3話 あの人の元へ
優雅な朝の時間を終えて、早速夜のパーティーこと婚約の宴のために準備を始める。さっきの朝ごはんで食べたお洒落なパイみたいなやつ、美味しかったな。
「サラミナ様、どうぞご覧下さい」
召使いに手を引かれて大きな鏡の前へ連れていかれる。鏡に映ったのは私ではなくて完全にサラミナだったけどすごく綺麗なドレスに身を包んで気分が上がる。
「とても素敵ね。ありがとう」
「それでは、次は御髪の方を整えさせていただきますね」
すぐにドレッサーの方へ移動して丁寧に座らされると、やけに長い髪をたくさんの召使いたちが美しくまとめていくのをただただ静かに見守る。
「サラミナ様、今宵の宴ですが、サラミナ様のご準備と我々の支度が終わり次第出発する次第ですのでご承知おきください」
この準備が終わったらって、どれくらいなんだろうと思うけど変なことを口走って私の正体を怪しまれるのを恐れて口には出来ない。
この王宮でさえ自分にとってはかなりの衝撃だったのに、次行くところはどれだけの場所なのかが気になってしまう。素敵な場所だったらいいな。
サラミナのことはかろうじて思い出せたけど、自分の相手になる王子のことが全然思い出せない。でも、きっとかっこいいんだろうな、そうであってほしい。
「サラミナ様、そろそろ我々の支度が終わりますので直に出発の時間にございます」
少し考え事をしていた間に、もう既に準備はほぼ終わっていたようで、目の前の鏡を見てみればよく想像するようなお姫様の髪型になっていて、驚く暇もなくすぐに装飾をほかの召使いたちが着けていく。
「それでは、どうぞお手を」
若い青年の召使いに手を差し伸べられて、その動作を真似るように私も手を重ねる。部屋を出て王宮の廊下を通り抜けて、そのまま車寄せのある方へ向かう。
初めて実際に馬車って見たかも。本当におとぎ話の世界に迷い込んでしまったようなこの不思議な世界に未だに慣れることができていない。
馬車に促されるままに乗り込むと、召使いたちが長い裾のドレスを馬車の中に丁寧に乗せていく。
「それではサラミナ様、出発にございます。ここから今日向かわれる所までは少しばかり時間がかかりますので、何かございましたら何なりとお申し付けください」
その言葉を最後に扉が閉められて、馬車のちいさなまどなら外を覗くとそこはいつか世界史の教科書とか、絵画に見た西洋の世界だった。
早く王子に会ってみたい、という気持ちがどうしてか自分の中でふつふつと湧いてきてもしかしたらこれが本当のサラミナの気持ちなのかなって思いながら外を見つめ続けると、遠くに大きな城が見え始めていた。
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