第三話-これってどうなのよ?-
「いやだーたすけてくれー。」
俺は妹の華琳に引きずられて町に連れてこられた。
嫌だと言うが妹と一緒にいられて嬉しいのは内緒である。
「だめよ。涼を弟として歳相応に見せないといけないじゃない。そうなると服がいるわ。」
そう言って華琳は成人用の服から子供服まで揃えた汎用的な服屋の入り口に立つ。
「いや、俺の今の服でも十分に子供に見えるって。」
「涼の服は…あれは…なんて言うか子供に見えないのよ。」
華琳は俺の普段の姿を思い出しながらもうまく言葉にできないようで、詰まりながら曖昧な答えを返す。
俺が普段着てる服は普通のTシャツとジーパン、Tシャツの上からはもう一枚薄いシャツを着けている。
今の時期は暑くて半袖のシャツのボタンさえ閉める気にならない。
「そうか?そこらの小学生でもこんな服装するだろう?」
確か近くの公園でこんな服装をした小学生ぐらいの少年が遊んでいた気がする。
「う~ん。なんていうか、振る舞いが大人っぽいからそれをカモフラージュする為にも、もっと幼い感じの服にしないと…いけないと思う…うん。」
華琳は途中から自信がなくなったようにはぐらかしていく。
華琳は確信できないことは答えられない性格だ。
それゆえ嘘がつけない。
今の答えの自信がないところはおそらくカモフラージュする為あたりだろうか?
そこに言葉がかかったところから急に声が小さくなっていった。
「華琳、別に俺がその友達の前だけで幼く、弟のように振る舞えばいいんじゃないのか?」
正直、無駄にお金を使って子供用の服なんて買わなくても、…不本意だが!十分幼く見せる事ができるだろう。
「そうね…でも、それだけじゃ私の気がすまない!」
えぇ!?俺って華琳にそんな気を持たれるような事したっけ?
「…華琳、俺って何かお前にしたっけ?」
「…知らない。」
華琳はむすっとそっぽを向いてさっさと店へ入ってしまった。
うーん、心あたり何にもないんだけどなー。
おそらくだが、華琳が怒っている理由はあのテストの勝負の理由と同じだろう。
完全に当てずっぽうで、信憑性もないが、俺の妹センサーが微弱に反応を示している。
こいつは根が深いかもしれん、とな。
一通り頭の中で独白を呟いてみたりしたが、人に聞かせられるものじゃないな。
妹センサーって何だよ。
こういうのは口に出しては絶対にだめだな。
店の中に入ると彩鮮やかな服がところ狭しと並んでいる。
まぁ、普通の服屋だな、彩がない服が並んだ店って潰れるだけだろうな…。
店内では今流行りのJ-POPのメロディが流れている。
音量なんてものは気にならないレベルのものであるし、メロディも単調なものにアレンジされている。この店で主たるのは服であり、服選びの為にはこの程度の音量と単調さがベストなのだろう。
「…涼、遅いわよ。」
無駄に考え事をして店に入るのが遅れたせいか、棘のある口調でこちらに話をかけてくる華琳。
遅れたと言っても10秒程なんだがな、せっかちな妹である。
「ちょっと遅れたぐらいでカリカリするなよ、もっと背が伸びるぞ。」
「私がカリカリするのと背が伸びるのは関係ないでしょ!」
華琳は身長の高い自分があまり好きではない、と前に華琳から直接愚痴られたことがある。
なんでも、会う人全てに"でかっ!?"と言われてしまい、それがタンスの角に足の小指をぶつけるがごとく地味に効いてるらしい。
俺は身長の高い女の子の方が好きなんだがな。
いや、逆に妹達が好きだから身長の高い女の子が好きと言っても過言ではない。
だがこれは胸に秘めた思いであり、絶対に口に出してはいけない。
シスコンだと妹に悟られれば自然と避けられてしまうような気がする。
アニメやライトノベルで妹がお兄ちゃんっ子という設定があるがそんなことはあちらの世界のことであり、現実はとても厳しく非情である…。
仮に妹達が俺の事を好きだと言っても簡単にうなずいてはいけない。
そう、罠の可能性を疑わなければいけない。
妹達は常に俺の隙を狙い、その鋭い眼光がぎらつかせている。
簡単にエサに引っかかり、罠に捕らわれた獲物の俺は猫のように気まぐれな妹達に一生弄ばれるに違いない。
…弄ばれるのはいい、いいとする。
一番怖いのは今の関係が壊れ修復不可能となった時だ。
"うわっ、きもっ正直引くわー、これから半径1メートル以内に近づかないでね、涼。"
"…それはないです…お兄ちゃん。首にロープをかけてクリスマスツリーにでもぶら下がっててください。"
こんなことを言われてはもう生きていけない…。
まぁ、妹達との関係はこのままでも十分いいのでそれ以上を望むのは必要ないことだろう。
「まあまあ、落ち着けよ。俺は身長高い子の方が好きだぜ。」
「え!あ、…その、あう…。」
華琳は身長高い方がいいと言われたのが意外だったのか予想外にうろたえている。
「一般的な男性は背の小さいの女子が好きとか言うがな。」
「…いいのよ、私は一般受けしなくても…その好きな人だけに…、……。」
最後の方は声が小さくなり過ぎて聞こえなかったが、おそらく好きな人だけに好きになってもらえれば良い的な感じだろう。
華琳が好きなやつのことは気になるが、兄としてその男を見定めることが俺の役目だろう。
変なやつだったら意地でも別れさせてやる。
「さて、そろそろ服選ぼうぜ。ここまで来て立ち話ばっかりしても意味がないし、買わなきゃ散歩に行っただけになっちまう。」
「そうね…、話が長くなったのは涼の所為だと思うけど気にしないでおくわ。」
少し上から目線で喋る華琳は見栄を張っているようで逆に幼く見えた。
物語りとは都合がよくないとうまく進まないものです。
読専だった時は、
「何これ、都合良すぎだろ。萎えるわ~。」
と思ったことが多々ありました。
ですが、いざ書く側に回ってみると、
「こ、これは、話が全く進まない…。」
となることが多々あり、都合がいいように話の道筋を立ててしまいます。
いくら、現実味がなくてもその道しかない時があるのだなと思いました。
妹がお兄ちゃんを好きな物語りのように、まず妹がお兄ちゃんを好きという前提がないと妹萌えは始まらない気がします。
長年一緒にいた妹が今更兄の事を好きになっていくなんて現実味がないですし、急に好きになる方が都合がいいような気がします。
どっちにしても、物語りにはルートがあり、それをどのように進むかは作者の腕次第なんでしょう。
まるで終着点が一緒の阿弥陀くじのようですね。
…少し違うか。