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20 食事会の後

 ニャムニャは大層ご機嫌な様子で帰って行った。その後、ワタルとティムが部屋の片付けを始めた。


 キリトやエルンも片付けを手伝おうとしたが、ワタルとティムにやんわりと断られてしまった。キリトとエルンは、ティムが用意してくれたお茶を飲みながら、隣のリビングで待つことにした。


「レジスタンスのリーダーとの接触は、成功と言ってよさそうですね」


 お茶を一口飲んだ後、エルンが言った。かなりお酒を飲んでいたはずだが、顔色一つ変わっていない。お酒には強いようだ。


 一方のキリトは、あまりお酒に強くないこともあり、若干酩酊気味だ。呂律が回らない。


「そうだねえ。我々の考えに賛同してくれたし、よいアドバイスも貰った。良かったねえ」


「それにしても、あのリーダー、ニャムニャさんは、かなり優秀な方のようですね。我々の素性をすでに把握していましたし」


「え?! そうだったっけ?」


 エルンの言葉に、キリトは一気に酔いが醒めたような気がした。エルンが続ける。


「はい、最後の乾杯の前に、『第36区のトップや俺たちの苦労が分かる奴が仲間になった』と言っていました。キリト様が司政官であることだけでなく、私やティムの出身地等も把握していたのでしょう」


「ごめん、酔っ払ってて意識していなかったよ。ニャムニャさんも酔って口を滑らせたのかな」


「確かにニャムニャさんも結構酔っていましたが、おそらくあれは、わざとだと思います」


「わざと?」


「ええ、レジスタンスの情報収集能力をアピールするとともに、キリト様の反応を見ようとしたのだと思います」


「うわあ、失敗したなあ。私は何も気づかずヘラヘラ笑いながら乾杯しちゃったよ。無能だと思われたかなあ」


 キリトは頭を抱えた。エルンが笑顔で言った。


「ご安心ください。もしキリト様が驚き警戒するような素振りを見せていたら、ニャムニャさんはキリト様の能力を疑問視し、信頼に値しないと判断していたかもしれません」


「ですが、キリト様の泰然自若としたご様子は、『その程度の情報を収集しているくらい、こちらも織り込み済みだ。むしろそれくらいの能力を持っていてもらわなければ困る』というメッセージになったと思います」


「そして、キリト様の最後の乾杯の挨拶は、『私はミャウ族のことを第一に考えているが、それだけではなく帝国、全世界の平和のために奮闘するつもりだ。苦労をかけると思うが、私についてきて欲しい』というメッセージになったと思います」


「ニャムニャさんが喜んで帰って行ったのは、きっとキリト様のメッセージが届いたからだと思います!」


 そう力説すると、エルンは少し冷めたお茶をゴクゴクと飲んだ。もしかすると、エルンも相当酔っているのではないか。


 そうだとすれば、雑談がてらエルンの性別を聞く絶好のチャンスじゃないか。

 キリトは酔った頭でそう考えると、エルンにそれとなく聞いてみることにした。


「そ、そういえば、エルンさんは兄弟姉妹はいるの?」


「はい、兄と妹が一人ずついます」


 やはりエルンは酔っているのか、不自然に話題を変えたのに、気にする様子もなく笑顔で答えてくれた。


「そうなんだね。兄妹からは何て呼ばれてるの?」


「そうですね、兄からは単に『エルン』と呼ばれてますね。妹からは……」


「キリト様、エルンさん、お待たせしました!」


 元気な声でティムがリビングに入ってきた。ワタルも後に続いて来た。エルンが笑顔で答える。


「お片付けありがとうございました。さて、それじゃあ帰りましょうか」


「そ、そうだね……皆、今日はお疲れさま。色々とありがとう」


 残念ながら「お兄ちゃん」か「お姉ちゃん」か分からないまま、一同解散となった。

続きは明日投稿予定です。

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