4 再び町へ
ダンジョンに入って24時間が過ぎようとしていた。
ダンはダンジョンの角部屋を見付けて眠っていた。一度は寝ている時に襲われて頑張って起きていたが限界を超えて動き続けて、やけになって眠る事にしたのだ。
「ああああああああ。」目が覚めると目の前にアリが・・・・・・
「ハア ハア ハア。」今回は挟まれる寸前で起きて良かった。無我夢中で気が付いた時にはアリの弱点に剣が刺さっていた。
「マジで寿命が縮んじゃうよ。まあ、殺されるよりも良いけどさ。」
あ・・・ダメだ。座ってると・・・・・
「うお。剣 剣 剣。」気が付くとアリが近くに来ている。なんで今まで気が付かなかった?
ソッコーで剣で頭を叩いて尻を刺す。
「何なんだよ。確変フィーバー中かよ。座って休む・・・・またかよ。」なんでなのか?近くに来るまで気が付かないみたいだ。こいつ等って気配を消せたりするんだろうか?
「確変は終了したのかな?」壁に寄りかかって座っているけど来なくなった。
「確変が終わってアリ不足になったのかな?ゆっくり休めるから別に良いけど。」
二日後
「迷い始めて何日経ったんだろう?ここが日本なら救助に来そうなものだけど、この世界には救助何て概念は無いだろうな。いい加減腹が減って死にそうなんだけど。」
ダンジョンの中は昼も夜も無いので、時間間隔がすでにバグっている。
「アリって食えるのかな?世の中には食えるアリも居るって言うしな。水を出すのを変化させれば焼いたり出来そうだしアリでも焼いてみるか?
そうは言っても虫は・・・・やっぱり最後の手段だよな。」食べれそうなら積極的に試して行きたいけど、アリは食べれそうかと言われたら、食べられ無さそうな方だよね?
「え?神様は俺に手を差し伸べてくれたのか?」遠くからこちらに向かって動いてくるものが居た。遠目に見てもアリじゃない、あれはウサギだ。
「ウサギは食べ物かと聞かれたら、一羽二羽って数える生き物は日本では食べれるって言う話だった気がする。」
知っているウサギよりも明らかに大きなウサギだけど、大事なのはそこじゃない食べられそうか否かだ。あの柔らかそうな体から考えて明らかに美味しいだろう。
大きさは1m近いけど、一匹でお腹いっぱいになりそうだ。
ウサギは少し手前で止まるとしゃがみ込んだ。
「そんな見え見えの攻撃が当たるかよ。」ウサギが突っ込んで来るのと同時に一歩後ろに飛び退く。
一気に飛び上がったウサギの胸に鈍く光る所が有った。迷わずに剣でその光を刺し貫く。
剣を引き抜くとすぐさまウサギの足の関節から切り落とした。
切り落としたウサギの足首を持って、剣で柔らかい部位を切り取る。
肉がボロボロになっているけど気にせずに右手で握って熱くなる 熱くなると念じながら水を集める要領て力を集めていくとジュワジュワ~と焼ける音がしてくる。
まだだ。生肉は良くないって言うし、もっと もっとだ。水を作って成長したのか?空腹が力を与えているのか分からないが、辛くても耐えて力を集め続けて居る。
「そろそろ良い感じだろ。ってこんな時に。」早くも二羽目のウサギが現れた。
大事な焼きかけの肉は収納空間に入れて二羽目のウサギに集中する。知らぬ間に一羽目のウサギは玉だけ残して消えていた。
しゃがみ込むタイミングに合わせて一気に踏み込んでウサギの顔面に蹴りを入れると、ウサギが仰向けに倒れた。さらに踏み込んで仰向けになったウサギの首を踏みつけてから、胸の鈍く光る光に剣を突き立てた。
「さて邪魔者は片付いた事だし、久しぶりの食事にしますか。」そう言って収納空間から焼きたてほやほやのウサギ肉を取り出すとむしゃぶりついた。
「美味い。ウサギって美味いんだな。」かなり大きいモモ肉だったがあっという間に完食だった。
「せっかくだし、ウサギの肉を収納空間に入れて置けば良いな。これで食料問題も解決だ。」そう言って腹いっぱいになって眠くなったからと眠るのであった。
2週間後
ダンは未だにダンジョンから出る事が叶わずにいた。
「あれ?見た事ない奴が来た。」今まではウサギとアリしか出て来なかったのに今度はデカイ蜘蛛が来た。茶色いベーシックな蜘蛛だけど大型犬くらいの大きさが有る。
俺の中では蜘蛛って素早いイメージがだったけど、8本の足を忙しそうに動かしているのにゆっくりと進んで来る。
アリと違って体を立てて居ないので蜘蛛の頭が太腿くらいの高さだから、一気に飛び越してアリ同様に光っている腹だか尻だか分からないけど踏みつけるとペチャーっと音が聞こえそうな感じで八本の足を広げて倒れた。
「弱いなコイツ。どう考えてもアリの方が強かったぞ。でも、新しい敵が出て来たって事から考えて俺って奥に向ってる?考えてみたら迷路の脱出法って有った気がする・・・・。」
思い出そうと考えている内に二匹目の蜘蛛が来たので瞬殺した。
「そうだ。右手を壁に付けて離さずに進めば必ず出口にたどり着くって奴だ。時間は掛かるけど、これで確実に出られる。」意気揚々と壁に右手を潰えて歩き出す。
「あれ?また蜘蛛が出て来た。」瞬殺して考える。
さっきまではウサギしか出て来なかった事から考えて出口に向かっていたと思う。ずっと右手を右の壁に付けて歩いて来たのに・・・・?戦いの時には壁から手を離したけど・・・あれ?敵はいつも俺の前から来てた。
つまり進行方向のわき道から出て来るか俺に向って進んで来るかの二択だったから、特に気にしなくても右側の壁に沿って進んでいたんだ。
「もしかして?」
思いついた事が合っているのかを確認する為に、敵が落とす玉を蜘蛛が来た方向と逆に2個並べて少し蜘蛛側に戻って座る。
座るとすぐにウサギが来たので倒して玉の位置を確認して元の位置に戻って座る。座るとまたウサギが来た。
ウサギ・ウサギ・蜘蛛・蜘蛛・ウサギ・蜘蛛・蜘蛛・蜘蛛と倒して、ようやく座っていても敵で出て来なくなった。
「実験は成功だ。もしかしたら玉が無くなって確認出来ないかも?って思ったけど大丈夫だったな。」玉を拾って出口に向かって歩く。
「まさか俺が座った瞬間に向きが変わっているなんて普通は気が付かないよな。やっぱり俺って天才だね。不思議なダンジョンだよな?玉を見ながら座ったのに、次の瞬間には目の前に敵が迫っているんだから。」遠くから俺に向ってウサギが向かってきている。
二日後
「やった。やったよ。出口だ。もう駄目だと思ってたよ。
俺はまだ生きてて良いって事だよね。ありがとう。ダンジョンありがとう。」夕日に染まる空がこんなにキレイだと感じた事は今まで無かった。生きてて良かったよ。
久しぶりのけもの道を歩いていくと何度見ても崩れかけの物置って思ってしまう建物が見えて来た。
「それでも屋根と壁がある所で寝れるって素晴らしい事なんだね。」崩れそうな物置の中に入って横になると意識を失った。
次の日
ダンが起きたのは朝の日が昇り辺りが明るくなり始めた時だった。もっとも、本当は一日寝て過ごしているのだが、本人には分かる訳も無い。
「あれ?俺はダンジョンに居たような?」キョロキョロして自分の居る場所を確認する。長時間のまとまった睡眠をとったおかげなのか?異様に頭がスッキリしている。
やる事も無いので収納空間からウサギ肉を出して焼いて食べる。
「邪魔の入らない所でご飯を食べれるって幸せな事だったんだな。ああ、なんて幸福な世界なんだろう。」
しっかりと味わって食べるウサギ肉はとても美味しい、普通にあっちの世界で売ってても買って食べる位に美味い。まあ、最強の調味料《空腹》のおかげかもしれないけど。
「腹も膨れて、水も飲んだ。やる事も無いし町に行ってみるか。まあ、どう考えたって、俺の持っている・・・・なにこれ?」収納空間に占い師が持って居そうな透明な玉が入っていた。
「こんなの拾ったかな?ウサギの皮?糸?黒い棒?」考えてみたら、敵が消えた後に出て来た物を何も考えずに入れていた気がする。
「これってドロップアイテムって事なのかな?ドロップアイテムが出た時って玉も有ったかな?」全然覚えてない。敵を倒して出て来た物か落ちていた物かすら全く分からない。
「部屋を整理すると買った覚えの無い物が出て来たりするけど、そんな感じの現象だったりするのかな?まあ、考えても意味は無いし町に行って売れるかどうか聞いてみるか。」
ガイムの町にたどり着くと門番は見た事の有る・・・・誰だっけ?
「久しぶり。」そう声を掛けると知り合いはずの門番は、怪訝な顔をした。
「久しぶり?俺はお前みたいな奴は知り合いに居ないぞ。
俺は人の顔を忘れた事が無いんだ、適当な事を言ってないで、身分証を見せろ。」数少ない顔見知りに忘れられる苦しみに顔をしかめながら、言われた通りに身分証を渡す。
「お前は異世界人か。ん?言われてみれば見た事が有る様な・・・。
前に町を案内したオッサンか!髪も長くなっているし、すごい痩せたな。前はもっと横にデカかったよな?」
「痩せた?」考えてみれば空腹でモンスターと戦っていたんだから痩せもするか。鏡で自分の体を・・・鏡は見たくないかな。鏡にいい思い出が無い。
「そうか。俺はてっきり死んだと思ってたよ。
いや~良かった。ギルドに行く前に風呂に入って行けよ。風呂屋はギルドの裏だぞ、風呂屋の前に居る奴に言えば散髪もしてくれるからやって貰えよ。
今回は案内はしてやれないけど、ゆっくりして行ってくれよ。」
「ああ。ありがとう。」
微かな記憶を頼りに町を歩く。と言っても小さな町なので特に迷う様な事は無いだろうけれど?
確かギルドの裏に風呂屋が有るって聞いたような気がするので、とりあえず一番目立つ大きな建物の後ろに回ってみると、どうやらギルドに風呂屋が併設されているみたいで大きな建物の奥は風呂屋になっているみたいだ。さらにその奥には馬小屋の様な建物が別に建っている。
馬小屋の方は・・・コメントしないでおこう。
風呂屋の入り口に小学校高学年くらいの女の子が一人で椅子を置いて座っている。明るい青色の髪をポニーテールにしていて、黄色の瞳は俺を見て警戒しているのか?ジッと様子を見ている。
「風呂って此処で合っているかな?」
「小銅貨3枚ですよ。」そう言って手を差し出す姿がなんか微笑ましい。
「お金が無いんだけど、先にギルドに行って換金してくれば良いかな?」汚れている時は風呂に入ってから行くのがマナーって言われたと思ったから来たけど金が必要なら仕方ないよね?
「手持ちが無いんですね。魔石の換金であれば私が代理で行きますよ。ただ、手数料として10%頂きますけど。」
「お願いしても良いかな。入れものって有る?」
「入れ物?これで良いですか。」何言ってんだって顔でカゴを出して来た。目も細かいので玉が落ちる事も無いだろうから、収納空間に入っている黒と赤の魔石をカゴに入れていく。
「これだけ換金してきてくれる。」風呂桶程度の大きさのカゴじゃ全然入りきらなかった。もう一杯くらい有りそう。
「あの・・・話聞いてました?換金する分の10%は手数料になるんですよ。」
「大丈夫。分かっているから、お願いね。」大人が相手だったら必要分しか渡さないけど、小さい子供におl小遣いを上げている気分ってこんな感じなんだろう。
「分かりました。少し待って居て下さい。」そう言って風呂とは別の入り口に入って行った。
考えてみたら風呂に入るのに何も持ってない。タオルも着替えも・・・あの子が帰ってきたらどこに売ってるか聞いてみよう。
少しすると戻って来た。
「中銅貨5枚と小銅貨82枚になりました。タオルと石鹸・着替えは必要ですか?」革袋を受け取ると結構な重量感がある。
「え?有るの。」
「持って無さそうだったので、ギルドに有った物ですが持ってきました。」
「えっと、いくら払えば良いのかな?」
「全部で小銅貨30枚で良いですよ。」
「それだと少ないでしょ。」
「本来の換金では小銅貨一枚も貰えないんですよ。30枚でも貰いすぎなくらいなんです。」ラッキーって貰っていかない辺り真面目な良い子だ。
「気も利くし、頭も良いし、可愛いし良いお嫁さんになりそうだね。」お金を渡しながら言う。
「お嫁さん?私が。あなただったら欲しいですか私みたいなの?」
「そりゃ欲しいよ。お風呂に行ってくるね。」もう少し大きくなったら本当に欲しいけど、その時には俺と話もしてくれなくなっている事だろう。




