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9 再び出撃準備

 「汚ねえ天井だな。」目が覚めると染みと言うよりもまだら模様になっている天井のあまりの汚さに思わず声に出た。


 部屋の中を見回すけど誰も居ない。


 「なんかメチャメチャだるいな。」体を起こすだけで気合が必要なくらい体が重たい。


 「なんで全裸?」


 着る物が無いか探すと、装備ではない新しい服が綺麗に畳まれて置いて有った。


 「なんで宿屋に居るんだ?」ダンジョンに三人で言って、スライムをマジックショットだかドドンパだかで倒しまくってたところまでは覚えているけど・・・・?


 「リグにでも聞けば良いか。」服を着たので宿屋の部屋から出て食堂に向かう。





 「ダーリン。大丈夫?痛いところ無い?体は大丈夫?」食堂に降りて来た俺を見付けたシアンが駆け寄って来て体をペタペタ触りながら聞いてくる。


 「体が重いくらいで別に何とも無いよ。」


 「起きたんだ・・・まあ、無事で良かったよ。」


 「なんか言いたそうだな。」


 「そりゃね。あれだけ大量のスライム相手に意識が無くなるまで撤退しないって死にたいの?」


 「別にそんなつもりは無いんだけどさ・・・」何を言ってもリグに言い負かされる未来が見える。


 「今後は僕が撤退するかどうかは決める事にするけど良いよね?」


 「そ そうだね。それで行こう。」


 「それと丸二日寝てたから、ダンジョンで手に入れた魔石は換金して宿代と食費を抜いた余りがこれね。」そう言って革袋を渡そうとしてくる。


 「ダンジョンで稼いだ分の取り分ってどうすれば良いのかな?」革袋は受け取ってテーブルの上に置く。


 「普通は奴隷に取り分なんて聞かないけどね。僕は一割貰ってダンが装備代と消耗品とかパーティーで使う物を出してくれれば良いけど?」


 「私もそれで良いよ。」


 「そんな感じでやっていくものなの?」


 「普通は僕には金は払わずに装備と消耗品をくれるだけだよ。シアンは普通のパーティーメンバーだから半々で、装備は自分で消耗品は買う度に半々で負担するのが一般的だね。」


 「じゃあ。俺も一割貰って7割はパーティーの金って事で装備や消耗品を買うのに使えば良くない?」


 「パーティーの金をダンが持つんだから、ダンが8割で良いじゃん。」


 「パーティーの金はしっかり者のリグが管理するって事で。」何故か二人が沈黙してしまった。


 「ダーリン。さすがに奴隷のリグに大金を持たせるのはダメじゃないかな?」


 「どうかしているよ。これじゃ奴隷の僕がパーティーリーダーみたいじゃん。奴隷に金の管理をやらせる奴なんて滅多に居ないよ。」


 「滅多にって事は居ないことは無いんだろ?」


 「絵本の【能無しの英雄】は、奴隷に金銭の管理を頼んでいたって書かれていたわ。ダンの世界ではそれが普通なの?」


 「そんな事は無いけど、俺って有り金全部使い切っちゃうタイプなんだよね。それに、自分の金はしっかり持っているからリグが持ち逃げしても別に困らないし。」お小遣いは全部使い切っても生活は困らないって重要だよね。


 あっちの世界では支払いを忘れていて何度困った事か。まあ、貯めて置けば良いって居るのは分かっているんだけど・・・・


 「絵本で読んでいる時には器が大きい人だと思ったけど、【能無しの英雄】の奴隷もこんな気持ちだったんだろうな。」溜息を吐きながらもリグが俺にお小遣いをくれた。






 今日は買い物だけして明日にダンジョンに行く事になった。なので店にやって来た。


 「おう無事に帰ったか。何が欲しいんだい?」


 「出口石を一つと保存食を2日分かな。」


 「ちょっと待った。」


 「どうしたのダン?」


 「ナッツをもっと増やしても良いでしょ。」


 「ナッツだけでも売れるぞ。もっと他の保存食も見てみるか?」


 「共同資金からは二日分しか出さないよ。」お母さんの財布の紐は固いらしい。


 「俺が買うから良いよ。他のも見せてよ。」


 「ほい来た。」そう言ってオッサンが漬物とか調理した野菜とかが出て来た。


 「味見は出来るの?」


 「おう。一人分づつ取り分けてやるよ。冷やかしだったら金取るけどな。」そう言って取り分けてくれる。


 キムチみたいのや酢漬け・キノコに濃いめの味を付けたのとか色々と出て来る。味は悪くない、これがダンジョンで食べられるならかなり良い。


 「収納空間に入れて置けば持つの?」


 「収納って言っても時間が止まる訳じゃ無いからな。さすがに1年もは持たないけど数か月なら余裕で食べれるぞ。浸かり過ぎて味は少し変わるかも知れねえがな。」


 「いくらなの?」


 「壺売りで中銅貨5枚だ。ナッツは壺売りでも中銅貨1枚だぞ。」


 「全部1壺づつとナッツは2壺かな。」


 「お前さん金は大丈夫なのか?」


 「全然大丈夫。」金貨を一枚見せると店主の目の色が変わった。


 「余裕が有るならドライフルーツなんてどうだ。味見には中銅貨10枚貰うけどな。」


 「ダン。いくら何でも金を使い過ぎだよ。そんな使い方するならもっと良い装備に回した方が良いよ。」


 「いくら俺でも味見に中銅貨10枚は出さないって。」この商人やりよる。危うく中銅貨10枚出しちゃうところだった。


 「まあ、もっと稼ぐようになったら味見してくれよ。きっと買う気になるって。」リグさんやそんなに他人を睨むんじゃないよ。


 お釣りを銀貨9枚と大銅貨99枚・中銅貨48枚を数えながら受け取るのって結構手間だ。こっちの人達って不便じゃないのかな?おかげで財布に使っている革袋がパンパンになってしまった。


 「買ったのは入るのか?結構量あるぞ。」


 「私の収納に入れれば大丈夫だよ。」


 「そう言えば、魔族って収納が広いんだったな。お前さん達のパーティーは何て言うんだ?買い付けに行く時に依頼するのに教えてくれよ。」


 「パーティー名はまだ決まってないんだ。シアンの収納を使う気なら別料金取るよ。」我がパーティーのお母さんリグは本当にしっかり者だ。


 「分かっているって。パーティー名が決まったら教えてくれよな。」大量の保存食の壺をシアンの収納空間に入れて貰って店を出た。ちなみにナッツの壺は一つ俺の収納に入れた。




 「そう言えば出口石だっけ教会で貰えるんじゃないの?」前回は無料で貰ったと思う。


 「教会の物を買えば一人一個づつ貰えるんだけど、何も買わないと小銅貨1枚取られるから同じ値段なら店で買った方が良いでしょう。」


 「なるほど。」


 「ゴメンね。私のせいで。」シアンの前で教会ネタは禁句だったか。


 「どっちにしろ店には来る用があったんだし、シアンは全然関係無いよ。」俺が言う前にリグに言われてしまった。


 「次は武器屋だよね?リグのパチンコの弾って買ってなかったのにどこで手に入れたの?」


 「それはこうやって石を持って魔力で変形させるんだよ。」地面に落ちていた石を持って実演してくれた。変形って居るよりも邪魔な部分が砂になって取れていく感じだった。


 「魔力って何でもありだな。」


 「ダンの世界の科学技術だっけ?似た様なものじゃないの?」


 「確かに。」理論は有るんだろうけど俺はその理論を分かっている訳じゃ無いし、魔力の理論も有るけど知らないだけって考えるとそんなもんか。


 近いのでそんな話をしている内に武器屋に到着した。


 相変わらず人間よりもゴリラ寄りのルックスのマッチョなオッサンが店番をしている。


 「おお。騙されたの、生きてたか。」


 「は はあ」やはりゴリラには騙された人を気遣うって高度な事は出来無いらしい。言ったら野生に帰りそうだから言わないけど。


 「頼んでおいたのって出来てる?」リグが何か頼んでいたらしい。


 「当然だろ。洗濯なんて一日も掛からねえよ。」そう言って3着の初心者セットの布の服が出て来る。元々中古品みたいな物だったから前回との違いが分からない。


 「それと魔族の嬢ちゃんにはもっと良い装備にしてやった方が良くないか?子供と同じくらいしか力がねえんだからよ。」


 「どんなのが良いかな?」


 「ちょっとダン。そんな金無いよ。」


 「まあまあ聞くだけなら無料でしょ。」


 「そうだな。このミスリルと麻で編まれたローブとセーフリングがありゃ、そうそう死ぬことも無いだろうな。」


 「気になるお値段は?」


 「ローブは大銅貨3枚、セーフリングは大銅貨1枚だな。」


 「ちょっと待ってて。」収納に入っている財布から大銅貨を探す。


 「お前さんは収納の使い方が分かってないな。袋に入れずにガチャッと入れとくと、イメージするだけですぐに取り出せるぞ。」


 「そうなの?」言われるままに収納の中で革袋の中身をぶちまけて、大銅貨を探すと・・・収納の手前に大銅貨だけが出て来た。なにこれ超便利なんですけど。


 「余裕が有るなら、後衛の坊主にもセーフリングを買ってやった方が良いぞ。浅い階層だったらかなり有用なもんだぞ。」


 「じゃあ。お願い。」もう一枚大銅貨を渡して指輪を貰ってリグに渡すと、呆れた顔で受け取りやがった。もっと感謝しろ。


 「俺は何か追加した方が良い装備ってある?」金は有るんだし、装備を充実させたい。


 「お前さんにはいらんだろ。中層に行くようになったら必要にもなるだろうが、前衛は早いうちから装備に金を掛けるとすぐに死ぬぞ。」


 「こんな布の服よりも鉄の鎧の方が死ぬって事?言ってる事がおかしいでしょ。」


 「王城で異世界からくる戦士たちは1年生きれるのが半分って話は知っているか?」


 「そうなの?」死亡率50%ってヤバくないか?


 「異世界から来る奴らは強力なスキルを持っている。そのせいで大した経験を積むことなく深い階層に降りて行っちまう。そこで初めてピンチになれば生き残れる訳がねえよな。

 5年も生き残れば確かに冒険者の上澄みにはなれるだろうが、一回で1000人呼んで5年後には10人も残らないって言われてるぞ。」


 チートは欲しかったけど、説得力がある気もするし・・・良い事ばかりじゃ無いって事か。


 「同じでな。浅い階層では死ぬ確率ってのが、そもそも低い。良い装備を付けて戦っていると攻撃を受けるのに慣れちまって下に降りた時に死にやすいって事だ。

 だから、装備ってのは攻撃が直撃した時にはしっかりダメージが入る程度に調整して行くもんだ。」


 「なるほど。」一理ある気がする。


 「不測の事態に巻き込まれた時用に良い装備も必要でしょ。」このタイミングでリグが参戦した。お前は俺の金を使わせたいのか、使わせたくないのかどっちなの?


 「お前さん達みたいな駆け出しは、そんな事になった時点で装備云々言う前に逃げろって事だ。下手に戦われても邪魔にしかならん。」


 「・・・」おおリグが(ぐぬぬ)している。いつも俺がやられているから、なんか嬉しいぞ。


 「ダンジョンから戻ったらまた来いや。」そう言われて俺達は店を出た。


 考えてみたら金払ったのは俺なのに、装備が変わってないのって俺だけじゃん。

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