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ツンデレ? 前編

テスト週間に入って、暇になったので投稿します。

駄文ですが暇つぶしになれば嬉しいです。

「本当に引っ越しするんだね」

引っ越し業者が忙しなく車に荷物を運んでいる脇、周りとは一変穏やかな空間に僕達は包まれていた。

「・・・そうね」

彼女は既に赤みのかかった空を見ながらポツリと言う。

「僕、待ってるよ。いつかまた会える日を。」

「君の事が好きだから」

僕は数年間、物心ついた頃から無意識のうちに抱えていた想いをそう伝えた。


彼女は依然空を眺めたままだ。

それから、数分、といってもそれ以下かもしれないが取り合えず時間の感覚が麻痺した状態が続いた後、ようやく彼女はゆっくりと視線を僕に合わした。







「・・・それ、重いからやめて」


「アンタみたいに、チビで、バカな奴に待っててもらっても、迷惑なだけだから。私、向こうではアンタのこと忘れて沢山恋する予定だから、アンタも私のことなんか忘れた方が良いわよ。」


「じゃあね。お元気で」



彼女はそう言って忙しない空間に入っていった。

そして、僕は独り、この静かすぎる空間に漂流していた。




小3の3月、僕は最後にものすごい傷を負って年度をおさめた。







--------



「はよっす」

昇降口前、生徒達が群がって数枚の紙の中から自分の名前を探している中に、例外なく混じっていた知った顔の奴の肩をたたき挨拶をした。


「おお、純。お前何組だった?」

「いや、今から探す所」

「そうか、また一緒になれるといいな」

「だな」


今日は4月の初め、どこの学校でも今の光景が繰り広げられているだろう。俺は2年のどのクラスになるか探していた。


「おい、純。あったぞ!」

さっきの奴が再び声を掛けてきた。


「5組だった。また同じだぞ」

通称バカな男、田中聡がどうやら俺の名前、小野純を探してくれたようだ。


「ん?純、何か失礼なこと考えたか?」

「いや、別に?なんで?」

「いや、何となくだ」


勘は鋭いのが聡の特徴だ。


「おぉ学校のアイドル水島香澄も同じクラスじゃないか。これは、この1年間楽しくなりそうだ。」

な、バカだろ?

しかし、水島香澄って言うと・・・

まぁいいや、俺には関係ない






俺はたった今、民主主義の理不尽さを痛感している。

「行き届かない点も多々あると思いますが、このクラスが少しでも楽しくなるように頑張りたいと思います。」

クラスから拍手が起きる。

「おぉ流石学校のアイドル。水島は良いこと言うな」

そんな良いこと言ったか?過大評価しすぎだろ。

「ちょっと、先生やめて下さい」

隣に立っている女孑が少し照れたようにしている。

そしてそれに釣られてクラス全員、老若男女(老は1人しかいなく、更に言えばそんなに年でもないが)問わず頬赤らめている。

1人を除けば。

「ほんじゃ次、男子学級委員の小野、初心表明しろ」


「よ、待ってました。色男」

ある男子生徒がそう言うとクラスが湧いた。

例外で頬を真っ青にしていた俺はとりあえず、事の元凶である田中聡という男子生徒をにらみ殺した。



時は数分前に遡る。

クラスは学級委員を決めていた。

女子は男女問わず人気のある学校のアイドルこと水島香澄が勤めることになった。

問題は男子だ。立候補者が現れなかったので推薦という形になった。俺はこれはもしやおもしろいことになるぞと思い、田中の名前を出そうと手を挙げようとした刹那、俺の名前が呼ばれた。俺が呼ぼとうしてた男のロから。

「ほぉ、理由は?」

担任が問う

「女子の方がとてつもなく可愛いので、ここはイケメンの小野くんじゃないと釣り合わないと思ったからです。」


クラスがどっと湧く。

聡はと言うと、してやったりとこちらを向いてきやがった。

こっからは話は早かった。学級委員が俺であることに異論がある奴はいるかと担任が確認した所手が挙がったのは俺1人だった。少数意見の尊重とかいいながら、俺の言い分を聞くことなく、今年度の2年5組の学級委員は決定した。民主主義なんて結局多数決なんだ、くそ。



そして今、初心表明とやらをせねばならぬらしい。

「え~、水島さんと同じです。はい」

出来るだけ簡単に済ます方法を思案した所、こう言うのが一番だと判断した。


「駄目。もっと崇高なこと言えー」

いつの間にか蘇生したらしい聡がちゃちゃをいれる。


「黙れ、元凶。お前が苦しむようなクラスにしてやる」

「それは勘弁」

「やだね、俺の安寧をぶっ壊した責任、身を持って償え」


「うーし、夫婦漫才はそこまでにして他の委員決めるぞお」


「「誰が夫婦じゃ、変態くそ親父。いち女生徒に顔染めやがって」」

担任の制止にハモって反撃した俺達に、新学期早々お怒りが落ちたのは有名な話である。










夕方、俺は水島と二人きり夕焼けの差し込む教室で向かい合って座り、今度ある学級会の内容を考えていた。この学校は月に1度学級会という物を開き、クラスの親睦を深める。そしてその会の内容を決めるのは学級委員らしい。今日知った。


「何する?明後日だろ?今日中に内容だけでも決めとかないとな」

彼女が窓の外を見ているばかりで、話が進まないのでそう切り出した。


「アンタなんで私にそんなに馴れ馴れしく話しかけてんのよ」

予想外の反応に一瞬思考が飛んだが何とか言葉を返す

「別にいいじゃん。クラスメイトなんだし。敬語で話せっての?てか、水島さんって誰にでも優しく接するって聞いてたんだけど、猫かぶってたの?」


「・・・うるさい」

しまった。これじゃぁ話が進まない。

「わりぃ、言い過ぎた」









結局話が進まず今日はお開きとなった。

自転車に乗って通い慣れた道を進み家に向かう。

途中で信号に引っかかってしまい、停止する。

家に向かっているのか、外出先に向かっているのか、沢山車が行き交うのをぼんやりと見ていた。


「・・・最悪」

突如そんな台詞が後方からしてきた。

後ろに振り返るとそこには赤い自転車にまたがっている水島がいた。スカートが短いため中身が見えそうになっている。男の性かついそこに目を向けてしまったが最後、気づいた時には時既に遅しだった。

「・・・最低」


「な、なにがだよ」

言い逃れが出来ないのは分かっているのについとぼけてしまう。


「はぁ、何でアンタがここにいるのよ」

「しょうがないだろ、家がこっちなんだから」

「本当最悪」

「そんなに言う必要ないだろ」

「ガアガヤ騒がないで、うるさいから」

信号が青になって、お互いに自転車を漕ぎ始めてもこの言い争いは終わらなかった。


そしてこの言い争いはお互いの家につくまで続いた。

学校から見て1つ手前の家が俺の家でその隣が水島の家だ。

ついでに言うと、水島は中3の3月の下旬ごろ、再び俺の家の隣で暮らすことになった、疎遠なっていた幼なじみで俺の初恋の相手で、更に言えば少年の純心を完膚なきまでにぶっ壊した張本人でもある。今となっては本日、約8年ぶりに話した程縁の切れていた奴だが。

まぁ、これからは何かと付き合いもあるだろうが、出来ることなら余り関わりたくなかった。



「じゃあな」

下校を共にした好として別れ際にそう告げた。

ま、返事など返ってこないだろうがな。

「・・・うん」



人の行動は読めない。

だから面白くもあり、怖くもある。

そんなことをふと思った高2の春であった。





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