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24 ダンジョン実習

 「ダーリンさんは今回も重症ですね。」


 「にこやかに言う事じゃ無いと思うんだけど?」今日も前回の模擬戦同様に可動式サンドバックの役割でボロボロになって病院送り的な保健室送りになってしまった。


 「元気なダーリンも良いけど、重傷でボロボロのダーリンも安心感が有って良いと思うんだ。」


 「なんでボロボロだと安心感が有るのさ、普通は可哀想とかちゃんと治るかなとか心配になるところでしょ。」


 「アイナの治癒魔法を舐めちゃダメだよ。死んでなければ治せるって優れモノだよ。それを知っているからこそ私も安心してられるんだけどね。」


 「なんかエメルダの治癒魔法が少し怖くなってきたんだけど・・・」聖女様って呼びたいんだけど、呼ぶと怖い顔するんだよな。


 「残痛はしばらく残りますけど、完全復活の治癒魔法ですよ。なんの心配もいりません。」


 「アイナのお墨付きが有るんだし、兄貴はこれからも遠慮なく瀕死になれるね。」


 「瀕死になりたい奴なんて居る訳無いだろ。なんで今回もサンドバックになるんだよ。」


 「先生の方針で兄貴が居る方は不利になる様にチームが組まれているみたいなんだよね。今回も相手側の方が明らかに多かったし。」


 「もしかして前回も相手の作戦が当たったって事では無いの?」


 「たぶんだけど、先制攻撃を指示してたんだと思うよ。」


 「なかなか鋭いな少年。2回目で気が付くのが居るとは思わなかったぞ。」いつの間にかリグの後ろに先生が立っている。身長も俺より高い(たぶん)濃い緑の髪の女性だ。


 「やっぱり仕組んだものだったんだ。」一瞬だけ驚いた表情をしたけど、リグは立て直したらしい。俺ならすぐには話が出来無いのに、こ奴やりよる。


 「チームの力があまりにも離れすぎるのは良くないからな。」


 「ダーリン一1人に10人近くの人が攻撃に参加できるのは、偏り過ぎじゃ無いの?」


 「現実問題、仕留められて無いじゃ無いか。」


 「必死に逃げているからね。」リンチを指導する人間が教師なんてやってて良いのか?


 「ダーリンさん。治癒魔法は終わりましたよ。」


 「ありがとう。」


 「あと4日は同じような演習が有るから頑張ってくれたまえ。その後はダンジョンになるから、しばらく開く事になるがな。」そう言って笑いながら去って行く。


 「あの先生ってドSだよな。」みんなもそう思ったみたいで頷いてくれた。





 「俺って進歩が遅いよね?」本日も文字の読み書きの練習中である。女子は女子だけど先生だと二人きりでも緊張しないのってなんでだろうか?


 「君の進歩の速度は別に遅いとは思わないぞ。教えている側から見ると概ね成長はゆっくりなものだからな。」


 「こうなんか一撃で頭に入る魔法みたいのって無いのかな?」


 「有ればみんな使っている、自分との差が大きくなるとは考えられないか?」


 「ぐうの音も出ない返答をありがとう。」


 「その話をするという事は、基礎魔法の方も進みが悪いと言う訳か」


 「ご名答。」


 「手の平で玉を作る練習をしているんだろう?指先をこうやって近づけてやると難易度が下がるから、そこから慣れていくと良いと思うぞ。」


 「なるほど。」とりあえずやってみると、確かに出来る。


 「まったく此処は文字の読み書きの練習をするところだぞ。そういう事は基本魔法の時間にする事だ。」


 「分かりました。」そう言っても字の読み書きを続けるのであった。






 結局は4日間経っても大した進歩は無いままにダンジョン実習の時間になった。


 連れて来られたダンジョンは学院の端に入り口が有った。こんなに近くて大丈夫なのかと思ったけど、偉い人が神様にこの場所に教育用のダンジョンが欲しいと嘆願して出来たらしい。


 神と交信してしまう位だから、この世界の人は信仰が厚いかと思いきやそうでも無いらしい。リグが言うには後付けの可能性の方が高いからだそうだ。それを言うと信じられるものが無くなりそうだけど、そういう事らしい。


 そのダンジョンの入り口で身長の割に横幅の広い男がみんなに向って話している。ダンジョンの管理人って事らしい。


 「ヒヨッコ共の訓練には此処のダンジョンの8層までを使うからな。間違っても9層には降りない様に注意しろ。パーティー単位での行動になるから護衛する教員の数は足りているハズだが、絶対じゃない事を頭に入れて置けよ。」


 パーティーを作ってみんな勝手に入って行くけど・・・リグもシアンも他の人達と入って行ったけど俺はどうすれば・・・・?


 「お前がブライス様の言ってた奴か。お前は一人で勝手に活動して良いぞ。」


 「なんで俺だけ仲間はずれなの?」この学院では俺をボッチにしたいらしい。


 「お前が入ると周りのレベルが分からなくなるだろ。始めから危険性の無いって分かっている奴は別行動させるのが普通だ。」


 「どういう事?」


 「ジャイアントゴブリンをまぐれでも一対一で倒せるだけの実力が有る奴が、8層じゃあ力が測れないって事だ。数日すればお前もパーティーに入れて15層位まで行けるように組まれるから今日は一人で遊んでいろ。」


 「行けって事?」頷くので仕方なく一人で入って行く。





 此処のダンジョンも《能無しのダンジョン》と変わらない作りの様だ。少し歩いてモンスターを探すとヒヨコだ。黄色いピヨピヨ言ってる奴がニワトリサイズになっての登場だ。


 ヒヨコなのにニワトリの大きさってどうなんだ?って思うけど・・・・


 蹴って壁に叩き付けて倒したけど・・・・とても気分が悪くなる。俺を目掛けて進んで来る姿は可愛いヒヨコそのもの、そのヒヨコを壁に蹴り飛ばして殺すって精神衛生上どうなのって話だ。


 そんな事を考えている内に次の奴がやって来た。


 「よし。此処は無視して進んでみよう。」


 一匹が俺の足元をウロウロして突っついて来る。指でツンツンされる程度にしか感じない、相手にせずに進んで行く。


 2匹が俺の足に纏わりついて来る。3匹・・・4匹・・・5匹・・・うっとうしいな。


 歩くのに邪魔でたまに蹴るけど軽くだから、すぐに立ち上がって向かって来る。


 ハッキリ言って邪魔だ。足元にウロウロと6匹も居ると歩きづらい。突っつかれても特に痛い訳でも無いし、邪魔だから殺すってのもな。


 しばらくすると俺の周りはヒヨコだらけになった。こいつ等は一体何がしたいんだろうか?数えるのが馬鹿らしくなるくらいに集まってウロウロするだけだ。


 「うわ~~~。」横から叫び声が聞こえたと思ったら、パチンコの弾とか矢とか魔法が次々飛んでくる。


 魔法は横道から来るから走って進むと俺には魔法が飛んで来なくなったけど、ヒヨコたちは攻撃が飛んでくる方に向って進んで行く。


 ヒヨコ達が行った先から怒声や悲鳴が上がっている・・・こっそり壁に隠れて覗き込むと子供達がヒヨコ達に飲み込まれそうになっている。


 急いで飛び出して子供達の近くに居るヒヨコ達をサッカーボールの用のガンガン蹴っ飛ばして、壁に叩き付ける。子供達を守るためなので仕方ない。


 「大丈夫だった?」一匹残らず倒してから子供達の無事を確認する。


 「す すごい。一人で武器も使わずにあの数を倒すなんて。」見た目年齢でシアンと同じくらいの男の子5人がキラキラした目で俺を見てるのが苦しい。


 「ケガとかしてない?」ケガしていたら完全に俺のせいだよ。


 「少し突っつかれたけど大丈夫です。助けて頂いてありがとうございました。」見た目は普通の悪ガキって感じなのにしっかりした子達だ。


 「もう帰るの?」出口石を取り出しているので聞いてみる。


 「さっきのモンスターの暴走で一人魔力切れになったんです。それに、またモンスターの暴走が有ったら僕達には危険だから。」


 「じゃ じゃあさ。俺と一緒に行動しない?そうすれば大丈夫だし、このポーション使えば魔力も問題無いでしょ。俺も一人で寂しいしさ。」


 「でも、そういう事はあまり良くないと。」


 「危なくなったら俺が守るってだけだよ。じゃあ、こうしよう。君たちが進んで行く方向に後から俺が付いて行っているだけって事で。」


 「みんな良いかな?」他の子供達にも確認を取っている。黒い髪と茶色の髪の男の子が5人でパーティー組んで潜っているみたいだ。


 「良いよ。まだ来たばっかりだし、もっとレベル上げたいじゃん。」前衛なのか木の棒を握り締めた黒髪の男の子が答えた。


 「マジックポーションはいくつ必要?」俺のせいで怖い目にあって、魔力切れになったんだからせめて回復して欲しい。この子達に俺に付いて来たヒヨコだったって今更言えないし。


 「じゃあ二本貰えますか?お金は後で・・・」


 「お金は良いから。困った時はお互い様って言うでしょ。」そう言って無理やり渡す。


 「ありがとうございます。」





 6人でヒヨコエリアを散策する。どうやら俺もパーティーに含まれたのか一気にマップが広がった。


 「ほらほら。お休みの時間だぞ。」そう言って集めて非常食を配る。


 「どうしてこのダンジョンに入っているんですか?」礼儀正しいリーダーの子が話しかけて来た。


 「クジャタ学院に入れられたんだけど、そのダンジョンの授業でさ。俺が居るとみんなのレベルが分からなくなるって言うから一人で行動しているんだよ。」


 「そうなんだ。あの数のヒヨコをあっと言う間に倒しちゃったんだし、クジャタ学院ってやっぱりすごい人が居るんだ。」なんか期待されている気がするけど、相手は子供だし別に良いか。


 「魔法の勉強もするんだよね?どういう練習をするの?」


 「こうやって魔力で玉を作る練習をするんだよ。そこから先は出来る様になってからだけどね。」そう言ってユメカ先生に教えて貰った通りに指先を近づけて玉を作って見せる。


 「俺もやってみよう。」


 「ちょっと待った。ダンジョンは危険だからダンジョンから出てやろうな。」リグ先生の受け売りを言って置く。何か有ったら俺のせいだし。


 そんな話をしている時にヒヨコが来た。ふと思ってしまった。この玉にして撃てば威力が有るんじゃ無いだろうか?


 「ドドン 波~~~~。」タイミングもピッタリで撃てた。しかも、当たったヒヨコは爆散した。


 「すげ~~。」子供達は大喜びで有る。俺も一緒に大喜びだ。


 その後は子供達がみんなしてマジックショットを使って戦う様になった。前衛も後衛も関係なくマジックショットを順番に撃っていく。


 ヒヨコが近づきすぎると棒で倒したり、魔法で倒したりしているけど・・・なんで氷の矢を撃てる子までマジックショットを使っているんだろう?





 「今日は一日ありがとうございました。」


 「良いよ 良いよ。俺も楽しめたし。」一緒になって遊んでいただけな気もする。


 「魔石も全部貰っちゃって良いんですか?」


 「良いよ。またね。」そう言って出口石で出て行くのを見送った。


 だいぶマップも進んで2階層を目指して進む。学院の授業よりもダンジョンの方が性に合っているってどうなんだろう?


 暇なので歩きながら魔力を指先に集めて玉を作って維持する。手の平になると難易度が上がるけど指先だったら簡単に出来る。大きさはガチャガチャのカプセルから大きく出来ないけど。


 そしてヒヨコは無視して歩いているから、20匹くらい引き連れたまま2階層に着いた。


 「始めて見る敵だ。スケルトンで合ってるかな?」人骨が動いている。人体模型が動いているって感じで、そういうのが居るかもって分かっているとそれほど恐怖は無いもんだ。


 スケルトンが近づいてくるとヒヨコを持ち上げて、床に叩き付けた。


 「何しているのコイツ?」次々に捕まえては床に叩き付けて殺してく。ヒヨコも仲間が襲われているからか?スケルトンに向っていく。


 何やってんだろうって眺めていると半分位殺した所で、スケルトンの右手の手首が無くなり右肘から先が一本の棒のようになって長くなった。右手が剣になったみたいだけど、手首が無くなったから不格好に見える。


 「なんだ?」伸びた腕でヒヨコを突き刺して殺して行く。


 全部殺しきる時には左手が盾のように大きくなっていた。

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