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  二十四章

  二十四章


「マジか?。万鬼って、じいさんの古文書に載ってた全てを統べる鬼、万鬼。

 万鬼は赤鬼にあらず。青い焔に包まれた青鬼だったか!」


 おれはふと、今になってスクリーンに映し出された地球を撮っているのが、何処からかに気が付いた。


 月だ!!。


「青鬼とは面白い事を言う。お前もそうではないか!」


「おれが?」


「万霊湖は儂が降り立った始めての地。

いささか因縁もある。

 今、お前の身体に棲む妖は極限まで妖気を抑えられておる。

 妖のお前の肉体の支配率が下がり、儂が顔を出す事が可能となったのだ」

 

 おれは奴の言ってる意味がよく分からず、首を傾げた。


「よく分からねぇな?。だいたい、ここはどこなんだよ。まさか、月なのか?」


「頭の弱いお前に全てを理解出来るとは思えんが、教えてやろう。

 ここはお前の深層領域にある儂の世界。

 儂の本体は当然だが、既に死んでいる。

 これは、この映像全ても儂の記憶だ」


「なんでそんなものがおれの中に?」


「儂の記憶と、万鬼の焔は子孫が受け継ぐ事になっておる」


「子孫だって?」

 

 奴はおれの疑問に答える間を与えずに、喋り続ける。


「だが、お前にはまだその資格は無さそうだ。

 この広間の畳数は儂の力の総量と思え。

 これからはその場所より這って、儂のいるここまで辿り着けば認めてやる。

 よいな、しかと申し付けたぞ!」


 万鬼がそう言うと、広間自体が発光。


 次の瞬間、おれは何故か古アパートの一室で、一人の女の子と対峙していた。 

 部屋は十畳くらいだろうか?


 どうやらここは、おれが現世で根城としている家賃42,000円の安アパートに間違いなかった。


 目の前の女の子は、黒桐女子学園の制服を着ている。


 中高一貫のこのお嬢様学校の制服は、黒に金のラインが所々に入り、気品があると雑誌なんかにも取り上げられているくらい有名だ。


 中学3年くらいのその子は、おれの前で膝を崩すと

「先生、ご飯食べさせて!」

 と、艶かしくねだっている。


 何故かその子の顔の上半分には霞がかって明瞭では無いものの、おれはさほど気にせず、重い腰を上げた。


「チャーハンで良いか?」

「うん、楽しみ!」


 顔は見えないが、声とその仕草から彼女が喜んでいる事は分かる。


 おれは冷蔵庫から、タッパーに入れて冷やしていたご飯、卵、ベーコン、ネギ、刻んだかまぼこを取り出し、手際よく、愛用の中華鍋で炒め始めた。


 おれはこう見えても、中華料理屋のバイトを2年ほどしていたので、腕にはそこそこ自信がある。


「ねぇ先生。私って髪、長いの似合うかなぁ?」


「君だったら何でも似合うよ」


「せんせ。そういうの、女の子に嫌われるよ!」


「そ、そうなのか、すまん。とりあえず食べな」


 女の子のヘアーがロングかショートかすらもはっきりとはしないが、皿に盛ったチャーハンとスプーンを渡す。


「ん、うまい、うまいよこれ。ねぇ、おかわり」


「そうか。それはよかった。こんなもんでよければ、いっぱい食え!!」


 あっという間に皿を空にした女の子に気を良くしたおれは、なぜかチャーハンを再び作り始めた。


「お前、お嬢様なのに、こんな飯で腹いっぱいにしていいのか。豪華なディナーが御屋敷で待ってるんだろう」


「私は家の料理より、先生のご飯が好きなの。ねぇ、せんせ。私に一生食べさしてよ。お礼はするから!!」


「そっかそっか。じゃぁ失業したら、お前に養ってもらおうか。ほら、どんどん食えどんどん」


 再びチャーハンをがっつき始めた娘に、おれはどうしようもなく親しみを覚えた。


「またなくなったら、作ってやるからな」


 いや、さすがにそれ以上は食べ過ぎだろうと思ったが、何故かおれの体が勝手に動いている。


「さぁ、さぁ。どんどん食べろ。どんどん食べて元気になれ!!」


 おれの口からは妙なリズムを伴って、即興の歌が流れ出している。


「どんどん、どんどん、どんどん、どんどん…」


 終いには彼女もスプーンを振り回して、歌い始めた。


 なんだこりゃ、悪夢か?。


 声は次第に大きくなり、頭が割れんばかりの大合唱。

 おれはあまりの騒がしさに、勢いよく目を覚ました。







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