第3話 能力
「ス、能力も創造できるだって……」
まさにぶっ壊れだ。
ランクで言えば、SSSクラスだろう。
この世界の人間が一人でどれだけの能力を持っているのか分からないが、能力を多く持っていればそれだけ手札も多くなる。
【鑑定】【無限収納】【経験値5倍】【錬金】【体力向上】……
定番の【鑑定】がある。そしてやはりあったか【無限収納】。
レア度は様々だが、あの白い空間にいた者たちもこの中のどれかの能力を得てこの世界に旅立ったのだろうか?
他にも魔法なんてものもあるようだ。
この事実にテンションは爆上がりである。
【火魔法】【水魔法】【風魔法】【召喚魔法】……
驚きなのが他にもあった。
現代製品までもが購入可能なようだ。
これでこの世界でも悠々自適な生活ができるかも知れない。
おそらく資金の範囲内だろうが。
俺は時間が経つのも忘れて能力のページを見て回った。
―――
――
―
気が付くと、辺りは明るくなっていた。
いつの間にか眠ってしまったようである。
追手には見つからなかったようなのでほっと一安心だ。
寝袋から出て繁みから這い出ると大きく伸びをする。
今が何時なのかは不明だが、十分な休息が出来たようで昨日のような虚脱感はない。
朝食は、菓子パンとコーヒーを創造して済ませた。
剣を腰のホルスターにセットして森の中を歩き出す。
一応、逃げてきた方向とは逆の方へと進むことにしたのだ。
ほどなくして森から抜けると、整備された街道に出た。
表世界はどんな文明レベルなのかと考えてはいたが良い方向に裏切られた感じだ。
街道が整備されていると言うことはこの辺りが平和であることが考えられる。
戦乱の時代であれば敵の進軍を阻むために悪路にしているだろうことは想像に難くない。とにかく街に行ってみたいものである。
取り敢えず恐る恐る街道に出ると周囲を窺う。
道を行く人の姿は見えない。
方向には目星をつけていたので、元来た道を戻るなどと言ううっかりミスはしないはずである。俺は早速、太陽が昇ってくる方向へ向かって歩き出した。
「ちゃんとした街道だしそのうち街に着くだろ」
昨夜の戦いは、紙一重だった。
生き残れたのは奇跡に近いと言えるだろう。
もちろん、クリスタルの回復があったお陰なのだが、この世界では戦いになったら躊躇わず殺すことが必要になりそうだ。
それができるかどうかは別として、だが。
さすがに俺も殺されたくはない。
覚悟を決めねばなるまい。
そしてその戦いを優位に進めるためにも能力の創造は必須事項である。
もちろん懸念はある。
心力の使用からくる虚脱感だ。
心力を使い果たしたらどうなるのかまだ試していないが、あの凄まじい脱力感から考えるに、まともに戦うことはできないだろう。
資金と言うのも気になる。
おそらく持っているお金と交換みたいな形になるのだろうが……。
お金を稼ぐのも大変そうだ。まぁどの世界でもお金は必要なものである。
これも検証が必要だな。
必要なのは心力やお金だけではない。
戦いに必要なのは覚悟だ。
そして実戦経験とステータスにあるところの『才能』だろう。
現在、剣を装備している身としては、『剣術』系の能力をゲットする必要もある。幸いなことに白い空間で選んだカードが良かったのか『剣の才B』を言う才能を既に持っている。まぁ昨夜の戦いだけではまだ能力は未知数ではあるが……。
いや三人に勝ったから大したものなのかな?
そんなことを考えながら歩いている内にチラホラと人の往来が目立つようになってきた。そろそろ街があるかも知れないと胸を高鳴らせていると、目の前に大河が立ちふさがった。かなり大きな川に意外としっかりした橋が架けられており、この世界の文明度の高さを垣間見た気がした。
「あ、やべ。俺、身分証とかないけど街に入れんのかな……」
このまま街を見つけても身分証すら持たない俺は街へ入れないかも知れない。
そこで不審人物のレッテルを貼られれば、現在以上の追手がかかるかも知れないのだ。
ぎゅるるるる~
そんなことを考えていたら、腹の虫が騒ぎ出したようだ。
体内時計ではお昼の時間のようである。
俺は街道の脇へと寄って街路樹の傍に腰掛けると昼食を摂ることにした。
「今日のお昼はカレーライスにするか」
カレーライスと牛乳を創造すると、一気に食べ終わる。
何故、牛乳か?
カレーには牛乳と法律で決まっているのである。
閑話休題。
先程の続きを考え始める。
創造の能力は何でも創り出せるようなので、一人で生きていく分には困らないような気もする。
おそらくレベルが上がれば心力も上がるはずで選択肢は増えていくに違いない。
まだ出会っていないが、魔物を狩って強くなれば、それも可能なように思えた。
休憩がてらタブレットを出して色々確認していると、能力の項目に【ヘルプくん】と言うのが目に留まった。
その説明文を読んでみるとどうやらこの世界のことを教えてくれる機能らしい。
『猫でも解る!表世界のあんなことやこんなこと~めくるめく世界のひ・み・つ~』
このテキストをあの神が考えたのかと思うとちょっと面白い。
早速、ヘルプくんを創造してみることにした。
【創造】
【創造】の能力を使用すると虚脱感に襲われる。
ここまでは同じだ。
違ったのは龍二の目の前に兎の様な姿をしたマスコットらしきナニカがいたことだ。
『呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん! ヘルプくんなのデス!』
「お、おう……」
『で? 何の用なのデス?』
「別に用があった訳じゃない。呼んでみただけだよ」
『ボディに一発かましてやるのデス』
「グフゥ!」
ボディへの強烈な一撃に龍二は地面をのた打ち回る。
第一印象は最悪であった。
「おい。いきなりボディブローかましてんじゃねぇよ!」
『チッ……立ち直りの速いヤツなのデス』
「性質悪いな! お前!」
『用もないのに呼んだのが悪いのデス』
「二度と出て来れないようにしてやろうか」
『ちょっとやりすぎたのデス』
後ろ頭をポリポリと掻きながら悪びれた様子もなく平然と言ってのけるヘルプくん。
「まぁいい。お前を呼べばこの世界のことを教えてくれるんだよな?」
『不本意だけど教えてやるのです。仕方ないのデース』
「俺がこの世界に転移した時のことを教えてもらおうか」
『転移? お前がそのまま体験した通りなのです。お前は赤のクリスタルで奴隷の身分を引き当てたのです。そしてたまたま逃亡していた奴隷に転生したのデース』
「そう言う展開か……で、この名前がブレイドってーのはどういう寸法だ? 俺の名前は大河龍二なんだが?」
『バカなのデス? そのままの意味なのデス。お前の名前は大河龍二ではなくブレイドなのデス。それが憐れな逃亡奴隷の名前だっただけなのデス』
確かに迂闊な質問だったと少し前の自分を殴ってやりたくなった。
このヘルプくんに弱みを見せたら徹底的にツッコミを入れられるだろう。
物理的にも精神的にも……。
(それにしてもブレイドか……俺はもう大河龍二ではないんだな。もう戻れない…か。受け入れないとな。この世界を……)
ヘルプくんに傷つけられた精神をさくらをもふもふすることで癒していると、左手からガラガラと音が聞えてきた。
音がする方向に目をやると、豪奢な馬車が一台とその周囲に20人ほどの護衛がついて歩いてくるのが見えた。
目の前を通り過ぎていく一行。
さしずめ、貴族の領主とその騎士と言ったところか。
周囲の者たちは、街路樹によしかかって座っている俺の方を見ている。
どうやら警戒しているようでチラチラと視線を送っている。
そのまま、橋を渡っていくのかと思いきや、護衛の先頭にいた指揮官と思しき人物が大きな声で言った。
「ここらで昼休憩だ! 領都まであと半日、もうひと踏ん張りだぞ!」
どうやら都合よく次の街の情報を得ることができそうだ。
ラッキーなのでここらで聞き込みをしてみることにしようか。
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