0 プロローグ
一章が終わるまでは毎日6時に投稿します。
12月22日一年で一番昼の時間が短い冬至の日。
ある男が有名な温泉街の外れにあるトンネルに来ていた。
かろうじて使われているトンネルはすれ違うのにも苦労する程細い道の先に有り、その道路もいきなり途切れても可笑しくない雰囲気の為、始めてくる人たちには辿り着く事すら困難な所だった。
そんなトンネルに夜中に一人で来ていた。
「考えてみたら日付が変わる時って話だから、すでにタイムアップじゃね?もう0時過ぎてて23日になってるんですけど。」
真っ暗の中でも特に怯えた様子も無く、時計を見ながら運転していた時のサンダルから運動靴に履き替えている。
天涯孤独な身の上のこの男は、異世界へ行くと言う野望が有った。
ブラックな労働環境の工場で働く傍ら時間を見つけては、神隠しや人が消える噂のある場所、異界の門と言われる場所に足を運んでいた。
8年前に始めた頃は異世界での知識無双を視野に現代科学等を学んでいたが、一年もしない内にただの小旅行に形を変えてしまっていたが。
必要と思われる知識を集めたノートはすでに行方不明になって久しい。もっとも男はそんなノートの存在自体記憶の彼方だが。
「まあ、ちょっと行って来るだけだし時間なんて別に何時でも良いか?」そんな事を言いながら、特に緊張した様子も無く男はトンネルへと入って行った。
そして、一週間後に乗り捨てられた車が発見された。