな、分からないって言う点では私もあるな。私は黔日夢の次元の時御前の朋も沢山危めたのだろう。だのに何故私に付き纏うんだ。私達の事も同様に物として見ていたと言う事か?」
「っ!そんな事はありません!皆良い方許りで、大切な、大切な朋友でした。でも、私はずっと此処で世界を見ている内に想ったんです。正義なんて、絶対の義がある訳ではないと。視点の問題です。何方の視点で見ても互いは憎む可き物になります。片側しか見ていなければ当たり前の話です。だから私は世界の視点丈じゃなくて、貴方の視点にも立ちたいと思ったんです。決めつけて、否定して、其は簡単ですけど、其の結果悲惨な事になった世界を沢山見て来ました。貴方を殺せば終わりますか?貴方にとって世界全て敵ですか?皆さんは、世界は其で終われば咲ってくれるかも知れません。でも、貴方は咲っていない。其を悲惨と言わなくて如何するんですか。」
「綺麗事だな。」
不可能だ。誰もが咲う世界なんて。狂ってる。世間知らず。頭の痛くなる話だ。
「いえ、其が私の覚悟です。」
でも馬鹿にした位で彼女の瞳は翳らなかった。真っ向から目を合わせても。
此の目で見ても逸らしもしないなら、本気で彼女は然う思っているのだろう。
巫女らしく祈っているのだろう。
「然うか。私の視点・・・か。狂った奴の考えなんて恐らくずっと理解出来ないぞ。」
苦笑してみても彼女は釣られなかった。彼女の頬の輝石が仄かに石竹色に染まった。
・・・一寸苛め過ぎたか。
「狂ってなんていません。其も又視点です。」
「私自身の自己評価だぞ。」
「其は貴方が自分の視点すら捨てているからです。」
はっきり言うなぁ・・・。
勝手に知った気になって対等に話せると思うなよ、なんて声が耳奥からするけれども、今は其の声に蓋をした。
「じゃあ見てみるか?私の視点を。」
「?如何言う事ですか?」
「勧誘だ。私達と一緒に、次元龍屋に来てくれないか。」
「え・・・ええ!?わ、私なんかがですか!?私、抑前みたいに次元に行ったのも初めてなのに、力も大した事ないです。一寸格闘が、護身術程度に出来る丈ですよ。」
の割にはアティスレイに躊躇なく殺神蹴りを御見舞いさせていたけれどな。
「経験は今から幾らでも積んだら良い。御前には長年世界を見て来た其の目があるだろう。其に先みたいな事を言われたのは初めてだ。私には御前の力が必要だ。」
ロードは俯いて忙しなく視線を彷徨わせた。何度か口を開けては何も言わずに黙り込む。
「別に考えてくれていたら良い。御前も見て来た通り、危険な事ではあるし。・・・其に、私を大神に会わせてくれるんだろう。先に其方を片付けよう。」
若しかしたら戻って来られないかも知れないしな。
「あ、そ、然うですね。分かりました。考えて置きます。引き留めて済みません。では此方へ。」
セレに背を向け、ロードは何歩か歩みを進める。そしてちらっと丈彼女を見遣ると其の姿は掻き消えた。
波紋で何となく映ってはいる。此処に見えない壁の様な物があるのだ。
一つ息を付くとそっとセレは其の空間に足を踏み入れた。
中は全くの異空間だった。
真黔な闇が何処迄も続き、足元に薄い玻璃がある様だ。遠くで無数の蛍だか零星だかが瞬き、緩りと皆一様に自分達を軸に弧を描く。
まるで広大な宇宙の真っ只中の様。
「大神様、セレさんを連れて来ました。」
何も無い空間に向け、気持大き目の声をロードが上げる。
―有難うロード。面倒を掛ける。―
すると何処からか幾重にも重なった声が降って来た。青年の様な声だが、迚も落ち着いた緩りとした物で、印象は又変わって初老を彷彿させる。
「いえ、では私は此で。」
ロードはセレに眴せを送るとあっさりと空間を出て行ってしまう。
噫、独りにされてしまった。如何しよう。此の空間、何だか力が満ちている。屹度大神が作り出した空間なのだろう。つまりは其の神の手の上な訳で。
丗の神が最初に創り出した存在なんだし、敵うだとかそんな事は思っていなかったが、斯う絶望感が今更乍ら緊々とやって来る。
取り敢えず顔には出すまいと旻を見上げるとふらふらと小さな黔い球体が落ちて来るのが見えた。
萎んだ風船の様にゆらゆらと落ちる様は輪郭が曖昧で、掌程もある綿毛の様だ。
其を緩り波紋で辿っていると不図セレの目前で其は漂った。
―先ず病み上がりの所、御足労戴き、深く感謝する。私は大神だ。―
「噫初めまして。セレ・ハクリューだ。次元龍屋の店主をしている。」
綿毛と言うより何だか魂だとかが具現化したっぽい其から先と同じ声が発せられる。
想像は出来ていたので、一応挨拶は返した。
―成程な。如何して黔日夢の次元が起きたのかと思っていたが、貴方を見て確証を得た。―
「見た丈で分かるのか。」
矢っ張り黔日夢の次元か。まぁ大神ともなれば然うだよな。世界の神なのだから。
―丗を見て来たからな。其の懐かしきも新しき気配、恐らく同族の者なのだろう。自覚をすれば、だが。―
同族?・・・神と言う所がか?其とも別の括りでも何かあるのだろうか。
―ん、別に然う構えずとも良い。古い神と言われてももう力を殆ど失ってしまったからな。此の空間から出れば消滅してしまう程に。十一の魄に分かれてしまったからな。だから別に貴方を如何斯うする気は無い。只話をしてみたかった丈だ。此処は・・・何も無いからな。―
「暇潰しの為に大量殺害者と話すのか?愉快な神様だな。」
―・・・・・。―
何だかじっと見られている気がする。何もされないと分かって一寸口を滑らせてしまったか。
―・・・貴方は丗が嫌いか?―
「丗って此の世界がか?一寸大き過ぎて何とも言えないな。」
人は嫌いだけれど、龍族は好き。今迄色んな次元に行ったけれど、良い景色とかも沢山見れた。其の全てを統合してか?
・・・判断し兼ねる。
―若しも貴方が道を決めあぐねているのなら、丗を好きになりなさい。そして愛しなさい。―
「其は何の為だ?何の意味がある。」
然う命じられるのは、正直良い気がしない。世界を愛せだって?愛された事が無い自分が愛す訳ないじゃないか。
―然うすれば、貴方は自分を赦せる様になる。―
「でも私が其の世界を壊したんだぞ。そんな私が愛する?愛された所で世界が愛してくれる訳ないだろう。其ともより怒りを買った世界に殺される事で赦して貰えるとでも?」
意味が分からない。
そんな事に何の意味がある。自分が消えた方が世界が喜ぶに決まっている。自分は世界の害悪なのだから。要らないだろう、こんな存在。こんな醜くて不完全で、望マレナイ自分ナンテ、
噫、殺シタイ。
―でも、少なくともそんな辛そうな顔はせずに済む。―
「っ!?」
知らず下げ掛けていた顔を上げる。
視線の先では黔っぽい魂が浮いている丈だった。
―貴方は・・・変わっている。今は店をしているのだろう?次元を正す為の。でも貴方は丗を好いていないらしい。何方かと言うと憎んでいる気もするが・・・。神なのだから当然とも言えるが。如何して黔日夢の次元を途中で止めた。貴方は未だ壊し足りないのではないか?其とも力が足りないのか?貴方の理想を叶える力に未だ届かないか?―
「私は只、ガルダ達と一緒に居るのが楽しい丈だ。只、店迄止めてしまうと何か関係が変わってしまい然うだから其の儘続けた丈で。まぁ最近は仕事も楽しいな、とは思って来たけれども。」
―楽しい、か。例えば?―
「私の知らなかった景色を沢山見られる事だ。黔日夢の次元の時はそんなの、じっくり見ていられなかったし。・・・だから私自身、今後如何したいかはっきり分からないが。確かに何時か、又世界を壊したいと思うかも知れない。意図せず壊すかも知れない。今はそんな気が無いにしてもだ。だから保留中だ。・・・出来ればずっと此の儘が良いけれども。」
―ふむ、成程な。いや、質問攻めにして悪かった。私は別に貴方を憎んでいるとか、然う言う事はないのだ。只、独りで全てを抱えている様だから如何かと思ってな。其に大事な娘の就職先でもある。―
「娘って、ロードのか?」
―勿論。彼の子はずっと此処に居てくれた。本当はずっと外の世界へ行きたかったのに。私が独りになるからと。貴方の仕事は、正に彼の子の夢でもあろう。私に遠慮して行くのを拒むやも知れぬが、連れ出してやって欲しい。屹度危ない事も沢山あるだろう。私も何も手助け出来ない。でも彼の子はこんな所で、こんな老い耄れと共に朽ちる可きではないのだ。彼の子は随分と貴方を好いている様だしな。彼の子の好きに生きて欲しいのだ。―
「好いていたって、何か好かれる様な事したか?私が。」
そんな本当にずっと見ていたの?恐かったから敢えて其、聞かなかったのに。
―今迄見て来たのと別の動きをするから面白いと言っていたよ。屹度彼女の目には自分達とは別の世界が見えているんだって。だから貴方の隣に居られるならば、彼の子も喜ぶだろう。彼の子は、親の私が言うのも難だが、世間知らずではあるが、聖の遣い手としては申し分ない力を有している。如何か御願い出来ないだろうか。―
別の動きって、何か駒か何かみたいだなぁ・・・。噫でも前もそんな事言っていた気がする・・・。神視点って言うのかな。だったら確かに世間知らずと言うのは間違いないのかも知れない。
「仲間が増えるのは大歓迎だ。神手が全く足りていないからな。でも店主は私だぞ。・・・先もその、娘さんを傷付けてしまった訳だし。」
目が醒めた時には綺麗さっぱり治っていたし、服も替えがあったのか染み一つ無かったけれども。
―噫彼の時は本当に、久方振りに怒りと言うのを思い出した物だが・・・。―
「ご、御免なさい。」
思わず頭を下げた。矢張り怒ってらっしゃる。当然だよね、娘だもんね。次は気を付けます。
「ん、えっと、聞くのも難だが、娘と言うのは、実の娘なのか?ロードは巫女だと言っていたが。」
―然うだな。話して置いた方が良いかも知れんな。彼の子は本当の私の子ではない。生まれ乍らの神だ。次元の迫間にある何処ぞの村で生まれてな。躯中に輝石を埋め込まれて、私への供物として幼子の時に捧げられたのだ。もう随分と大昔の事だ。もう村もないであろう。其から私が引き取って此処で育てたのだ。彼の子は本当に良い子だ。親馬鹿だろうし、甘やかして来た事は自覚してはいるがな。―
本当にロードの事を愛しているんだろうな。多分家族ってこんな感じな気がする。羨ましいと思う半面、直ぐ妬んでしまう自分には到底追い付けない物だ。
―さて、話は其丈だ。来てくれてどうも有り難う。娘を宜しく御願いする。―
「噫、此方こそ。世話になったな。」
短く挨拶を交わして空間を出ると直ぐ近くでロードが突っ立っていた。
何か心配事でもあるのか偉く浮かない顔をしている。
目線が忙しなく地面や宙へと向けられている。自分が戻った事も気付いていないらしい。
「ロード、無事話も終わったし、一緒に行くぞ。」
「え?あ、え?一緒って、何処へですか?」
「店だ。大神から許可も貰った。此からも頼むぞロード。」
其を聞いてロードはぱっと表情を明るくさせた。でも又直ぐ視線を不安気に逸らしてしまう。そして、
「済みませんセレさん。私、一寸丈用事が出来たので此処で待って下さい!」
然う言い残してさっさと大神の所へ行ってしまった。大事な家族会議でもあるのだろう。此方も帰る準備をしよう。大方先悩んでいたのも其の事だろうし。
ん・・・何だ。奥にドレミとローズも居たのか。此の空間、変わった形をしているから中々掴み難いな。
まぁ声掛ける丈だし、直ぐ済むな。
「ドレミ、ローズ!用事も終わったし、そろそろ帰るぞ。」
「あ、セレちゃん!ねぇ此の華、見た?旻から華が降ってるの!」
―何だか不思議だよね。綺麗だし、良い匂するし。―
二柱は駆け寄って来ると嬉し然うに一寸飛び跳ねた。
「噫然うだな。其にしても、随分増えたな。」
旻の靄から続々と出ているが、もう少しで旻を覆い尽くし然うだ。
「昔姉ちゃんが、何処かに旻に咲く華があるって言ってたの。ドレミの名前、其処から取ったんだって。天の華の様に世界を移ろい、気高く美しくあれって。然う、神様からの贈り物だって。此処の事だったんだね。屹度ローちゃんが姉ちゃんに教えてくれたんだろうね。」
「然うだったのか。じゃあ今度からコフィーと言い直そうか?素敵な由来じゃないか。」
「い、いや良いよ良いよ。もうすっかりドレミで定着しちゃったし、彼方の名前は懐い出って事でね。」
「セレさん御待たせしました!行きましょう。準備万端です!」
突然空間が揺らいでロードが元気一杯に登場した。
此処、慣れないな。波紋が頼りにならない。不覚にも少し驚いてしまった。
「え、ローちゃんも付いて来るの?えへへ、宜しくねローちゃん。一緒に頑張ろうね!」
―聖遣いなんて心強いね。宜しく御願いします。―
「・・・凄く早かったな。気持は嬉しいけれど。」
てっきり彼の位の間だと大神とちらっと話す事しか出来ないと思っていたけれども。
「じ、実はもう荷作りしていたんです。でも中々決心が付かなくて、でも大神様も楽しんで御出でって言ってくれて、だから此から宜しく御願いします!セレさん、ドレミさん、ローズさん!」
「然うだな。宜しくロード。折角仲間になった訳だし、私は呼び捨てでも構わないぞ。仰々しいのは疲れる。」
「んん、其、ドレミも初日に言ったんだけどね。ギルドだと皆呼び捨てだよ。堅くならないで頑張ろうね、ローちゃん。」
「然う・・・ですね。何時迄もさん付けはいけないですよね。仲間、になったんだろから。」
にっこりと咲ったロードの頬がほんのり赤くなる。輝石も其に合わせてか絳く灯った。
「大神様!今迄有難う御座いました!私頑張りますから、見護ってて下さいね。」
振り返って大きく頭を下げたロードは一歩踏み出す。
一同の影が揺らいで店への道が開かれ、又閉じられた。
大神の宮処に静寂が戻った。
何処か物寂しさを孕みつつも暖かな凱風に包まれていた。
・・・・・
愛に育まれた女神は世界に触れてみた
此から此の世界に包まれて自分は如何なるのだろう
屹度不満も不幸も沢山知るだろう
彼の愛をもう一度と憖うだろう
でも其は罰ではない
其の頃には屹度自分は彼の古巣を狭く感じるだろうから
今は只、時が愛しい
然う思う自分が嬉しいのだ
御疲れ様です。やーっと出て来ました!筆者の御気に入り、アティスレイさん!(ロードさんはもう一寸待ってね。何時か語るから。)大好きな余りゲストとして出て貰いました。初ゲストが此の子だなんて何て皮肉なんでしょう。
「ハッハハ―!皆殺しだよ!」
オークレイジ―!ハッハッハ!早速狂っていますね重畳です。会話は出来そうにないですが続けましょう。はい、実は此の子が前ちらっと書いたんですが、自分の夢に出て来て、ネット投稿を嗾けた訳ですね。
死か書くかと言われれば勿論書きますとも。夢丈にリアル感がありましたし。
「感謝してるなら恩返しって事で一つ殺されてみろよ。好きなやり方選ばせてあげるから。」
ま、そんな訳で色々思い入れのあるアティスレイ・・・長いですね。打ち難いし、スレイさんの話をもう一寸丈。
「御前に侮辱する権利あるのか?一度真絳になれば頭冷ませるかもよ。」
元々スレイさんはシャドウと言うまんまネームでした。設定も良くある、主人公の裏的な物。でも其処から色々と話が加わって、「もう此裏とか影じゃないよ!」って事で改名しました。
まぁでも元々の設定も残っているので、狂っている丈で割と分かり易い事を言っていると思います。彼女は愚かな許りに(と言うより知能が無い。)嘘を付けません。可也率直な事を言っている訳です。繋げて行けば割と早く真相?真実に近付けると思います。
其の為ストーリーキラーでもあって扱い難いのが欠点。後今回で反省しましたが彼女が出ると筆者のテンションがおかしくなって著しく話が乱れますね。取り敢えず面倒臭くなる事は確かです。
「黙ってたら好きに言ってくれるよね本当。好きって言う割には落として来るし、さよならしようよ。私帰るの面倒だから御前が死ねよ。」
フフフ、あんなに暴れて灸を据えられたのに元気一杯ですね。次も其の調子で殺戮して下さい。今回非常に残念だったのは彼女が誰もやれなかった事です。一柱位良いかなっと思ったんですが、流石に其するとドレミ達、引いて逃げると思うんで今回は妄想と虫達で勘弁です。
抑此の話、ハイカーンもスレイもフォードも出て来ないのが元でした。だから草原でバトルしたのは本当は吟叫さんだったんですが、完全に出番喰われました。まさかの初登場でBGM担当です。可哀相に。
「仕方ないじゃん。私の方が絳くて華があるし。ってかそんなの居たんだったら殺せば良かったなぁ。」
BGM担当して然も殺されるとか又彼に神になれと言っているんですかね?とか言いつつ彼女も今はSE担当みたいになっているけれども。
「其はてめぇがずっとしかとしてっからだろうが!ゲストなのにSE扱いとか巫山戯んな。やっぱ手前殺してやる!喰い殺してやるからな!」
さーて、スレイさんがキレてしまったので此の辺で。矢っ張り彼女は使用を控えた方が良さそうですね。こんなに長くなっちゃって・・・。
次はもっと落ち着いたテンションで書けると思うので宜しく御願いします。
では又御縁がある事を。




