季節限定いちごパフェ 紫伊
春のお花見に筍、夏のビアガーデンにスイカ、秋の紅葉狩りに秋刀魚、冬の炬燵にお鍋など四季折々その時期だからこその季節限定がある。
思い返すと小学生の頃は季節限定を体感していた。春のクラス替えに初夏の運動会、真夏の夏休みのプール。秋の合唱コンクールにお正月や書初めの宿題をやる冬休み。向こうから勝手にやってくるからウカウカ味わい損ねることもなかった。そんな季節を感じたことの一つに「ツバメ」がいた。
ここ数年はカモに心を奪われがちだが小学生の頃はツバメを見ていた。炬燵を抜け出して外出したくなる気温になると水平に飛ぶ小鳥たちが姿を現す。それがツバメである。気づくと近所のマンションの駐車場に巣を作り始めている。ちょっと日が空いて見に行くとヒナたちが生まれお腹が空いたとぴちぴち鳴いている。親たちが一生懸命ご飯をあげ、すかすかの巣がぎゅうぎゅうになっていく。飛ぶ練習を始め上手になったと思ったらもういない。少し寂しい気持ちになるのだがすぐ他のことに気を取られかき消されていく。そしてまた一年が巡り、またツバメたちが帰ってきて営みが始まるのを眺める。
大人になるにつれ生活に組み込まれていた長期休みや定期テストがなくなり意識しないとウカウカ季節限定イベントを逃してしまう。終わった頃に「ああやり逃した......」と気付くのだ。
少し話は変わるのだがここ数年わたしの興味があるものに「鳥」が加わった。なんの感情も抱いていない頃はカラス、ハト、スズメくらいしか認知していなかったのだが意識し始めると面白いもので色々な種類が身近にいることに気付く。その中でも面白いなあと思うのが渡り鳥だ。渡り鳥はその名の通り食料、繁殖など理由から大移動をして日本に来る。あの小さな体で船も飛行機も使わず自力で海を渡る。よくよく考えてみるとツバメも渡り鳥である。
鳥に注目するようになってわたしの会社の最寄駅に併設された店舗軒先にツバメの巣が毎年いることに気付いた。今年もツバメたちが帰ってきた。駅の構内を元気よく飛び回って材料を集め巣作りを始める。もうそろそろ子供たちも生まれ賑やかになるだろう。彼らにその気はないだろうががんばってきてくれたからこその期間限定イベントだなと思いながら足を止め、あの頃と同じようにツバメの巣を眺める。
季節限定の食べ物で昔も今も一番好きなのはいちごである。可愛らしいフォルム、独特の甘酸っぱさ、ぴかぴかしたあかいろ。どこをとっても好きだ。なので冬のうちに必ず一度以上購入するし持ち帰る時ときときめきが止まらまない。
ただいちごパフェとなると話は変わる。とても可愛らしく心惹かれるし、テレビ等の特集で見ると食べたいと思うのだがなかなか足が伸びない。最後に食べたのは社会人になって最初の年の冬、祖母と食べた千疋屋のいちごパフェだろう。大変美味しかった。「また食べに行こう」と祖母と約束したのだがまだ果たされていない。来年の冬は季節限定のいちごパフェを食べに行きたいと思う。