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第七十七話 ジェラード王国への帰還で検証 その四


 空の色が黒から瑠璃色、瑠璃色から露草色へと変わっていく早朝……。


 まだ朝日が顔を出していないそんな時間帯に、早起きな小鳥のさえずりでいつも通り目を覚ました自分は、目を開けるとまずその見覚えのない景色に一瞬困惑した。


「ふむ……? あぁ……そうか……そういえば昨日ジェラード王国について、自分の家を買ったんだったな……」


 自分は身体が目を覚ましてから頭が動き出すまでのそんな寝起きのラグを感じながら、天蓋から垂れる閉じられたレースカーテンを空けてベッドを降り、さらに部屋の窓のカーテンも開けてから大きく伸びをする。


 カーテンを一枚超えるたびに冬の寒さが強くなり、窓の近くに立つとその隙間から入ってくる低温の風を直接浴びることもあって、まだ少し寝ぼけていた頭はその頃には完全に目を覚ましていた。


 今まで天蓋付きのベッドなんてただ高級感のある洒落た寝具くらいに思っていたが、こうして冬に暖房のない世界で様々なスキル効果をオフにした状態で過ごしてみると、案外その薄いカーテンで得られる断熱効果は馬鹿にできないものだな。


「さて、とりあえず日課を済ませるとしよう」


 自分はその窓の外で、朝日によって空に薄黄色のグラデーションがかかったことを視界に収めると、動きやすい服装に着替えて屋敷の外に出る。


 昨日……あれから不動産屋を数軒回り、今度は帝国の王子の名前ではなく、冒険者オースの名前で家を買ったり売ったり規約違反を犯したりという検証を行い、無事にその名前が不動産やネットワークのブラックリストに乗るところまで検証結果の確認ができた。


 値切って買った家を別の不動産に高く売りつけてみたり、買うのではなく賃貸としてレンタルした集合住宅の壁に大穴を開けてみたり、貴族街の綺麗な通りに面した家の庭で派手に煙を立てて燻製を作り始めたりと、他にも様々な検証を試みていて……。


 一体それらのどれがブラックリストに載るきっかけだったのかまで把握できなかったのが心残りではあるのだが、この街で二度とオースの名前を使った物件取引ができなくなるという検証結果が得られてしまったので、もう少し細かい検証をするのであればまた別の町で、また資金をためてから行う必要があるだろう。


 そして、そこまで終わったころにようやく、騒ぎを聞きつける度にその情報を辿っていたらしいコンラート殿と、街の衛兵に詰め所に連れて行かれそうになっている自分がばったりと出くわし、色々あったのちに、最初に王子の名義で買った家に帰ってきたという流れだ。


 用意周到な自分は今後の検証に影響が出ないように、それらの検証はオース名義で行うだけでなくちゃんと変装までして行っていたので、帝国でも数々の問題を対応してくれたコンラート殿は、それだけで自分の想定している対処法を察してくれて、帝国の名が傷つかないよう、他人の振りをしつつも釈放を求めるという対応を進めてくれた。


「うむ、一年に満たないとはいえ、やはり毎日のように一緒にいたら、それくらいの言葉にしない意思疎通が出来るようになるものだな」


 そこまで完璧なコミュニケーションが取れているというのに、まだ相変わらずそういったスキルが一覧に現れてくれないことには納得がいかないが、まぁ、冒険者ギルドで出会った人たちも含め、親しい人物との意思疎通スキルは着実に上がっているので、きっとそのうち発現してくれるだろう。


 自分はそう納得すると、相手側のコミュニケーションスキルが上がっただけで、こちら側のコミュニケーションスキルは一切上がっていないという可能性を考慮しないまま、その後に行った家の家具を売り買いする検証を振り返った。


 家の売買検証と家具の購入であれだけ余らしていた所持金が一気に無くなったが、その日は一日中とても有意義な検証が行えたので、結果的には大満足である。


 コンラート殿の予定的には、その頃には既にすぐに住み始められる迎賓館への入館手続きを終わらせて、王に来訪挨拶をするために城の謁見の間へ赴くはずだったらしいが、予定と違う行動をとるのがデバッガーの務めだ、そこはもう諦めてもらうしかないだろう。


 不動産検証の騒動が終わった頃には夕方が近づいてきていて、今から王への謁見を求めるのも失礼だし、その対応をしていたら屋敷を住める状況に持っていく対応が間に合わないだろうと判断した彼は、城に明日挨拶に伺うという手紙だけ出して、後は屋敷を整える行動にシフトしてくれた。


 亜空間倉庫のおかげで大きな家具も楽々運べて、従者たちも手分けして手伝ってくれるとはいえ、その日は残り時間が少なかったこともあり、最低限の生活環境を整えるだけで一日が終わってしまうこととなる。


 そして、王への来訪挨拶を予定している今日も、昨日注文して代金だけ払っていた品が届くいたりするため、手が空いている使用人は引き続きこの屋敷のあれやこれやを対応するらしい。


 自分はそんな風に昨日のことを思い出し、今日の予定を振り返りながら、日課であるジョギングや教会でのお祈りを進めていく……。


 うーむ、王への挨拶が済んだら、入学受験の手続きをしてから、受験に合格したり落ちたりするために必要な勉強をしなければならないし、予定がてんこ盛りであるな。


 ひとまず、屋敷の修繕などもやらなくてはいけないことだが、自分の手で家を修繕するという検証は過去にファビオ殿の依頼で既に行っているので、今回は自分が手を出さずに使用人に全て任せてしまう方の検証でいいだろう。


 せっかくお土産も買ったのでアルダートンにも行きたいが、果たしてコンラート殿がそこまでの外出を許してくれるだろうか……。


 空の色は薄黄色のグラデーションから、朝焼けによる一瞬の朱色を越えて再び薄黄色のグラデーションになり、ゆっくりと静かな薄い水色へと落ち着いていく。


 考え事をしながらこなしていた日課を終えて、買ったばかりの屋敷へと帰るころには、柔らかな明るさを感じられる透き通った空色になり、空の明るさに比例するように徐々に活気を帯びていった街も、その頃にはいつも通りの日常といった賑やかさが感じられるようになった。


「今日からしばらく、この街で過ごすことになるのか……」


 自分の日課を知っているクラリッサ殿の手によって、ちょうど屋敷に帰ってくるころに用意されていた湯を浴びて、自分の新しい部屋の窓から見える街の景色を見ながら、そんなことを呟く。


 この国の王や同じ第三王子であるヴェルンヘル殿下の好意で城に住まわせてもらった頃にこの街での生活は経験しており、マップ検証なども、魔法で施錠された侵入不可能区域以外は済んでいるので、新しい環境への不安というものは全くと言っていいほど存在しない。


 だが、こうしてプライベート空間として認識しきれていない屋敷で、まだ見慣れていない街の景色を眺めていると、帝国での生活を懐かしく感じたりはする。


 商業都市アルダートンの宿屋で暮らし、グラヴィーナ帝国の城で暮らし、そして今度はジェラード王国の王都で買った自分の屋敷で暮らす……そして、いずれはこの屋敷も別荘となって、帝国に戻ることになるか、またどこか別の場所で生活することになるだろう。


 生活環境がコロコロ変わって、忙しない人生を送ることになりそうだが、自分の最終目標はこの世界全ての検証だ……それくらい頻繁に色々な場所を巡らないと達成できない。


 そして、直近の終わらすべき大きな検証対象は、ジェラード王国、王立学校。


 今まで通り、過去の伝手も頼りながら、新しいキャラクターにも出会って、隅から隅まで検証しつくそう。



「ふむ……なるほど……よし」


「とりあえず目標は、学校で発生する全てのイベントに参加することだな」



 自分はそう言って新しい生活に決意をみなぎらせると、まずは受験で貴族学部、冒険者学部を含む全ての学部に入学試験を申請するため、その数だけ偽名と変装道具を準備するという作業に移っていった……。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる

【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる

【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる

【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる

【身体強化】:様々な身体能力が上昇する

【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔力応用】:自分の魔力を思い通り広い範囲で精密に操ることが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる

【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる

【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる

【伐採】:木を的確に素早く伐採することができる

【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる

【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる

【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる



▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】


▼アイテム一覧

〈1~4人用テント×9ずつ〉〈冒険道具セット×9〉〈キャンプ道具セット×9〉

〈調理道具セット×9〉〈登山道具セット×9〉〈変装セット×1〉〈調合セット×1〉

〈その他雑貨×8〉〈着火魔道具×9〉〈方位魔針×9〉〈魔法のランタン×9〉

〈水×54,000〉〈枯れ枝×500〉〈小石×1,750〉〈倒木×20〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1089日分〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×709〉〈獣生肉(上)×1005〉〈鶏生肉×245〉

〈獣の骨×720〉〈獣の爪×270〉〈獣の牙×258〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライムの粘液×850〉〈スライム草×100〉

〈木刀×1〉〈棍棒×300〉〈ナイフ×3〉〈シミター×2〉〈短剣×3〉〈剣×3〉〈大剣×3〉

〈戦斧×3〉〈槍×3〉〈メイス×3〉〈杖×3〉〈戦鎚×3〉〈弓×3〉〈矢筒×3〉〈矢×10,000〉

〈訓練用武器一式×1〉〈雑貨×50〉〈お土産×20〉

〈魔法鞄×4〉〈風のブーツ×4〉〈治癒のアミュレット×4〉〈集音のイヤーカフ×4〉

〈水のブレスレット×4〉〈装飾品×5〉〈宝石×6〉

〈一般服×10〉〈貴族服×4〉〈使用人服×2〉〈和服×1〉

〈ボロ皮鎧×1〉〈革鎧×1〉〈チェインメイル×2〉〈鋼の鎧×2〉

〈バックラー×1〉〈鋼の盾×2〉

〈上治癒薬×19〉〈特上治癒薬×5〉〈魔力回復薬×10〉〈上解毒薬×7〉〈猛毒薬×10〉

〈筋力増加薬×5〉〈精神刺激薬×5〉〈自然治癒上昇薬×10〉〈魔力生成上昇薬×10〉

〈大銀貨×2〉〈銀貨×3〉〈大銅貨×9〉〈銅貨×7〉

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