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32 支援要請

 寮の食堂で朝ごはんを食べて居ると周りがやけに騒がしい。何か有ったのかな?


 「兄貴、聞いた?」いつも俺よりも早い朝食を食べて、学院に出掛ける優等生のリグが慌てて来た。


 「どしたの?そんなに慌てて。」


 「ベルバイン帝国からダンジョン暴走に対する支援要請が来たらしいんだよ。」


 「それで騒がしいんだ。」


 「兄貴は呑気だね。僕達も行くんだよ。」


 「え?俺達学生だよ。そんな危険な所に行っても役に立たないでしょ。」


 「この学院はダンジョン暴走に対する支援要請が来た時に生徒を含めて支援に行くんだよ。この学院で卒業間近の人達って、ダンジョンの中層でも深層に近い所まで降りているから戦力としては十分なんだよ。」


 「でも、俺達はそんなに深くまで降りてないじゃん。足手まといにしかならないでしょ。」


 「前に言ったけど冒険者の大半は中層に入らないんだよ。でも、僕達はすでに中層に入っているよね。」


 「その辺の冒険者よりも役に立つって事なの?」


 「そうだよ。その地域に居る冒険者にはギルドで町を守る事を義務付ける位には人手が必要なんだよ。」


 「せっかくだから全員連れて来いよ的なノリなの?でも、どうやって行くのさ。その何とか帝国に」


 「転移魔方陣が有るよ。ダンジョンの暴走って分かるくらいには前触れが有るからね。自分達で抑え込めない可能性を考えて、支援要請用に転移魔方陣を作って置くんだよ。」


 「なんて用意周到な。別に用が有る訳じゃないけど、戦争に行かされる的なのは勘弁してほしい。」


 「死ぬ事は滅多にないって言うけど、危険なのは変わらないからね。まあ現地の人には感謝されるし、活躍するとモテルらしいけどね。」


 「どうせ俺達がそんなに活躍出来る事なんて無いだろ。」


 「そうでも無いよ。」


 「え?」


 「さっきも言ったけど、ほとんどの冒険者は浅い階層しか行かないんだ。深い階層に入る様な人たちは当然厳しいって思われる所に派遣されるでしょ。そうすると・・・」


 「それ以外の地域は手薄になるって事か。つまりモテモテチャンス。」


 「だから、意外に活躍の機会って有るらしいよ。だから、周りも騒がしいんだけどね。」


 「言われてみれば祭りの前みたいな雰囲気だな。」確かにこれから戦争に駆り出される感じの雰囲気ではないな。





 そんな訳で入学の時に一度だけ来た校庭の様な広場に来た。


 「なんか思ったよりも数が少ないんだな。」入学の時よりも明らかに人が少ない。半分居るかどうかって感じだ。


 「兄貴は座学に出てないから知らないだろうけど、座学と魔法理論を学んで何かしらの発明をして卒業を狙う人達って多いんだよ。」


 「どういう事?」


 「この学院って卒業する方法が二つあるんだ。一つは兄貴も知っていると思うけど、ダンジョンの深層で相応の評価を得る事ね。」


 「もう一つは座学で優秀な成績を取るって事か?」恐らく俺には不可能な卒業方法だろう。


 「違うよ。教わるのは使う為で、何かしらの有意義な発明や発見が評価されれば卒業できるんだよ。」


 「凄いハードル高そうなんだけど、卒業する人が居るんだよね。」


 「年に数人だけどね。」


 「なんかおかしくない?入学の時には倍くらいは居たよね?と言う事は半数は座学に行っているんじゃないの?」


 「そうだよ。5年くらいは頑張る人が多いみたいだよ。その後は諦めて退学するか、ダンジョンに入るかするみたいだけど。僕達の2パーティーだけが今年入学のダンジョン組みたいだよ。」


 「一緒に来た貴族の面々は座学に行っているの?」


 「そうゆう事だよ。」


 「ダーリン」なんかシアンがおめかしして現れた。


 「どうしたの?可愛いカッコして。」普段のローブはダンジョンで使っているので、明らかに新しい服を着ているのが分かる。


 「支援要請が有ったって聞いたから、装備を一新して来たの。ダーリンが魔石を売ってくれたから、お金も出来たし安全の為にもね。」よく見たらシアンの後ろにはエメルダと侍女さんとハミラちゃんが居る。


 「なるほど、4人で急いで買い物に行ってきたのね。こんなに朝早く店なんてやってるの?」こっちの世界の基準は分からないけど、あっちの世界で言うところの7時位だと思うんだけど?


 「お店の人達は支援要請が有ったって知っているから臨時で開けているのよ。危険な所に行く前に準備をするのは当たり前だからね。」侍女さんもなんでかご機嫌だ。





 「静粛に」


 「説明が始まるみたいだな。」一段高い場所に入学の時にも一度だけ見た学長のエルフ(男)が居て静かになるのを待って居る。


 「これからベルバイン帝国・ベルベット領にてダンジョンの暴走が起きる事が確認された。諸君らはいち早くい行って準備や備えを行い、クジャタ学院の名声を高めてもらいたい。


 当然その行いが自分達の今後に良い影響を与える事だろう。此処にクジャタ学院のベルバイン帝国・ベルベット領のダンジョン暴走に対する出撃を宣言する。」


 「おおおおおおおおお」


 「なんかすっごい盛り上がるんだな。」


 「僕も初めて知ったよ。」


 学長の次に見慣れた緑色の髪の女の人が壇上に上がる。


 「これより我々の部隊を5部隊に割る。それぞれの隊には責任者として教員を付ける。各自教員の指示に従い任務に当たれ。」


 その後は何とか先生がダンジョンの到達度なんちゃらを担当って話が続く。


 「そして、最後に今年ダンジョンに入り始めたダンジョン新人組にはランベルクとフォッケルン。」


 「どうしたのかな?なんかザワザワしているよ。」


 「フォッケルンってダンジョンの管理事務所の人なんだよ。管理事務所の所長は一番初めに呼ばれてたけど、管理事務所の人が新人組に入るのは珍しいのかもね。」


 「これより各自は責任者の所に行き。同じゲートから任務地へと赴け。諸君らの活躍を期待する。」言い終わるとみんなして慌ただしく動き出した。


 「兄貴こっちだよ。」本当に頼りになるリーダーだ。アワアワしている俺の行く場所をしっかり指示してくれる。


 「お~い。新人組はこっちだぞ。」なんか凄い髪型の人が責任者らしい。黒髪なのに前髪の一部だけ白い、バンドでもやっているかⅤチューバ―みたいだ。


 「もしかして、リグのパーティーの担当している先生じゃない?」


 「そうだよ。珍しいね男の人の顔を覚えてるなんて。」


 「顔じゃ無くて髪型?髪色で覚えてたんだよ。」


 「ほらほら無駄口は叩かないでさっさとしろ。あっちに行けばとりあえず時間は有るからな。」何も無い所に石で出来た扉が置いて有ったけど、モニュメントじゃ無かったらしい。


 門が開いていると明らかに違う景色の場所が見える。


 順番に次々と違う景色の中に進んで行く生徒に混じって俺達も扉を潜った。






 「すげ~。山が近い。」アイリスは広い平原に有るので山が遠いが、扉を潜るとすぐ目の前に山が有る。


 「兄貴。そんな事言ってないで道開けてよ。」


 「ゴメンゴメン。」


 「もっと大きな町かと思ったら小さい村なのね。」侍女さんの言う通りで10件程度の家がポツポツ有る集落的な感じだ。


 「エシャ。そういう事を言ってはダメよ。」


 「此処の先に大きな町が有るんですよ。その町の前で止めたいから此処で防衛線を張るんです。」声のした方を見るとダンジョンの近くで話したメガネの兄ちゃんだ。


 「それなら町の方が壁とかもしっかりして居て守り易いんじゃないの?」リグが当然の質問をする。なんせ此処には竹で囲いを作ってあるだけで、こんなので守れるの?って感じの状況だ。


 「元々こっちに魔物が来る可能性は低いって判断なんですよ。あくまでこぼれた魔物に対する予防的な措置なので、そこまでしっかりとした防衛は必要ないとの判断です。」


 「だから、僕達新人組が此処の防衛になってるのか。」


 「お~い。全員集まれ。」さっきの特徴的な髪型の先生が呼んでいるので集まる。


 「此処はダンジョンから離れているから、仮にダンジョンの暴走が起きたとしても一日は猶予が有る場所だ。これから冒険者組がダンジョンの中に入って状況を確認してからの情報の共有が図られるが、時間的な猶予が有るのだから防壁の作成に取り掛かる。」


 「暴走寸前のダンジョンに入って確認しないとならないなんて、冒険者って大変なんだな。」


 「冒険者じゃないよ。学院の生徒だよ。先生の話を聞いて無かったでしょ。」


 「自分に関係無い事って聞き流すスキルをあっちの世界で体得しているからな。」会社の朝礼でさえ、必要なこと以外は記憶に残らない。


 「冒険者組ってのはもうすぐ卒業する先輩たちの事だよ。いつでも冒険者に成れるって意味なんだと思うよ。」


 「でも、ほとんどは貴族なんだろ?冒険者じゃ無いよね。」


 「それもそうだね。」






 ちょうどそのころ暴走寸前のダンジョンには冒険者組のダンの先輩たちとダンが《教育用ダンジョン》で見かける身長のわりに横幅の広い男トム・グリットマンとミネルバ女史が入っていた。


 「トムさん。もう浅い階層のモンスターが終わって、中層のモンスターになったよ。明らかに今までよりも早いけど良いの?」赤い長い髪の女子生徒が、複数の氷の矢を大量のモンスターに雨の様に浴びせながら聞く。


 「状況的には良くねえな。ちゃんと管理してなかったなコイツは。深層の魔物の数が多くなるぞ。」


 「地の利を生かして外で迎え撃った方が無難な様だな。」


 「ミネルバの考えに同意だな。ダンジョンの中じゃガキ共に死人が出るわな。」


 「じゃあ。時間を稼ぎつつ撤退と言う事でトム氏も良いな。」


 「ああ」


 「では、後衛の一人を先に地上に行かせて迎え撃てる態勢を整える様に通達してくれ。我々は徐々に後退しつつ準備が整うまで時間を稼ぐ。モンスターを殺すよりも足止めに切り替えろ。」






 「なんでみんなして土魔法だったり強化魔法だったりって使えるんだよ。」村では着いて早々に防壁を作る作業が始まっていた。


 「兄貴の使う熱を伝えるよりも一般的な魔法だからね。子供の頃には泥遊びをするから、その時に普通は覚えるんだよ。まあ、魔力の量の問題で大した事は出来ないけど。」


 「それなら、なんでこの村の周りは竹でバリケードを作ってるんだ?」


 「そりゃ、この広い空間を覆うほどの土魔法って大変でしょ?今作っている様な防壁なんて数年するとダメになっているよ。」


 「そうなの?」


 「そりゃ風雨に晒されるんだから定期的にメンテナンスしないとダメになるでしょ。僕達が作った防壁は村の人達で管理して残すとは思うけど、普通はしっかりした町じゃ無いと防壁を作ったり出来ないよ。」


 「そう言えばなんで繋げないんだ?後で繋げる感じの工法?」人が通れる位の幅が5mおき位に空いている。


 「大きい魔物の侵入と大群が一気に雪崩込まない様にしているだけだからね。他の面はもっと隙間を少なくするはずだよ。」


 「もしかしてこの出口で数人がかりで戦う感じ?」


 「攻めて来る魔物の種類によってだと思うけどね。」


 「ダーリン、疲れた。抱っこで移動して。」今回の土木作業のエース・シアンだ。


 「了解だ。」役に立たない俺はシアンの補佐係として同行しているので、当然要望に応えてお姫様抱っこで移動する。シアンが小さいからか、異世界で鍛えられたからか余裕で抱っこできる。


 「休んでいる人が目立つな。」あっちこっちで集まって談笑している人が多い。


 「魔力切れにならない様に休んでいるんだよ。みんなシアンみたいに魔力量が多い訳じゃ無いからね。」


 「そっか。リグは大丈夫なの?」リグはシアンと一緒になって作業しているぞ。


 「僕は強化の方をメインにやっているからね。魔力の消費量が少ないから。」


 「謙遜しているけど、リグも魔力量が多いのよ。同じくらいの力量の人よりも2割は多いのよ。」


 「そうなんだ。凄いじゃん。」


 「兄貴の方が魔力量が多いからね。褒められても微妙な気分だよ。」


 「え?そうなの。」他人の魔力量ってどうやって分かるんだろう?


 「そうよ。私が抱っこして貰っている間にダーリンから魔力を吸ってるもん。でも、全然余裕でしょ?」


 「言われてみればなんか抜けて行ってる気がする。」抱っこで運んでいるから気にならなかったけど、分かると結構な勢いで抜かれていくのが分かる。だから、作る予定地についてもなかなか降りなかったのか。


 「ダーリン。ご馳走様。下ろしてくれる。」言われるままにシアンを下ろした。自分の魔力を吸ってご馳走様って言われるのって複雑な気持ちになるな。まあ、オッサンに言われる事を考えるとシアンで良かったと思おう。

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