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第七十六話 ジェラード王国への帰還で検証 その三


 グラヴィーナ帝国を出発してから十日後、ようやくジェラード王国への王都へと到着した自分は、何よりも先に教会でお祈りをすると言って馬車を教会の前に止めさせて、久々に本領発揮してコンラート殿たちを撒き、王都のとあるお店へとやってきていた。


 慣れない土地で人探しをすることになる彼らには悪いが、自分の方は王都は既にマップ検証も終わっているので、どこにどんなお店があって、どの細道がどの大通りへとつながっているかなどすべて把握済みである。


 王都で過ごしていた間、城に常駐している騎士や、いつもこの街を巡回している衛兵からも簡単に逃げ切れていた自分にとって、こちらで土地勘のない従者たちの前から姿をくらませるなど容易いものだ。


「よし、それで問題ない……手続きを進めてくれ」


「ありがとうございます、ではさっそく、こちらの書類ですが……」


 自分は店主の差し出してきた書類を受け取ると、そちらに書かれている内容と共に、店主からの説明にも問題がないことを確認してから、署名欄にグラヴィーナ帝国の第三王子であるオルスヴィーンの名前の方で署名する。


 すると、その書類も魔法道具とやらの一種だったのか、署名が終わると同時に光りだして、その光が二つに分かれたと思うと、分かれた二つの光の中からそれぞれ先ほど署名した書類が現れた。


 なるほど……この世界にコピー機などが存在しない代わりに、契約書類そのものが記載が終わると複製される魔法道具になっているのか。


「ふむ、一応どちらも同じ内容になっているか検めても?」


「はい、もちろんでございます」


 自分は店主の了承を得て複製された書類を両方とも手に取って見比べてみると、流石は魔法道具というべきか……ただ書いた文字が完璧な筆跡で複製されているだけに留まらず、コピー紙のように均一になっていない紙の色や質感までそのまま複製されている。


 後で聞いた話によると、こうして魔法で複製された契約書は互いにうっすらと繋がりを持っていて、それが本当に魔法で複製されたものなのか、完璧に模写された別の紙なのかが判別出来たり、片方の契約書を持っていればもう片方の契約書の場所を探し当てることも可能らしい。


 コピー機が無いなんて不便だなと思っていたが、むしろ契約書としては印刷した別の二つの紙に印鑑を押したり、署名した紙のコピーを取ったりするよりも有能なのかもしれないな。


「うむ、内容は同じもので間違いないな」


「ご確認ありがとうございます……では、代金の方を……」


「ああ、この場で直接渡す形で問題ないか?」


 ―― ジャラリ ――


 自分は複製された書類に問題ないことを確認して返すと、店主からそのうち片方を渡されながら、亜空間倉庫から求められた代金分ピッタリ全額……金貨二十枚を小さな皮袋に入れてテーブルの上に出現させた。


 店主はその額を持ち歩いていた事に対してか、自分が収納魔法を使えることに対してか一瞬驚いて見せたが、いかにもベテランの商売人という見た目に偽りなく、すぐに状況を飲み込んで接客の顔に戻ると、部屋の外から従業員を呼んでその硬貨が本物かどうかを調べさせる。


 いくらこの世界に魔法が存在するとは言ってもそこまで万能というわけではないのだろう……流石に時代ごとに純度や大きさや形などにバラつきが出る硬貨を自動で本物か判断して数えてくれる機械のようなものは存在しないようで、その確認作業は手作業のようだった。


 そしてこの世界ではそれが普通なのか、この店ではそういう決まりなのかは分からないが、自分はその硬貨の重さやらなんやらを確認する作業が終わるまでの間、その部屋で店主とお茶を飲みながら雑談を続けることとなる。


 戦闘スキルなら【戦いと開拓の国】と呼ばれるほど修行するのにうってつけのグラヴィーナ帝国でそれなりに鍛えてきたが、相変わらずコミュニケーションスキルはスキル一覧に発現していない自分にとって、その長い雑談はなかなかハードルの高いイベントではあったのだが……。


 そこは自分と違って【社交術】スキルなども持っている会話もプロレベルな店主……すぐに自分のことを話すことよりも聞くことの方が好きな人物であると認識してくれたようで、この地域の最近の出来事や名所、直近予定されている特売情報や催し物まで幅広く会話を繋げてくれて、なかなか充実した時間を過ごせた。


「……本日はありがとうございました、また何かございましたら、気軽に何でもお申し付けください」


「うむ、またくる」


 自分は貴族街の入口付近にあるその店から出ると、ずっと座っていたせいで固まった身体を伸ばしてから、改めてその大金と引き換えに受け取った契約書を眺める。


「ふむ……貴族街にある大きな屋敷か」


 その手に入れた契約書というのは、家の売買契約書である。


 元の世界で賃貸に住んでいた自分には分からないが、それは一枚だけで、書かれている内容も少ないので、おそらく現代のものと比べるとあまりに簡単なものだと思われる。


 しかし、ここは中世ファンタジーな世界観のゲームの中……書類の細かい見た目よりもプレイヤーがその行動を行ったことにより保存されるセーブデータの方が重要ということだろう。


 まぁ、契約書類が簡単なだけで、この世界特有の変なところでリアルという部分はここでも活かされており、店主の家の所持に関する必要な権利や登記やら譲渡やらの説明や確認事項がやけにリアルだったのだが……。


 自分が聞いてもよく分からなかったので「自分はグラヴィーナ帝国の王子であり、この国の王や王子とも親しき仲である」「家の管理など詳しいことは従者に任せる予定だ」「第三王子ヴェルンヘル殿下に確認を取ってもらって構わない」のようなそれっぽい文言を繰り返すことでやり過ごした。


 もちろん、自分が王子であることを打ち明ける前に、身分を隠してFランク冒険者オースとして購入できないか十分な検証をし、今回の貴族街の屋敷という建物を購入するためにはある程度の信用が必須で、抜け道がないことは確認済みである。


 現実世界で家を持った経験がなくとも、自宅やギルドホームを購入できるようなオンラインゲームで家を持った経験なら数多く存在するので、今は不動産系の詳しい知識がなくても全く問題はないだろう……今の知識で検証できないことは、あとでコンラート殿などに聞いて知識を得てから検証すればいいのだ。


「それなりに大きな買い物だったが、これはこれからの行動に必要な経費なのだ……ここは無一文になる覚悟を決めて、とりかかろう」


 自分は亜空間倉庫に眠っている今まであまり使われなかったお金の残りを確認すると、それを使い切る決意をして、また街中を歩き出す……。


 初回の修繕や清掃を不動産で手配せずに、すぐに住み始めて後はこちらで対応するという方向で話をまとめたので、その分の契約金が下がったのだが、その代わりに修繕に必要な石材や木材を自ら調達して自身の手で行うか、人が住んでいる状態でも対応してくれる業者を自分で探す必要がある。


 足りない家具や食器類の調達もしなければならないので、不動産で支払う出費を抑えたとはいえ、どちらにしてもまだそれなりに出費があることは確かではあるのだが、だからと言って残りのお金が、それらだけで使い切るということはない。


 この買い物はこれからの行動に必要なもの……。


 そして、その行動というのは、改めて言うまでもなく検証である。


 家を買ったもうひとつの理由として、入学のためと伝えて迎賓館に住むことになった場合、検証の結果として受験で落ちた時に追い出されそうだから……というのもあるにはあるのだが、それはあくまでついでである。


 この家を買うということ自体が検証の一部であり……そして、その検証はまだ終わっていない……。


 つまり、何が言いたいかというと……。



「ふむ……なるほど……よし」


「コンラート殿が父上から預かっている生活費にも手を付けて、買えるだけ家を買おう」



 家の売却や、契約違反による罰則などを検証するために、この大きな買い物を何度も行う必要があるということだ。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる

【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる

【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる

【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる

【身体強化】:様々な身体能力が上昇する

【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔力応用】:自分の魔力を思い通り広い範囲で精密に操ることが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる

【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる

【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる

【伐採】:木を的確に素早く伐採することができる

【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる

【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる

【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる



▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】


▼アイテム一覧

〈1~4人用テント×9ずつ〉〈冒険道具セット×9〉〈キャンプ道具セット×9〉

〈調理道具セット×9〉〈登山道具セット×9〉〈変装セット×1〉〈調合セット×1〉

〈その他雑貨×8〉〈着火魔道具×9〉〈方位魔針×9〉〈魔法のランタン×9〉

〈水×54,000〉〈枯れ枝×500〉〈小石×1,750〉〈倒木×20〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1089日分〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×709〉〈獣生肉(上)×1005〉〈鶏生肉×245〉

〈獣の骨×720〉〈獣の爪×270〉〈獣の牙×258〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライムの粘液×850〉〈スライム草×100〉

〈木刀×1〉〈棍棒×300〉〈ナイフ×3〉〈シミター×2〉〈短剣×3〉〈剣×3〉〈大剣×3〉

〈戦斧×3〉〈槍×3〉〈メイス×3〉〈杖×3〉〈戦鎚×3〉〈弓×3〉〈矢筒×3〉〈矢×10,000〉

〈訓練用武器一式×1〉〈雑貨×50〉〈お土産×20〉

〈魔法鞄×4〉〈風のブーツ×4〉〈治癒のアミュレット×4〉〈集音のイヤーカフ×4〉

〈水のブレスレット×4〉〈装飾品×5〉〈宝石×6〉

〈一般服×10〉〈貴族服×4〉〈使用人服×2〉〈和服×1〉

〈ボロ皮鎧×1〉〈革鎧×1〉〈チェインメイル×2〉〈鋼の鎧×2〉

〈バックラー×1〉〈鋼の盾×2〉

〈上治癒薬×19〉〈特上治癒薬×5〉〈魔力回復薬×10〉〈上解毒薬×7〉〈猛毒薬×10〉

〈筋力増加薬×5〉〈精神刺激薬×5〉〈自然治癒上昇薬×10〉〈魔力生成上昇薬×10〉

〈大銀貨×2〉〈銀貨×3〉〈大銅貨×9〉〈銅貨×7〉

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