45 亜人窟
現在15層での戦闘中。さすがに7体のモンスターを同時に相手にするのは大変なので、一部はシードルが止めて隙をついてマリーネちゃんが倒すって感じ。
蝙蝠が近づいた時にはライラちゃんが槍でサクッと倒したり、サイゼリエール君が魔法で打ち落としたりして手間取らずに倒している。
「やった。蝙蝠を私の魔法で倒せた。カミーラって教えるの上手なのね。」敵を倒して後ろを見ると、サイゼリエール君とサラーシアちゃんが話をしている所だった。
「アレがやっているのを教えて貰っただけで、僕の手柄じゃない。」
「カミーラが教えて貰ったの?」エルフさんが意外そうな顔で聞いている。
「僕のパーティーで一緒のエルフが教わって、それをパーティーで共有する形になったんだ。」
「カミーラのパーティーに居るエルフってもしかして、ナーガテリアじゃないよね?」
「知り合いなのか?」
「うん。みんなゴメン。私、なんだか体調が悪くなったから帰るね。」
「え?どうしました。」マリーネちゃんが聞こうとした時にはエルフさんは出口石で消えていった。
「ピ ピールテリア。」急に一人ぼっちになったサイゼリエール君は何が何だか分からない顔をしているけど、俺としては話もして無いし戦いにも参加してないからな。
エルフさんが帰ったけれど、パーティーとしては特に何も変化は無い。少しだけサイゼリエール君が落ち込んでいる位だ。
「楽しい~。倒せるとレベルも上がるし、魔石も手に入るし気分は最高。」サラーシアちゃんがサイゼリエール君に教わった魔法のスピードを上げる方法を知ってからバンバン倒している。
「カミーラ。私にもどうやってるか教えてよ。」
「魔法の速射ってそんなに難しい物なの?」とりあえず近くに居たマリーネちゃんに聞いてみる。
「普通は誰かの弟子にでもならないと教えて貰えないんですよ。特にサラは中層の敵は避けるから当てられなかったんですよ。」
「引き付けが甘いって事?」
「そうよ。私はあんた達と違って遠くから安全に倒したいの。ライラだってそうでしょ?」
「サラ程じゃないけど、あんまり近くで戦いたくは無いわね。」
「私も攻撃する分には良いんですけど、盾で受けるとかすると怖くなってしまって・・・・」
「ナーガちゃんって凄いんだな。女の子なのに前衛バリバリこなすって。」
「まあ、エルフと人じゃ感覚が違うって言うしな。それに僕もあまり近くで戦うのは避けたいと思うぞ。」
「カミーラは女じゃないだろ。俺の盾も出来れば女子を守りたいって言ってるぞ。」
「シードルさん。お願いしますね」
「頼んだよ」
「私は後ろから槍で援護するからね」
「僕は後衛だからな」
「一番の盾は兄貴さんだけどな」なんでか巻き込まれる。
そんなこんなで気が付けば18階層。確かにゴブリンと蝙蝠が一回で多く出て来るけど、毎回10体来る訳でも無く意外に時間が有る。
「魔力使い過ぎた~」
「調子に乗るからよ。私みたいに他の武器で戦ったり出来ないんだから、休みながら何時もみたいに魔石を集めて良いわよ。」
「マリーネ。ライラが意地悪言うよ~。」
「はいはい。ライラも意地悪で言ってるんじゃないんですよ。」マリーネちゃんがサラーシアちゃんをヨシヨシしている。
「三人って幼馴染か何かなのか?」俺が思った事を代弁してくれるシードルは出来る子だったのか。
「違うけどなんで?」ライラちゃんが答える。
「仲が良いって言うか?息が合っているって言うか?」
「学院に来てからは一緒に居る時間が長いからですかね?」三人がお互いに顔を見合わせている。
「次が来たわよ。盾役達よ頼んだわよ。私が魔石を拾うから。」
「行ってきます」さっさと前に出て倒しに行く。
「勢いで18層まで来ちゃいましたけど、17層のマップを埋めた方が良いと思いませんか?」マリーネちゃんが何か気が付いたんだろうか?
「なんか都合の悪い事でも有った?」
「確かにそうだな」シードルがマップを見ながら答えるので、俺も自分のマップを取り出してみると最短距離で来たのが良く分かる。
14層より前はマップが切れているから分からないけど、14層から一本道になっている。
「そうね。気が付かない内に19層に入って、ジャイアントゴブリンと会いたくないわね。」
「でも、これって一度は此処まで来た事が有るって事でしょ?」
「私の研究の実験に連れて来て貰った事が有るのよ。だから、ここまでのマップは有るの。」
「どんな実験だったの?」サラーシアちゃんが嫌な顔をした。これは聞いちゃダメな事だったか。
「光の剣に決まっているでしょ。実用に耐えられないって此処での実験で答えが出たのよ。」
「でも改良は進んでいるんでしょ?」ライラちゃんが聞く。
「性能は落とさずに30%位の魔力削減は出来たけど、せめて50%まで削らないと・・・・」
「じゃあ、17層を探索するって事で良いんじゃないか?」沈黙のサイゼリエール君が話を変えてくれた。
「じゃあ、引き返しますから進むのはあっちですよ。」そう言って俺に行く方向をマリーネちゃんが指示してくれる。
「敵が多いから探索が進まないね」一度に出て来る数が多いから、戦っている時間が長くなるせいでマップは全然埋まらない。
「まあ、訓練が目的だからな。マップを埋めるのはついでだからな。」シードルが答えてくれた。
「サラもたまに魔法で倒していますし、今日はレベルが上がって嬉しそうですよ。」シードルの横で戦っているマリーネちゃんだ。
「しかし、兄貴さんなんだろ。あんなやり方で魔法撃ち始めたのって。」
「なんで投げなかったんだろう?普通に気が付きそうなものなのに。」
「投げるってのは誰もが一度は試すんじゃ無いか?俺もやった事有るし。」
「俺の速射ショットは投げてるだけだよ?」投げる事でスピードが劇的に改善したのだ。
「回転させてから投げて居るだろ。マジックショットを回転させて、投げた魔力を自分の所に戻って来るようにするなんて誰もやらねえよ。」
「そうだぞ。しかも、ダンジョンの中でやっているんだ。お前の考える事を当たり前だと思われると迷惑だ。」サイゼリエール君は元気になったんだろうか?後衛なのに前衛の位置まで来ている。
「他の魔法使いってどうやって魔法を当てているんだろう?」思い出してみるとシアンが魔法を投げているイメージが無い。
「撃ちだすって言われているな。基礎魔法が終わると、攻撃魔法基礎で習うらしいがセンスが無いと使えないって聞いたぞ。」
「前から気になってたんだけど、みんなそういう情報って誰から聞いてくるの?」サイゼリエール君に聞いてみる。
「座学での先輩だが?」
「カミーラは何の授業を取ってるんだ?一度も会った事無いけど。」シードルが混じって来て置いてきぼりだ。
「政治経済と属性だ。」
「そっか。俺は物理と魔法構築だからな。会う訳も無いか。」
「ほう。魔法構築って事は、アイモス先生の授業を受けているのか?あの人は言い回しが難解だからな。」サラーシアちゃんまで混じって訳の分からない話を始めてしまった。
「ダンさん。来ましたよ。」言われて前を見るとゴブリンと蝙蝠が来ていたので、暇つぶしに倒しに行く。
マリーネちゃんの指示でダンジョンの探索を終了してギルドまで戻って来た。
「いや~。今回は疲れたけど、稼げた。」サラーシアちゃんはご満悦である。
「確かに一人中銅貨30枚は良い稼ぎだな。」シードルも喜んでいる。
「僕はピールテリアが心配だから、先に帰っても良いか?」
「良いんじゃないか?俺達もこれで解散するだろうし。」
「今日は世話になった。」そう言ってサイゼリエール君が帰って行った。
「支援休みが終わるまで、このパーティーで《亜人窟》に潜らないか?」
「ライラ。それは迷惑ですよ。」
「良いじゃ無いか聞くだけならタダだし。」
「サラまで。」マリーネちゃんが申し訳なさそうに俺を見て来る。
「俺は別に構わないけど?」シードルを見る。
「明日も今日と同じ時間で良いのか?カミーラは俺が明日誘って見るけど。」
「良いんですか。じゃあ、明日も今日と同じ時間に此処で待ってますね。」そう言って別れた。
次の日に学院の門で待って居たのはシードル一人だけだった。
「サイゼリエール君はどうしたの?」
「振られてふさぎ込んでたぞ。なんでも他の女エルフと関わりがある男とは付き合えないとか言われたらしい。」
「エルフにはそんな掟が有ったりするのかな?」
「さあ?人族も国ごとに風習が違ったりするからな。」
イチャイチャしているサイゼリエール君はウザかったが、振られて凹んでいるって聞くと(ざまあ)とは思えないな。明日は我が身だからだろうか?
二人で無言のままギルドに到着すると4人の女子が待って居た。
「兄貴さん」
「あ ああ。なんでだ。」ピールテリアも平然と女子に混じって待って居た。




