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夏は暑い

季節は夏。

外はギラギラ輝く太陽によって蒸され、セミ達は発情してワンパターンな愛の言葉を鳴き叫び、家のインターホンも鳴り響いている。

しかしそれは全て外での話だ。俺の部屋はエアコンにより室温は25度に保たれていて、扇風機も首を回しながら俺に心地よい風を与えてくれる。外から僅かに聞こえてくるセミの重奏も窓と壁を隔てたこちら側では大して苦にもならない。今ではちょっとしたBGMにでさえ思える。俺はそんな空間で3月に控えた高校受験の対策をしていた。俺の志望校はかなりレベルが高いため、この夏休みでどれだけ復習できるかにかかっている。

しかし、このすばらしい環境の中で1つ気になることがある。それは先程から約15分間ほど鳴り続けているピンポーンという、あの音だ。奴を入れたら勉強の邪魔になると思い、居留守をしようにもそろそろ限界だ。そして今もインターホンを鳴らし続けている彼女もそろそろ限界だろう。これ以上待たしたらヤバイかもしれない。

俺は自室を出て階段を駆け下り玄関の扉を開けた。



「や、やぁ」

そこにはかなり不機嫌な顔をした美しい女性がいた。

「・・・今の気温30度だって」


「へ、へぇ・・・、かなり暑いね」

背中に汗が流れるのが分かる。これは暑さのせい、だけではないだろう。

「どうして来たの?」

「・・・家のエアコンが壊れて動かないから」

そう言えばそんな話を聞いたことがあるようなないような。

「それは災難だね。風呂でも入る?すごい汗だよ」

彼女の頬から鎖骨にかけて雫が流れている。正直これはエロい。目のやり場に困る。

「えぇ、誰かさんのせいでね。このままだと気持ち悪いからお言葉に甘えるわ。」

「着替えは俺の貸すよ。後で持って行っとく」

「わかった」

彼女はそう言って家に入ってきた。

履いてきたサンダルを揃えて風呂場へ向かう黒髪のかかった背中に語りかける。

「あや姉」

彼女は振り向く。

「なに?」

「ごめん」

「別にいいわよ、タケ」

ふわりと微笑んで彼女は風呂場へ入っていった。






あや姉と俺は所謂幼なじみって奴だ。歳は向こうが一個上だが親同士が親友だったとかで家も近く、物心つく前からの付き合いだ。俺が中3、あや姉が高1になった今でもこうして向こうが勝手に連絡もなしにやってくるため、交流はなくならない。正直あや姉は俺の好きな人でもあって、家で2人きりとなると色々考えてしまって気まずい。ただでさえ10人が10人美人と言うほどの容姿をしているのに危機管理がちゃんとしてないのではないかと不安になる時もある。そして俺のことをただの弟みたいなものとしか思ってないのではないかと凹んだりもする。


少し大きいと思ったがちょうど良さげなのが無かったので庭に干してあったTシャツと短パンを貸すことにした。下着は女性物は母親のしかないので、しょうがないので今日つけてきたもので我慢してもらおうと思う。

着替えを持って風呂場に入った。当然といえば当然だがシャワーの音が聞こえてきて、焦ってしまう。挙動不審になってしまい、キョロキョロすると次はあや姉の脱いだやつが目に入ってしまった。

「グフッ」

思わず吹き出してしまった。

「タケ?どうしたの?」

さっきの声が聞こえたのだろう、あや姉が聞いてきた。

「いや、何でもない。着替えおいとくから」

俺はそう言って風呂場をでた。






ふぅ、焦ったぁ。

自室に戻り心を落ちつける。

しかしどうしてもチラリと見えた彼女の白い下着を思い出してしまう。俺はそのたびに頭を振り、数学の問題にとりかかる。

何回それを繰り返しただろうか、時計を見れば自室に戻ってきてから既に30分が経過していた。

「ふぅ、さっぱりしたぁ」

戸が開くとともにそんな声が聞こえたのはその時だった。

「って何だその格好」

あや姉は俺の貸したTシャツのみを着用していた。

かろうじてパンツは見えたかったが・・・

「短パンはどうした」

「ん~と、あれ大きかったから履かなかった。」

彼女はあっけらかんと言う。

「おいおい、パンツ見えても知らないよ?」

俺はからかうようにそう言う。



「ん?パンツは見えないと思うよ。履いてないから」






・・・・・・・・・・・・


 




「な!」

俺が言葉を失ったのは言うまでもない。

「ふふっ」

彼女はニヤリと笑って近づいてきた。

そして俺の耳元で




「嘘だよ。ま、ブラはしてないけどね」

そう言ってイタズラが成功した子供のような笑顔を作り俺のベットにボスっと座った。

その瞬間彼女の両ももの間だから風呂場でみたやつと同じ白い物が見えた。



「あ、ホントだ」

俺がそう言ったのは無意識だった。



「・・・えっち」

彼女は顔を真っ赤にして呟く。

あや姉は自分からしかけるのは良いが、不意に何かされると駄目なのだ。2人の間に沈黙が流れる。俺は勉強していたので、そのままとりかかってもいいのだがえっちと言われたまま、それにうつるのもどうかと思い、話題を出す。


「たく、思春期の男の部屋に来るとか大丈夫なのかよ。しかもそんな格好で。彼氏とかいるんじゃないの?」


「・・・そんなのいないもん。」

これは話題選択をミスりましたねぇ、はい。

さっきよりも重い空気が流れる。



「そ、そか。俺あや姉の所の高校目指してるから、今勉強大変なんだよね。だから相手出来ないよ。」


「え?うちの高校目指すの?」

重い空気が何故か一瞬にして明るいものとなった。

キョトンとした感じできいてくる。


あ、やべ。これ言ったらいけなかった。

入学してから驚かそうと思ってたのに。

失敗だ。


「ま、まぁね。合格するかどうか分かんないけど」


「へぇ、そっかぁ。うん、頑張って。分かんないところあったら私にきいてもいいよ。」


あや姉はそう言って自分の胸をたたいて鼻歌をし始めた。

正直言って、それは邪魔だった。










それから何分たったのだろう。

俺はカリカリ数学をやり、あや姉はさき程まで扇風機を自分の方に向けベッドの上で漫画を読んでいたのだが、今は寝ているようだ。かわいい寝息が耳に入ってくる。

俺も気分転換をしようと思い、勉強机から離れる。

するとあや姉が目に入ってきてしまった。


ベッドの上で気持ちよさそうに、上を向いて寝ている。目のやり場に困ることに、Tシャツがめくれてパンツが見えてしまっている。

これはまずい。絶対このままだと勉強に戻ってもこれが気になってそれどころではなくなってしまう。

本当邪魔しかしないな・・・



俺は応急処置としてタオルケットを掛けた。

「ぅん~」

あや姉がそんな声を出す。

起きたかと思い顔に視線を向ける。

どうやら起きてはいないようだ。

勉強の邪魔しやがって。

安眠の邪魔したる。

俺は仕返しのつもりであや姉の頬をツンと人差し指でつつく。

彼女は起きる気配がないので、何回もツンツンとしてやる。


そろそろキツいぞ。

惚れた女の無防備な姿を見て何もしないでいられる男はどこかにいるのだろうか。

言い訳をするとこんな感じだ。

俺は彼女の綺麗なピンク色の唇に自分のそれを重ねてしまっていた。触れるだけ、1秒にも満たないキスだったが確かに温もりと柔らかさを感じた。

年頃の男なんだ、しょうがない。あや姉がこんな格好で寝ているのが悪い。一瞬だったしそこまで気にする必要もないはずだ。無防備に寝ている女性の唇を奪った罪悪感よりも次々にそんな言い訳が生まれる。


「・・・好きなんだから、しょうがないじゃん。」

無意識の内にそう声に出していたようだ。

口に出してしまったと気づいた時は焦ったが、よく考えればあや姉は今寝ているんだし大丈夫だろうと開き直った。



どうせだし、もう1回、しようかな・・・



そんな失礼極まりないことを思ってしまった矢先、あることに気づく。




彼女の、あや姉の顔が真っ赤なのだ。

いっもの7割増しぐらいに。






まさか







「あ、あや姉、起きてるの?」

恐る恐るそう問いかける。

どうか本当に寝ていることを祈る。



「・・・うん」



終わった



「え、っと、えとえと、、その」

どもる俺。


「いつから?」



「・・・ぇっと、ツンツンされた時から?」



俺の初恋終わったな。

寝ている隙にキスする最低男なんて。

「・・・ごめん」

とりあえず、謝る。



「・・・責任、取って」

変わらず真っ赤な顔をしたあや姉がそんな事を言う。



「せ、責任、とわ?」

まさか一生パシリとか?

うーん、それはそれで・・・ってんな訳あるか!


俺の頭の中はめちゃくちゃだった。


「えっとね、その、ファ一ストキス、だったの。」

彼女の目には涙がたまっていた。

俺はそれを見て、今更ながらに自分のした失態のことの大きさに気づく。胸が苦しい。


「だからね、その、」


俺は次の言葉を待つ。










「・・・お嫁さんにして」






は?






「キャー!言っちゃったぁ!どうしよおー!」




何か騒いでるあや姉とよく話が分からない俺。

寝込みキスして、責任とれと言われて?




お嫁さんにして?






お嫁さんってあのお嫁さん?



「はあぁぁあ?」

俺は発狂していた。


「ど、どうしたの?」


「あ、あや姉?今何て?」



「ん?だから、その、お嫁さんにしてって、きゃっ」

そう言って手で顔を覆うあや姉。



「はあぁぁあ?」

もう一度発狂。


「ちょっ、だからなに?」



「いやいやそっちこそ。意味分かって言ってる?」


「・・・うん。私とタケが、結婚するってことでしょ?」


「それが責任ってどういうこと?」

「・・・私を幸せにしてってこと」

顔を赤らめて言うあや姉。



「寝込みキスするような最低男だよ?」

「・・・すごいドキドキしたよ」

顔を赤らめて言うあや姉。



「何より、好きでもない男といいの?」

「・・・私、タケのこと好きだったよ、ずっと」

顔を赤らめて言うあや姉。



「俺らまだ15、16で先のことなんか分かんないよ?」

「・・・私は、ずっとタケのこと好きだよ」

顔を赤らめて言うあや姉。



「タケは?先の言葉、本当なの?」



あぁ本当に可愛い。

そんな風に言われて、違うといえるもんか。






「俺もあや姉のこと好きだよ。多分、ずっと・・・」

今度こそ、ちゃんと告白をする。


「多分?」

不安げに尋ねてくるあや姉。







「いや、絶対、わっ」





急にあや姉に手を引っ張られ、ベッドに引き寄せられた。

あや姉の上に重なる。

動悸が更に早くなる。

それと同じぐらいのテンポで打つもう一つの脈も感じる。

「あや姉、大丈夫?」

俺はすぐあや姉の横に身をうつし問う。


「うん」


そう言って今度はあや姉が俺の上に重なってきた。




「タケ、大好き」



「俺も、大好き」





キスを交わす。



1回目より長く。









「タケ」





「うん?」





「暑いね」





「だね」

























読んでいただきありがとうございました。

感想をいただければ嬉しいです。

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