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ツンデレ? 後編

高2、2日目。

支度も整い家を出るとそこには1人の美少女がいた。

短いスカートから伸びる長い脚は白く、肩下15cm程の黒い髪は朝日によく映えていた。

「おぉ、水島」

目が合ったのでその美少女に声をかける。

が、返事を返されることなく彼女は自転車を走らせていってしまった。立ち漕ぎだったためスカートの中の薄いピンクが見えてしまったのは、事故であり、生涯誰かに話す事もないだろう。




「はよ」

既に登校していた聡に声をかける。

「おぉ、純。話に聞くと昨日の放課後は水島さんと2人っきりだったんだって?羨ましい限りだな」

ニヤついた顔でそう言ってきた。

「変わってやっても、いいんだぞ?」

睨みつける。

「あ、ええと、今日はいい天気だなー」





「出席番号5番小野です」

「ん~と、176cm」

「ありがとうございました」

今日は毎年のことだが身体測定と新体力テストが同時に行われた。身長は去年と比べると1cm程しか伸びてなかったが、まぁいいだろう。平均以下だった小学時代を思えばよく成長したものだと感慨深いものがある。



「純、体力テストの結果勝負しようぜ」

一通りやり終え教室に戻った所バカが来た。

「あぁ、いいぞ」

「実は今年俺頑張ったから自信あるぞ」

聡はそう言って記録用紙を渡してきた。

俺もそれを受け取りながら渡す。

俺は部活に入ってないがそこそこ運動ができると自負している。というのも、ある出来事を境に俺は生まれ変わった。というのは言い過ぎだが、変わろうと努力してきた。小学の頃から最低90分は勉強したし、毎朝走りこみもした。何より身長を伸ばすため、牛乳子魚は勿論、鉄棒まで親に無理いって用意した。その後、ぶら下がるのは身長伸ばすのに効果がないと知った時の失望感は今となっては、やっぱり良い思い出ではないな。


「ぐあー、負けたぁ。どれも勝ててないよ。お前これで運動部入ってないとか、宝の持ち腐れだろ。才能分けろ。」

「これは俺の少年時代の汗と涙と涙の結晶だ。分けられるか」

「何の為にそこまでやったんだよ」

何の為って・・・そりゃぁ


俺は不覚にもその時水島の方を見てしまった。

まだほんのり汗をかいていたようで首筋に制汗剤をぬっている姿はとても妖艶であった。

あ、

視線を感じたのか、向こうもこちらを見てきた。

一瞬目があってしまいすぐそらす。しかし相手の反応が気になってしまい、また視線を向ける。するとまだ向こうはこちらを見ていたようで、再び目が合ってしまった。そして今度は向こうが慌てたように目をそらす。


「ははぁん」

聡がすべてを悟ったかのように目をいやらしく細めていた。

「女子にモテる為か。んで今は水島狙いとか?」

「んなわけねぇだろ」

「本当か?」

そんなわけない、今更。








昼、俺は校舎裏に来ていた。

右手に手紙を持って。

テストが終わりグラウンドから戻ってきて下駄箱を見るとこの1枚の手紙が入っていた。そこには昼に校舎裏に来て欲しいという旨が書いてあった。こういうことは初めてではない。だからこれから起こることは想像に難しくない。おそらく告白だろう。

少し遅れて1人の女子生徒がやって来た。

初めて見る。

「小野君、好きです。付き合って下さい。」

彼女は顔を真っ赤に染めて告げてきた。



「ごめん」




彼女が去ってしばらくして、俺も戻る道の途中、ある光景が目に入ってきた。

行為自体は大したことない。俺もさっき経験した告白というやつだ。問題は相手だ。

水島がそこにいたのだ。もう1人はプレイボーイで有名な先輩だった。状況から察するに告ってるのは先輩の方だろう。二人は俺に気付くそぶりはない。

すると突如先輩が水島の手首を掴んだ。水島は抵抗しているようだがふりほどけないらしい。


「先輩はなしてやって下さい」

俺は気づくと2人のそばに駆け寄ってそんなことを言っていた。

「お前誰だ」

先輩ががんを飛ばしてくる。

俺は何を言うでもなく睨み返す。

「チッ、悪かったよ」

先輩は分が悪いと思ったのかそう言って去った。



「・・・あり、がと、う」

水島は泣きながらそう言った。

よほど怖かったのだろう、目は真っ赤になって、顔も涙でぐしゃぐしゃになっていた。

「たく、沢山恋をするんじゃなかったのかよ。今日はもう帰れ。先生には伝えとく。荷物も俺が持って帰ってやる。学級会の内容についてはそん時でいいだろ。」

「うん・・・ありがと」



水島が自転車に乗って校門を抜けるのを見送ってから俺は教室に戻った。













あぁこの家に入るの何年ぶりだろ。

おばさんとはたまに家に来るから会ってるけど・・・

少し緊張した面もちでインターホンを押す。

とすぐに水島の母親がやって来た。

「いらっしゃい。待ってたわよ。今日はお世話になったみたいね」

「えっと香澄さんは」

「やっだぁ、香澄さんなんて他人行儀な言い方。昔みたいに澄ちゃんて呼んだら?今香澄はお風呂入ってるから部屋でまってて。場所は変わってないから分かるでしょ?」

「い、いやリビングで待ってたいんですけど」

女子の部屋なんて1人で入ったらいけないだろ。

「いいからいから」


結局水島の部屋で待つことになった。

恐る恐るドアをあける。

悪いことをしてるわけじゃないが、何故か忍び足になってしまう。

部屋に入った刹那、俺は固まってしまった。


あのくそばばぁ騙したな。


よく考えればおかしな話だったんだ。

家に行くことほ水島に伝えてあった。同級生が来るのに年頃の女子は風呂にはいるだろうか、否だ。


水島はベッドの上で心地よさげに眠っていた。学校でアイドルと呼ばれている姿でもなく、俺に暴言を吐く彼女でもない。そこには生まれたてのような、素直な寝顔があった。可愛い。



さて、どうするか。

このまま起こすのも悪い気がするし、かと言って寝顔を見るのも嫌がるだろう。


とりあえず水島から目をそらし、勉強机に目を向けた所、1つの写真が目に入った。

これって確か。その写真には俺も覚えがあった。それを手にとって見る。そこには小学校入学式の時の俺と水島が映っていた。

・・・俺のこと忘れるんじゃなかったのかよ。




「じゅん、くん」

突如後ろからそんな声がしてきた。

「は、はい!」

条件反射でつい大きな声が出てしまった。

「な、なに!?」

ガバッと飛び起きる水島の姿がそこにあった。

もしかしてさっきのは寝言だったのか?

「な、なんで純がここに!ていうか、そ、それ・・・」

水島は俺の手にある写真を指さす。

「わ、ごめん」

俺はすぐにそれを元あった場所に戻す。



「あぁ、もう最悪」

真っ赤な顔の水島がそこにいた。

「ご、ごめん」







「・・・笑えばいいじゃない」

「え?」

「アンタのこと好きだったのに、大好きだったのにあの日、凄く嬉しかったのに、素直になれなかった私を!アンタのこと忘れるっていったのにいつまでも忘れられない私を!たくさん恋するって言ったのにアンタにしかときめけない私を、再会してかっこよくなってたアンタに今更ときめいちゃう私を、アンタのことが好きすぎてちゃんと笑い合いたりのに素直になれなくてツンツンしちゃう私を、登校時間昨日みたいに一緒に並べたらなと思ってアンタに時間を合わせた私を、でもやっぱり恥ずかしくてせっかく挨拶してくれたのに無視しちゃう私を、先輩に襲われそうになって怖かったのにアンタが助けてくれて嬉しくなっちゃう私を!」

「笑えばいいわ。あの日アンタにあんなこと言ったんだもん。こんな重い私を笑う権利がアンタにはあるわ!」

彼女は一気にまくし立てた。

既にまた彼女の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。



気づけば俺は彼女を抱き締めていた。

「笑えるかょ。知ってるか?俺お前に言われたことショックであれから毎日すげぇ努力したんだぜ?そん時は悔しかったからだけど今考えてみるとあれはお前にまた会った時の為だったんだ。あん時からまだ俺、お前のこと忘れられてないんだぜ?今それが分かった。それに担任がお前を見て顔を染めた時ムカついたし、お前と目があうと息がつまるし、先輩に襲われそうになった時なんかなりふり構わず飛び出してたし、今もお前を抱き締めてて心臓が破裂しそうだ。俺も充分重いよ。まだお前のことが好きで好きでたまらないんだから」


「私重いよ?素直じゃないよ?嫉妬深いよ?」

「俺も同じだよ。それでもいいなら、その、」

次の言葉を言うため、俺は息をすう。

「付き合ってくれ。この先一生。ずっと一緒にいたい」

「・・・うん、いいよ。一緒にいてあげる。」

ここまできて素直になりきれていない彼女をどこまでも愛おしいと思ったひと時だった。















「えぇっと、すみません。今日は学級会なんですけど、内容決めてませんでした。」

俺はクラスの皆に頭を下げる。

「いいよ。どうせ彼女とラブラブしててそれどころじゃなかったんだろ?見たぜ今日の朝。一緒に登校してるの。」


ボン


隣からそんな音が聞こえた。

隣をみると顔を真っ赤にした香澄がいた。


アハハ

聡の言葉にクラスが湧く。



すると先よりも顔を赤くした香澄がこちらを向く。

俺はそんな可愛い彼女が見れたということで今回の聡の発言は見逃してやってもいいかと思った。




そんな幸せに包まれた高2の春であった。






最後まで読んでいただきありがとうございました。

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