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食事の後、私は父様の部屋をノックした。

中から「どうぞ」と短く返事が聞こえる。


私が入ると父様は、座っているソファの横をポンポンと叩く。


お父様…。

いざ話すとなると先程から心臓がバクバクと波打っている。だめっっっ。逃げちゃダメよ。


私は父様の横に腰を下ろす。


しばらく、部屋に無言が続く。焦らせることもなく父様は待ってくれている。……よし、言うわよ。


ティアナはゴクンと唾を飲み込む。


「お父様、実はですね…私12歳を迎えた頃からある事に悩まされていますの。……その、自分の部屋にいても…どこにいてもたくさんの声が頭に響いてくるのです」


私はチラッと父様は見ると、口に手を当て信じられないという顔をしている。

…当然よね。

半年ぶりに会った娘がおかしくなってることを相談されるなんてどうしたら良いのかわからないですよね。


ティアナは目線を自分の座っている足元に落とし話を続けた。


「最初は…亡霊だと思っていたのです。日によって聞こえてくる声の量や大きさが違って頭が声でいっぱいになって気持ち悪くて…どうして自分だけって。…苦しかったのです。周りにも酷い言葉をたくさん言いました。近づくなって…うるさい、と。…けれど気づいてしまいました。」


小さく息を吸って膝の上の手をぎゅっと握るティアナ。そして、ティアナは無理に笑顔を作り父様に顔を向けた。


「わ、わ私。…人の心の声や、考えがわかっちゃうみたいなのです…気持ち悪い…ですよね?へへへっ」


ティアナの口元はピクピクとしてぎこちない笑顔をしていた。

膝の上で握られる手は…体はプルプルと震えている。


そんなティアナを見ると父様はハッと我に帰ると同時に、ティアナを強く抱きしめた。


「すまなかったっ…」


震える小さな声が耳元に聞こえる。


「お、とう…さま?」


なぜ謝るのですか?

謝るのは私の方ですよ。…気持ち悪くて、ごめんなさいって。なのに、…何故お父様が謝るの?


「辛かったなっ。私が近くにいればっ!いち早く気づいてあげられたのに」


ティアナは我慢していた気持ちが爆発した。

頬には熱いものが流れていたのを感じながら、声を荒げた。


「ちがっ…違います!!誰も悪くないのです!!!悪いのはっ…ひっく…きもっ…気持ち悪いのはわたしのほうなのですからっっっ!!うわーーーーっっ」


ティアナは抱きしめる父の胸をドンドン叩く。

そんなティアナをさらに強く抱きしめる父。


「ティア…ちがうんだっ!気持ち悪くなんてない。君はちっとも気持ち悪くなんかないんだ。ただ…私が。私の説明不足が今回ティアを苦しめてしまったんだ!!」


「???」


説明、不足?

どういう事だ。

父様は知っているっているの?この変な、きみが悪い力の正体を…。


ティアナはピタッと泣き止みたちを覗き見た。


「ティア…よく聞くんだよ。君と同じ素晴らしい能力を持つ人がもう1人いたんだ」


!!!!!

うそっ!?まさか…そんなまさかよ。


父様は抱きしめていた私は解放すると頭の撫でながら嬉しそうに泣いていた。


「マロア。…ティアのお母様だ」


「お、母様」


父様はいつも首から下げている1つのネックレスを外しティアナに握らせた。そして目を伏せ、懐かしそうに語り出した。


「黙っていたけれど、マロアは…隣国ニルアナの第3王女だった。そしてナルアナ王家には代々静かに…誰にも言い伝えられることのない隠された力があった。…それが人の心を覗き見る能力だ。いわば魔力の一種だね」


「では、お母様も私と同じで…ずっと苦しんでいたのですか?」


1人じゃなかった。お母様とお揃いだったのね。


父様は首を振った。


「今ティアに渡したネックレスについている指輪を見てみなさい」


ティアナは先程渡されたネックレスの先についている指輪見つめる。


魔道具…みたいだわ。

でも、こんなの見たことない。


「ははっ、ティアは賢いね。そうだ、その指輪は代々ニルアナ王家に伝わる特別な魔法道具だ。…小さくダイヤルが付いているだろう?君のお母様はそのダイヤルで聞こえてきてしまう人の心の声の範囲を調節していたんだ」


よく見てみるとたしかにダイヤル式になっている。1から5となっている。じゃあ…お母様もこれでコントロールしていたってことなの⁉︎


ティアナはキラキラとした目で指輪見つめる。


そんなティアナに父は申し訳なさそうに謝った。


「ティア、本当にすまなかった。ティアナとルカロアも我が家の植物を操る能力を持っていたからまさか…まさかマロアと同じ能力も持ち合わせているとは思わなかったのだ。私のミスだっ」


「ちがっ、違います!しょうが無かったと思います!だって隠された力ってことは無闇に人に言ってはいけないってことですよね?」


「ティア。…こんな不甲斐ない父を許してくれるのかい?」


ふふふっと笑うティアナ。


「不甲斐なくなんかありません!お父様は隣国ニルアナ王家の秘密を守っていただけなのですからっ」


「ははっ、ありがとう…。ティア、その指輪は君が持つにふさわしい。この指を1に合わせておくと以前と同じ暮らしができるよ」


指をはめるティアナ。

すると眩しい光が放たれる。


「「っっ⁉︎」」


なんてことだ。

先程までブカブカだった指輪がピッタリとティアナの人差し指にフィットしているではないか。


おおぉ。


「…本来の持ち主に反応したんだね」


父様はとても嬉しそうに呟いた。


「ありがとうございます!お父様!!」


私は嬉しさのあまり、ぎゅッと父様に抱きついた。


「あぁ。…ティアナ。ちなみにだがこのことは皆知っているのかい?」


「いえ…怖くて言えませんでした。自覚したのも最近なので」


「そうか。よし…。待っていなさい」


真面目な顔でそう言ったかと思うと、目の端の涙を拭い父様は部屋の外に出て行った。


そして少しすると、執事サバス、メイドのアガサ、ルカロアが入ってきた。

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