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  三十一章

  三十一章


 先程の紅華の空間を削り取る口撃や、強制的な異世界への連行は、さすがの防御力をもつ鉄っつあんでも、如何ともし難いのではないだろうか。


 おれの首筋に、冷たいモノがはしる。


「月影斬九郎。

 口ばかり賢しいお前は捨て難いが、少々度が過ぎるな。

 少しばかりおとなしくするよう、造り変えてやる」


 紅華の双眸に光が灯り、再びその巨大な口腔は、胴を掴まれたおれの頭部へ向いている。


「ま、まてまて。

 おれを削っちまったら、連れてけないぞ!!」


 さすがにおれも、自分の頭をスライサーで削られる姿を想像し、ゾッとした。


「心配するな。

 妾は身体の一部でも残っていれば、永遠に愛することが出来る」


 再び、ゾッとする。


 そうだ。


 コイツの世界では、生きていようが死んでいようが、その存在を自分の思うように造り変え、永続的に固定化するに違いない。


 おれの顔、身体。

 もしかしたらその記憶や感情までも、未来永劫に奴のオモチャにされるのではないか。

 毎晩、添い寝でもさせられてみろ。

 おれは三秒もたず、正気を失うに違いない。


「もう、諦めろ、月影斬九郎。

 お前はよくやった」


 諭すような紅華の声に、絶望感が波となって押し寄せる。


「え、マジか?、この展開。

 ここで、終わり?」


 おれは渾身の力を込めて暴れるものの、紅華の指はビクともしない。


 巨大な笑いドクロはおれの胴体を強く締め上げると、その口腔の照準を注意深く、おれの頭部に合わせた。


「心配するな斬九郎。弾けた頭部は向こうで造り変えて、復元してやる。

 より、男っぷりも上げてな!!」


「じ、冗談じゃねぇ、離せ、ブス。ガイコツ。骨女!!」


 悪口になってないのは重々承知だが、おれの骨が軋むほどに締め付けるその右手からはどうやっても、逃れられそうに無い。

 刀を落とさずにいるのが、やっとだ。


 おれの苦悶に気を良くした、紅華の高笑いが響き渡る。


 そして次の瞬間、おれの身の丈程もある頭蓋骨の双眸が輝きをさらに増し、遂にその口から触れた物質を消滅させる次元貫通弾が超速で吐き出された!!。






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