7 能無しのダンジョン1
時間をかけて用意周到に準備してやって来たのは俺の家?の裏側にあるダンジョン。
こっちの世界に来てから一番長く居た場所で我が家と言っても過言では無いくらいに見慣れた空間だ。ちなみに【能無しのダンジョン】って名前らしい。名前からお察しである。
ちなみに若いダンジョンで出来てから30年程度なんだってさ。ダンジョンと同年代って分かってもな。ちなみに前代の【能無しのダンジョン】は【肉屋のダンジョン】にジョブチェンジしたらしい。
なんでもダンジョンが成長して比較的に浅い階層に鳥の魔物が出る様になったのがキッカケなんだって、リグが昨日の夜に仕入れた情報である。あんな無垢な少年みたいな顔してコミニケーション能力が異様に高い気がする。
「凄いね。1階層と2階層は網羅されているよ。」リグが今見ているのはダンジョンマップと言う名の茶色の紙である。ちなみにダンジョンに入る前は本当にただの茶色の紙だった。
ダンジョンに入るとあら不思議、迷路が浮かび上がった。真ん中の黒い点が現在地を示していて、動くと迷路の方が動く仕組みで見辛い。
「なんで此処から先は何も書かれてないんだ?」
「この中にこの先に行った事がある人が居ないって事だよ。」
「俺が行った事がある道が出ているって事?」マップではただの迷路だけど、迷路の道の幅が狭く見積もっても学校の体育館の縦幅くらいは有る。このマップって縮尺どのくらいなんだろう?
「そうだよ。ダンジョンが変化しない限りは通った事のある場所は表示されるって話だったよね?」
「そう言われているわ。いわゆるダンジョンに挑む者達への神様からの助力って奴ね。」
「あ。来た来た。ダンからやってみてよ。」遠くからアリがこっちに向ってきている。
待って居ても良いんだけど、時間が掛かるので俺の方からも向かっていく。リグにもシアンにも見られているので、カッコ悪いところは見せたくない。ガンとやってザクッとイメージしながら接近する。
「とりゃ。」アリの頭に勢いよく剣を振り下ろす。
ズシャ。
「アレ?」ガンてならないでアリが真っ二つに切れてしまった。
「楽勝だったでしょ。」リグが(ほらな)って心の声が分かる様な顔で言ってきた。
「・・・・」鉄の剣で叩いてもビクともしない強敵って言っていたのに、やってみたら真っ二つって・・・あれ?考えてみれば、途中から戦う時に踏んだり蹴ったりしているだけで剣を使った記憶がない。
「じゃあ、次は僕がやるよ。」そんな事を考えているうちに次が来たらしい。
キャッチボールするには遠くないか?って位の距離なのにリグはパチンコを構えて撃った。次の瞬間、アリの上半身が吹っ飛んで下半身しか無くなったアリが倒れる。
「パチンコって言うよりもバズーカじゃん。」小石を飛ばしただけだよ。威力がおかしいでしょ。
「バズーカ?」
「最後は私だね。」そう言って元気いっぱいにシアンが先頭を歩く。もしかしたら、この中で俺が最弱なんじゃ無いだろうか?最年長最弱。
「じゃあ。いくよ。」俺が思い切りボールを投げれば何とか届くかな?って位の距離にアリが来た所だ。
パチン
シアンが指を鳴らした直後にアリは燃え上がり消えていった。俺はすぐさま走りアリが消えた後に到着すると魔石を拾ってシアンさんに持って行く。
「どうぞ。」俺の服で軽く魔石を拭いて差し出す。
「ダーリン。どうしたの突然。」
それからアリが出て来る度にリグさんとシアンさんが倒したアリの魔石を拾い軽く服で拭いて差し出す、魔石拾い係に徹する。彼らを怒らせたら上半身が吹っ飛ばされたり、燃やされたりするかもしれないからね。
「2階層って大兎だったね。」リグさんがウサギに向ってパチンコを撃つ 撃つ 撃つ 撃つ 撃つ
「なんでアリの時みたいに爆散しないんだ?」ウサギは撃たれ時に(うっ)って感じで一瞬止めるけどそれだけだ。
「アリに比べると大兎は強いの。子供には大兎が出る階層には行かない様に言われるの。」シアンと話している間もリグがせっせとウサギを撃ってる。
「やっぱり大兎はタフだよ。2階層を抜けるまで弾がもつかな?」数えるのが面倒なくらいにはパチンコで撃ってようやく倒したみたいだ。
「ダーリン。拾いに行かないの?」悪意の全く感じられない目で見られながら言われると行かない訳にも行かないので、歩いて拾いに行く。
(なんだよ。アリが弱かっただけなのかよ。ビビッて損した。)
「ありがとう。ダンはあいつをどうやって倒してたの?」イキナリ態度を変えるのも変なので、拾った魔石をリグに渡したら聞かれた。
「どうって、普通に倒してたよ。」どうって聞かれても、どうやって水飲んでいるのって聞かれても困る。どうやって食べてたか聞かれたら・・・焼いて食べてたしか答えられないや。
「ダーリン。一回倒してみてよ。私も見てみたい。」
「別に良いけど。」とりあえず先頭を歩く。蹴ったり踏んだりして倒していた記憶が有るけど、見た目的にカッコ良くないな。どうやって倒そう?
考える時間も無いままウサギが見えて来た。二人は少し後ろに下がって俺の戦いを見るみたいだ。
大兎はピョコピョコと小さく跳ねながら距離を詰めていく。ダンジョン上層の知恵の低いモンスターは、一番近いターゲットに向って直進する習性が有るのでダンを目掛けて一直線に進んで行く。
大兎の攻撃方法は固い頭での突進、ダンが大兎の間合いに入ったタイミングで突進の為にしゃがみ込む。
勢いよく大兎が飛び出しそうとしたタイミング、すでにダンは一歩踏み込んで大兎の手前に来ていた。
突進しようと伸びあがる大兎は顎を蹴り上げられて突進の勢いが上に向いてしまい、ただ上に飛んで伸びあがる格好になってしまった。
体が浮いている状態で何も出来ない大兎の胸の魔石をダンが持っていた剣が刺し貫いた。
大兎が再び地に足を付ける時には剣は引き抜かれていて、始めから死んでいたかのように大兎がダンジョンの床に落ちた。
「何やっているの?ダーリン。」
「いや。肉を取ろうと・・・・」なんでか二人がガン見している。
「大兎って食べれるの?」
「味見する?」二人とも頷いたので切り取った肉から3枚切り分ける。
「生じゃ食べないよ。こうやって焼いてから食べるんだよ。」二人して生のまま食べようとしたので止める。小さく切っているからすぐに焼きあがる。
「この位まで焼いたら食べるんだよ。」そう言って食べて見せる。二人とも生肉を持ったまま俺の事を見ている。食べれるか疑っているんだろう。
「ダンって魔力の使い方が上手いんだね。」
「へ、そうなの?」
「魔力を熱に変換するのって、魔法を覚える時に躓くポイントなんだよ。」
「僕のも焼いて貰っても良い?」
「私のも一緒に焼いて。」
頼まれたので二人分を焼く。
「初めて食べたけど、結構おいしいね。」
「シアンはどうだった?」不味かったんだろうか?口元に手を当てている。
「ダーリン。この肉を宿屋に持って行って料理して貰おうよ。その方が絶対に美味しいよ。」不味かった訳では無いらしいです。
「そうだね。頼んで見るか。」あっちの世界でも旅館とかなら釣った魚を料理してくれるって話は聞いた事が有るし、聞いてみるだけ聞いてみよう。
そこからは俺がウサギを倒して進むので魔石も自分で拾って自分の収納空間に入れている。このまま自然に魔石拾い係を引退しようと思う。
リグの指示通りに進んで行くと蜘蛛が現れた。コイツは俺の記憶でもクソ雑魚だったハズ。
「ダーリン。リグに変わってあげて。」
「良いけど。どうしたの?」
「この中では僕が一番弱いからね。モンスターを倒した方が強くなりやすいからだよ。僕にビビッてたダンは面白かったよ。」そう言ってパチンコ一発で蜘蛛を仕留めたけど、アリと違ってソフトボール位の穴が空いてる。
「べ 別にビビッて無いぞ。本当だぞ。」堂々と最弱宣言出来るリグに負けた気がするのは何でだ。
「魔石は拾いに行かないの?」
「魔石拾い係は飽きたから引退したんだ。」
「はいはい。」そう言って見た目は少年、態度は大人リグが魔石を自分で拾った。
「そう言えばさ。シアンって火の魔法意外にはどんな魔法が使えるの?」蜘蛛は一撃で終わってしまうので暇だからシアンに気になった事を聞いてみる。
「火の魔法?ダーリンの世界の魔法ってどういう風になってるの。」
「俺の世界では魔法が無かったからさ。どうなってんのかな?と思ってね。」
「魔法って言うのは魔力を使って空間を掌握する所から始めるのよ。」
「空間を掌握?」全く意味が分からない。
「例えば、この上の空間に自分の魔力を流す事で自分の意のままに空間を動かす事が出来るのよ。」手の平を上に向けて、その上の空間に魔力を流しているらしいけど・・・全く分からない。
「今、見える様にするね。」そう言った直後に水が現れた。水風船くらいの水の玉が浮かんだままクルクルと回ってる。
「ほうほう。これが空間を掌握って事?」
「そうよ。だけど、私の手の平の上だから重力に引っ張られないけど、下からの魔力が途切れると落っこちちゃうけどね。」シアンが手をどけると水の玉は落ちてダンジョンの床を濡らした。
「さっきの魔法は火の魔法じゃ無くて一気に高温にするのに火をイメージしたの。逆に温度を一気に下げるのに氷をイメージしても出来るよ。私は氷よりも火のが得意なんだ。」
「なるほど。」話を聞きながら、シアンと同じように手の平の上に水の玉を浮かべようとしているけど・・・・何も出て来ない。
「ダーリンは魔法が使いたいの?」
「そりゃー使いたいよ。でも、生まれた時からの才能がってオチでしょ。今までの展開的にさ。」
「今までの展開的にって何?僕も簡単な魔法なら使えるよ。」先頭を歩きながらリグが顔だけ振り向いて言ってくる。
「え?そうなの。」
「私が教えてあげようか?」
「本当に。魔術師ダンの伝説が此処から始まるのか?」異世界に行ったらやってみたい事、ナンバー1が出来る。
「リグ。あれ譲ってね。指先に魔力を集めると、指先の空間を掌握できるの。そして、それをこうやって飛ばせば。」蜘蛛が体が吹っ飛んで足だけが残った。
「さすが魔族。マジックショットでこの威力か。」
「俺はこの技を知っているぞ。やっぱり俺の時代が来たみたいだ。次のは俺にやらして。」
「まあ、蜘蛛が相手だし別に良いけど。」リグが俺が魔法を使うのを良く思って居ない様だ。俺まで魔法使える様になったらと思うリグの気持ちも分からないでは無いからな。
待って居る時に限ってなかなか来ない。リグの指示でアッチ、コッチと進んでいるのになかなか出て来ない。
「ねえ、あれって。」シアンが後ろから大きな声を出したけど、俺には特に何も見えないけど?
「え?本当に有るんだ。」リグとシアンが二人で盛り上がっているけど、俺だけ置いてきぼりになってる。
「なんか有ったの?」
「あそこに有るのって宝箱だよ。」言われた方を見ると確かにダンジョンと同じ色の石が転がっている。俺に言わせれば普通の石である。角が丸くてザラザラの質感にベンチにちょうど良さそうな高さで全く宝箱には見えない。
「ただの石じゃないの?」二人は盛り上がっていて、俺の話は聞いて無い様だ。
「開けるよ。良い?」リグがシアンに確認を取る。俺は二人の様子を近くで眺める。
リグが石に触れると石が光の粒子になって消えていく。そして、残ったのは黄色い液体が入った小瓶だった。
「マジックポーションか。」
「でも、すっごいドキドキしたね。あ、ダーリン後ろ。」後ろを見ると蜘蛛が近くまで来ていた。
「くらえ。ドドン 」波を言う前に飛んで行ってしまった。
蜘蛛に透明の玉が直撃したけど・・・ウサギに撃ったリグのパチンコの様に一瞬止まっただけだった。すでに近すぎるので飛び越して踏みつぶしてやっつけた。
「シアンのよりも明らかに弱いんだけど。」
「魔族で訓練を受けているシアンと比べたらダメだよ。僕がやってもダンと同じくらいだし、実戦で使える様になるにはそれなりに時間が掛かるよ。それだったら剣で倒した方が早いでしょ。」
「ぐぬぬ。」魔法は使いたいけど、リグの言っている事に言い返せない。
仕方が無いので再びリグを先頭にして歩き出した。
行っては戻ってを繰り返して進んで行くけど、蜘蛛エリアをなかなか抜けれない。
「休憩にしよう。」行き止まりに来た所で二人に告げる。やはり年長者がそういう事は言わないと言い辛いよね。
「ダーリン。少し寝ても良いかな?」
「良いよ。俺は全然大丈夫だから、見張っておくよ。」そう言うとソッコーでシアンが眠りに落ちた。
「小さい体だったから無理させ過ぎたかな?」ふと見るとリグもすでに寝ている。そんなに疲れてたのかな?
行き止まりの手前でダンも腰を下ろして二人が起きるのを待つのであった。




