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8 任期付召喚職員

 視察の翌週、キリトは第36区建設局の総務課長と道路課長から相談を受けた。


「戦後、航空基地等の周辺の整備以外何も出来ておりませんでしたが、まずは被害の大きかったニャト市等の北部地域を中心に、道路復旧の補助を開始したいと考えております」


「また、管内各市は技術者が不足している状況ですので、取り急ぎ第36区の技官を巡回させて技術面のサポートをできればと考えております」


 何よりもまず道路網の復旧をすることで、物流の改善を図るということだろう。


 キリトは社会科の授業準備で勉強したことを思い出す。


 確か、関東大震災後の復興の際は、帝都復興計画で大規模な土地区画整理や道路整備の実施が定められたはずだ。実際は大幅に縮小されたらしいが。


 キリトは総務課長に聞いてみる。


「道路復旧に関して、第36区やニャト市等の北部各市は、何か全体的な復興計画を定めているのかな」


「当方で把握している限りでは、個別の復旧計画はありますが、全体的な復興計画はなかったと思います」


 総務課長が答えた。


 せっかく復興するんだから、可能であればより良い都市になって欲しい。キリトは総務課長に検討をお願いすることにした。


「道路網の復旧は非常に大事だと思うんで、優先的に進めて欲しい。ただ、まずは暫定的な復旧を広く進めて、本格的な道路整備は全体的な復興計画を定めて計画的に行うことはできないかな」


「緊急性の高い道路復旧を行いつつ、本格的な復興は計画的にということですね。可能だと思います」


「ありがとう。それじゃその方向でよろしく。単に復旧させるのではなく、より良い都市を一から作り直すくらいの気概で進めてもらえたら嬉しいな」


「承知しました。建設局各課や地方局と調整の上、道路復旧の補助や技術支援と平行して、全体的な復興計画の立案を検討したいと思います」


 壮大な話だったので嫌がられるかと思ったが、総務課長はビッグプロジェクトに気合いが入ったという感じだった。技術屋魂に火が着いたようだ。



† † †



 建設局に引き続き、キリトは長官官房の会計課長と庶務担当の課長補佐から相談を受けた。


「第36区の契約については、原則として金額の多寡による入札で契約相手方を決定しておりますが、大口の契約は帝国の大企業が事実上独占している状況です」


「そのため、ある程度地元の企業も落札可能とするため、金額以外の要件として、例えば地域への精通度や貢献度といったものも加味して評価する方式を一部導入できないかと考えております」


 確か、キリトが以前赴任していた中学校の改築工事で、事務室の人から雑談で似たような話を聞いたことがあった。


 公平性の担保が難しい面はあるが、戦後復興のためにも地元企業を多少優遇するのはいいのではないか。

 キリトはそう考え、了承することにした。会計課長に伝える。


「復興のためにも、地域貢献等を要件にするのはアリだと思う。公平な審査基準に気をつけながら進めて欲しい」


「承知しました」


 会計課長が答えた。会計課長等の後ろに控えている燕尾服姿の少年が嬉しそうな顔をして隣の女性職員と(うなず)き合っていた。


 キリトは気になって会計課長に聞いてみた。


「後ろに子どもが一人いるようだけど、彼も職員なの?」


「はい、彼は(にん)()(つき)召喚職員(しょうかんしょくいん)でして、異世界から召喚した高度な会計事務スキルを有する者です」


「異世界から召喚?」


 キリトは驚いて聞いた。


「ええ、軍ではあまり例がないかもしれませんが、行政官庁では、任期を区切って異世界から専門家を召喚して採用しております」


「任期付召喚職員は、実際の年齢や容姿と関係なく、魂そのものを反映した姿で顕現(けんげん)します。まあ、彼の場合は可愛らしい子どものような魂だったということで……中身は専門知識を持った大人です。そうだよな?」


「あ、はい」


 会計課長が後ろを振り返って聞いた。少年姿の任期付召喚職員が慌てて答えた。


 キリトはその職員に聞いた。


「君は異世界から来たんだね。どういった世界なの?」


「はい、地球と呼んでいる惑星に住んでいました」


 地球? キリトは驚いた。魂の顕現した姿ということで、大層美しい少年なのだが、どこの国の人なのだろう。キリトは続けて聞いた。


「ちなみに、何ていう国なの?」


「はい。日本という国でした」


 キリトは息を飲んだ。同じ日本人がこの世界に来ている! キリトが何故この世界に来たのか、また日本に戻ることが可能なのか、もしかすると彼に聞けば分かるかもしれない。


 とはいえ、キリトは魂が入れ替わっていることを秘密にしているので、直球に聞くことも難しい。一瞬悩んだ後、キリトは陪席しているエルンに聞いた。


「異世界から召喚された者か……興味深い! 是非とも話を聞きたいな。どこかでそういう機会を設けられないかな」


「明日の夜、司政官がお住まいの長官公邸で、司政官と第36区の幹部との懇親会を行う予定です。出席者は局長と主要課長ですが、その際に会計課長の随行として出席していただくのはいかがでしょうか」


「どうかな、明日の夜、懇親会に参加してくれないかな?」


「大丈夫だよな、ワタル君?」


 会計課長が任期付召喚職員に聞いた。ワタルという名前のようだ。名前からしても日本人で間違いなさそうだ。


 ワタルと呼ばれた職員は、少し戸惑っていたようだが「承知しました」と答えた。

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