第4話 聞き込み
都合の良いことなのかは不明だが、騎士なのだから多少の知識は持ち合わせているだろうと中りをつけて休憩中の彼らに近づいて行く。
緩みかけていた空気に緊張が走る。
彼らの内の何人かは立ち上がり剣の柄に手をかけた。
警戒するのも無理のない話である。
見るからに怪しい人物が近づいてくるのだ。その顔に笑みを浮かべているものの、これがもし自分であっても警戒するだろう。
最初は商人などの方が情報を得やすいのだろうが仕方のないことだ。
「おい。貴様。そこで止まれ!」
明らかに警戒した声色で静止をかけたのは、護衛の中でも上等だと一目で分かる白い鎧を身に着けている騎士であった。休憩中だったからかヘルムはかぶっておらず、そのしなやかな金髪が陽光を浴びて煌めいている。その瞳は透き通るかの如きスカイブルーの優男風だが、今は鋭い目と気迫溢れる姿で俺に相対していた。
「すみません。敵意はないんです。ちょっと聞きたいことがあるんですが……」
両手を上げて手をひらひらさせながら敵意のないことをアピールする。
「実はこの辺りに来たのは初めてなので地理や情勢なんかを教えてもらいたいのですがどうでしょう? お近づきの印としてこれをどうぞ」
俺はあらかじめ創造しておいた飴玉を手の平に乗せて差し出した。
「なんだ? これは」
「飴玉と言うお菓子です。舐めてみてください。甘いですよ」
「毒が――」
「入ってませんよ」
皆まで言わせず飴玉の中の一つをひょいと口の中に放り込んだ。
そしてコロコロと口の中で転がして見せる。
「そんな格好をしていると言うことは貴様、探究者か?」
「はんたー?(冒険者みたいなもんかな?) いえ、ただの旅人ですよ。ブレイドと言います」
異世界転生もののライトノベルなどでは冒険者と言う存在がよく描かれている。
それに思い至ったのだ。
「旅をしている風には見えんな。荷物はどうしたんだ? 【収納】持ちか?」
「(やべ。そう言えばそうか……)いえ、街から街へ身軽に旅をしているので荷物は少ないんです」
「そうか……。でその貴様の横に浮かんでいるのは何だ? 魔物か?」
そのセリフに思わず絶句する。
どうやらヘルプくんは誰にでも見えるようだ。
『魔物とはしつれ――むぐむぐ』
俺はすかさずヘルプくんの首を絞める。
チョークスリーパーだ。
まぁ結果的には口を塞ぐことになるのでOKだろ。
「ああ、こいつは使い魔みたいもんですよ」
「そ、そうか。最近の使い魔はしゃべれるんだな。しかし使い魔が二匹とは貴様は優秀な魔術師のようだな」
二匹とは。
理解するのに時間が掛かった。
二匹目は愛犬のさくらのことだろう。
わふわふ言いながら嬉しそうに俺たちの周囲を走り回っている。
「まぁまぁノックス副団長、それくらいでいいじゃないですかー」
「それくらいとはなんだ、フェミニ。大事なことだぞ?」
フェミニと呼ばれた女騎士はノヴァの手の平から飴玉を1つ取ると食べようとする。しかし包装を破ることができないようで四苦八苦している。
「あれ? これどーやって食べるの?」
「こうやって包装を破るんです」
ノヴァは包装のギザギザを破ってフェミニの手に飴玉を乗せてやる。
彼女はノックスのような警戒心はないようですぐにそれを口に放り込んだ。
「うま! 甘ッ! 本当に飴? 何この味。副団長も食べてみてくださいよ!」
「お前なぁ……何でも食べるのやめろよ……」
「皆さんはどこかの国の騎士団の方ですか?」
「ん? ああ、ゲルニーク王国のクナイト伯爵閣下の騎士団だ。領都クヌートに帰るところでな」
「へぇ……ここはクナイト伯爵の領地なんですね? この先にある街がクヌートですか?」
「ああそうだ。旅をしているんだったな。魚介類が美味いから是非堪能していってくれ」
ようやく会話が弾んできた。
俺は心の中でフェミニに感謝した。
ノックスの話によると、ここはモナート大陸の東に位置するゲルニーク王国と言う国家らしい。王都ゲルニカからの帰り道と言うことだ。
となれば馬車に乗っているのは領主本人と言ったところか。
ちなみに領都クヌートは比較的大きな港町で人口三万人程度だそうである。
できればこの世界の慣習や文化など、特にタブーが知りたいところだが、迂闊なことを口にして痛くない腹を探られるのは御免被りたいところだ。
怪しまれることを恐れてほとんど情報を得ることができなかったが仕方がない。
この国で流通している通貨も見せてもらった。
この世界の通貨は全地域で統一されているらしく、それを知らない俺は思いきり怪しまれたのだが、ド田舎の出身で物々交換が基本だったと言うと何とか詰問は回避できた。それでも懐疑の視線は消えなかったが。
通貨を見せてもらったお陰で最悪、創造して門番を買収して街に入ることが出来るかも知れないので助かった。
だがリスクも大きい。袖の下が通用する者であればいいが、クナイト伯爵の統治次第では贈賄として身柄を確保される恐れもある。
不安な点は身分にも言えることだ。
街に入る際、鑑定のようなことが行われれば俺自身の身分が奴隷だとバレてしまうからである。
体感で30分程度の小休憩でノックスたちは再び領都へ向かい進み始めた。
別に着いて行く訳でもないが、俺も歩き始める。
街道にはチラホラと馬車や人々の姿が見えるようになっていた。
ただただ街道を行くのも暇なのでヘルプくんにこの世界のことを尋ねてみた。
こんな便利な存在があるのだから最初から普通に聞いておけばよかった。
「なぁ、この世界のことについて教えてくれよ」
『今更なのデス。普通真っ先に聞くべき事項なのデス』
「やっぱムカつくな。お前」
『そんな態度でダイジョブか?なのデス』
「何言ってんだ」
『それが人に物を頼む態度かと言っているのデス!』
「おまっ人じゃねぇだろ!」
この後、滅茶苦茶喧嘩した。
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