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第五十七話 本戦準備で検証

 

 武道大会の予選に出場した翌日。


 自分は城を、そして帝都を出て、近くの森にまで足を運んでいた。


 近くと言っても、普通に徒歩や馬車で移動すると片道一日はかかるので、そこは魔力を込めた全力ダッシュを活用して、その工程を数時間にまで短縮している。


 道中ですれ違って目の前を急に突風が通り抜けた人々には申し訳ないが、準備が必要な割に武道大会の本戦まで時間が無いのだ……許して欲しい。


「ふむ……この辺りでいいか」


 帝都の南門を出てからひたすら南に走って来た自分は、周辺を見渡しても街や人影が見えない森の入り口で立ち止まると、城に住み始めてからずいぶんやっていなかった久しぶりのキャンプ設営を始めた。


 門から南東に伸びている道にしたがって移動すれば林業などを営む町だか村があったはずだが、マップ画面を見てみると真っすぐ南に進んだ方が森に近いと分かり、あまり周辺で活動している人達に迷惑をかけたくないということもあったので、今いる場所はここから人が立ち入った形跡もない、自然のままの森が目の前に広がる場所となっている。


 ここに訪れた理由はいくつかあるが、一つ目は、一定時間、体力や魔力の自然回復力が上がるような薬を作るため……大会でのルール的に試合中の薬や道具の使用は禁止されているのだが、事前に薬を服用しておくというドーピング行為が禁止されていないようなので、大会のルールの検証をするためにも作っておくべきだろう。


 二つ目の理由は、自己鍛錬……予選で木刀使いの老人が見せてくれた、攻撃や防御の瞬間だけ魔力を込めるという魔力の節約にもなる技法を、残された訓練期間の全てを徹夜してでも身につけたかったので、技の質が高いが物理的に手数や体力が限られているコンラート殿と訓練するのではなく、昔からよくこういったことに付き合ってくれているもう一人の訓練相手……スライム達に頼もうと思ったのだ。


 薬を調合をするために必要な器具や、この森には無さそうな魔力回復に作用する珍しい薬草などは、ここに来る前に帝都の薬屋で買ってきた。


 数日間城を離れるために、自室に『大会当日までには戻ります、探さないでください』という書置きも置いてきた……あとはそれらの目的を達成するために行動するだけである。


「うむ……明日以降は使わない可能性が高いが、久しぶりのテントも良い出来だな」


 スキルのおかげか、ブランクを感じることなく冒険者用のテントや焚火場所を作ることが出来た自分は、亜空間倉庫から取り出した竜の休息地産のスライム草をそのキャンプ地の周辺に植え始めた。


 植える時にふと検証項目が頭をよぎり、効果があるかは分からないが、折角ならばここでも新しく覚えたことを活用してみようではないかと、目の前の森から少し拝借してきた腐葉土や、スライム草のつぼみに注ぐ水に【魔力操作】で魔力を込めてスライムを呼び出す準備を整えてみる。


 何かが起こるとすれば、日の出を待つことなくスライムが発生するか、生まれるスライムが多少なりとも強化されるというような事象が思い当たるが、とりあえず水を注いで暫く待ってみても何の反応も無いので、少なくとも即時召喚の効果では無いらしい。


「ふむ……なるほど……よし」


「ついでに、スライム召喚に水ではなく薬を使ったらどうなるかも検証しておこう」


 本来の目的から外れていっている気もするが、気になったことを検証し始めてしまうのはデバッガーのさがなのだろう……。


 自分はその日、陽が落ちるまで……採取する予定の無かった種類の植物やキノコまで森で集めては、スライム草に入れるためだけの薬も多量に作り、翌日の朝にスライムが生み出される準備を整えていった……。


 そして、検証を開始してから三日後の昼……。


「ぴぃー……」


 《スキル【魔力操作】が【魔力応用】に変化しました》

 《称号【種の根絶を目論む者】を獲得しました》


 その日も、前の日も百匹づつ増えて、最終的に三百匹という数になったスライムの最後の一匹に対して心の中で感謝の言葉を述べながら倒すと、久しぶりのメッセージと共に獲得した新しいスキルや称号を確認する。


 ふむ……いつも通り獲得するスキルに関しては文句は無いのだが、称号に関しては相変わらず納得がいかない……確かに他の人に比べるとスライムを倒す量は多いかもしれないが、別に自分で生み出して倒しているのだから種の根絶は目論んでいないだろう……。


 自分はそんな納得できない称号が陳列された画面を眺めて少し不服な表情をしてから、いつまでもそうしているわけにもいかないので、スライムとの戦闘や調合で出来上がった毒を零したりしたことで荒れ果ててしまったキャンプ地を片付け始めた。


 称号は置いておいて、スライムに関する検証結果は実に興味深いものだ。


 やる前に予想していた通り、スライム草を植えるのに良い土を使って魔力を与えることで、召喚されるスライムを強化することに成功し、つぼみに注ぐ水を薬効のあるものにすると生まれる彼らにその薬の特性が付与されたのだ。


 召喚された後のスライムに毒を飲ませてもダメージを受けるだけだが、毒の含まれた水によって生み出されたそれは、毒が効かないどころかスライム自体にその毒物の効果があり、試しに【異常耐性】スキルを切って体当たりを受けたところ、ガードした腕が炎症を起こしてなかなか痛いダメージが入ったほどである。


 大量のスライムに囲まれて自身で回復する余裕がなかったので、すぐに毒消しの効果を取り込んだスライムに体当たりしてもらい治癒できたので大事には至らなかったが、あのまま毒スライムにリンチされていたら流石に少しピンチだったかもしれない。


「ふむ……なかなか充実した検証結果が得られたな」


 そんなこんなで三日間お世話になったその場所は、戦闘や毒物の影響で所々草が無くなり土がむき出しになったりしているが、ゴミなどは落としていないので、汚いという印象ではなく、思い出の傷跡が残っているといった印象になっているだろう……多分。


 食材が入っている容器は、使い捨てのプラスチック用品ではなく再利用することも出来る麻袋や木箱だし、調合に使う材料が段ボールやビニール包装に入って通販サイトから届いたりするわけでは無く、料理や調合で出た野菜の皮や切れ端なども、木箱などの廃材と一緒に焚き火にくべて燃やしてしまうので、この世界は余計なゴミが全くと言っていいほど出ない環境なのだ。


 ゴミとまでは行かずとも、今のところそれほど使い道の無いものとして、また〈スライムの粘液〉が増えてしまったことが頭を悩ませる種ではあるが、まぁ、これはそのうち何か別の料理や商品を生み出せないか考えてみよう。


 ちなみに、召喚に薬を使ったスライムは倒した後に残ったその粘液も薬効付きのものとなっていたが、特別その薬の効果が元の状態から上がっているわけでも無かったので、薬効付きの粘液ではなく、亜空間倉庫の指定格納で通常の粘液と薬に分けて仕舞った。


 町で売っている安物や、効果だけを重要視した自分の治癒薬が、いかにも『薬草をすり潰して混ぜた物です』という見た目であるのに対して、一度スライムに取り込まれて粘液状になったそれは、貴族街や高級な薬屋などで売っている、治癒薬の効果を植物油で抽出した物に近い見た目をしていたので、売る用途ならそちらの方がいいかもしれないが。


「さて……」


 自分はキャンプ地の片付け漏れが無い事を確認すると、帝都のある北の大地を見やる。


 そして……新しく獲得した【魔力応用】スキルを発動させてから地面を蹴った。


 ―― シュンッ ――


 一歩で十メートル程だろうか……まるで瞬間移動したように突然元の場所から消えて移動先に現れるそれは、あの老人が予選大会でどの試合でも開始時に使っていた技である。


 もちろん、自分もそれに対応するために全力で瞬間ダッシュを使ったりしていたが、あの時に自分がやっていたのが【身体強化】スキルで全身にそれが出来るほどの魔力を常に巡らせていたのに対して、今やっているのは足の筋肉を中心に必要な箇所に必要な瞬間だけ魔力を通して、部分的な【身体強化】をするという手法なので、魔力消費が少ない。


 それどころか、全身を強化して、身体の動かし方などの技術的に未熟だった部分を無理やりどうにかしていたスキル頼りな運用方法が、必要な箇所に必要な分だけ力を加えるということを意識して訓練していたことで、基礎的な身体の動かし方も改善されて、前よりも速く走れるようになっている気がする。


 スキルがウィンドウ上に羅列されて、可視化されているということで、ついついよくあるRPGのようにスキルを使い続けて内部経験値を稼ぐことで効力を上げようと考えていたのだが、ステータスに表示されない細かな技術も、このリアル志向の世界ではきちんと反映されるらしいのだ。


 うーむ……これはもっと早くスキルを使わない、素の技術を上げることで自分を高めるという検証も考えるべきだったな……。


 自分はそんな風にデバッガーとしての未熟さも反省しながら、帝都から森へ向かう時よりも速いスピードでその帰路を走って帝都へと帰って行く。


 そして、本来は片道で十二時間ほどかかる道を、行きは三時間、帰りは二時間という速さで移動できたので、昼過ぎに森のキャンプ地を出発したにもかかわらず日が落ちる前に城へと帰ってこれた。


 森へ向かった時は人の目の前を通り過ぎる際に突風を発生させてしまっていたが、空気の抵抗を感じないよう風を切るように走るといった技術も身に着けたので、おそらく感覚の鋭い人しか自分が通り過ぎたことに気がつかないだろう。


 自分は三日間、一日百匹ずつ増える魔力で強化されたスライムと、徹夜で戦い続けるという検証にそれなりの手ごたえを感じると、また何かあったら是非彼らに協力を願い出ようと考えながら城の門をくぐる。


「殿下! いやはや心配しましたぞ……一体どこへ行っておられたのですか」


 そして自室に戻っている途中、文官のダーフィン殿に呼び止められ、従者を伴わない外出を咎めらた。


 それに対して、大会のために訓練場では出来ない特別な修行をしていたのだと、外出の理由を説明したのだが、そういうことだとしても、置手紙ではなくちゃんと口頭で説明してから出発して欲しいとのこと。


 どうやら自分がジェラード王国へ逃亡した時も似たような状況だったらしく、城内では予選を見学して自信を無くした王子がまた他国へと逃亡してしまったのではないかと囁く使用人もいたとか。


 立場上、ダーフィン殿や兄上たちは、そう言った噂をする使用人に対して、表では注意を投げかけていたが、裏では父上を含めてしっかり相談して、明日になっても戻らなければ病気にかかっているということで大会を延期して、その間に捜索隊を結成して探しに行こうかという話まで出ていたそうだ。


「うーむ、それは申し訳ない事をした……着替えたら父上たちにも謝りに行こう」


 元の世界でも親はこういったことを咎めない放任主義だったし、この世界に来てからも冒険者という比較的自由な職業だったので、あまり気にすることが無かったのだが、確かに逃亡の前科がある王族という今の状況を鑑みると、置手紙一つで無断外泊するのはまずかったかもしれない。


 自分は自室に戻ると、ダーフィン殿と同じように心配そうな顔で出迎えてくれたクラリッサ殿に湯浴みや着替えを手伝ってもらい、王族らしい出で立ちに整えてもらった後、父上や母上、兄上や姉上の部屋を訪ねて謝って回る。


 長男のテオ兄が心配していなさそうな口ぶりで長々と説教をして来たり、長女のリリ姉が有無を言わさず抱きついてきて、傷が無いかとオロオロしながら真っすぐ心配してくるということはあったが、父上や母上、次男のヴォル兄に関しては、ダーフィン殿がいうほど大げさな心配を、少なくとも表には出していなかった。


 ダーフィン殿が気にし過ぎなのか、父上たちが王族らしく周りに不安を悟られない手法を会得しているのかは分からないが、どちらにせよ一大行事である武道大会を控えた帝国の王子という立場を軽く見て迷惑をかけたことに違いはないし、社会人でもある一流のデバッガーとしても報告・連絡・相談は大事である……次回からは気をつけて検証に出かけるとしよう。


 自分は最後にコンラート殿を自室に呼び、心配をかけたことを謝るついでに、明日は朝から夕方までぶっ通しで訓練するという旨を伝えると、まだ時間があったので訓練場に行き、軽く全ての武器で千回ずつ素振りをする自主訓練をしてから夕食を食べ、もう一度湯浴みをしてベッドに寝転がった。


 明日は本格的な訓練が出来る最終日……そして、明後日はいよいよ王位継承戦に繋がる武闘大会の本戦。


 実際にどこまでいけるかはやってみなければ分からないが、目指すは優勝……。


 そのために今まで鍛えて準備を進めてきたし、コンラート殿との最後の訓練でその最終調整をする予定である。


 自分は明日行う戦闘訓練のイメージトレーニングをしつつ、ついでに本戦での検証項目も考えながら眠りについた……。



 ♢ ♢ ♢



 そして翌日。


 朝から本戦へ向けての最終調整のため、朝からコンラート殿と訓練場で訓練を開始して、日が傾き、空が赤く染まり始めた頃……。


 街ではその日の役目を終えた多くの店や施設から戸締りを終えた従業員が帰宅するために店を出てきて、昼間は比較的静かだった自宅や宿、酒場などに人が増え始めて賑やかになっていくのと対照的に、大通りや広場からは人影が少なくなっていく中……コンラート殿は息を荒くして、額からは汗を流していた。


 帝国にきて初めのころは、自分のほうが先に体力の限界を迎えてしまっていたこともあるし、他の検証もしたかったので訓練をそれなりに時間で切り上げていたのだが、今日に限っては、昨日までスライム相手に鍛えていた技の最後の仕上げということで、朝からずっと戦い続けているので、流石の彼も体力的に余裕を保てなくなってきたようだ。


 お互いに訓練用の太刀を手に睨みあっている状態……自分はコンラート殿のその荒くなってきた呼吸を読んで、反応しにくいタイミングで攻撃を仕掛ける。


 ―― キンッ キンッ ――


 しかしコンラート殿はしっかり反応してきて、自分が次々と繰り出す斬撃を彼が捌き、払いのけるような形で何度も互いの剣をぶつけ合う……。


 コンラート殿は自身の得意な間合いを保つために距離を取ろうとするのに対して、自分は打ち込みながらどんどん距離を詰めていった……そして。


 ―― ガキン ――


 何度目の打ち合いの末、鍔迫り合いのような形になると……その瞬間に腕の力を抜きながら相手の力を横に流すように剣を逸らし、片手を自分の刀から放して相手の刀をそっと握り、腕の力ではなく肩の力でその刀を引きながら腰を落とし、彼が完全に重心を失ったところで相手の体勢を崩しにかかる。


 ―― ドサッ ――


 コンラート殿はまるでこちらの手の導きに合わせて、わざわざ身体を動かしてくれているかのように前転して倒れ、彼の分も合わせて二本の太刀を持った自分が、首筋にそれを両方とも突きつけ、この何度目かわからない勝負も自分の勝利で決着した。


 《スキル【体術】は【武術】に変化しました》


「殿下……本当に大会の本番までにお強くなられてしまいましたね……それこそ、達人という領域に手が届いてしまうほど……」


「作戦があるといったであろう? といっても、自分でも本当に間に合うかどうかは分からなかったのだが」


「なるほど、殿下が今までの訓練で素手での闘いをあまり見せずに色々な武器の扱い方を身に着けようとしてた本当の目的は、その武器を使った戦い方を覚えることではなかったというわけですか」


「まぁ、そんなところである」


 仰向けに倒れながらそう言うコンラート殿に手を差し出して身体を起こさせると、彼に片方の刀を返して、自分ももう片方を鞘に納める……。


 朝から全力で試合形式の闘いを繰り返して、自分が何勝したかは数えていないが、少なくともゼロ敗であることは間違いない……自分はコンラート殿を完封しているのだ。


「あと数試合なら何とか出来そうですが、まだお続けになられますか?」


「うーむ……いや、このあたりで切り上げよう」


 スキルも名が変わるほど成長したようだし、もう日が沈んで暗くなり、そろそろ夕食の時間だ……本戦前に本格的な訓練ができる最後の時間ではあるが、コンラート殿の体力的にもこれ以上続けるのは大変だろう……。


 彼自身も同じ意見だったのか、自分のその訓練終了の言葉を聞くとホッとしたような表情を浮かべ、肩の力を抜いた……。


 訓練を始めたばかりのころは、六割の力しか出していないというコンラート殿に対して、まったく歯が立たなかった上に、自分だけが息を切らしていたというのに、その後の訓練で対人での武器の扱い方に少しずつ慣れていき、スライム相手に練習した、操作する魔力の瞬間的に増減させる方法なども会得した今、その状況が逆転するところまで成長できている。


 中位ランク冒険者以上で受けられる盗賊からの護衛のような、対人戦が求められる依頼や、騎士が出向くような大きな闇組織を調査、壊滅させる任務など、本当に命をやりとりするような実践となった場合は、戦法や覚悟などが違ってくると思うので、また別の話になるとは思うが、ルールのある試合であればそれなりに戦えるようになっただろう……。


「しかし、殿下のあの技は一体何ですか? なんというか、たびたび拙者の身体が殿下に操られているように感じておりました……」


「む? この国に『合気』を教えている道場は無いのか?」


「合気……? いえ、そのような技は聞いたことがないですな……」


「ふむ……」


 なるほど……あの木刀の老人、ライヒアルト殿が使っていたから、どこかの道場で合気道や合気柔術などが教えられているものだと思っていたが、そうではないのだろうか……。


 彼が使っている武術は、居合と合気を融合したような剣術のように思えたが、それを彼が一人で独自に生み出したのだとすれば、確かに皆から伝説と呼ばれるまでの達人になっているのは当たり前である……その技をだれにも伝承しないのは勿体ない限りだが。


「殿下……もし……もし、その技を広めてもいいとお思いでしたら、ぜひこの国の騎士団に伝授していただきたいと思うのですが……いかがでしょう? 殿下と拙者の筋力差がありながら殆ど魔力を使わずに相手を制するその技、悪漢を捕らえるのに非常に役立ちます」


「うむ、まぁ……役立つのは間違いないであろう……しかし、教えを請いたいのであれば今度の武闘大会に参加されるライヒアルトという老人に頼んだほうがいいだろう」


「ライヒアルト……? その方は一体……はっ、まさか、殿下のお師匠様でございますか?」


「いや、自分が彼に習ったわけではないのであるが、おそらく自分よりも合気の練度は上で、コンラート殿のように武器をメインに扱う戦闘方法に組み込みやすい教え方をしてくれるだろう」


「なるほど……事情は分かりませんが、とりあえず陛下にも相談して、武闘大会で見かけた際には声をかけてみます」


「うむ」




 そうして、その日の訓練を終え、闘いの中で自分が見せた合気の技が気に入ったらしいコンラート殿からの進言から、予選で見かけたあの木刀使いの老人、ライヒアルト殿を、このグラヴィーナ帝国の騎士団教官として招く話が進められることとなった。


 本当は自分で教官として騎士を育成するという検証もしてみたかったのだが、自分がメインで使うのは合気道ではなく日本拳法……どちらかというと組技よりも打撃技を中心に扱う闘い方である。


 それも、知識だけでなく、元の世界、現代日本で、子供の頃からとある理由でその道場に通って実際に習得し、大人になってからも運動不足を解消するために続けていた、記憶に染みついている闘い方なのだ。


 子供のころ、自分が元の世界でそれを習った現代日本では、当たり前だが本物の剣や槍などを使った闘い方を教えるような道場は周りになく、自分の目的もそこになかったので、素手での格闘がそれなりに行える日本拳法を選んで習い始めた……。


 その道場の師範に、日本拳法の当身にも組み技にも、合気道の技術が応用できると聞いたので、並行して合気道の道場にも通ったのだが、武器を使うことに興味がなかった自分は、合気剣や合気杖などの武器術はあまり積極的に学ぼうとせず、知識として覚えることと当身に活かすことだけを考えて学んでいたので、武器術への応用はあまり得意ではない。


 なので、素手同士での闘いではそれなりに自信があったのだが、相手が武器を使うとなると、その対応を考えるために自分でもその武器をある程度使えるようになる必要があり、そのためにずっとコンラート殿に武器の扱い方を教わっていたのだ。


 今もそれなりに武器で戦えていることから、やっているうちに武器を使って戦う方法にも合気を取り入れて上達させていけるとは思うのだが、基本的にはまだ自分は素手メインでの日本拳法の戦闘が合っているので、武器術に関してはまだ合気を融合した闘い方を教えられるまでには至っていないという状況なのである。


 ……まぁ、それでも騎士を指導する検証はいつかやってみたいと思うので、いつも通りメモ画面のいつか検証するリストに加えておこう。


 自分はメモ画面の増えてきた検証候補を眺めて、この世界の検証が果たしていつ終わるのだろうかと少し心配になったが、しかし元の世界に帰っても検証で稼いだお金で生活するということは変わらないなと思い直し、とりあえずまだ暫くはこのままでもいいかと考えながら自室へと帰っていった。


 ……明日のために、城の庭にスライム草をひとつだけ植えてから。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる

【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる

【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる

【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる

【五感強化】:五感で得られる情報の質が高まる

【知力強化】:様々な知的能力が上昇する

【身体強化】:様々な身体能力が上昇する

【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える <UP!>

【魔力応用】:自分の魔力を思い通り広い範囲で精密に操ることが出来る <UP!>

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる

【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる

【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる

【伐採】:木を的確に素早く伐採することができる

【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる

【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる

【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【鑑定・計測】:視界に収めたもののより詳しい情報を引き出す

【マップ探知】:マップ上に自身に感知可能な情報を出す

【万能感知】:物体や魔力などの状態を詳細に感知できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる



▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】 <NEW!>


▼アイテム一覧

〈1~4人用テント×9ずつ〉〈冒険道具セット×9〉〈キャンプ道具セット×9〉

〈調理道具セット×9〉〈登山道具セット×9〉〈変装セット×1〉〈調合セット×1〉

〈その他雑貨×9〉〈着火魔道具×9〉〈方位魔針×9〉〈魔法のランタン×9〉

〈水×54,000〉〈枯れ枝×850〉〈小石×1,750〉〈倒木×20〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1092日分〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×861〉〈獣生肉(上)×965〉〈鶏生肉×245〉

〈獣の骨×720〉〈獣の爪×250〉〈獣の牙×250〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×60〉

〈革×275〉〈毛皮×99〉〈スライムの粘液×850〉〈スライム草×99〉

〈棍棒×300〉〈ナイフ×3〉〈シミター×2〉〈短剣×3〉〈剣×3〉〈大剣×3〉

〈戦斧×3〉〈槍×3〉〈メイス×3〉〈杖×3〉〈戦鎚×3〉〈弓×3〉〈矢筒×3〉〈矢×10,000〉

〈魔法鞄×4〉〈風のブーツ×4〉〈治癒のアミュレット×4〉〈集音のイヤーカフ×4〉

〈水のブレスレット×4〉〈装飾品×5〉〈宝石×6〉〈高級雑貨×10〉

〈一般服×10〉〈貴族服×4〉〈使用人服×2〉〈和服×1〉

〈ボロ皮鎧×1〉〈革鎧×1〉〈チェインメイル×2〉〈鋼の鎧×2〉

〈バックラー×1〉〈鋼の盾×2〉

〈上治癒薬×15〉〈特上治癒薬×5〉〈魔力活性薬×10〉〈上解毒薬×7〉〈猛毒薬×10〉

〈筋力増強薬×5〉〈精神刺激薬×5〉〈自然治癒上昇薬×10〉〈魔力活性持続薬×10〉

〈金貨×40〉〈大銀貨×6〉〈銀貨×7〉〈大銅貨×4〉〈銅貨×3〉

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