表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/309

第七十九話 入学試験で検証 その一


 ジェラード王国、王都。


 街の中心は西にずれており、城の城壁、貴族区の城壁、一般区の城壁という三つの城壁を俯瞰して上から見ると、外側の区画ほど東側が広い面積配分になっている。


 誇張してその形を表現すると、貴族区も、一般区も、西側が欠けた三日月と言えなくもない形をしているかもしれない。


 実際には、城の西側には貴族区に含まれる様々な研究所が並んでいたり、そのさらに西側には一般区に含まれる王立学校が建っていたりして、その区画が途切れていたりするわけではないので完全な三日月形ではないのだが、それでも西側が狭く、東側が広いので、そう見えなくもないといったところだろう。


 つまり何が言いたいかというと、城や貴族区、研究所や学校など、この国の重要な施設は全て西側に偏っているということ……。


 その理由は、王都の西側にこの街の第四の城壁とも呼ばれる〈グレートウォール山脈〉が広がっているからで、ここが王都を建設する場所として選ばれたのも、天然の城壁である山脈がちょうど窪みになっており、そこに陣を構えればよほどのことがない限り西側から敵兵が来る心配をしなくて済むからである。


 まぁ、そうはいっても、開拓時代はその天然の城壁をものともしない空を飛ぶ魔物にずいぶんやられたようだが……当時の開拓者が頑張ってくれたおかげで、そういった大きな脅威となる魔物は狩りつくされており、今は空からの襲撃も気にしなくて済む環境になっているようだ。


 ふむ……開拓時代と、その結果の今の時代か……。


 この世界観設定は、ゲームを進めていけば進めていくほど敵が強くなっていくレベリング的な理由とマッチしていて素晴らしいな。


 プレイヤーのゲーム開始地点がスライムくらいしか現れない竜の休息地で、その付近できちんと現在の冒険者ランクに見合った範囲で活動していれば、その後も特に強い敵とは遭遇しない。


 ランクが上がっていけば活動範囲が広がり、森の奥や山の上に生息する強い魔物とも戦う機会が増えてきて、それでも物足りなくなってきたプレーヤーには、未開拓地というさらなる荒波が待ち構えていると……うむ、非常によくできている。


 自分は試験勉強の復習のためにシスター・アナスタシア殿に借りた歴史書を読みながら、そんな勉強とは関係のない感想を抱きつつ、その王都の最も西に存在する王立学校へと歩みを進めていった……。


「さて……これで三度目の入学試験か……」


 そう呟きながら見上げるのは、いくつもの学科が存在し、そのどれもにそれなりの学生が所属することが可能なマンモス校……。


 小さな城を思わせるその建物は、背後にそれよりも大きな本物の王城が見えることもあり、まるで王城の施設の一部のようにも見えなくもないが……それもそのはず、王都建設当時はこちらの学校のほうが実際に城砦として使われており、開拓が進んで後から建てられた現在王族が住んでいる王城は、王宮としての役割が高い城なのだ。


 同じ家系の建築家に建てられ、修繕も同じ職人が行っているため、この学校は見た目的にも機能的にも本当に小さな城と言っても過言ではないもので、冒険者を含む平民の入学志願者の中には、ただ城に通うという体験をしてみたいという理由で入学してくる人物もいるらしい。


 そして、そんな一般市民からも人気が高い王立学校の入学試験で、既に〈錬金術研究学科〉と〈魔道具研究学科〉を受け、試験会場に行かなかったり答案用紙を白紙で提出したりして無事に落ちる検証を終えている自分であるが、今日はこの入学試験検証の中で第一の難関だと予想し、ある意味では本命の検証対象の、〈王族・貴族学科〉の受験日である。


「家族からの推薦状がなければ受験することができない代わりに、逆に推薦状さえあればまず落ちることはないと言われている学科か……」


 これが一般的なゲームで、もしこの〈王族・貴族学科〉への入学がメインストーリーに関わる重要なイベントだとするならば、ゲーム設計者的には、この試験でプレイヤーがどんな結果を出しても入学させたいところだろう……。


 ならば、このルートでこのイベントが発生した時点で既に合格する未来は決まっており、強制イベントの連続で話がトントン拍子に進んでいく可能性が高い。


 実際、今日も「だったら入学試験イベント自体から逃げ出せばいいではないか」と考えてこの王都から早朝のうちに離れてみようとしたのだが、ゲームに用意された強制イベントの仕様なのか、そろそろ自分の言う検証というものを理解してきた身内の誰かの指金か、どんな奇抜なルートで街から出ようとしても、名も知らぬ誰かに拘束されたのだ……。


 後で確認したら、人数無制限で、拘束すれば多額の報酬が出るという、賞金首のような扱いの依頼が、事前に冒険者ギルドの掲示板へ張り出されていたらしい……きっと鋭い勘を発揮させたダーフィン殿あたりが、旅立ち前にコンラート殿に指示していたのだろう。


 そんなこんなで、もしかするとスキルを制限せずに全力で逃げれば逃げ出せたかもしれないが、それで逃げ出せなかったら無駄に怪我人を出すだけと諦め、こうして大人しく試験会場である王立学校へと足を運んだというわけだ。


 きちんと王族の恰好をして街を歩いている限りは誰も襲い掛かってこなかったところを見ると、この格好で町の外へ歩いていけばスキルを使わずとも逃げ出せる可能性があったのかもしれないが……ここに来て、少し、気になることに気づいたので、今は特に逃げようとせずにまっすぐ試験会場に向かっている。


 強制イベントの拘束を振り切って脱出したら、ゲームのデータが破損して、あちらこちらで意味不明のバグが発生するような状況に陥るんじゃないかと……そちらも大変気になりワクワクするのだが……もし、この今気づいたイベントの気配が、この機を逃したら二度と発生しないイベントに影響しているとしたら、それを逃すわけにもいかない。


 自分はマップ画面でその発見をもう一度確認して、慣れた手順で試験の受付を前回と同じようにオースの名で受けようとしてしまったところを、踏みとどまらずに答え……他にも色々と怒られたり注意されたりしながら、受付でいくつか検証項目を処理してから、試験会場の教室へと進んだ。


 そして、教室の目の前……そのマップ上に名前が表示されている人物が、間違いなくそこにいることを確認すると、開け放たれているドアからズンズンと一直線にその人物の後姿を目指し……物憂げな表情で窓の外を眺めていたその人物へと話しかけた。


「ふむ……グリィ殿、しばらく見ない間に随分と服装のセンスが変わったな」


「ふぇ? えっ……えぇぇええええっ!? お、オースさんっすか!!??」


「うむ、今もFランク冒険者なオースである」


 そこにいたのは、見慣れた革の軽鎧ではなく、冒険者として一緒に過ごしていた彼女からは想像できないような綺麗な貴族ドレスを身にまとい……いつもテキトーにツーサイドアップでまとめられていた髪が、丁寧に梳かされストレートに下ろされているグリィ殿。


 彼女は突然の自分の来訪に驚いた様子で大きな声を上げた後、周りの視線がこちらへ集中していることに気づいて慌てた様子で姿勢を正す……。


 その無理に取り繕った姿勢はどこかぎこちないし、大声を上げた時点で色々と手遅れのような気もするが、服装が整っており、化粧もそれっぽく施しているようなので、今の彼女を動画じゃなく静止画で納めたのであれば、それなりに貴族っぽいと感じなくもないだろう。


 ふむ……やはり、これは自分の長年のゲーム経験からしても、試験に落ちる検証をするよりも優先度の高いイベントの可能性が高い……この入学イベントから逃げる検証も捨てがたいが、そちらは二周目の検証に回すとしよう。


 自分は重要な二つの検証を天秤にかけると、今回はこの仲間との再会イベントを検証する方針で進めようと決定し、その少し懐かしいがどこか雰囲気の違う彼女と話し始めたのだった……。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる

【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる

【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる

【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる

【身体強化】:様々な身体能力が上昇する

【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔力応用】:自分の魔力を思い通り広い範囲で精密に操ることが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる

【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる

【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる

【伐採】:木を的確に素早く伐採することができる

【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる

【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる

【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる



▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】


▼アイテム一覧

〈1~4人用テント×9ずつ〉〈冒険道具セット×9〉〈キャンプ道具セット×9〉

〈調理道具セット×9〉〈登山道具セット×9〉〈変装セット×1〉〈調合セット×1〉

〈その他雑貨×8〉〈着火魔道具×9〉〈方位魔針×9〉〈魔法のランタン×9〉

〈水×54,000〉〈枯れ枝×500〉〈小石×1,750〉〈倒木×20〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1089日分〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×709〉〈獣生肉(上)×1005〉〈鶏生肉×245〉

〈獣の骨×720〉〈獣の爪×270〉〈獣の牙×258〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライムの粘液×850〉〈スライム草×100〉

〈木刀×1〉〈棍棒×300〉〈ナイフ×3〉〈シミター×2〉〈短剣×3〉〈剣×3〉〈大剣×3〉

〈戦斧×3〉〈槍×3〉〈メイス×3〉〈杖×3〉〈戦鎚×3〉〈弓×3〉〈矢筒×3〉〈矢×10,000〉

〈訓練用武器一式×1〉〈雑貨×50〉

〈魔法鞄×4〉〈風のブーツ×4〉〈治癒のアミュレット×4〉〈集音のイヤーカフ×4〉

〈水のブレスレット×4〉〈装飾品×5〉〈宝石×6〉

〈一般服×10〉〈貴族服×4〉〈使用人服×2〉〈和服×1〉

〈ボロ皮鎧×1〉〈革鎧×1〉〈チェインメイル×2〉〈鋼の鎧×2〉

〈バックラー×1〉〈鋼の盾×2〉

〈上治癒薬×19〉〈特上治癒薬×5〉〈魔力回復薬×10〉〈上解毒薬×7〉〈猛毒薬×10〉

〈筋力増加薬×5〉〈精神刺激薬×5〉〈自然治癒上昇薬×10〉〈魔力生成上昇薬×10〉

〈大銀貨×2〉〈銀貨×3〉〈大銅貨×9〉〈銅貨×7〉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ