47 打ち合わせ②
「エルンさん、元南方第3軍の参謀として、軍はどう動くと思う?」
キリトは、フレッドに笑顔で頷いた後、エルンに尋ねた。エルンが答える。
「皇帝の勅使の閲兵式で、ニャト市東部の駐屯地に部隊が集結しています。この部隊を動かすと思います」
「おそらく、デモ発生情報を確認後、速やかに上空及び地上から偵察を行い、歩兵部隊がそれに続くことになると思います」
キリトがエルンに聞く。
「その場合、大まかでいいんだけど、主力部隊は何時頃にどこへ来ると思う」
エルンが悩みながら答える。
「なかなか難しいところですが、治安出動命令が出てから30分後くらいには、歩兵部隊が現場に到着すると思います」
「指揮官によるとは思いますが、敵の包囲殲滅ではなく、あくまで治安の回復が目的ですので、おそらく後方の安全を確保しながら第36区庁舎の東側から広場に入り、非致死性兵器で攻撃して、デモ隊を西側又は南側へ敗走させるという流れになるのではないかと思います」
「なるほど、庁舎前の広場が決戦の場になるということか」
「はい、おそらくそうなると思います」
キリトの言葉にエルンが首肯した。
「ありがとう。我々としては『適度な混乱』を演出できれば万々歳だ。皇帝がどういう手を使ってくるか分からないけど、とにかく安全最優先で頑張ろう!」
キリトの言葉に一同が頷いた。
† † †
「ニャムニャさんとワタルさんは、裏口から職員宿舎に入りました」
「ありがとう。お疲れさま」
ニャムニャ達を送った後、エルンが私室に戻ってキリトに報告した。
ティムはお茶の用意で退席している。フレッドはティムを手伝うと言って退室中だ。
お礼を言ったキリトに、エルンが心配そうな顔をして聞く。
「キリト様、何かお悩みでいらっしゃいますか?」
キリトが苦笑いしながら答える。
「ああ、ごめん。『安全最優先で頑張ろう』なんて言いながら、軍を相手に危険なことをさせようとしている自分に嫌気がさしてね」
キリトはため息をついた。
「軍の動きは、指揮官によるということだったけど、もしその指揮官が皇帝の息のかかった者だとすると、殺傷能力のある武器で攻撃してくる可能性はあるんだよね」
エルンは暗い顔をして答える。
「暴徒鎮圧では非致死性兵器を使用するのが一般的ですが、仰るとおり、その可能性はあります」
「そうなんだよね。それを知りながら皆を危険に晒す……私は罪深いよ」
「キリト様、今回の危険性は、皆理解し納得しています。キリト様のお気持ちも、皆気づいていますよ」
「帰り際、ニャムニャさんやワタルさんから、キリト様の『罪の意識』を少しでも和らげてあげて欲しいと頼まれました。ニャムニャさんからは『俺がこんな話をしたことは、キリト本人には言うなよ』と口止めされましたが」
そう言ってエルンが笑った。エルンはキリトの目を優しく見つめて話を続ける。
「ティムも同じ気持ちですよ。もちろん、私も同じ気持ちです」
「キリト様は、ミャウ族の犠牲が少しでも減るよう、悩み抜いた末『第3の道』を歩まれていますが、その『犠牲』について常に罪の意識をお持ちですよね……いつもお側にいる我々が、それに気づかないはずがありません」
「それを分かった上で、少しでもキリト様の罪の意識が和らぐよう、少しでも犠牲が減るよう、皆が全力で頑張ろうとしています」
エルンがベッドに近づき、キリトの手を取った。
「キリト様は『正しい道』を歩まれています。どうかお悩みにならず、この道を真っ直ぐお進みください。目的達成のために必要であれば、躊躇わず我々に死地へ向かうようお申し付けください」
キリトは、泣きそうになるのを必死に堪えて、エルンの手を握り返した。
「ありがとう。本来は司政官である私が全てを背負うべきなのに……ごめん」
「何を仰いますか。いくらキリト様とはいえ、お一人で背負うには重すぎますよ。どうか私にも、皆にも背負わせてください」
「ありがとう……ありがとう!」
自分の思いがエルン達に筒抜けだったのが恥ずかしかったが、何だか気持ちが少し軽くなったような気がした。
続きは明日投稿予定です。




