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私の気持ち
ナタリーが去ってから、彼女が座っていた中庭の椅子へ腰かける。
素直になれない彼女は何を思ってあの詩集を読んでいたのだろうか。
いったい誰を想って……。
「フラグうんぬんとかじゃなくて気になるわ」
こんな気持ちいつぶりだろう。
前世の学生時代ぶりじゃないかと思う。
私は空を見上げてつぶやいた。
「悪役令嬢相手にこんな気持ちになるなんて……」
「おい」
「えっ?」
呼ばれて振り向くとそこには第一王子のシュナイダーがいた。
「あらご機嫌麗しゅう、シュナイダー様」
立ち上がり挨拶するとシュナイダーはふんと鼻で笑った。
「呆けているといつ魔王の手下に殺られるかわからんぞ? ”選ばれし者”」
「まぁ、私の心配をしてくださるなんて! なんてお優しいのかしら!」
大げさに喜んでみせる。するとシュナイダーはつまらなそうな顔をして私の隣の席へと座った。
何か用事があるのだろうと思い、私も座りなおす。
「魔王軍が動いた。どうやら闇属性の人間を仲間にしているらしい」