北の大狼
さて、出て来たのは誰?
あれから俺達は準備を整えてダンジョン踏破を始めた。
後2つのダンジョンで規模が小さい方を選び、踏破を開始した。
選んだダンジョンの内容は標準的なモノだった。
最初はゴブリンから始まりコボルトやオークやオーガ、人型は階層を潜る度に強化されていた。
魔獣型はボア系やドッグ系、フィールドが森林だと魔猿型や魔蛇型や魔昆虫型等や、魔樹型等が出て来た。
エリア・ボスは5階層毎に存在したが、特に特色有る内容では無かった。
階層を潜る度に様々なフィールドが出てくるが、特に目立つ様な、云わば「売り」が無い。
そのまま作業の様な流れで、このダンジョンの踏破は完了した。
勿論、私物化する訳にはいかないから、ダンジョン・コアは見るだけにした。
どうやら、このダンジョンは北の大国クロツバキに物資や食料を生み出す為のダンジョンの様だ。
その証拠にドロップアイテムから手に入れた物は換金性の高い鉱物や薬草、衣類に成る物や食料に成る物が多かった。
ダンジョンから戻った俺達は数日の休憩を取り、北の大国クロツバキの最後のダンジョンの踏破を開始した。
事前情報だと、出てくる魔物は全てウルフ系だという。
それにダンジョンによく有る罠等が無く、フィールドが迷宮型であったとしても、通路等も広く戦い易いらしい。
どうやら、出てくる魔物がウルフ系のみを除けば、所謂正面突破とかが得意な者達に好まれるダンジョンの様だ。
まあ、それ故に実力が有る者しか、まともに階層を潜る事が難しいらしい。
「ねえ、セツナ。」
「何、シャオ。」
「妾はこのダンジョンに潜ってから妙な感じがするのじゃ。」
「そうなの?」
「そうなのじゃ。」
「他の皆は?」
他の皆はそういった感じは無いと首を横に降った。
「俺も多分だけど、シャオ程では無いけど感じていた。気のせいかと思ったけど、シャオも感じているのなら注意が必要だろう。皆も気をつけて欲しい。」
「はい。」×7
このダンジョンは本当にウルフ系しか出て来なかった。
恐らくは世界中のウルフ系がこのダンジョンで戦う事が出来るんじゃないかと思う。
はっきり言って、潜る度に難しくなっていった。
苦戦するというよりも、頭も使って進まないと難しくなっていく。
出てくるのがウルフ系だけだからこそ、群れで攻めて来た時に数匹だけ強さが違ったり、見た目は同じでも種類が違って強さも違う魔物が居たりと、油断すると大怪我を負いかねない時が有った。
俺達は今、20階層のダンジョン・ボスと戦っている。
相手は「レッサー・フェンリル」だ。
レッサーと名はついているが、流石はフェンリル系だけあって強い。
しかし、俺達の連携の前にはレッサー・フェンリルも歯が立たずに敗れた。
戦いの最後はランの風系魔法を付与した一撃が止めとなった。
ダンジョン・ボス撃破によって現れた宝箱からは、レッサー・フェンリルの毛皮と牙と爪だった。
最初から最後までウルフ系のダンジョンだなと笑っていた所に、俺を含めて全員が一斉に総毛立った!
「素晴らしい連携と戦いだったぞ。」
「誰だ?」
「私か?」
「そうだ!」
「おいおい。緊張するな。危害を加える積もりも無い。」
「なら、自己紹介をして欲しい所だな。」
俺は平然を装っているが、手に汗が滲み出ていた。
「北の狼王サラディナ=フロンティーラだ。要するに、東の龍王クランベル=ドラグナストと同じ立場の者だ、龍王の長子シャオリート=ドラグナストよ。私の事はディナと呼べ。様なんぞ付けるなよ。」
「サラディナ=フロンティーラ様だとは失礼致しました。」
「だから、様を付けるな、畏まるな。」
「しかし……」
「命令だ。」
「分かりま……、分かったのじゃ。」
「それで良い。堅苦しいのは嫌いだからな。」
「ディナ、妾の事を知っていたのか?」
「ああ。お前がまだ小さい時にな。」
「そうだったのじゃな。」
「……て、言うか。たった1人だけ混じっているその男は誰だ?」
「幻想界からの通知を知らないのか?」
「ここ数年行って無いし、通知等、見とらんかったな。」
「簡単に説明するとじゃな、妾を含めて全員の夫で有り、龍王クランベル=ドラグナストの正式な後継者じゃ。」
「え!?」
「本当じゃ。」
「あははははは! あの堅物が実の娘に後を継がせずに何処の馬の骨とも知らない男を正式な後継者にするとはな。」
「実力は本物じゃ。あの結界の中で父様と互角以上に戦えるのじゃ。」
この瞬間に北の狼王サラディナ=フロンティーラ様が醸し出す空気が変わった!
春の陽射しから極寒の吹雪へ!
「ほお、『あの結界』でか?」
「そうなのじゃ。」
「ならば、力試しだ。先ずは、女王ヒルド=フェン=クロツバキの血統を継ぐ者はおるか?」
「ランがそうだよー。」
「お主が?」
「そうだよー。」
「ならば、私と戦え。他の者は手を出すな!」
「分かりました。」×8
「名を名乗れ!」
「ラン=フェン=クロツバキ!」
「ランよ、来い!!」
「ラン、行きます!」
狼王様とランの戦いが始まった。
ランは挨拶代わりに魔法的な強化をせずに肉弾戦を挑んだ。
それで、良いと思う。
狼王様は、この場に居る誰よりも圧倒的に強者で格上なのだから。
だから、最初から全力を出さずに自分の戦い方がどの程度通じるか、確かめるべきだ。
どうやら、狼王様も分かっている様だ。
狼王様は涼しげにランの攻撃を避けている。
最初の方はランは只の拳撃や蹴撃で攻めていたが、少しずつ技を入れ始めた。
ランが踏み込み右拳の一撃を入れ様としたが左に避けられる瞬間に踏み込んだ足を摺り足で更に前へ踏み込み、避けられる筈だった右腕を曲げて右肘を狼王様の顔面に入れた。
一撃入れたと思ったが、狼王様は初めてランの攻撃を左手で防いだ。
「ランよ、素晴らしいぞ! この私に左手を出させたんだからな!!」
「惜しい。後ちょっとだったのに。」
「次は武器を使っても構わぬ。男を残して全員で挑んで来い。」
「行きます!!」×8
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