4話 突然の衝撃
さっき自分を馬車に乗せてくれた召使いの手を取って馬車から降りると、そこには佇む大きな城と喧騒としていた民衆が刹那に静かになり、まるで私の到着を待っていたと言わんばかりにこちらを見つめていた。こういうとき、なんて言えばいいのかなんて全然わからない。
「……、ごきげんよう」
緊張からつい声が小さくなってしまうけど、なんとかこれでも自然に振る舞ったつもりだ。こんなんでこれからうまくやっていけるだろうか。周りは私を好奇の目に晒したまま一歩も引くことなく注目を浴びせてくる。
「あれがあの……の……」
「噂通りね、なんとも……」
何かコソコソと話し始めたけど、よく聞こえなくてもどかしい。だけど一言話しただけでこの反応じゃきっと動いたら大変なことになるのは容易に想像がつくことで、何もすることができない。
「サラミナ様、私が会場まで引き続きご案内させていただきますね」
召使いもきっとこの変な状況を気になっているのだろう。馬車を降りてやや間をおいてから、私達は民衆の間を通り抜けて、会場へ向かった。
❁❁❁
「サラミナ・ラルウィーン、お前との婚約を破棄する!私達はお前のような悪女と結婚することはできん!」
今夜の宴の会場の大広間に入ったらすぐに飛び込んできた言葉は、あまりも衝撃的すぎて私は召使いたちとただただ立ち尽くしていた。玉座に座った老人がゆっくりと立ち上がって、そばにいた使いの者たちに合図すると入ってきたばかりの私達一行を追い出せと命じられたようで、こちらに向かってくる。
抵抗も虚しく、何も言うことができずに私たちはただ事の顛末をまるで他人のように見ていた。
「どうしてこんなことに……」
そのまま無理やり外に出されて、私がこの国に嫁ぐことを喜んでいた召使いたちが嘆き、中には泣き出すものさえ現れた。どうすればいいの、私ここに来たばっかなのに。この人たちを慰めたいけど、今婚約破棄されたのは私に違いないのでそれはなにかおかしい気がしてうまく言葉を紡げない。
「サラミナ様、残念ですが今日は一度戻りましょう」
何を言えばいいのかわからなくて悩んでいたのが悲しんでるように見えたようで、かなり気を使われてそのまま来たときと同じ馬車に乗り込んだ。
冷静に考えてみれば悪女ってなんのことだったんだろう。サラミナはなにか悪いことをしたのだろうか。少なくともここに来てから私はただ食事をして、着替えてここに来ただけだ。
逃げるように去っていく馬車を息も途絶え途絶えになりながらも追いかけ、呼び止めようとした青年がいたことは。まだ誰も知らない。
「サラミナ嬢は本当にお美しい方だった。僕が強くて、一言でも言葉をかけられていたら……」
お読みいただきありがとうございました!
もしよろしければ下の☆やリアクションを頂けると励みになります!
こちらの作品は毎日投稿となっております!次回もお楽しみに!