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  二十二章

  二十二章


 おれの体内に潜む妖。

 大百足の鉄っつあんの得意な妖力「鎧魂」は、防御力1000%。


 おれの肉体表面上に、鉄っつあんが首下から足首まで、己のサイズを変え、黒鉃色の身を常に蠕動。ガードしている。


 そんなにビッチリ巻きつかれたら身動きとれまい。と、思うかも知れないが、実際にはその逆。


 おれの筋肉の微妙な動きからおれの意思を察知し、肉体の力をサポートする為それこそ化け物じみた膂力を発揮する事が出来る。


 妖怪の力を借りたパワードスーツとでも思えばいいだろう。


 今までも多くの妖怪達の攻撃をしのぎ、その表面には傷一つ付く事などなかったのに、記録更新を破ったのはただの口づけだった


 キスの最中に、胸を貫かれるなんてマヌケもいいとこだ。

 

 牡丹が頭の片隅で怒鳴り散らしているようにも聞こえるが、いかんせん理解が追いつかない。


 下方から突き上げられ紅華の右手の槍は、見事にノーガードのおれの肺を貫通している。


 心の臓はそれたようにも感じるが、正確なところはわからない。


「少しは見所があるようにも思うたが、男なんてものは所詮、皆同じ。下賤の極みじゃ」


 紅華の言葉に、おれの顔は恥ずかしさのため赤くなったり、血圧低下で青くなったりだ。


「はなは、この湖の水で己が痛みを沈めようとしたようじゃが、真に癒しとなるのはこれのみじゃ」


 紅華の左手に見える、は三つの紅い玉。

 紅玉である。

 それを躊躇わず口に頬張り、口中にて味わい、そして嚥下した。


「ああ、素晴らしい!。地より湧いて出るかのような力の波を感じる。化神となる時も近い。どれ!!」


 紅華は軽く右手を振い、指骨槍を引き抜いた。

 たまらず地に伏したおれの胸に開いた五つの傷口は大きく裂け、大量の出血を伴っている。


(あかん、死ぬ……)


 薄れゆく意識。

 何故か脳内では、大阪弁が飛び交っている。


 実はおれはこれまでに、こんなに酷いダメージを受けた事が無い。

 おれがこのままくたばると、身体に潜んでいる仲間たちも死ぬ可能性が高い為、最悪のシナリオだけは回避したい。


(畜生化け物女め。何する気だ?)


「うん、あれで試すか?」


 紅華はおれが虎月から借りた馬の姿を視界に収めると、スッと右手を馬に向け宙空をギュッとつかんだ。


 それと同時に、周囲にけたたましい馬の悲鳴が響き渡る。


 触れてもいないのに、念動で形作られた右手が馬の首を締め上げ、空中まで無理矢理引き上げる。

 

(よしやがれ、ちくしょう!!)


 声にならないおれの言葉が届くはずもなく、馬の嘶きは絶叫に変わった。


「それ!」


 紅華の言葉とともに、軽い音を立てて馬の首骨はへし折られた。


「良い感触だ。明日の晩が楽しみだ。

なぁ、月影斬九郎」

「?」


 紅華はニヤリと口元をゆがませ、意味ありげな視線を地で這うおれに向けた。


「縁があればまた会おう。生きておられたらな。

ゆくぞ獅子丸!」


 篝火の側でずっとお座りしていたぶーちゃんは、飼い主であるはずの紅華の言葉に動く様子が無い。


「ふん、そうか。共にこぬなら、もう良い」


 そう言うと紅華は、前方に出現させた黒霧の中へ踏み込み、一瞬でその姿を消した。




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