5話 潜む陰謀
「なんだと!婚約を破棄されただと!」
もう日が昇るかもしれないくらいに夜は更けているのに、私達一行があの後帰ってきたら国王はあまりにもずっと怒っていて煩わしい。
「ええ、おっしゃるとおりでございますが、私達もあまりに刹那のことで……」
召使いたちがこれ以上国王の機嫌を損ねないように、それでいて嘘はつかないようにと話しているのを感じられて私の出る幕は今まで以上にまったくない。
「ローデンヴァルト王はなんと言っておられたのだ!」
国王は怒りを顕にしたままで召使いたちに襲いかかるかのように、言葉の矢の雨を止ませることがなくて見ていてこちらが疲れてしまいそうだ。
「ですから、申し上げた通りでしてそれ以上のことは何も……」
召使いたちは繰り返される詰問にそろそろ体力を削られすぎたのか、少しずつではあるものの返答が雑になり始めていた。
「ですが私の記憶が確かなら、ローデンヴァルト様はサラミナ様のことを悪女だと申し上げられていました」
一人の召使いがそう声を上げた瞬間、場が凍りつく。多分それは言ってはいけないやつなんだと思う。ここに来たばかりの私にさえなんとなく予想がつくほどのNGワードだった。
「なんてことか!わしの愛娘を悪女と罵ったとは!もう構っていられん!」
ほら。やっぱり大変なことになった。もうすでに大変だったのにまさに火に油を注いだ状態だ。そんな中、謁見の間の奥の方から出てきたおそらく召使いの男が声を上げた。
「しかし、悪女とはそう簡単に他国の姫君には向けることはできない言葉にございますゆえ、なにかサラミナ様に思い当たる節もあるのではないでしょうか」
あーあ。またこれでは国王が憤慨するだけだ。そう思って呑気に事の行く末を見守ろうとしたのに。
「お前の言うことも一理あるだろう。ああ、そうだ。そもそも自らの役目を果たせずにこんな簡単に帰ってきたサラミナにも問題がある」
突然として全ての矛先が私に向いた。今まであまり口を開いてこなかった代償が、ここで全て降り注いできた。
「ええ、そうでしょう、それにサラミナ様にはあの力のことが……」
国王の矛先を返させた男が、追い打ちをかけるように国王に囁いた。力ってなんのことなんだろう、ということは引っかかるがそれ以上にこの状況を打破しないといけない。
また今日初めて見た召使いの男が、何かを国王に吹き込んでいる。そして、二人の会話が終わった途端に。
「サラミナ!お前は紛れもない悪女だ!早くこの王宮から出ていけ!そして二度と顔を見せるでないぞ!」
国王の一言で、私は異世界で居場所を失った。
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本日で第一章が閉幕となりました!
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