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サリーのオバア  作者: NiO
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3

 コップに注がれた菊酒を舌に転がしながら、私はひとり考え込んでいた。

 ――菊酒を飲むと、不老長寿になる。

 サリーのオバアが毎年のように欲しがっていたというのは、つまり「長生きしたい」という願いの現れだったのではないか。


 なのに、目の前の瓶は、封を切った形跡すらない。

 どういうことなのだろう。


 胸の奥がもやもやと波立っていく中、隣に座っていた遺族のひとりが私に声をかけた。


「それにしても、貴女、お酒に詳しいんだね」


 思わずコップを置き、私は曖昧に笑った。


 父も相槌を打つ。


「そうそう。私なんかは『そんな名前の泡盛があったなあ、菊のなんとかって』くらいしか思い浮かばなかったよ。

 あとは、花札とか……」


 ……泡盛(・・)


 私は父の言葉を繰り返した。


「父さん? なんで急に(・・・・・)泡盛の話を(・・・・・)?」


 父はきょとんとした顔で笑う。


「え? だってお婆さん(・・・・・・・)沖縄の人だろう(・・・・・・・)? 

 沖縄ならやっぱり(・・・・・・・・)泡盛じゃないかと(・・・・・・・・)思ってさ(・・・・)


 ――え?


 胸の奥が急に冷えた(・・・・・・・・・)


 私は遺族の方へ向き直り、意を決して尋ねた。


「……あの、すみません。

 お婆さんは(・・・・・)本当に(・・・)菊酒(・・)って言ってたんですか(・・・・・・・・・・)?」


 遺族の女性は、少し戸惑った顔をして答えた。


「ああ、もちろんよ。本人がそう言ってたから。


 ……方言混じりでね(・・・・・・・)


 そして、ぽつりと続けた。


「――『菊酒(チクザキ)』、って(・・)

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ちょっ…頼むから、ここでエタったりしないでよぉ?!
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