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第五十五話 武闘大会の予選で検証 その七

 

 Cランク冒険者であるフランツ殿の試合、Sランク冒険者らしい木刀を使う老人の試合、そしてFランク冒険者として出場している自分の試合と……何の巡り合わせかジェラード王国の冒険者が勝利を納め続けている予選会場Bブロック……。


 次でBブロック全員の顔見せが終わるという四試合目、流石に冒険者はいないようで、どちらもこの国の騎士団に所属する騎士とのことだ。


 王に忠誠を誓っているはずの騎士が、王位を奪うことに繋がるこの大会に参加するのは、その王に刃向かうことになるのではないかと思うところだが……それどころか、騎士がこの大会で良い成績を残せば昇進できるという制度があり、国としてこの大会に参加することを騎士に勧めているような状況だと事前に兄上やコンラート殿から聞いている。


 おそらくそれも王や王子がその地位にあぐらをかいて怠けないようにするといった狙いがあり、逆に公共の大会で返り討ちにすることで王や王子には敵わないのだということを意識させるためでもあるのだろうが、流石は戦いの国というべきか……何でも戦いで解決しようとするこの国らしい制度だ。


 そういった事情でアリーナの中央に歩み出た二人の騎士……どうやらこの国の騎士が全て戦国時代のような日本甲冑装備で統一されているわけではないようで、種族としてもどちらもこの国に多いドワーフではなく人間……防具は騎士と聞いて違和感のないプレートアーマーで、右手にはショートソード、左手にはカイトシールドという両者お揃いの恰好をしていた。


 きっと顔見知りで、普段の訓練などでも剣を交えることがあるのだろう……戦闘開始位置で向かい合った二人は何も言葉を交わすことなく、それが当然だというように少しのずれもなく同時に礼をして剣と盾を構える……。


「……第一ラウンド……始めっ!!」


 審判の掛け声で同時に駆け出す両者……しかし、ここで少し違いが出た。


 どちらも盾を前に突き出しながら走っているのは同じだが、片方の騎士は剣をすぐに斬りかかりやすい体勢で構えて進んでいるのに対して、もう片方の騎士は剣をあまり力まずに斜め後ろに下ろして構え、盾で防御することに集中するような体勢を取っている。


 衝突する二つの影……攻めの姿勢だった方の騎士が持つ剣が上段から振り下ろされ、守りの姿勢だった方の騎士が盾でうまく衝撃を抑えて受け止めた……そして次の手では攻守は逆転して、盾で防御した騎士が相手に見えずらい死角から剣でその横腹を突こうとして、しかし攻撃を受け止められた騎士もそれを予想して盾で迫る剣先を弾く……。


 お互いに盾をぶつけ合うようにして一度距離を取る二人……それから何度も衝突しては会話のような攻防をしては離れ、また剣を交えるという事を繰り返す。


 もしかすると騎士団で同じ隊に所属していて、普段の訓練でも似たようなことをしてお互いの手札が分かりきっているのだろうか……どちらも相手の攻撃はまともに喰らうことなく全て受け止め、弾き、受け流し、逆に自分の攻撃も全然通らないという状況が続く。


 攻撃こそ最大の防御と言わんばかりに攻め続けることで相手を牽制する騎士に、基本に忠実という言葉がそのまま鎧を着ているように、教本のような盾捌きを見せてくれる騎士と、その戦いの方針は全く違うものだが、視野を広げれば個としての力量は殆ど同じだろう。


 フランツ殿と薙刀ドワーフの戦いから久しく、それぞれ別の意味で見どころが尖っていたであろう二試合目や三試合目とは違い、こちらの戦いも武道大会らしい均衡した高い技量の選手が剣を交える、とてもためになる試合だった。


 直前の二試合で面食らっていた様子の審判もフランツ殿も調子を取り戻したようで、その鋼鉄の剣と盾がぶつかり合う金属音をBGMに、真剣な目つきでその二人の騎士の試合の行く末を見守っている……。


 ―― ガキンッ ――


 しかし、終わらない戦いは無い。


「くっ……」


 攻めの騎士が繰り出す、剣を扱いなれた者の成せる想像以上に速く重いラッシュが、上から右から左からと多方向から一気に押し寄せて、盾の防御が間に合わず、剣を使っての受け流しを試みた守りの騎士……だが、剣を使った防御は慣れていなかったのか、相手の重い攻撃を受け止められなかったようで、守りに使ったその剣を弾き飛ばされてしまう。


「もらった……!」


 そして、その隙が見逃されるはずもなく、攻めの騎士はそのまま決着をつけようと切り返しの剣で素早く相手の肩口を切り裂くようにそれを振り下ろした……しかし……。


「ふっ……」


 守りの騎士は息をつくと、その雰囲気をガラリと変える……。


 ―― ガキンッ ――


 次の瞬間、今までの動きは何だったのかというような速さで盾を動かし、その剣を思い切りバッシュで弾く……。


 そして、盾の騎士のターンはそれだけでは終わらない……。


 そのまま相手が剣を弾き飛ばされたことを認識するよりも早く身体をそのバッシュの勢いのまま捻って回転させると、その遠心力を盾に乗せて、怯んだ相手の腹に魔力の乗った今までにない盾による一撃を叩き込んだ……そして……。


「……っ」


 仰向けで倒れたその相手の騎士が起き上がる間もなく馬乗りになると、その喉元に盾の先端を突きつけた。


「そこまで!」


 勝負あり……。


 最初からこれを狙っていたのか、咄嗟の判断でそれに至ったのかは分からないが、殆どの人が身を守る道具だという認識を持っているであろう盾を、守りではなく攻めに使った彼のその一連の流れは見事なもので、その動きを見れば彼が愚直に基本に忠実な盾の訓練をしていただけではないのだと考えを改めることになるだろう。


 その一連の動作が、一試合目でフランツ殿が見せた斧を使用した二段攻撃にも似ているところを見ると、この大会に出場できるほどの実力を持った人物というのは、そういった【鑑定】で確認できる所持スキル一覧には表示されないアクティブスキル……必殺技のようなものを所有しているものなのかもしれない。


 そして、そんな彼の隠し持っていたその技術と己の力を比べて勝てないと判断したのか、それとも元から参加する騎士たちの間で一ラウンドだけで試合を終えるという決まり事でも作っていたのか、攻めの騎士は続く第二ラウンドを辞退して負けを認めると、四試合目はそこで終了した……。


 勝ち上がったBブロックの選手は、大斧使いのフランツ殿と、剣の達人らしい老人と、盾の扱いに長けた騎士……そしてこの予選を検証するために冒険者として潜り込んだ自分。


 次はフランツ殿と老人の戦い……ライヒアルトという名らしい、木刀でミスリルの鎧を切り裂くその彼の事についてフランツ殿に聞こうと思っていたが、騎士二人の戦いがあまりにも勉強になる試合だったため見ることに集中してしまった。


「じゃあ行ってくる」


「うむ、応援しているぞ」


 Sランク冒険者という、同業の中でも上の上のさらに上にいる、大先輩とも言えそうな彼と戦うことに対して、流石に少しばかり緊張した様子のフランツ殿が、試合を終えてアリーナから戻ってくる二人の騎士と入れ替わりに、その闘いの舞台へと足を進める。


 共にアリーナの中央へと歩いていく老人の方は微塵も緊張した様子もなく、二試合目と同じように木刀を杖のようにつきながらのんびりと歩いていた。


 予選Bブロックの準決勝……果たしてどんな戦いになるのだろうか……。



 ♢ ♢ ♢



「そこまで!」


 フランツ殿と、木刀使いの老人の戦い……それはまた、二試合目と同じように一瞬で決着がついた。


 いや、一秒もしないで決着がついてしまったそれと比べて、今回は一秒はかかっていたことを考えると、フランツ殿は頑張った方なのかもしれない。


 しかし、二秒もかからないその短い時間で老人が勝利を収めたのは事実である。


 戦闘開始直後……老人は前回と同じように立っていた場所から消えていて、フランツ殿の方は土煙が立ち込めるほどの勢いで目の前の地面へと大斧を振り下ろしていた。


 おそらく老人の初動が目視できない対策として、二試合目と同じように開始と同時に真っすぐ斬りかかってくるという予想だけを頼りにその選択に至ったのだろう……そして、その読みは当たり、老人は土煙の中で木刀を構えた状態で一時停止することとなる。


 予測で行動しているフランツ殿は、大斧の振り下ろしを真っすぐ縦に行ったのではなく斜めに地面を叩きつけて、その反動を利用してスライドするようにして横に移動し、老人のその直線の軌道を避けながら回り込むという作戦だったようで、土煙の中で硬直した老人の背後で大斧を振る体勢に入っていた。


 しかし……。


 最初の一撃を当てることが叶わなかったそのガラ空きの背中を狙って振り払った大斧は、思考が停止して立ち尽くしているようにも見えた老人に当たることなく空を切り、攻撃を空振りしたフランツ殿の首筋には、いつの間にか背後に立っていた老人の持つ木刀の刃先がそっと当てられていた……。


 視力や感知系の能力を強化するスキルを持っていない観客からは、おそらく試合開始と同時に土煙が上がり、モクモクと立ち込める土煙が止んだら、何故かそこには試合開始時の立ち位置から少し進んだ場所で何もない背後に向かって斧を振り切っている状態のフランツ殿に対して、老人が開始時と殆ど変わらない場所でそのガラ空きの首筋に木刀を当てていた、という奇妙な状況として映っているのだろう。


「ははは、参った……降参だ」


 審判もその一人なのか、あるいはあまりにも一瞬の攻防に面をくらっていたのか、二試合目と同じように、フランツ殿が二ラウンド目への続戦をあきらめたギブアップの声を発する固まっていた。


「勝者……ライヒアルト!」


 その宣言で二試合目や四試合目と同じく、二ラウンド目が行われずに試合が終わった選手両者は、最初の立ち位置でお互いに礼儀正しく一礼してから待機場所へと戻ってくる。


 フランツ殿は自分と目が合うと、恥ずかしいところを見られたとでも言うように頭をかいて笑っていたが、自分も含めて誰もその戦いを無様だと言うものはいない……それほど老人の力量は高く、そしてそれに食いつこうとしていたフランツ殿も素晴らしい選手だった。


「……やっぱり間違いねぇ……あの爺さんはSランク冒険者の〈流浪の剣聖〉だ」


 一通り大笑いすると、こちらの肩を叩いて顔を引き寄せ、声を低くして真剣な表情をしてそう言い放ったフランツ殿。


 二試合目の戦いとその名前から予想していたフランツ殿の見立てでは、老人の持つその肩書や経歴は揺るがない事実のようで、彼としては憧れの先輩であると同時に伝説の存在でもあるその老人と一戦を交えられたことは、とても名誉なことらしい。


「ふむ……」


「負けて本戦には出場できなくなくなっちまったのは残念だが、これはこれで他のやつらに自慢できるいい話のネタができたよ、ハッハッハ」


 そういって笑いながらこちらの肩をバシバシと力強く叩いてくるフランツ殿の言葉に嘘はないようで、悔しい気持ちを抱えながらも、どちらかというと上を目指す目標が出来たというような爽やかな感情が見えた。


 自分も次の試合で勝てば、そのジェラード王国では生きる伝説と呼ばれるらしいSランク冒険者と戦うことになる。


 聞けば聞くほど負けイベントの香りが強くなってくるが、それなら一流のデバッガーとしてなおさらその老人と戦わないわけにはいかないだろう。


 そして、そのためには次の試合は絶対に勝たなければいけない。


「ふむ……なるほど……よし」


 ならばここで、後に回そうとしていた完封検証をしてもいいかもしれないな……。


「ジョインジョイン……」


 自分はその呪文にも似た必勝の言葉を発し、脳内で格闘ゲームの選択キャラを二つほどずらすイメージを完了させると、胸の前で片方の手のひらに片方の拳を合わせるようなポーズをとり、身体中から魔力を溢れさせながらアリーナの中央へと歩いて行った……。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる

【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる

【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる

【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる

【五感強化】:五感で得られる情報の質が高まる

【知力強化】:様々な知的能力が上昇する

【身体強化】:様々な身体能力が上昇する

【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【体術】:自分の身体を高い技術で意のままに扱える

【魔力操作】:自分の魔力を思い通りに操ることが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる

【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる

【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる

【伐採】:木を的確に素早く伐採することができる

【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる

【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる

【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【鑑定・計測】:視界に収めたもののより詳しい情報を引き出す

【マップ探知】:マップ上に自身に感知可能な情報を出す

【万能感知】:物体や魔力などの状態を詳細に感知できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる



▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】


▼アイテム一覧

〈1~4人用テント×9ずつ〉〈冒険道具セット×9〉〈キャンプ道具セット×9〉

〈調理道具セット×9〉〈登山道具セット×9〉〈変装セット×1〉〈その他雑貨×9〉

〈着火魔道具×9〉〈方位魔針×9〉〈魔法のランタン×9〉

〈水×60,000〉〈枯れ枝×1,000〉〈小石×1,800〉〈倒木×20〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1095日分〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×870〉〈獣生肉(上)×965〉〈鶏生肉×245〉

〈獣の骨×747〉〈獣の爪×250〉〈獣の牙×250〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×90〉

〈革×275〉〈毛皮×99〉〈スライムの粘液×550〉〈スライム草×100〉

〈棍棒×300〉〈ナイフ×3〉〈シミター×2〉〈短剣×3〉〈剣×3〉〈大剣×3〉

〈戦斧×3〉〈槍×3〉〈メイス×3〉〈杖×3〉〈戦鎚×3〉〈弓×3〉〈矢筒×3〉〈矢×10,000〉

〈魔法鞄×4〉〈風のブーツ×4〉〈治癒のアミュレット×4〉〈集音のイヤーカフ×4〉

〈水のブレスレット×4〉〈装飾品×5〉〈宝石×6〉〈高級雑貨×10〉

〈一般服×10〉〈貴族服×4〉〈使用人服×2〉〈和服×1〉

〈ボロ皮鎧×1〉〈革鎧×1〉〈チェインメイル×2〉〈鋼の鎧×2〉

〈バックラー×1〉〈鋼の盾×2〉〈大会用装備一式×1〉

〈金貨×42〉〈大銀貨×3〉〈銀貨×9〉〈大銅貨×5〉〈銅貨×1〉

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