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第七十八話 受験勉強で検証


 自由と発展の国、ジェラード王国。


 創造の女神から、破壊の神、変動の女神、循環の女神まで、四大神全てを信仰対象としており、国としてはエルフやドワーフに向ける差別が無いという、変に曲がった考えがなければどの種族も住みやすいであろう国。


 軍事力にそこまで大きな力を注いではいないが、エルフが魔法技術などの研究に協力していたり、ドワーフが製鉄や鍛冶の技術発展に協力しているため、騎士や魔術師のそういった力はもちろん、一般住民の生活レベルも高くなっているようだ。


 そして、その自由と発展を手助けする機関としても、この国の平等な考え方を作り上げている宗教の教えを説き、王立研究所に魔術や錬金術の基礎をしっかりと理解した優秀な人材を送り込む王立学校という存在は、かなり優秀な機関となっているらしい。


「……なので、大きな教会と学校、様々な研究所が建ち並ぶここ、ジェラード王国の王都は、【教育と研究の都】とも呼ばれているのです」


「ふむ」


 自分が今いる場所は、王都にある教会に付属されている孤児院の副院長室……。


 そして、机を挟んだ向こう側からこの国の細かい歴史などを自分に教えてくれているのは、商業都市アルダートンの教会でFランク昇格試験を受ける際にもその勉強を手助けしてくれたシスター、アナスタシア殿である。


 無事に王立学校への入学受験を検証するために、教え方がうまい彼女からまたご教授いただけるのは大変ありがたいことなのだが……何故、アルダートンの教会のシスターである彼女が、王都の教会にいて、今度は受験のための勉強を教えてくれている状況にあるのかというと……実際のところ、自分もよくわかっていない。



 王立学校の一通りの学部に受験の申し込みをする検証を済ませたある日、グラヴィーナ帝国から持ち帰ったお土産をこちらの国の知り合いに配るため、コンラート殿を説得してアルダートンへと赴いたときのことだ……。


 フランツ殿たち〈爆炎の旋風〉のメンバーはちょうど冒険に出かけていたので直接手渡しすることが出来なかったが、冒険者ギルドにいた受付嬢のミュリエル殿とエネット殿にはジェラード王国に帰ってきた旨と、帰って来て早々だが今度は王都の王立学校に入学するのだという報告と共に、グラヴィーナ帝国のお土産を手渡すことができた。


 お土産とは、要するにプレゼントの一種だろう。


 そして、最近のゲームでプレゼントといえば、それによってキャラクターの好感度を変動させることができたりするシステムの一つとして用いられることが多い。


 数あるゲームジャンルの中で自分が唯一不得意とするジャンルである、恋愛シミュレーションといったものによくあるイメージだが、最近の日本では普通のRPGやアクションゲームにもそういったシステムが実装されていることがあったりするのだ。


 なのでこの世界にもそういったものが存在するかもしれないと考え、この機会にそのあたりも検証しようと思った自分は、もちろん、最初は好感度を下げたり上がらなかったりするプレゼントから検証しなければと、あえて彼女たちが喜ばなそうなアイテムを用意したのだが……。


 結果的に、自分のその思惑は失敗に終わることとなってしまった……。


 これが自分が恋愛シミュレーションゲームが苦手な理由でもあるのだが、コミュニケーションスキルを持ち合わせていない自分は、たとえそれがゲームのキャラクターであっても相手の思考が読めないのだ……。


 いやしかし、今回に限っては、このゲームの好感度上昇アイテムの設定が特殊すぎるだろう……事前にそういった好みの話題を振ることで情報を集めていなかったとはいえ、それにしても彼女たちの趣向はよくわからない……。


 こんなものをミュリエル殿に渡したらきっとまた角を生やして怒り出すに違いないと予想しながら、彼女には日本でいうハブ酒のような、凶悪な顔をした蛇の魔物がそのまま酒と一緒に瓶に詰められた酒と、その他ゲテモノといって差し支えない口に入れるのを躊躇うような見た目の酒のつまみを渡したのだが……どういうわけか普通に喜ばれてしまった。


 いや、見た目はどうあれ、せっかく国境を越えて運んできてくれたお土産ということで、彼女が気を利かせて喜ぶふりをしてくれた可能性もまだ残っているが……。


 その誰もが目を背けたくなるグロテスクな見た目に、隣にいた受付の同僚さんが短い悲鳴を上げてカウンターから数メートル後ずさる中、普段はクールなミュリエル殿からは想像できないキラキラした瞳で大事そうに受け取るなど、演技で行うにも難易度が高いだろう。


 そして、もう一方のプレゼント相手であり、今回の好感度低下検証の本命であったエネット殿だが……彼女も自分の理解の範疇を超えた感性の持ち主だった。


 彼女に渡したのは、誰がどう見ても、持っているだけで呪われそうな木彫りの置物……。


 グラヴィーナ帝国でかなり有名らしい陶芸家の店で、落ち着いた雰囲気を放ちながらもどこか威厳を感じさせるような何とも美しい陶芸品が陳列される中、それがこの部屋にあること自体間違いではないかと思えるような、異彩を放っていたのがこの置物だった。


 どうやら、その有名な陶芸家が、趣味で陶芸品以外の芸術にも手を出してみようと始めたのが木の彫刻らしい。


 陶芸家が「その木彫りの置物も一緒に陳列しないと陶芸品を店に卸さない」というほどその作品を気に入っているらしく、そう言われた店は仕方なく店の隅に置いているということなのだが……。


 その陶芸家の陶芸作品を取り扱うどの店も、その木彫りの置物を置き始めてから店の売り上げが下がったと口を揃えており、巷では本当に呪いがかかっているのではないかとささやかれているらしい。


 本人曰く、魔物の中でもその愛くるしい見た目と、倒した時に得られる宝石がかなり高値で取引されることから、貴族の女性や冒険者に人気の高い[カーバンクル]をモチーフにしているとのことなのだが……これはどう見ても悪魔か何かの類だ。


 ウサギの額に小さな宝石が埋め込まれたその魔物は、見ただけで金運が上がるとも言われており、金持ちの貴族が屋敷のその魔物の剥製を飾っていたりするそうだが……。


 対して、この木彫りの置物は、見ただけで何か全身から運気という運気を吸い取りそうな見た目をしている……そして、それを陳列している店に実際そんな効果が出てしまっているのだ……。


 生気のない、どこまでも深く、淀んだ、底のない井戸を思わせるような暗い瞳からは、覗き込んだものの脳に、闇よりも暗く深い深淵に住む、この世に存在してはならない何かを感じさせる錯覚を与え……。


 ウサギとは異なり、可愛い見た目に反して肉食獣であるというそのカーバンクルという魔物の、実際の生体を何故か強調して派手にしたらしい、口元から伸びるその鋭い牙も相まって、じっと見ているだけでその牙から血が滴っている幻覚が見え、「次はお前の番だ」と語りかけてきている幻聴さえ聞こえてくると言われる、恐怖の置物……。


 そんな、ある意味元々の陶芸品よりも有名になっている、曰く付きの、しかしオカルトマニアでさえ店に置いてあるものを眺めるだけで自分で持とうとはしないという、店の隅に売れることのない商品として大量に積みあがっているそれを……エネット殿は喜んで受け取った。


 その喜びようは、可愛いと言って何度も飛び跳ね、何とも女性らしい笑顔で心底幸せそうにその置物に頬ずりするほどで……。


 それが本当に可愛らしいぬいぐるみか何かであったのなら、これほど微笑ましい光景はないだろうと思えたのだろうが……。


 彼女が頬ずりしているのは、地獄の鬼でも近づくくらいなら死を選ぶと言いそうな深淵から這い出てきたような、実際に存在したら闇をそのまま液状化したようなドロドロした魔力が纏わりついていることだろうことが容易に想像できる生き物の置物である。


 ミュリエル殿も、エネット殿も、自分個人としては、お土産を喜んでくれたのは何とも嬉しくありがたいことだったが、手放しに喜べない反応を期待していたのに対して、逆にこちらの方が手放しに喜べない何とも言えない気持ちになるとは……。


 うーむ……プレゼント検証……奥が深いな……。


 自分はその予想とは違った検証結果を心に刻み、やはりまだまだコミュニケーションスキルに関しては修行が必要だなという感想を抱きながら、続いて冒険者ギルド付属の解体所でお世話になった親方や冒険者活動中に宿泊していた宿屋の女主人カロリーナ殿、輸入雑貨店のファビオ殿や服飾雑貨店のボリー殿に、薬屋のアドーレ殿の元を順番に訪れていく。


 好感度マイナスの検証は受付嬢の二人に期待していたので、それ以降のお土産には特に変わったものもなく、ただ単に帰ってきた挨拶をしていっただけという感じの検証結果にはなったが、今回がダメだったのであれば、それを次の機会に活かせば良いのだ……あまり気にしなくていいだろう。


 プレゼントの検証とは別に、ファビオ殿の店で少し商売に関してやり取りがあったが、それはそこで完結せずまだこれからやることが発生したので振り返るのは後にして、今はこの目の前でニコニコとこちらへ笑顔を向けながら勉強を教えてくれている彼女、アナスタシア殿にお土産を渡しに行った時のことだ……。


 端的に起こったことを順番に並べると……帰還を報告する、喜ばれる、お土産を渡す、大変喜ばれる、アルダートンではなく王都で生活すると伝える、彼女も王都についてくることになる……以上だ。


 並べた事象を客観的に眺めると、自分でもあまりにも端的すぎると感じる内容なのだが……そうは言ったものの、本当にこれが起きたことの全てなのである。


 せっかく帰ってきてなんだが、王立学校へ入学するのでしばらく王都で暮らすことになると言った自分に対して、彼女は一瞬固まった後、次の瞬間には笑顔のまま「では私も王都の教会に引っ越します」と言って去っていき、自分が王都に帰ってきた次の日、いつも通りのジョギングの後にお祈りをしに教会へ訪れると、既にそこには彼女の姿はあった……。


 一体どんな魔法を使えばたった一日で所属の教会を替え、引っ越し準備も整えて、自分の馬車と同じか一日遅れで王都に移って来れるというのだろうか……。


 この王都の教会で彼女を見たときはそんな疑問が一瞬沸いたが……まぁ、ゲームならプレイヤーの行動に合わせて登場キャラクターが瞬間移動するようにポジション移動するのはよくあることである……深く気にする必要もないだろう。


「オーくん、聞いてますか?」


「む、すまない、少し考え事をしていた……次は魔力と瘴気、人間と魔物の関係に関してだったか」


「はい、そうですっ、このあたりは冒険者学科だけでなくどの学科でも必ず出題されるくらい重要な部分なので、考え事に頭を使わないでちゃんと聞いてなきゃダメですよ?」


「うむ、承知した」


 結局のところ今の状況になっている理由はよく分からないままだが、これから訪れる全学科の受験検証のために彼女の力が助けになるのは間違いない。


 春が来たらまた王立学校に通えない子供たちのためにアルダートンの教会で小さな学校が開かれるため、アナスタシア殿はそちらへ帰るということらしいが、受験期間であるこの冬の間は、せっかく自分のために先生をしてくれる彼女の厚意に甘えて教会に通うことにしよう。


 他に会っておきたい人物として、何故かいまだに王都にいるグリィ殿が挙げられるが、王都にいるならいつでも会いに行けるだろう……彼女とフランツ殿たちを除けばアルダートンで世話になった人たちにはだいたい挨拶に行けたし、直近の検証で大事なのは試験対策の勉強だ。


 この勉強は、凝った世界観が詰め込まれているこのゲームの設定を知るという意味でも重要なことであるし、世界を隅々まで検証するという目標がある自分としても、おろそかにできない重要なことである。


 ゲーム内で大量の本が読めるという有名な海外のオープンワールドゲームや、緑の衣をまとった勇者が退魔の剣で戦う有名な日本のアクションゲームなど、ゲーム内の世界設定が凝りすぎていてそれだけで歴史書が数冊作れそうなゲームがこの世には数多く存在する。


 そして、自分はそういったゲームをプレイする際、公式で出版されているファンブックなどを全て読破したうえで、実際にゲーム内やそういった本では語られていない部分まで想像しながら楽しむ派だ。


 それはゲームの攻略本を読み、最適解とされているその攻略法以上のプレイを目指すRTAプレイヤーと似たような心境だろう……。


 ならば、デバッガーである自分は、それ以上の成果を目指すべきではないだろうか。



「ふむ……なるほど……よし」


「とりあえずこの世界に存在する本という本を全て読破しよう」



 自分はアナスタシア殿に勉強を教えられながら、こうしてまた新たな目標を設定したのだった。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる

【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる

【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる

【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる

【身体強化】:様々な身体能力が上昇する

【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔力応用】:自分の魔力を思い通り広い範囲で精密に操ることが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる

【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる

【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる

【伐採】:木を的確に素早く伐採することができる

【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる

【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる

【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる



▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】


▼アイテム一覧

〈1~4人用テント×9ずつ〉〈冒険道具セット×9〉〈キャンプ道具セット×9〉

〈調理道具セット×9〉〈登山道具セット×9〉〈変装セット×1〉〈調合セット×1〉

〈その他雑貨×8〉〈着火魔道具×9〉〈方位魔針×9〉〈魔法のランタン×9〉

〈水×54,000〉〈枯れ枝×500〉〈小石×1,750〉〈倒木×20〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1089日分〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×709〉〈獣生肉(上)×1005〉〈鶏生肉×245〉

〈獣の骨×720〉〈獣の爪×270〉〈獣の牙×258〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライムの粘液×850〉〈スライム草×100〉

〈木刀×1〉〈棍棒×300〉〈ナイフ×3〉〈シミター×2〉〈短剣×3〉〈剣×3〉〈大剣×3〉

〈戦斧×3〉〈槍×3〉〈メイス×3〉〈杖×3〉〈戦鎚×3〉〈弓×3〉〈矢筒×3〉〈矢×10,000〉

〈訓練用武器一式×1〉〈雑貨×50〉

〈魔法鞄×4〉〈風のブーツ×4〉〈治癒のアミュレット×4〉〈集音のイヤーカフ×4〉

〈水のブレスレット×4〉〈装飾品×5〉〈宝石×6〉

〈一般服×10〉〈貴族服×4〉〈使用人服×2〉〈和服×1〉

〈ボロ皮鎧×1〉〈革鎧×1〉〈チェインメイル×2〉〈鋼の鎧×2〉

〈バックラー×1〉〈鋼の盾×2〉

〈上治癒薬×19〉〈特上治癒薬×5〉〈魔力回復薬×10〉〈上解毒薬×7〉〈猛毒薬×10〉

〈筋力増加薬×5〉〈精神刺激薬×5〉〈自然治癒上昇薬×10〉〈魔力生成上昇薬×10〉

〈大銀貨×2〉〈銀貨×3〉〈大銅貨×9〉〈銅貨×7〉

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