プロローグ
目を覚ました瞬間、まず思った。
――寒い。
次に思った。
――いや、寒すぎない?
肺に吸い込んだ空気が、喉の奥でひっかかる。鼻の奥がつんと痛む。
私は反射的に身を丸め、目を開けた。
「……森?」
白い。
どこを見ても、白と深緑のコントラストだった。
雪をかぶった針葉樹が立ち並び、足元には分厚く積もった雪。空は薄曇りで、太陽の位置すらはっきりしない。
「……ああ、これ……」
理解するまでに、数十秒以上は要した。
ここは日本じゃない。
というか、私が住む普段の世界ですらない可能性も少なくないだろう。
モットーとして常に冷静でいようと心がけてきた私だけど、この状況はさすがに非日常すぎる。
それでも、感情より先に思考が動いた。
――気温、マイナス何度だろう。
――装備もない。
――生存可能時間はかなり短いかな…。
自分の身体を見る。
服装は見慣れない厚手の布服。サイズは合っているけど、明らかに現代日本のものじゃない。
「……転生、だよね」
声に出して確認する。
不思議と、パニックにはならなかった。
私は水瀬麗。高校生。
氷点下環境、積雪、森林――この条件が意味するものは嫌というほど分かっている。
ここは、人が暮らす場所じゃない。間違いなく人々の営みがあるような地域ではないだろう。
「まずは……体温維持」
雪の上に直接座るのはまずい。
私は近くの倒木に寄りかかり、呼吸を整えた。
そのときだった。
――ひやり。
頬に触れた空気が、一瞬だけ異様に冷たく感じた。
「……?」
視線を落とす。
私の手のひらの上に、小さな氷の粒が浮かんでいた。
「え……?」
溶けない。
落ちない。
まるで、空気そのものが形を持ったみたいに。
理屈を考えるより先に、直感が答えを出していた。
「……魔法、のようなものか」
否定する理由がない。
ここは異世界で、私は転生者で、そして今、私の手に氷が生まれた。
試しに、意識を集中させる。
水分子の運動を止めるイメージ。エネルギーを奪う感覚。
ぱき、と小さな音がして、氷が少し大きくなった。
「……なるほど」
驚きよりも、納得が先に来た。
氷点下環境で、氷を生み出せる能力。
使い方次第で、保存も、生活にも使える。
「……これが私に備わった能力…打開策を見つけるにはこれが鍵になるかもしれない」
そう思った、直後だった。
「おーい! 誰かいるのか!?」
遠くから、男の声。
私は反射的に立ち上がり、声の方を見た。
雪の向こうから、馬車が一台近づいてくる。
「こんなところで……嬢ちゃん、大丈夫か!?」
厚手の外套を着た中年の男が、驚いた顔でこちらを見る。
「えっと……はい。少し……迷ってしまって」
嘘は言っていない。
彼は一瞬考え込んだあと、深くため息をついた。
「この森は危ない。中央都市へ向かう途中だったんだが……一緒に来るか?」
中央都市。
その言葉に、胸の奥が少しだけ軽くなる。
「……お願いします」
雪国の森での遭難。
氷魔法の才能。
そして、商人との出会い。
私の異世界生活は、
未開の雪原から、ゆっくりと雪が溶けゆくように静かに動き出した。
初投稿です。連載のペースは決まっていませんが、なるべく完結を目指して続けていく予定です。
また、本作は私自身が設定・展開を構成していますが、一部にAIによる文章生成を含みます。




