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004 Constrained world

それから数時間後。

剛毅達は目を覚ますと窓の無い12畳ほどの部屋にいることに気がついた。

それぞれの腕や足などには既に拘束具は無く、体の関節を動かしてみても、外れているということはなく、十分に機能している。

プロの集団らしき人達が動いていたのに、拘束もされていない今の状況は何か変な気がするとギルバートが思い始めた矢先、部屋の奥の方の壁に埋め込まれたテレビに光が付いた。


破壊防止のためなのか強化ガラスで隔てられた先にある24インチほどのテレビには、まず最初に第二アメリカ合衆国の国章が現れ、次に文字が流れ始めた。

その内容とは要約すると「第二アメリカ合衆国アビリター保護法プログラムの適用により、能力を監視下におけると特別に許可された場合を除き、アビリターを制限保護区域におく」

というものだった。

この法律は第二アメリカ合衆国として隕石漂着から再生を果たした政府が、アビリター達が持つ個々の能力の暴走や悪用を恐れ、制定したものだった。

あまり公にされず密かに制定されたこの法律を知るアビリターは少なく、多くのアビリター達がこの法律によって制限保護区域に送られた。

能力を持たない一般人はアビリターの犯罪に脅威を感じていたのに加え、お金持ちの家のアビリターならば『特別許可』という物を『許可料』を支払うことで免れたため、人権を無視したようなこの法律は、改正される気配が無いどころか逆に支持され始めるほどだった。


そしてこの法律によって制限保護区域に実質的に連行された剛毅達は、あまりの理不尽さにギルバートが切れて強化ガラスを割り、中のテレビを叩き壊したあと、テレビが終わると同時にロックが解除されていたドアから外に出て、建物の出入り口の窓口のようなところで割り当てられた自宅用らしき鍵を受け取ってようやく外に出ることができた。

自宅を割り当てられたといっても、隕石漂着のせいでゴーズトタウンとなった街の空き部屋を適当に割り当てられただけなので、毎日の安全が完全に確保できているわけではない。

なんとなればアビリターが溢れているであろうこの街でなら侵入など造作もないことなのだから。


建物の外へ出て周りを見渡すと、立っているマンションの中には窓が割れて無くなっているところの方が割合で言えば多いぐらいで、防犯などは微塵も期待できそうにない。

とりあえずは今後住む場所の確保ということで動き出した剛毅達は、隕石漂着以前に作成されていたのであろう、観光場所なども乗っているカラフルな3つ折りの地図に従って歩き始めた。

街の雰囲気は明るくも暗くもないが、ところどころには生活用品や食料品といった店などがチラホラとあるので、食料を奪い合うといった混沌とした様子にはなっていない様子だ。

しかし、やはりアビリター対策なのか店の出入り口には完全に武装した軍人らしき人が立ち、その奥に見えるレジ打ちの人もやはり武装したままレジ打ちをするというシュールな光景が目に入る。


そして、店の中でおとなしく普通に買い物をしているアビリターたちがいる一方で、裏通りに通じる路地の方へと視線を移すとガラの悪そうな連中もいる。

ひとえにガラの悪そうな連中といっても皮膚が岩のようなものもいれば、獣のような牙などを持つ凶悪そうな一風変わった奴らもいる。


都会の暗闇などで生きてきた剛毅達は、この街に入ってきてそうそう睨まれたくはなかったのでそれとなく視線を外しつつ、何でも無い風を装って通りを進んでいく。


水が枯れてしまった噴水がある広場を通り過ぎ、更に数分歩くと、元は家族が住んでいたのであろう45坪ほどの壁の表面をレンガ張りにした一戸建てが見えてきた。

鍵にくくりつけられていた札に書かれた住所と、地図に載っていた住所と見比べて、そこが割り当てられた住居だと分かった剛毅達は鍵をドアに差しこんで家の中に入る。


家の中は既に一通り荒らされたあとなのか、家具はひっくり返っていたり、紙屑が散乱していたりと何かの役に立ちそうなものはほとんど残っていない。

あるのは持っていくほどの価値が無い生活雑貨や、食器類などばかりでテレビやパソコンといったものは根こそぎ持ち去られているようだった。


とりあえず腰を落ちつけようという流れになった5人は、ひっくり返っていたソファを元に戻し、砂埃をはたき落して窓を開け放ち、換気を始めた。

長い間放置されていたのだろう家の中は埃や、濁った空気が溜まっており、息をするのが嫌になるほどだったが、家中のすべての窓を開け放つと、この街には不釣り合いな爽やかな風が吹きこんできて、溜まった空気が一気に一掃されていった。


何か掃除が出来るものがあるかと家の中のドアを開けていくと、階段下の収納スペースにホウキや洗剤などの掃除用具があったので、それらを駆使して家の中の細かな埃やゴミを取っていく。

数時間もすると家の中は見違えるようになり、電化製品などが無いのでいささか殺風景に映るものの、5人が住める環境にはなった。


しかし、家の中の窓などは依然として割れたままなので、それらを直さなければ安全は確保できない。

窓をどうするかと話し合った結果、ただのガラスではこの街では少々心もとないということで、小さな窓はそのままガラスで、人が通れそうな窓は押し開き式の鉄板にすることに決めた。


とはいえ、鉄板などがそうそう過程に転がっているわけもないので、剛毅とギルバートは鉄板になりそうな材料を探しに出かけることにした。

ちなみにティーダは女性陣の護衛として家の中に残ることになった。


「で、探しにわざわざ出てきたわけだけど…まぁ……そこら中に散らばってるわな。」


玄関から一歩外に出たギルバートが周りをザッと見渡してつぶやく。

家の前の通りには乗り手がいなくなった自動車が、道路の端の方にパンクした状態で止まっていたりするのだから、鉄板になる材料などはいくらでもあった。

ちょうど家の前の道路の端に寄せられていた車に目をつけた2人は、内装などの鉄板の材料にならなそうなものを剥ぎとっていく。

あらかたとり終えた2人は、それぞれに能力を使って、熱で鉄を切断し、小分けにして窓のところへと持っていく


高熱で切断したために、常人が振れれば一瞬で大やけどを負う程の熱を持っている鉄片だが、剛毅とギルバートは手の温度を鉄片と同じぐらいの温度に上げているのでやけどを負うことは無い。

高温の鉄片を窓のところまで運んだ剛毅達は、窓の枠の寸法を採り、その大きさに合わせて鉄片を成型していく。

そのままはめ込んでしまうと熱で窓枠が傷んでしまうため、小さな穴をあけてから鉄板を放置して冷ます。

それが終われば、次の鉄板を作る作業に移り、またそれが終わればまた次へと繰り返していく。

全部の鉄板を作り終えたころには最初に作った鉄板が十分に冷め、窓枠に合わせても問題なくなったので窓枠に鉄板を当てて、蝶つがいと鉄板を溶接の用量でつなぎ合わせる。

全ての窓に取り付け終えると、閑静な住宅街にたたずんでいただろう家が一変。

まるで小さな要塞のように、鉄で補強されてガッシリとしたつくりのものになった。

出来栄えを外から見てなかなかの武骨さに満足した2人は、意気揚々と家の中に入った。

女性であるユリアとシェイラはどことなく不満そうな顔だったが、現状を考えると安全優先なのが分かっているのか口をだしてくることはなかった。


とにもかくにもなんとか自分たちが住める環境にはなったわけだが、今度は肝心の食料がない。

どこかからとってくるとしても、数時間前にこの街にきたばかりで地理については右も左も分からない5人は本日の夕飯をどうするか悩む。


飲食店などに入れるだけの金が無い剛毅達は、結局はいつもどおりに食料の調達にいくということになったのだが、今回はユリアとシェイラも含めた5人だ。

当初はギルバートが家で待っているべきだと主張したが、街のことを早めに把握しておくべきだというシェイラの主張と、ユリアが3人が守ってくれるから安心できるよね?といったのにギルバートが折れた。

かくして食料調達に出かけた5人は来るときに見かけた厳重な警備のスーパーマーケットらしきところを目指す。


「へぇ…。警備が物々しいから高いと思っていたら意外と安いじゃない。」


店に入ったシェイラが店内に表示されている値段の描かれた紙を見渡していう。


「…けど。なんでこんなに安いんだ…?アビリターに対する風当たりは強いってのに。なにかあんのか?」


「ふむ、どうやらわけありというみたいだな。ほら、これを見てみろ」


激安の価格で売られているものばかりがならんでいる様子を見た剛毅が訝しげに首をかしげる中、商品を物色していたティーダが一つの商品を取って剛毅に投げ渡す。

剛毅は渡された商品を観察してみるが、特にこれといったものは無いように思えた。


「これがどうしたってんだ?特に何も無いように見えるが…」


「賞味期限を見てみろ。ソレもコレもアレも…全部賞味期限が既に切れているヤツばかりだ。みろ、この野菜なんて萎びてるし、あの果物なんて柔らかくなってる。」


あれこれと商品を見ていたティーダが色々な品物を見て剛毅に投げ渡してくる。

そのどれもが賞味期限ぎりぎりなものや、既に過ぎているモノ、缶詰めの商品に至っては大幅に過ぎているモノが大量にあった。


「なるほどね…。だから安いのか。そうかよ…やっぱり、俺たちはそういう扱いなのかよ。クソッ…!」


ギルバートがあまりの扱いに腹を立てて近くの棚をガッと蹴ると、レジにいる男がショットガンを掴んだ状態で5人の方に睨みをきかせてくる。

わざわざ政府に絡んでいる奴と揉め事を起こすのを嫌ったギルバートはイライラとしながらも矛を収める。

すると相手もいつでもショットガンを打てる状態を解除してただのレジ係に戻る。

気分が悪くなったらしいギルバートは一人で帰るといい、店の外に出ていった。

残された4人は悔しいけれど食べ物が無ければどうしようもないということで、連れてこられるときに没収されずに残っていたユリアの財布の中に入っていたお金を使って食材を購入した。


「それにしても気に食わんな。政府の奴らは俺たちアビリターをなんだとおもっているんだ」


いつもはクールなティーダが少しイライラと怒りをにじませた声音でいう。


「ちょっと皆とは変わった力を持っちゃっただけで、それ以外は皆と変わらない人間なのにね…。人間扱いされないともなると…ちょっと辛いなぁ~…」


「そうね…。こうもあからさまだとちょっとクルものがあるわね…」


ユリアが少し伏し目がちに落ち込んだ風にいい、シェイラは悲しみと怒りがこもった瞳をしている。


「でも、俺たちにはどうしようもない…。結局時間が立って俺たちが認められるまではこの制限保護区域からも出られないんだろうな」


「認められる。認められなければ…、その時は無理やりにでも認めさせるだけだ」


少し弱気の言葉が剛毅の口から出ると、ティーダが静かに、それでいてはっきりとした口調で言った。

剛毅はその言葉に何かを感じた気がしたが、その何かが結局わからなかった。


さてさて、早めの更新第4段です。もうそろそろストックが無くなってくるので、更新頻度が落ちます。

たぶんあと1話ぐらいは早い更新ができるかとおもいます。

4話ほど進み、どうでしょう?ちょっと展開が急かなとは思ったのですが、あまりグダグダするのも…と思ったのでこんな進め方にしました。

要望があれば、外伝的な感じで剛毅が育てられてきた背景とか色々詳しいのを書こうとおもいます。

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