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第六十五話 本戦で検証 その三


 王位継承戦、準決勝、第一試合。


 このファンタジー世界での自分の兄であり、この国の王子でもある、テオドール第一王子とヴォルフ第二王子の戦い。


 その第三ラウンドで、テオ兄はまた装備を切り替えるようで、重量感のあるグレートソードを収納魔法でその場から消して、続いてプレートアーマーの頭部と胴体部分も収納した。


 ―― ジャラリ ――


 テオ兄が重そうな装甲の下に着ていたのはチェインメイル……。


 鎖を編み込んだ服とも形容できるその鎧の上に、タバードというのだろうか、この国の紋章が入った、両脇が開いた作りの薄い衣を纏い、左肩から右脇にかけてと、ウエスト部の二か所を革のベルトで留めたような格好をしていた。


 チェインメイルの下には鎧下も着込んでおり、これらの上から鋼鉄の装甲を纏っていたとなると、重量もそうだが、熱気のこもりも結構なものだったのだろう、表情の見えないフルフェイスの兜を外したテオ兄の額には汗が浮かんでいる。


 そして、収納したグレートソードの代わりに取り出した武器は、精巧で美しい装飾が施された一本のレイピア。


 どうやらテオ兄は第三ラウンドにその装備で挑むらしく、構えたレイピアをその場で数度振って簡単に手の馴染みを確かめると、審判に頷いて準備が完了したことを知らせた。



 予選でラウンドの合間どころか試合中にさえ武器や防具を切り替えながら戦っていた自分が言えたことではないが、テオ兄はそんなにコロコロと装備を変えていて大丈夫なのだろうか。

 もしかしたらヴォル兄を相手に重い装備で長く戦うのが難しいからということかもしれないが、第二ラウンドで使用していたグレートソード装備で彼に勝てていたのだから、そのまま同じ装備でも良かった気もする。


 いや、

だがヴォル兄も第一ラウンドでテオ兄を相手に勝利していたように、決して油断できない相手だ……。


 テオ兄が訓練中も含めて、普段からショートソードとカイトシールドという組み合わせの装備で戦うことが多く、ヴォル兄がその手の内を把握しているため第一ラウンドで勝利を手にしたのかもしれないと考えると、同じ装備、同じ戦法で二回戦うのは危険か……。


 〈七剣〉と呼ばれるテオ兄がどれだけのレベルでそれら七種の剣を使いこなしているのか分からないので何とも言えないが、レイピアの技量がグレートソードと同等かそれ以上だとするならば、ここで装備を変更したのは賢明な判断かもしれない。


 まぁいずれにせよ、その選択が正解だったかどうかはすぐに分かる。

 自分は決勝戦で戦うことになるかもしれない二人の戦法を少しでも把握しておくため、ついに始まった兄上たちの第三ラウンドに集中した。




「第三ラウンド……始めっ!!」


 ―― ダッ ――


 開始と同時に走り出すヴォル兄……第二ラウンドではテオ兄も審判の掛け声と共にアリーナの中央へと駆け出していたが、今回は第一ラウンドの時と同じように、剣を構えたまま相手を迎え撃つ体勢のようだ。


 しかし、第一ラウンドの時は守りの姿勢のせいでヴォル兄に敗れている……しかも今回は盾も持っていなければ、武器も細身のため、重量のある攻撃に対しては守りに向いているとは言えない。

 この戦いでも守り重視の闘いで進めようとしているのであれば、それはどう考えても難しいものになるだろうと思えた……が……。


 ―― シュッ ――


 ヴォル兄の助走をつけた素早い突き攻撃を、テオ兄はひらりと躱す。


 胴体部分の一番重い装甲を外して身軽になり、兜も無くしたことで視界が開けたからだろうか……彼の動きは第二ラウンドと比べてかなり機敏になっているようで、最初の一撃をかなり余裕をもって回避することに成功したようだ。



 だが、ヴォル兄もそんなことは当然想定していたのだろう……それともその攻撃は最初からフェイントだったのか、避けられてすぐに身体を反転させると、一瞬の隙も見せることなく第二の攻撃を繰り出した……しかし……。


 ―― ドスッ ――


 攻撃を受けたのは、ヴォル兄の方だった。


 攻めの姿勢を一切崩さず流れるような動作で振り返りながら水平方向へと払ったその剣はテオ兄には届かず、逆にテオ兄の手元から伸びるレイピアがヴォル兄の肩に突き立てられていたのだ。


「ぐっ……」


 その攻撃を食らうと同時にすぐに飛び退くヴォル兄……それは反射的なものだったのだろう……だが、おそらくその判断は正しい。


 ここで引くのを躊躇い、さらなる追撃を模索したり、ガードしながら応戦することを選択をしたら、おそらくテオ兄の第二、第三の攻撃をその身に受けることになったものと思われる。


 なにせ、客席にいながら、俯瞰視点で広い範囲を見える自分にすら、テオ兄が先ほどいつ攻撃を繰り出したのか分からいような状況だったからだ……。



 助走をつけた突きが躱されたヴォル兄が、振り返りながら二度目の攻撃を放ったのは見えた……しかし、次の瞬間、気が付いたらテオ兄の持つレイピアの先端がヴォル兄の肩に突き立てられていたのだ。


 もちろん、貫通性の高いレイピアと言えど試合用の加工がなされているので、それで怪我をするということはないのだが、兄上の指示なのか職人の趣向なのか、先端がただ平らになっているわけでも、丸みを帯びているわけでもなく、ショートパスタのルオーテのような形になっているため、地肌に攻撃を食らうとハンコのような痣ができるかもしれない。


 それはなんともお茶目で可愛らしい遊び心にも思えるが、そのスタンプをもらってしまう当人の視点でみると、なんとも不名誉な印である。


 ヴォル兄も、いつも人を見下したような態度をとっているテオ兄が、可愛らしい痣を残したその身体を見て、いつも以上に上から目線になる状況を想像したのだろう……観客の前でなかったら露骨に嫌な顔をしていたのだろう、ひきつった表情を一瞬だけ見せてから、そのイメージを振り払うように激しい攻撃を再開した。



 ―― キンッ キンッ キンッ ――



 第二ラウンドまでと同様、手と一体になった武器の取り回しやすさから、素早く力強い猛攻を繰り広げるヴォル兄……しかし、その攻撃はことごとくテオ兄の細くしなやかなレイピアに受け流され、身軽な動きでひらりひらりと躱されてしまう。


 ―― ドスッ ――


「っく……」


 そして、逆にテオ兄の攻撃は反応する間もなくヴォル兄の身体へと吸い込まれ、たまに革鎧の隙間に当たると、その度にヴォル兄は痛みや悔しさを堪えた声を漏らし、徐々に不名誉なスタンプをその身に増やしていった……そして……。



「そこまで! 勝者……テオドール殿下!」



「「おおぉぉぉおおおおおおおおお!!!!」」


 そのまま戦況が逆転することもないまま制限時間の三分が経過し、長男次男の兄弟試合はテオ兄の勝利で終わった。




 うーむ……テオ兄が同じように決勝戦でも装備を順番に切り替えていく戦い方をするのであれば、第三形態であるレイピアには注意が必要だな……。


 レイピアの見えない攻撃は、自分が練習して最近できるようになった、あの距離を一瞬でつめる移動法と似たようなものだとは思うが、目に見えない刺突攻撃など避けようがない。


 祖父上の居合も木刀の動きに関しては見えない速度なのだが、縦や横、斜めへの斬撃であれば、最初の構えからどの方向から斬撃がくるか最低限は予想ができるのに対して、テオ兄の場合は真正面から一点を狙った攻撃が突然飛んでくるので、盾などで広い範囲をガードする方法でないと防ぐのは厳しいだろう。


 試合開始と同時に攻め込まなかったのは、今にして思えば、その戦い方では攻撃のタイミングを相手に悟られてしまうからという、ちゃんとした理由があったからかもしれない。


「ふむ……まぁ、技術的に今から練度をどうにかすることはできないし、テオ兄の対策は当初の予定通りでいいだろう」


 自分はそう結論付けると、周りにいる使用人などに気づかれないよう、あらかじめ作っておいた〈遅効性緩下薬〉をテオ兄が使っているグラスに投入した……。


 これで決勝戦が始まるころには、テオ兄は腹痛でトイレにこもってしまうこととなり、不戦勝で自分の勝利となるはずである……うむ……戦わずして勝つ、これ以上に確実な勝利はないな。


 ……卑怯者? 同じ王族なら堂々と勝負をした方がいい? そんなことは知らない。


 自分は卑怯者でも王族でもなく、一流のデバッガーである。


 プレイヤーがゲーム上で使える手段がこうして存在するのであれば、それがどんなものあらかじめ検証しておくのがデバッガーの務めなのだ。


「それよりも問題はこのすぐ後だな……」


 次の試合……準決勝第二試合は、自分VS祖父上こと〈流浪の剣聖〉ライヒアルト。


 本気で戦って一度負けた相手であり、SSSランクの魔物と素手で渡り合う父上を育てた大師匠である……。



 どう考えても負けイベントとして用意された敵キャラクターで、初見のプレイヤーを一瞬で地に伏すことができる怪物だろう……。


 このイベント発生までの期間を考えると、たとえ二周目で効率のいいスキル上げなどに取り組めたとしても、最終的に勝てるかどうかはギリギリな気がする。


 そんな相手に一周目で挑むのだから、命中率や回避率、クリティカル発生率まで確率を超えた神がかった引きを見せ、ステータス以上の力を発揮できたとしても、実際にはおそらく相当な苦労を強いられることになる……と……。


 そう、思っていたのだが……。



「えー、ただいま連絡が入り……ライヒアルト選手はスタッフに棄権するとだけ伝えて、何処かへ行ってしまわれたようです……よって、準決勝第二試合は、オルスヴィーン殿下の勝利となります!」




「なんだと……?」


 祖父上は、アリーナに現れなかった……。


 これがゲームの進行としてあらかじめ決められていたのか、何かの条件を満たしたことで発生したイベントなのかは分からないが、どうやら王位継承戦では祖父上とは戦わないでよかったらしい……。


 その発想は今までなかったが、確かに、前にも思ったが、この試合構成のまま話が進んでしまっては、負けイベントにしてもやりすぎである……プレイヤーにある程度は勝ち進めるという面白さを与えるのであれば、こんなイベントが発生してもおかしくはなかった。



「なるほど うむ……隙の無いゲームだ」



 アルダートンの薬屋でアドーレ殿を助けた時もそうだったが、自分は難易度を難しい方に考えすぎる癖があるらしい。


 自分が元の世界で仕事として検証していたゲームは、難易度の調整がまだ済んでいない、そのままリリースしたら叩かれること間違いなしのバランス崩壊状態が殆どだったので、難しく考えてしまうことも多少は仕方ないことではあるかもしれないが、この世界に関してはもう少しゲーム設計者を信じてみてもいいかもしれないな……。


 まぁ、今のところは難易度を見誤りつつもどんなイベントも突破はできているので、結果だけ見ればそれはそれでいいのだが、デバッガーとしてこういった想定不足があるというのはいただけない。


 現に、その想定不足のせいで、目の前に困った事象が転がっているのだから……。


「うーむ……間隔を開けずにテオ兄との試合が始まるとなると、試合前に下剤の効果が発動してくれないぞ」


 もちろん、試合が長引けば、闘っているうちに薬の効果が現れるとは思うので、相手に毒を盛るという検証自体は達成できるかもしれないが、それでは相手に試合放棄させるという検証が……。


 ふむ? いやまて……試合放棄の検証は、たった今、祖父上がやってくれたな……。


「なるほど……なら何も問題ないな、次の試合では闘いを長引かせることに集中しよう」


 こうして自分は祖父上にリベンジしないまま勝ち上がると、遅効性の下剤を服用した兄上と決勝戦で闘うこととなった。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる

【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる

【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる

【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる

【五感強化】:五感で得られる情報の質が高まる

【知力強化】:様々な知的能力が上昇する

【身体強化】:様々な身体能力が上昇する

【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔力応用】:自分の魔力を思い通り広い範囲で精密に操ることが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる

【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる

【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる

【伐採】:木を的確に素早く伐採することができる

【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる

【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる

【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【鑑定・計測】:視界に収めたもののより詳しい情報を引き出す

【マップ探知】:マップ上に自身に感知可能な情報を出す

【万能感知】:物体や魔力などの状態を詳細に感知できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる



▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【破滅を画策する者】


▼アイテム一覧

〈1~4人用テント×9ずつ〉〈冒険道具セット×9〉〈キャンプ道具セット×9〉

〈調理道具セット×9〉〈登山道具セット×9〉〈変装セット×1〉〈調合セット×1〉

〈その他雑貨×8〉〈着火魔道具×9〉〈方位魔針×9〉〈魔法のランタン×9〉

〈水×54,000〉〈枯れ枝×500〉〈小石×1,750〉〈倒木×20〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1089日分〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×661〉〈獣生肉(上)×965〉〈鶏生肉×245〉

〈獣の骨×720〉〈獣の爪×250〉〈獣の牙×250〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×60〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライムの粘液×850〉〈スライム草×100〉

〈棍棒×300〉〈ナイフ×3〉〈シミター×2〉〈短剣×3〉〈剣×3〉〈大剣×3〉

〈戦斧×3〉〈槍×3〉〈メイス×3〉〈杖×3〉〈戦鎚×3〉〈弓×3〉〈矢筒×3〉〈矢×10,000〉

〈魔法鞄×4〉〈風のブーツ×4〉〈治癒のアミュレット×4〉〈集音のイヤーカフ×4〉

〈水のブレスレット×4〉〈装飾品×5〉〈宝石×6〉〈高級雑貨×8〉

〈一般服×10〉〈貴族服×4〉〈使用人服×2〉〈和服×1〉

〈ボロ皮鎧×1〉〈革鎧×1〉〈チェインメイル×2〉〈鋼の鎧×2〉

〈バックラー×1〉〈鋼の盾×2〉

〈上治癒薬×19〉〈特上治癒薬×5〉〈魔力回復薬×10〉〈上解毒薬×7〉〈猛毒薬×10〉

〈筋力増加薬×5〉〈精神刺激薬×5〉〈自然治癒上昇薬×10〉〈魔力生成上昇薬×10〉

〈金貨×49〉〈大銀貨×5〉〈銀貨×96〉〈大銅貨×1604〉〈銅貨×3〉

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