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001 プロローグ

現在、地球は異常気象や動物の突然変異、絶滅、生態系の変化などの問題に追われていた。

今まで何十年にも渡って調査してきていた地球に関するデータなどは意味をなさなくなることもしばしばであった。

科学者たちは現在の状況を解明しようと大忙しで駆け回り、政治家たちは国民の混乱を防ぐために様々な政策を発表したりして奮闘していた。

そしてそれは世界各国のどのような場所でも行われていた。

この混乱の原因を全ての元へと辿っていくと、一つの大事件につきあたることとなる。

それが俗に『隕石漂着』と言われるものだった。


この『隕石漂着』を最も早く予期していたのはNASA航空宇宙局の科学者たちだった。

予期していたと言っても、実際はNASAの科学者たちが予期していたのは小惑星との衝突による地球全域を巻き込んでの地球滅亡であって、厳密に言うと『隕石漂着』のことではなかった。

しかし、もちろん隕石が地球に来て、人類に大規模な損害をもたらしたのは言うまでもないことだ。

隕石漂着による余波で大津波や、プレートの歪みによる地震が頻発するようになり、二次、三次などを合わせた様々な災害によって人類の約5分の3が犠牲になった。

それでも、隕石の落下による地球の瓦解などの地球滅亡の危機は起きなかったし、何百メートルもあるような超巨大津波で世界が沈むことはなかった。

どういうことか、その隕石は軽石みたいに中がスカスカになっており、一見した見た目よりも質量はかなり軽く、落下地点が海だったために落下の威力が津波となって落下時の衝撃を分散したおかげで被害が地球滅亡レベルまでに及ぶということは無かった。

もちろん落下地点の近くに住んでいた人々には津波などで甚大な被害が出たので、手放しに喜べる状況では無かったのは確かだった。

そして、驚くべきことにその隕石は衝突による衝撃で海底山と結びつき、新しい島を形成した。

『カラミティアイランド』と呼ばれるようになったその新しい島は、それから特に動きを見せることも無く地球の一部として馴染んでいった。

しかし、それらよりももっと凶悪な、全世界に被害をもたらすようなものがその隕石にはあった。

それが放射性物質『アビリタイト』と後に呼ばれるようになる、濁ったエメラルドのような輝きを発する物質だった。

地球のどの物質にも当てはまらないそれは、その放射性物質がもつある特性から取って後の世でそうよばれるようになったが、落下当初は『災いのもと』『死の岩』『不幸の結晶』などと呼ばれて恐れられた。

隕石の落下によって、そこから海に流れ出したその放射能は海流に乗って、または風に乗って全世界へと散っていき、世界各地に放射能をまき散らした。

そのため全世界では人間に限らず、生物であれば奇形や、突然変異などを起こしてしまい、もともと少なかった動物達の一部は絶滅したり、変化したせいで生態系の変化が起こってしまったりと、急激な生態系の変化が起きた。

人間も放射能の影響をうけたために発癌、急性白血病、白内障などの被害を受け、生まれてくる子どもたちは奇形児だったり、精神障害を持っていたりもした。

これらが世界各国で起こってしまったため、各国はこの人類に対する危機のために渋々ながらも手を取り合い、資源や機材を出し合って除線をしたり、『カラミティアイランド』を中心とする放射能遮断のためのドーム型の隔壁のようなものを作るなどの対策をとった。

このドームのお陰で放射能は漏れなくなり人類は助かったものの、隕石の周りは人が住むことが不可能なほど汚染されたので一般人立ち入り禁止として、上空を旅客機が飛ぶことも禁止した。

ドームに囲まれたカラミティ島の管理は、宇宙からの未知の物質を狙って各国が欲しがるせいで所有権を決めることができないために、各国の混成チームが編成されて管理をすることになった。

そうして、人類は多大なる被害を受けながらも時間をかけて再び立ち上がることになんとか成功していった。

時間は少々かかったがこれで元の生活に戻れると思い、それぞれが元の生活へと戻っていく時だった。


事件から7年たった冬の夜、隕石漂着のせいで人口が激減し、第二アメリカ合衆国として再生した旧ニューヨークにある寂れたデパートで、人質立てこもり事件が起こった。

犯人によって人質としてとらえられたのは32歳の母と11歳の男児で、その二人は休日に買い物にきていただけの平凡な家族の一員だった。

父親も二人とともにデパートへ来ていたが少ない物資を多く集めるために別行動をしており、何が何やら分からないうちに避難をさせられた時には、既に二人は人質としてとらえられていた。

そして視聴者がほとんどいなくなり一局しか映らなくなったTVでは、警察による交渉の失敗、狙撃チームによる犯人狙撃作戦の実行の様子をリアルタイムで報道していた。

警察の狙撃犯チームの中でも最も優秀な狙撃手によって、銃口からマズルフラッシュとともに飛びだした弾丸は寸分の狂いもなく犯人の頭部を貫通し、一瞬で意識を刈り取った。

しかし、犯人が倒れていくときにトリガーに指が引っ掛かったままだったのか、母親のこめかみに突き付けられていた銃は跳ね上がりながらトリガーを引かれ、母親の即頭部に銃弾を撃ち込んだ。

犯人に次いでその場に崩れ去る母親を見た少年は、愕然とした面持ちで母親の死に顔を見つめ、そして理解をしたときに悲痛な叫び声を分厚い雲がたちこめる空に放った。

テレビの向こう側にいる数少ない人も、現場にいた様々な立場の人も、そして少年の父親も視線を落として、涙をこらえた。

そして、それから初めに異変に気付いたのは現場の警察官だった。

いつまでもただただじっとしているわけには行かないと思ったのか、少年のところに行って、安全な場所まで連れて行こうと近くまで駆け寄ったその時に、警官は叫んでいた少年がいつのまにか俯きながらボソボソと何か声を発していることに気付いた。

一体なにごとだろうと訝しんだ警察官だったが、母親が目の前で死んだなら受け入れがたいこともあるだろうと思い納得して、そのまま駆け寄って少年を連れて行こうと少年の手をとった。

しかし、その警官の体が突如として灼熱の炎に包まれて一瞬のうちに消し炭となった。

あまりの突然の展開に全ての人が呆然とする中で少年の体も、周りの空気さえも焦がす灼熱の炎で包まれていく。

一際大きな炎に包まれ、熱風をあたりにまき散らしたかと思うと、その少年は炎の中で言葉にならない怨嗟の声で吠え、近くにいた警官隊の中へと飛び込んだ。

高温の炎に焼かれて次々と消し済みになっていく警察官たちは、炎の奥にちらちらと見え隠れする少年の姿に撃つことを一瞬躊躇い、その間に炎に身を焼かれていった。

少年の父親はまわりの制止をふりほどいて、少年をなんとか止めようと近づいたが、その手は無情にも少年に届く前に炭と化し、地面へ崩れ去っていった。

報道を見ていた人々は愕然とし、あるいは呆然としてニュースを食い入るように見つめていた。

そして、ニュースは機材が熱にやられて壊れるまで続き、その少年の暴れる様が米国全土にあますことなく伝えられた。

その後散々暴れまわった少年は力を使いきったのか、糸が切れたかのように唐突にその場に倒れこみ、すぐさま特殊部隊の手によって拘束され、強力な睡眠薬を打たれた上で連行された。

旧ニューヨークの街の一角は戦場になったように焼け焦げ、壊れたがすぐにあたり一帯が封鎖されることになり、報道関係者の接近も許されない一切立ち入ることが出来ない厳戒態勢がしかれた。

報道番組では先ほどまで写されていた映像を元に専門家などを電話するなどをして、さきほどまでの映像の解析を進めていたが、そのどれもが宇宙人や、合成映像などと様々な憶測を飛ばせていた。

一方そのころ、件の少年を保護…拘束した特殊部隊の面々は、頭にハテナマークを浮かべながら何故即時射殺をしなかったのだろうかと思っていた。

通常ならば警官を何人も殺してしまうと即時射殺命令が下されるはずなのだ。

しかし、上官の『生かしたまま連行せよ』という命令は絶対だとして、今は眠れる少年の様子をこわごわとみていた。

少年の寝顔は年相応のあどけないもので、強力な睡眠剤を打たれたせいでピクリとも動かないその様は一見死んでいるようにも見える。

しかし、その実態は不可思議な能力を使って現場にいた警察官を皆殺しにした凶悪な犯人。

少年の様子を監視している特殊部隊の人間は恐怖をおぼえることはあっても、少年にかわいらしさを覚えることは無かった。

その後、さらなる上官の命令で行き先を変更した車は、秘密の通路を使って軍の秘密研究所…通称:SSRF(Seventh Secret Research Facility)と呼ばれる『第七秘密研究施設』へと向かう。

施設に着いた隊員は少年を厳重に拘束したまま車から降ろすと、救急で患者を運ぶような台車の上に拘束具を取り付けたものに少年を拘束しなおして研究所の中へと運びこんだ。

隊員に課せられた仕事はここまでで、その後の少年のことは施設にいる研究員に引き継がれる。

少年の意識が戻ったあとは研究員によってしばらく尋問が続き、そして初めこそ人道的な少年の意思による協力の研究が進められていたが、次第に研究は苛烈していき、最終的には少年の意思を無視した非人道的な研究が進められていくことになる。

研究員たちにとってはその少年はもはや興味深い研究対象としか目に映らなくなり、両親も既に死んだ少年は引き取り手のいない都合のいいモルモットでしかなかった。

そして非人道的な研究が積み重なった結果、拷問にも似た研究が終わることを望んでただただ我慢していた少年はついに自分の舌を噛み切って死んだ。

研究員たちがその様子を見て最初に言ったのは「しまった。自殺防止用に轡でもかませておくんだった。生きた貴重な素材がなくなってしまった」であった。

研究結果が整えられ、SSRFからあがってきた極秘報告書を読んだ当時の大統領は、全米生中継によって全国民の知ることとなった事件の真相を公表することを決定した。


その日、大統領は「現在、世界には超能力と呼ばれるような力を使う、いわゆる『能力者』が現実的な脅威として存在します。」と、全世界へと『能力者』というものの存在を公表した。

その日から『アビリター』と呼ばれる能力者達の地獄の日々が始まった。



っと、まずは導入部分のプロローグでございます。色々と設定が出てきているので、ココをある程度抑えておいてくれれば後の話がスムーズになると思います。

あ、それと、誤字指摘、質問などは感想欄に書いていただければ修正、返信するつもりですが、批判的な意見だったり、明らかな荒らしとみなした場合は削除したりもします。


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