5話
「あ・・あぁ・・・僕の1週間住んだ家が、そこに元々何もなかったようにきれいさっぱり消え去った・・・」
僕はその場に崩れ落ちた。
「これでわかったでしょ!私が弱いんじゃないてことがね!」
家を消滅させた本人は胸を張ってドヤ顔で僕の方を見ていた。
なんだ?人の家消しておいてこの言い方、喧嘩売られてるのかな?まぁそうなった場合確実に僕が殺されるだけなんだが・・・
まぁ、材料さえあればすぐに作れるからいいんだけど、めんどくさい事にはかわりない。
落ち込んでる僕にようやく気が付いたらしいエヴァが話しかけてきた。
「なんでそんなに落ち込んでるの?」
ブチッ!!
僕の中の何かが切れた音がした。
「わからないか?そりゃわからないでしょうね!意気揚々と魔法をぶっ放したあなたにはねぇ!」
この言い方にムッとした顔を向けて言い返そうとしてきたが、次の僕の一言で何も言うことはできなくなった。
「あれは僕の家だ。そしてさっきまで君が気絶して寝ていた家だね。普通自分の家が消されて落ち込まない人がいてるとでも?しかも目の前で・・・僕が落ち込んだりイライラしてる理由、これで分かってもらえました?」
「あ・・・」
流石に自分のしでかしたことが分かったのだろう、笑顔が一転して顔を伏せ泣きそうな顔になっていた。
いや、少し泣いていた・・
言い過ぎた感じが否めない、罪悪感が半端じゃない。美人が泣いてる姿には何かそそられるものがなくもないのだが、これはキツイよ。
「はぁ・・いいよ、やってしまったのは仕方ないですからね。もう一度作ればいいんですよ」
「ぐす・・・そんなすぐに作れるものじゃないでしょう・・・・」
「大丈夫ですよ。そこで座ってみていてください」
僕は本を出し、材料があるかどうか確認する。
(うん、同じものを作るだけの材料はあるね。頑張った甲斐はあったという訳だ)
元々建てていた場所に、同じ小屋を建てる。
「!?すごい」
ついでに中の家具も作って置いておいた。
材料がかなり減ったが仕方ないか、また集め直そう。
エヴァの元へと戻る。
「こんな感じで材料があれば作れるんだ」
「すごいわね!一瞬で物を作るのもそうだし、さっき出した本に物を収納できるのも凄いわ!」
どうやら泣き止んでくれたようで一安心だ。
ではこれからどうするかを話し合おうじゃないか。僕はまだここで生活するが彼女はどうするかだ。
それと僕の境遇も軽く話しておこう
「僕は女神からもらったこの能力を使ってここで暮らしているんだ。ここの生活はまだ1週間ってところかな、エヴァはこれからどうするつもりなの?」
「あなたも私と同じだったのね・・・私には今何がしたいかとかそういうものがないのよ。前は平等を目指していたけど、今は何をすればいいかわからないのよ・・・」
悲しそうに眼を伏せがちにいう彼女。
目的を見失ってしまっているのだろう、前世では魔族の王として、そして世界で差別をなくすために行動をしていたが志半ばで勇者に殺されてしまった。
そして違う世界で生き返ってしまったがゆえに何をすればいいかわからないのだ。
「だったら僕と一緒にこの島で暮らしてみる?自給自足でやっていかないといけないけど、割と楽しいよ!飽きたりしたら島から出ていけばいいんだし」
気付いたら僕はこう提案していた。
この島でずっと1人で暮らすのも味気ないし、誰かとやっていく方が楽しめると思ったからだ。
「いいの?」
下を向いていたエヴァが顔を上げ、控えめに聞いてきた。
もちろんここでの僕の返事は決まっている。
「うん!これからよろしくねエヴァ!」
「ありがとう・・・それと、あの、よろしくなカズヤ」
こうして僕たちが出会った騒々しい1日が終わり、新しい日々が始まるのだった。
これから楽しくも忙しい日々が始まっていく!