49 基礎魔法クリア
運悪く16層に入る事無く15層をコンプリートしてしまった次の日、さらに下の階層に行く許可を貰いにエルフの様な雰囲気を持つミーニャフォーニャ先生に会いに職員室に来た。
「お邪魔します。」初めて来たけれど、先生に質問する為なのか生徒が結構いるから俺が入ってきて注目される様な事は無かった。
「なんでお前がこんな所に居るんだ?」
「白黒先生。ミーニャフォーニャ先生に用が有って来たんだけど・・・・」ミーニャフォーニャ先生は他の生徒と話をしているし、待って居れば良いのかな?
「白黒言うな。俺にはランベルクって立派な名前が有るんだ。しかし、そのマントって騎士のマントだろ?騎士でも目指す事にしたのか。」
「シアンからのプレゼントだよ。やっぱり似合わない?」
「う~~ん。似合うとは言えないが、色んな騎士が居るから別に違和感は無いか。」
「そっか。騎士って言っても色んな人が居るから、別に気にするほどの事じゃ無いって感じか。」
「まあ、お前を見ても騎士だとは誰も思わないだろうから、騎士に憧れている痛い奴って感じだな。」
「痛い奴・・・・・」
「それで何の用だ?」
「ん?何の用だっけ?」俺は白黒先生に何の用で此処に来たんだっけ?
「おいおいミーニャに何の用で来たんだ?」
「そうだった。15層まで行ったからその先に行きたいな~と思って許可を貰いに来たんだ。勝手に行ったらメチャメチャ怒られそうだからさ。」俺の本能が言っている、ミーニャフォーニャ先生は怒ると怖いって。
「お前にしては賢明な判断だな。勝手に行って事後報告する奴だと思ってたぞ。」
「俺は約束は出来るだけ守るタイプだからね。」白黒先生が担当だったら憶えてなかったと思うけど。
「珍しい取り合わせですね。私に用ですよね?」白黒先生と話をしている間にミーニャフォーニャ先生の手が空いたらしい。
「コイツが15層より下に行きたいんだってよ。その許可を貰いに来たらしいぞ。」
「そうですか。残念ですが16層に行くのは認められませんね。16層からダンジョンに泊まりで探索をする訓練を始めるんです。
複数のパーティーで合同で行動する訓練も含まれているので、単独での行動を許す訳には行きません。」
「困ったな。」
「困る事なんて有るのか?」
「だって暇じゃない。」
「せっかくですから魔法の授業を受けて見たらどうです?あなたは基礎魔法が終わっていない様ですし、他のメンバーが16層に行けるようになるのは早くとも数か月は掛かると思いますから、色々な事に挑戦してみると良いですよ。」
「魔法か。16層に行けるようになったら連絡貰えるのかな?」
「エシャロットが呼びに行くと思いますよ。」
「じゃあ。それまで適当に時間を潰してるよ。」それだけ言って職員室を出た。
そんな訳で懐かしき基礎魔法の授業を受けに来た。
始めの内は学院の方でカリキュラムみたいな感じの物が有ったけど、今ではほとんど自由にやっていて良いみたいで何も制約が無いから授業に来てなかった。
ユメカ先生の授業はたまに行ってるけど、回数は減っている気がする。
ダンジョン組の同期では俺以外は全員、基礎魔法をクリアしているらしい。大勢いるけれど、全員が座学の人達らしい。
知っている人は居ないかな?って周りを見るけど知らない人しか居ない。
「はいは~い。生徒さん達、基礎魔法の授業を始めますよ。各自でやるべき事をやってく~ださい。」各自が各々で魔力の玉を作り始める。
「よし。やるか。」白いマントは汚れが目立つだろうから外して収納空間に入れる。
とりあえず片手で魔力の玉を浮かべる。強く回転を掛けてその回転を維持するように一定の間隔で魔力を強く当てると普通に出来た。
想像の通りにブーメランみたいにマジックショットを投げていたのが良かった。強く回転させれば安定すると思ったんだよね。
「おや。あな~たはユメカ先生の所の生徒さんじゃあ~りませんか。ずい~ぶんと上達されたみた~いですね。あな~たは基礎魔法を習得しまし~~~た。」
「これで、俺も基礎魔法は卒業って事で良いの。」
「そ~です。あな~たは色々な魔法のじゅぎょ~うを受ける資格を今日、手に入れた~のです。あな~たの思うままに魔法を極めてくだ~さい。」
「どんな魔法が有るの?」
「それ~は・・・・」
「それは?」
「ユメ~カ先生に聞くと良いとおも~いますよ。かの~女があな~たの担当なのですから。」
「は はあ。」教えてくれる雰囲気だったと思ったんだけどな。
言われた通りにユメカ先生の所に来たんだけど・・・・
「なんでシードルが此処に居るの?」シードルがマントをチラッと見たけど何を言わなかった。
「恋愛相談を受けていたハズなんだがな。」ユメカ先生は困り顔だ。シードルはどんな相談をしているんだろうか?
「俺はユメカを妻にする事にした。」
「どういう事なの?全く付いて行けないんだけど。」ユメカ先生を見る。
「僕にも良く分からないのだよ。突然惚れたと言い出して毎日通って来るんだ。」シードルを見る。
「ビビッと来たんだよ。俺にはユメカしか居ないって。」何が有ったのか全く分からないぞ。
「だから、僕は生徒と恋愛する気は無いと言って居るだろう。」シードルは全く平然としている。まさかのノーダメージ?
「俺は教えて貰った通りに思いを伝えているだけだ。俺の事を好きになれとは言わない。振り向いてもらえる様に努力するだけだ。」真剣な眼差しでそう答えるシードルがカッコ良く見える。金髪で青い瞳でハリウッド俳優似のグフタスを少し幼くした様な見た目しているしな。
俺にはハリウッドの俳優で背格好が同じ人は見分けが付かないから、イケメンで無い可能性は有るけど。
「君が卒業したら考えるよ。」ユメカ先生は呆れた様に答えているけど、若干嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか?
「それで、君は何をしに来たんだい?昨日来たのに今日も勉強しに来たって事は無いだろう。」
「それがね。ピエロ先生に基礎魔法の認定を貰ったんだけど、どんな魔法のコースが有るのかユメカ先生に聞けって言われて来たんだよ。」
「君の場合は強化魔法一択だろ?」
「なんで?俺にも隠れた魔法の才能が有るかも知れないじゃん。」
「可能性が無いとは言わないが、そもそも君はこっちの世界の文字が満足に読めないだろ。」
「え?マジックショットを使うのには文字は必要なかったよ。」
「走るのに文字の読み書きは必要無いだろ。」
「どういう事?魔法と文字の読み書きに何の関係が有るの。マジックショットを高めて行けば大魔法になるんじゃないの?」
「兄貴さんって大魔法使いたいの?」
「そりゃ~せっかくだし、使えるなら使ってみたいじゃん。俺の魔法で見渡す限り焼野原って凄くない。」
「そりゃ凄いと思うけど俺は興味ないな。」
「なんで?出来るならやってみたいじゃん。」
「元の世界でもオリンピックでマラソンの世界記録を出したら凄いと思うだろ。だからと言って、自分もマラソンで世界新を出したいか?と言えばそんな事は無いだろう?そんな感じの話だぞ。」
「なんか分かる様な分からない様な・・・」
「例えが悪かったな。医師免許を持っている人を凄いと思ったとしても、君は医師免許を自分も取ろうとは思わないだろ?」
「な なるほど。こっちでは大魔法ってそんな感じなんだ。でもさ、魔法なんだし気合が重要な感じじゃないの?」
「魔法に興味が有るなら膨張と圧縮の魔法の授業が有るから、俺と一緒に行ってみる?兄貴さんにも魔法がどんなものなのか分かると思うぞ。」
「無駄な事を・・・」ユメカ先生がボソッと酷い事を言ってるけど無視してシードルと部屋を出る。
そんな訳で膨張と圧縮の魔法の授業を受けに、来た事の無い建物にシードルと共に来た。
「俺って学院の中ってあんまり知らないな。」
「兄貴さんはユメカの所とダンジョンに居る時間が長いからだろ。」
「それもそうか。」まあ学校って用の無い場所には普通行かないから当然って言えば当然か。しかも、この学院の敷地ってバカみたいに広いしね。
シードルの後に付いて二階の教室に入って席に座る。元の世界の学校の教室の倍くらい大きさの教室でまばらに人が居る。
教壇の近くに有る扉があくと静まり返る。
「今日も膨張と圧縮の授業を始める。始めての者が居る様だから、簡単な説明の後に始める様に。」紫色のローブを着てフードを被っている。
不思議な事にフードの中は真っ黒で顔が全く見えない。声的には男だと思う。
「圧縮にせよ膨張にせよ。まずは魔力で空間を掌握する事から始める。
空間の掌握と言うのは、簡単に言うと小さい魔球を複数作って立体を作る事で内部の空間を魔力で掌握する事だ。」ローブから出た手の上に青く光るキューブが大きくなったり小さくなったりしている。
女の子の様な手にも見えるし、女の先生って可能性もあるのかな?
「だからと言って魔球を適当に並べても、バランスが崩れて使い物にはならない。まず必要なのは魔球の数によって作る立体の種類と配置で、この本には一通り記されている。」そう言いながら辞書サイズの厚さの本を一人一人に渡して行く。
本を開くと図形と共に文字がびっしり書かれている。当然だけど読める訳も無い。
「初めての者は5ページから読んで疑問が有れば聞きに来るように。質問が有る者は順番に応えるから私の所へ来るように。」そう言って教壇の席に座ると次々に生徒が先生の前に並んだ。
「シードル 読めないんだけど・・・」
「魔法文字は習ってないか。俺の辞書を貸してやるよ。」そう言って辞書を渡して来る。
シードルがくれた辞書は何とか読めるけど・・・・辞書を引きながら英和辞典を読むとこんな感じなんだろうか?
10分で辞書の解読は断念して図形の通りに小さいマジックショットを辞書の通りに配置してみるけど・・・・そこからどうしたら良いんだろうか?
他の人達を見ても各自それぞれの事をやっているから全く分からない。
「シードル・・・ここからどうすれば良いのかな?」
「この魔球とこの魔球を繋いで立体を作るんだ。」
「どうやって繋げば良いの?」
「どうやって・・・・こう・・・う~ん・・・・・気合かな?」ダメだ。シードルに聞いた俺がバカだった。
授業が終わってシードルが傍に来た。
「どうだった?」
「見てただろ。小さいマジックショットを並べて浮かべてただけだよ。」
「マジックショット?なんで?」
「魔球ってマジックショットの小さい奴でしょ?」
「・・・・・兄貴さん。ユメカの言う通り文字が読める様になってからだな。魔法文字を辞書で解読しながら覚える程度には勉強しないと無理だぞ。」
「魔法って感覚でやるもんじゃないの?」
「理論を覚えた上で感覚を必要とされるって感じだと思うぞ。理論を完璧に実行する事が出来れば魔法の行使が可能になるらしいけど、俺もなかなか出来ないからな。」
「シアンやリグに教えて貰えば出来るかな?」本を読んで覚えるのは俺には無理だと思うんだよね。
「本人に聞いてみるしかないな。次は強化魔法の授業に行くぞ。兄貴さんにピッタリの所だと思うから困らないと思うぞ。」
「俺にピッタリ?」先を行くシードルに付いて行く。
「おうシードル。少しは進歩したか?お前は・・・誰だ?」シードルに続いて教室に入るとリグよりも小さいお地蔵さんの様な男の子に声をかけられた。
「初めましてだよ。シードルの友達?」シードルを見ると俺から一歩離れるところだった。
「何?」男の子を見ると懐に飛び込んでくるところだった。
後ろに跳ぼうとしたけど間に合わず腹を殴られて体が浮いた。
「へえ。反応するか。なかなか有望じゃ無いか。」
「なにすんだよ。」お返しをしようと思ったらすでに間合いから離れた所に居た。
「何って、どの程度の奴かの確認だよ。強化魔法は元の体が弱いと使い物にはならねえからな。」
「・・・・・」仕掛けて来そうな気配がするから気を抜かずに向かい合う。ポンポンが痛いので早く帰りたい気分だ。
「気を抜かない辺りもそれなりに経験値が高そうだな。強化魔法の手本を見せてやるから攻撃してきて良いぞ。」
「・・・・・」絶対カウンター狙ってると思うから手を出さない。
「臆病だな。武器を使っても良いんだぞ。怖いのか?」ニヤニヤ笑って来る姿は憎らしさしかない地蔵って感じだ。
地蔵が俺の間合いにフラフラと入って来たから、収納空間から木刀を取り出しながら一気に斬りつける。
地蔵に木刀を腕で受け止められた。本当に石の地蔵でも叩いたみたいな手応えだ。
「ほら。お返しだ。しっかり腹に魔力を集めないと死ぬぞ。」またしても懐に入られた。
木刀から手を離して俺の腹と地蔵の拳の間に腕を割り込ませる。
ボキッ!
見ると右腕が途中から変な方向に曲がってしまっている。
「マジか。反応しやがった。」
「兄貴さん。早く医務室に。」そう言ってシードルに左手を掴まれて連れて行かれるのだった。




