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姉弟関係  作者: 瀬名孝太
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第一話-原因がどうのこうの-

 あれは1週間程前の事である…。って、よく考えれば一週間程度ならちゃんと覚えている。

5日前だ。

俺はいつも通り部屋の中でゲームをしていた。

いつも通りというのは友達である浅田勇次郎からゲームを頻繁に進められる。

あいつは家庭用テレビゲームから店置きのパチスロまで持っている。

生粋の遊び(ゲームに限る。)人だ。今回はシュミレーションRPGを進めてきた。

頭を使うゲームは好きな方なので喜んで借りたんだが…、まさか爆発物の軌道をシュミレーションし敵を撃破するゲームだとは思わなかった…。

需要あるのかこのゲーム。

 そんな感じで戦車にRPGをぶつけて爆発させていると。

「涼ー、入るよー。」

 妹の華琳(かりん)がノックもせずに入ってきた。

一つ下の兄妹で、昔は一緒のベッドでも寝たことがあるのだ。

プライバシーなんてあってないようなものである。

「人の部屋に入る前にはノックぐらいするのが常識だろ、華琳。」

 一応、言ってみるが…効果はないだろう。

「いつもの事じゃん、何を今更。」

 華琳は呆れたような顔でこっちを見る。

本当に今更な事なので仕方ないか。

「そうだな。いつもの事だ。で、何か用か?」

 華琳は用もなしに俺の部屋などにはやってこない。

もう昔とは違い、そんなお年頃なのだ。

「涼…いや、お兄ちゃん!私と決闘だ!」

 お兄ちゃんか懐かしい響きだ。

いつからか名前を呼び捨てにされるのがデフォルトになっていたな…、とはいえ、露骨に喜ぶのも癪だな。

それに、妹の前でシスコンとか引かれるの必至なのでやってられん。

「え、急にお兄ちゃんとか頭が…あれほど道に落ちているものを食べるなと言ったのに…。」

「喰ってねぇしっ!」

 我妹ながら素晴らしい突っ込みだ。

「え?じゃあ、頭打った?お前頑丈そうなのに大丈夫?」

「そんなにお兄ちゃんと呼ばれるのが嫌か!」

 もっと呼んでください!お願いします!とは口が裂けても言えないな。

「いや、珍しいからなお前が俺をそんな風に呼ぶのは。…で、決闘?暴力なら遠慮しておく。お前には勝てん。」

 俺の家族は格闘派でね。

父さんは空手、母さんは合気道。華琳は空手かな?いや、合気道もかじってるか。

俺は一応、父さんと母さんから習ってみたんだが…センスがないらしい。

せいぜい普通の人より動ける程度で、家族の誰か一人と試合をしても勝てん。

いや、例外的に一番下の妹は勝てるだろう。

あいつは何も武道を習っていない。勝てて当然だ。

「違うね。全く違うね。わかってないね涼。」

 相手をバカにしたような顔をしながら首を振る。

なんかイラッときた。何だこいつ。

「相手の土俵に立って、それでいてぶっ潰す。相手のプライドをポキリと折ってこそ決闘というものだよ。」

 まぁ、決闘って元々そんな感じのものだしな一理ある。だが、一つ事欠いてるぞ。

「俺がその土俵に立つとでも思っているのか?それこそ何かしらメリットがないとな。」

 決闘申し込んで相手が受けるとでも思ってるのかこいつ。そもそも、面倒くさい。

華琳は勝負に負けると勝つまで挑んでくる。その様子は駄々を捏ねた子供と大差ない。

「いいや、受けるね。だって、決闘の内容は次の中間試験、5教科、数国英社理の合計点数なんだから。」

 華琳は受けると確信しているのか、自信満々で腕を組んでこっちを見下ろしている。

「…は?」

 こいつ言ってる意味わかってるのかな…?俺って結構頭いいよ?

家族には力の差が文字通りある。

なので、頭だけでもと思い、俺は勉強してここらでも有名な進学校に入ったよ?

華琳の方は二、三番目に良いぐらいの学校だろ。そもそも学力が釣り合わない。

「お前が勝てるわけないだろ。それが分かっていて決闘するか普通?」

「いいじゃん。涼は勝てると思っている勝負こそ相手の土俵だよ。」

 勝てると思っているではない。勝ったと言ってもいい。

「ふーん。んで、メリットは?」

 つまらない事だったら断ろう。

「負けた方が勝った方のいう事をなんでも聞く!」

 ビシッ!と効果音が付きそうな勢いでこっちを指さす。

「よし、わかった。勝負だ。」

 しゃあああ!!!来たぞ!何という事だ!妹が俺の胸に飛び込んできやがったぜ!ふぉおお!!!

「涼~もう勝ったと思ってるの~?取らぬ狸の何とやらにならないよう気を付けな!じゃね!」

 華琳はそれだけ言い残し脱兎のごとく部屋を出て行った。

試験対策の勉強でもするのだろうか…。

いや、単に勝負ができることが嬉しくてテンションが上がっているのだろう。

フハハ、だが妹よ。試験勉強もする必要はない。もう勝負は決まっているのだから!

「…まぁ、相手はあの華琳だ。いつも通り勉強せずとも勝てるだろう。」

 いつも合計点数80点は勝ってるからな。余裕だろ。

 この時、俺はこれが世に言う"フラグ"だとは全く気が付かなかった。

…というかいつも思っていることが急にフラグになってんじゃねぇぞ!

世の中は理不尽で構築されている…。




―運命というか、もうフラグ立てた時点で負けたって分かっている試験返却日―

「涼ー!いるかー!勝負の日だ―!」

 バァアン!と扉を思い切り開いて登場するのは華琳だ。

「俺のいう事を聞く準備はできたかmy sister(マイ シスター).」

「くっ、いかにも頭よさそうな英語の発音しやがって…覚悟するのはそっちの方だ!」

「ならこの点数を見てもそれが言えるかな。」

 俺は堂々とA4、5枚の解答用紙を見せつける。合計は476点だ。ぼちぼちといったところだな。

「えーっと…合計476点…。」

「お前のこれまでの平均は大体420点以下だったよな?これは勝ち確だろ。」

「はい、これ私の結果。」

 5枚の解答用紙を渡される。そこには…オール90点以上の点数が並ぶ。

「へぇー頑張ったじゃん…合計は…477点?そんな…バカな。」

「残念でしたー!1点足りなかったねー!」

「貴様!この短期間で何をした!こんな上がるなんて…特に英語がこんなに良くなるなんて何が…。」

 華琳の英語力は壊滅的でいつも60点代だったはず…。それが93点…。

英語力ってこんな短期間で付くものではないはずだ…!

「ふっふふ…今の私に死角はない!」

「そうだな…おめでとう、お前の勝ちだ。おめでとう。」

 よし、ここは負けを素直に認めてなし崩しに約束を忘れさせ―――

「ところで涼、約束覚えてるよね?」

「…ナンノコトデショウ」

「おーけー。教えてあげる。」

 そういうと俺の胸ぐらを両手でつかみ、軽く首を締め上げる。

「ちょ、暴力反対!」

「約束覚えてるよね?」

 笑顔で兄の首を絞める鬼畜妹が目の前にいます。

「なんのことぎゅっ!」

 ギリギリギリ

「おうおう、いい声で鳴きよるわ。…どう、思い出した?」

 華琳は普通の女の子が出さないような声を腹の底から出す。

「ひゃ、ひゃい!おもい、だすた!」

 流石にこれ以上じゃれ合うと華琳が本気を出しそうなので降参する。

「よろしい。」

 ドンッ!

急に手を放され床にしりもちをつく。

「ゲホッゴホッ!ちょっとひどくないか?一応、一つ年上のお兄ちゃんだぜ俺。」

「…なら、素直に約束守りなさいよ!」

 キッ!っと睨みつけられる。うん。怖いけどかわいいな~。

「仕方ねぇなぁ…、ほらなんでもいう事聞くよ。あ、さすがに犯罪はダメな。」

 さすがにないと思うが、全裸で町を徘徊しろとか言われたら守れないからな。この年で犯罪者にはなりたくないです。

「そんなのわかってるよ!当たり前じゃん。」

 そういうと改めてこちらを向いて腕を組む。なんか、格好を付けなければいけないのだろうか?

「ごほん、えー…お兄ちゃんである涼にはこれから私の弟になってもらいます!」

「…へぇー、そっかー、たいへんだなー。で、本当は?」

「私の弟になれ。」

「本当に…?俺、お前より一つ上だけど?」

「大丈夫!涼はとってもショタだから!」

「…頼むから満面の笑みで言わないでくれ…。」

 なんだよ…。とってもショタだからって…日本語おかしいだろ。

「そして、お友達の家に涼を紹介しに行きます!弟として!」

「な!言う事聞くのは1回だけだろ!?」

「回数制限なんて付けてなかった。ここにも私の死角はなかった。」

 くっ、こいつ調子に乗ってきやがった。

「…じゃあ、いつまで言う事聞けばいいんだよ。」

「うーん。私の気が済むまで?」

 うわー、まじかよー、いつ終わるんだよこれ。

「まぁ、悪いようにはしないからおとなしく私の弟になってなさいよ。」

 …これは仕方ないのか?何か!何かあるはずだ!考えろ俺!考えろ!




―――何も思いつきませんでした…。

「問題ないわね?じゃあ、今週の土曜日さっそく遊びにいくよ!」

「へーい。」

「気合のない返事~、諦めて積極的に協力しなさい!」

「…それは命令ですか…。」

「もちのロン!じゃ、そういうことで!」

 華琳は手をひらひらさせながら部屋を出ていく。

「あ、当日は小学生ってことで、それらしい服装してねー。」

 えっ…。

バタン…。

「―――…ふぅ。寝よ。」

 こういう時は寝て忘れるのが一番だな。

その後から俺は妹に弟と呼ばれるのだった。

地味に父さんと母さんに報告して、この理不尽な状況を打破してもらおうと考えたんだが…。

「すまんな、涼。華琳には一つ貸しが出来てしまってな。今回の事は黙認というか公認することになった。」

「ごめんね~涼君~。華琳ちゃんにお父さんと同じで協力しなくちゃいけなくなっちゃの~。」

 台所で洗い物をしている母さんにも同じことを言われてしまった…。

家族公認で兄を弟と呼ぶのですか。そうですか。はい。

さっそくよくわからなくなってきました。

ラブコメディは難しいですね。

というかこれはラブに発展するのでしょうか。

妹ですし、正直私としてはどうかと思います。

ですが、血が繋がっていないのですよね。

ってことは結婚もできると…、でも妹。

あまり想像できませんね。

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