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第五十話 武闘大会の予選で検証 その二

 

 《スキル【変装】を獲得しました》


 《戦闘系スキル、感知系スキルなどいくつかのスキル条件を満たし、

【隠密】【鍵開け】【変装】が【斥候術】に統合されました》


 《知識系スキルなどいくつかのスキル条件を満たし、

【斥候術】は【諜報術】に変化しました》


 化粧の検証を始めてから何時間たっただろうか……始めた頃は眩しいくらいに明るい日の光が差し込んでいた窓からは、いつの間にか落ち着いたオレンジ色の光が優しく入ってきていて、そろそろ魔道具の明かりを灯す頃合いだなと思える時間帯……。


 自分の目の前には、他国の王女を思わせるような煌びやかな女性が立っていた。


「ふむ……完璧だな」


 ボリュームのあるふんわりとしたウィッグを三つ編みハーフアップにまとめて、金と宝石で花飾りを模ったヘアアクセサリーをつけ、元から整っている彼女の顔を活かした薄化粧にさりげなく人目を引くリップを塗り、ジェラード王国の城から頂いてきた立派なドレスを身に纏った姿は、舞踏会でもあれば彼女をダンスに誘う行列が出来るほどだろう。


 その風貌はやはりどこかの国の王女か、それに近い上流貴族の一人娘といった位の高い女性にしか見えず、とても誰かに仕えてお茶くみをするような使用人とは思えない。


 女性は化粧で別人になるなんて言葉は、誰かがウケを狙うために大げさに言っているのだろうと思っていたが、これで【変装】スキルが獲得できてしまっているのは、その話が誇張ではなかったという証明なのかもしれない……その後に何やら続けてスキルの変化が発生しているが、そちらは後ほど詳しく調べることにしよう。


「……」


 自分が暗くなってきた室内を照らすために灯した魔道具でよりハッキリと見えるようになった彼女は、気品が漂いながらもどこか愁いを帯びた表情をしており、今にも倒れてしまいそうな儚げな雰囲気を出していた。


 その吹けば消えてしまいそうな雰囲気も、世の男性が思わず彼女に手を差し伸べて支えたくなるような魅力の一つになっているのだろうが……おろらくそれは彼女が自らそう言った目的で発している魅惑のオーラなどではなく、実際に疲労で倒れそうなのだと思われる。


 自分自身は今までずっと髪型や肌の色など拘らなくても生きていけるという考えで人生を送って来た人間なので、現代日本の一般知識や、女性向けゲームのやたらと細かいアバター作成が出来るゲームの検証をした経験などでそれなりの知識は持っているとはいえ、こうしてリアルなアナログ操作でそれを実践することなど今までになかった。


 すでに用意された髪型モデルや化粧テクスチャを選んで組み合わせるだけならともかく、それ自体を自分で用意するところから始めるなど、ライトユーザーが投げ出しそうなゲーム仕様だなと思いながら検証を進め、実践として足りない知識をクラリッサ殿本人に聞いたりしながら数々の髪型や化粧を試す。


 整髪料を用意していないので縛ったり解いたりするだけの髪型は色々な形を試すこともそれなりに楽だったかわりに、他の見た目を試すたびに一々洗って落とさなければならない化粧の方はなかなか手間がかかったのだ。


 しかし、そこは超一流のデバッガーであると自負している自分である……転んでもただでは起きない……どうやったらメイクを素早く落とせるかの検証も並行して行い、その結果、自分が亜空間倉庫に眠らせていた〈スライムの粘液〉を使うのが最適解だと導き出した。


 ただ水を吸い込ませた布でゴシゴシと擦って落とすのは時間もかかるし大変で、この世界で一般的に流通している石鹸を使って落とすのは肌荒れの原因になってしまうのに対し……この〈スライムの粘液〉はどういった成分がそうさせるのか、そんなに擦らずとも石鹸のように化粧を落とせるのにもかかわらず、肌の負担も最小限で済むのだ。


 問題点としては、それを顔面にべちゃりと塗られるのは相当気持ち悪いらしく、クラリッサ殿はメイクを落とすたびに泣きそうな顔になっていたことくらいで、機能や効率を考えるとこれ以上にいいツールは存在しないだろう……多少改良すればその気持ち悪さの軽減も出来ると思うので、これを使ったクレンジングジェルもその内ファビオ殿とアーリー殿に提案してみてもいいかもしれない。


 化粧だけでなく、服装を変更したいときも、流石に目の前で着替えてもらうわけにはいかないため、近くの空き部屋に行って着替えてもらっていたのだが、使用人の服はともかく、自分の亜空間倉庫には貴族や王族の服など一人では着るのが大変な洋服も存在した上、男装も試してもらって何度も部屋を往復することになったので、それも大変だっただろう。


 そういうわけで、数々の検証に協力してくれた彼女は、肌にはそれほど負担はかかっていないとはいえ、体力的にも精神的にもそれなりに疲れているのだ。


「うむ、ご苦労だったクラリッサ……協力してくれたお礼に、その衣装と自分が使わないであろう色の化粧品をプレゼントしよう」


「え? 本当で……あ、いえ……私は殿下の従者ですから、殿下のお力になるのは当然でございます……お礼など……」


「遠慮することは無い……女性物のアクセサリーや洋服など、自分が持っていても仕方の無いものだからな……拒否されても困るので、なんなら受け取れと命令してもいい」


「あ……え……あの……っ……あ、ありがとう存じますっ!」


 従者だなんだ言っても、女性というのは自身を綺麗に着飾るそういった物が好きなのだろう……クラリッサ殿は自分のその提案に、それまでの疲労も一瞬で吹き飛んだような満面の笑みを浮かべてのお礼は……キラキラとしたオーラが幻視出来るほどに美しかった。


 彼女にお礼を言われることは度々あったが、これが心の底からのお礼だったからか、化粧などで絶世の美女に仕上がっている状態でのお礼だったからか、それは今までに見たことのない迫力を持つ笑顔で、自分に【精神耐性】が無かったら何かの幻惑魔法にかかっていたかもしれない。


 ふむ……道具に魔石を埋め込むことで魔法の効果が刻めるように、人に化粧を施すとそういった魔法の効果が付与されるのだろうか……これは要検証だな。


 ―― コンコン ――


 そんなことを考えながらも、今回の化粧で人を別人に変えてしまうことができるという検証結果に満足していると、部屋の扉がノックされ、外側に立つ騎士から来客を告げる声が聞こえた。


「リリー殿下がお見えであります」


 そろそろ夕食の時間だから、おろらくそれを伝えに来たのだろう……本来はダーフィン殿の仕事なのだが、時々こうして彼の仕事を横取りしてリリ姉が迎えに来るのにはもう慣れていたので、自分も特に気にせずいつも通りクラリッサ殿に頷いて……。


 対応の許可をもらった彼女が扉を開けようとした時に、自分はいつもと状況が違うことに気がついたのだが、もう遅い……。


「ごきげんよう、わらわの可愛いおとう……っ! こやつ何者じゃ!!」


 あ、と思った時には扉は開かれており、扉を開いたクラリッサ殿と、その扉から入ってきたリリ姉の目が合ってしまった。


 クラリッサ殿もそこで自身がいつもと異なる恰好をしていたことを思い出したのだろう……目を見開き、顔を青ざめさせ、今もそんな彼女を睨みつけているリリ姉を前に固まっている。


 ゲームのキャラクターに組み込まれたAIと、習慣化され芯まで身についてしまったルーチンワークというのは、よく似ているかもしれない……自室の扉がノックされればクラリッサ殿に頷いてしまう自分も、対応を許可されれば扉を丁寧に開いて来客を迎えてしまう彼女も、その状況に陥った身体が自然にそう動いてしまうように出来ているのだ。


 ふむ……人間とAIが変わらない、か……もしかしたらどこかの奇特な大学や研究所などでなかなか面白い研究の材料になるかもしれない……と、そんな事を考えている場合では無かったな。


「リリ姉、落ち着いてほしい……彼女はクラリッサだ……ちょっとした検証……遊びに付き合ってもらっていて、今だけそのような格好をしているだけである」


「クラリッサ……?」


 その言葉を聞いて、リリ姉はクラリッサ殿に鼻と鼻が触れ合いそうなほど顔を寄せて彼女をよく眺めるが、自分の【変装】スキルがそれなりに高かったようでそれだけでは疑いが晴れず、彼女に指示してウィッグを取ってもらう事でやっと本当だと認められたようだ。


 しかし、彼女が知らない女性ではなくクラリッサ殿だと分かったはずなのに、リリ姉は一瞬驚いた表情を浮かべた後、自分と彼女を交互に見てから、何故か表情を緩めるどころか先ほどよりも険しい顔で彼女を睨みつける。


 相性が悪いのだろうか……昨日三人で一緒に夕食を用意したときもそうだったのだが、リリ姉は何故か必要以上にクラリッサ殿に厳しいというか、彼女を邪険に扱っていて……自分が今までそうしていたように彼女に料理を教えながら作ってると、その間に無理やり入ってきて自分にも教えて欲しいと言ってくることが多々あったのだ。


 城のような大きな建物を対象にしていいものか分からないが、同じ屋根の下で暮らしているのだから、もう少し仲良くやってくれないものだろうか。


「うむ、とりあえずもう検証は済んだからな……クラリッサ、元の恰好に着替えてきてくれるか?」


「は、はいっ……直ちに……っ!」


 自分がクラリッサ殿にそう言うと、この場から立ち去れる口実が出来たとでも言わんばかりに勢い良く返事をして、頭を深く下げてから逃げるように部屋を出ていった……リリ姉も彼女のことをあまり好いてはいないようだが、彼女の方もリリ姉にかなりの苦手意識を持っているようだ。


「それで、そろそろ夕飯の時間であるか?」


「? あぁ、そうじゃったのぅ……わらわはそれでオースを呼びに来たのじゃ」


「うむ、わざわざ伝えてくれてありがとうリリ姉……では、自分はクラリッサが戻ってきたら向かうので、先に行って待っててもらっても……」


「しかし、気が変わった……」


「む?」


「クラリッサとやっていたという戯れ、わらわも是非やってみたいのじゃ」


 そうして自分はリリ姉にも色々な化粧を施すことになり、スキルの内部経験値をそれなりに稼ぐ代わりに、改めてダーフィン殿が呼びに来るまで食事に向かえなくなった……。



 ♢ ♢ ♢



「全く……あなた達はいつまでたっても子供ですね」


 開始が少し遅れてしまった夕食が終わり、食後のお茶を飲みながら一家だんらんを過ごす時間……自分は今日ここに来るのが遅くなった事に対して、謝罪をしつつも、不可抗力であることを必死に訴えたのだが、その女性は静かにお茶を一口すすると、呆れるようにため息をつきながらそう零した。


 彼女とは対照的に豪快に笑う父上の向かい側に座るその女性は、殆どリリ姉をそのまま成長させたように見える容姿で、年齢は四十代後半ということらしいのだが、姉上と同じく細身で身長が低めなこともあって三十代前半と言われても信じてしまいそうなほど若く見える、この世界で自分の母親に当たる方、ウーテ王妃である。


 少しつりあがったその目はリリ姉にも受け継がれているが、姉上のそれが偉そうな言動を補助するくらいにしか使われていないのに対して、今まで見てきたものの差なのか、彼女の目には逆らってはいけないと思わせるような力が感じられ、若く見えてもやはり色々な経験を積んだ母親なのだということが分かった。


 聞くところによると母上は父上が武勇伝として語る冒険時代に仲間として共に旅をしていたらしく、今この城で仕事をしている家臣の中にも何人か昔パーティーメンバーとして父上と冒険をしていた仲間がいるとのことだ。


「申し訳ない……」


 母上も姉上と同様、自分が記憶を失ったと知った時はショックを受けたようだったが、そこは母の強さというやつなのか、それとも父上の言う通り自分の今の性格がそれほど前の性格から逸脱していないからなのか、ちょっと頭を打って怪我をした程度のことのように捉えて、心配はされても変な顔をされるようなことは無かった。


「だっはっは、まぁ子供が子供らしいのはいいことじゃねぇか……それに男は多少周りに迷惑をかけるくらいがちょうどいいんだよ」


「よくありません、オースももう十五なんですから、そろそろ王子としての自覚を持った行動を覚えていかないと……だいたい、貴方にも王としての自覚が足りていないのではありませんか? ただ威張っているだけというのは威厳でも何でもありません、昨日もエーベルスト侯爵からせっかく良い提案をいただいたというのに……」


「なんだよ、もう終わったことはいいじゃねぇか……俺は昔から何にでも真面目過ぎるあいつが嫌いなんだよ」


「好き嫌いで国の行く末が左右されてたまりますか、貴方の方こそ昔からいつも……」



 そして、自分とリリ姉が遊んでいて夕食の時間に遅れたという話題から、いつの間にか母上と父上の口論に移ってしまう……。


 これはいつものイベントで、今はこの夫婦のコミュニケーションなのだという認識になっているのだが、父上と母上は仲が良いのか悪いのか、結構な頻度で何でもない小さなことからこういった国の行く末を案じる口論へと発展してしまうことがある。


 そうなると暫く長いので、子供組の自分とリリ姉、テオ兄とヴォル兄の四人は、そんな両親を放っておいて子供同士で雑談を始めるか、ごちそうさまと言ってさっさと自室に帰るという流れが、この城で過ごすようになってからの家族六人の日常だった。


 母上も普段の落ち着いた物腰からは、SSSランクのロック鳥と素手でやりあう父上と共に戦っていたなんて信じられないが、こうしていつも豪快に笑って誰に対しても偉そうな態度をとる父上を窘めていて、それに対して父上が大人しく叱られていることを考えると、もしかしたら実際の戦闘でもそれなりに強いのかもしれない。


「ふむ……そう言えばテオ兄、自分は本当に今十五歳であるか? それにしては兄上二人と比べても身長が少々低いように思うのだが……」


 両親の口論を聞いていても暇なので、母上が先ほど自分が十五だと言っていたのを聞いてふと疑問に思ったことを、長男であるテオ兄に尋ねてみる……冒険者ギルドには成人でないと個人で登録できなかったので十五歳ということで通したが、周りからもよく言われるように、自分は鏡でその姿を見ても、成長途中の子供としか思えない身長なのだ。


「ん? 確か……十四年前の冬の終わりごろに生まれたから、今は十五で間違いないだろう」


 うーむ? 十四年前の冬に生まれて、秋である今、既に十五歳……?


 ……なるほど、この世界の年齢は数え年だったのか。


 ということは、元の世界で考えると自分はまだ十三歳じゃないか……人によってはその辺りで既に成長が止まることもあるかもしれないが、まだまだこれから伸びる可能性も残っているだろう……まぁ、母上の低身長が遺伝しているのか、それにしても身長が多少低い気もしなくもないが……。


 見た目的には自分は身長が高かろうと低かろうとどちらでもいいのだが、冒険者として数か月過ごしていた時、ジェラード王国の平均身長が高いのか、ギルドの依頼が張ってある掲示板や、受付カウンターの高さが少し高く使いづらく感じたのだ……戦闘でも攻撃のリーチに繋がるので、出来ればもう少し成長してくれると嬉しい。


 身長を伸ばすためには何をやったらいいんだったか……たしか、身体を鍛えすぎると身長が伸びなくなると聞いたことがあるような……そうすると今のジョギングや素振りの日課は止めた方がいいのだろうか……いや、でも激しい運動をするバスケットボール部の学生は身長が高い人が多い気もする。


 ……これも検証項目に追加だな。


「テオ兄くらいの身長は目指したいものだな」


「何っ!? 俺のように身長が高くて格好いい男を目指したいだと……?」


「兄貴……別にオースはカッコいいとは言ってな……」


「ふんっ、ま、まぁ、脆弱な弟の目標になるのは兄の務めだからな……精々頑張って励むがいいさ」


「って聞いてないし……」


「なんじゃと! よさぬかわらわの可愛い弟よ……そなたはそのままで十分愛らしいぞ? 兄上のようなおなごを誘惑するだけして放っておくような男になることはない」


「姉貴も相変わらずだし……」


「何を言う、俺は女性に関しては婚約者に一途なだけだ……俺の事よりも、その年になって婚約者もいないリリーの方が……」


「ほう……またその話を持ち出すか……兄上とは言え許容できぬ……そこへ直れ!」


「あーあ、こっちでも始まっちゃったよ……」


 そして父上と母上が口論を繰り広げている横でテオ兄とリリ姉が別の言い争いを始めるのもいつものこと……元の世界で放任主義の親だった自分にはあまり分からないが、両親の背中を見て立派に育った子供というのはこんな感じなのだろう。


 そんなことを考えながら、ため息をついて自分に向けて肩をすくめるヴォル兄と一緒に、お茶を飲みながらのんびりと二つの争いが集束するのを待つ……次男の彼は兄と姉のそんな姿を反面教師にしたのか、それが争いに巻き込まれない術だったのか、兄をからかったりする割にどこか達観したような落ち着いた雰囲気を崩さない人物なのだ。



「そういえば、そろそろ予選が始まるな……」


 暫くして食後の席で始まった二つの言い争いが収まった時、父上は思い出したように自分たちに向かってそう呟く……予選というのは、考えるまでもなく王位継承に繋がる武道大会の一般参加者を決める試合である。


 そしてその言葉の裏には、一般参加者に負けないようにしっかりと準備を整えておけよといった、兄弟に向けての激励のようなニュアンスが込められているような気がした。


「ふんっ、オースは心配だが、俺とヴォルはもう騎士団長としても活躍してるんだ……少し鍛えた程度の一般参加者なんかに引けを取らないさ」


「ほぅ? ま、それならいいけどよ……で、リリーはやっぱり出場しないのか?」


「もちろんじゃ、わらわはあんな暑苦しい闘いに参加しとうない……それよりも父上、わらわの魔術師団はまだ目途が立っておらんのじゃろうか」


「うーん……この国では魔法に熱心な奴が全くいないからなぁ……」


 そして、女性とは言え本戦からの出場権が与えられているリリ姉は、王位継承には特に興味が無いらしい。


 聞くところによると彼女も【戦いと開拓の国】グラヴィーナ帝国の王女として武術もそれなりに嗜んではいるが、得意なのはダーフィン殿に習ったという魔法での戦闘らしく、魔法が使えない王位継承戦では参加したとしても不利になるそうだ。


 リリ姉的には、そんなことよりも魔術師で固めた騎士団のようなグループを作って、何でもかんでも腕力だけで非効率にごり押ししようとするこの国の運営を改善したいということなのだが、このグラヴィーナ帝国は魔術師と呼ばれる人間が、リリ姉、ダーフィン殿、王宮魔術師という全国民併せて三人しかいない脳筋国家なので難しいように思える。


 魔術師が三人しかいないとは言っても、別に魔法を使える人が本当にそれしかいないわけではなく、強化魔法や拘束魔法などがデフォルトで必須項目となっている騎士はもちろん、国民の中には魔法を使う仕事をする人だっている……この国で魔術師と称されるのは、魔法だけで戦闘が出来るという人となっているからだ。


 国を三つに分割することになった過去の歴史的に、海に面していないこの国の領土を獲得した初代帝王は、魔法のみで勝敗を決めるその伝統的な戦いであるマギュエで三位だったらしく、一応他の参加者に勝ちはしたものの、それで魔法がたいそう嫌いになったらしい。


 この国の帝王を決める王位継承戦が魔法無しの闘いとして定められているのもその影響だろうと言われているほど、グラヴィーナ帝国は歴史的にも国全体として魔法を避けて運営されてきた国家なのだ……まぁ、元の世界に魔法が無いように国営にそれは必須ではないのだろうが、他の国が普通に使える力を持ちたがらないというのは果たしていいのだろうか。


「オースは予選、見学しに行くでしょ? 予選の試合は一般開放がされてないんだけど、僕たち含めて参加者なら自由に観戦できるから、他に用が無いなら見てくるといいよ……僕も兄貴も騎士団の仕事で多分いけないけど、人の戦いを見るのは結構ためになるからね」


「うむ、そのつもりである……ヴォル兄たちの分までしっかり学んでこよう」


「うんうん、まぁ戦闘が上手いやつ同士の闘いがあれば純粋に楽しいとも思うし、あんまり気を張りすぎないでね……それで、何か面白そうな参加者がいたら教えてよ」


「承知した」


 そんな感じでその日は食後のだんらんで少し大会の話をして、そこからまた父上が王位継承戦で前代の帝王を打ち負かした自慢話に突入し、母上が長すぎるその話を窘めたあたりで解散となった。


 明日は予選受付の最終日……兄上たちの話を聞いたところ大会の予選参加者の選考内容として、受付の後に何か軽く戦闘力を図るテストのようなものが数種類あるらしく、そのテストの結果次第では予選に参加する資格を得られずに終わってしまうということだ。


「ふむ……なるほど……よし」


「明日は変装して予選テストの検証だな」


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる

【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる

【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる

【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる

【五感強化】:五感で得られる情報の質が高まる

【知力強化】:様々な知的能力が上昇する

【身体強化】:様々な身体能力が上昇する

【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【体術】:自分の身体を高い技術で意のままに扱える

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる

【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る <UP!>

 └【隠密】【鍵開け】【変装】【戦闘系】【感知系】【知識系】

【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる

【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる

【伐採】:木を的確に素早く伐採することができる

【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる

【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる

【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【鑑定・計測】:視界に収めたもののより詳しい情報を引き出す

【マップ探知】:マップ上に自身に感知可能な情報を出す

【万能感知】:物体や魔力などの状態を詳細に感知できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる



▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】


▼アイテム一覧

〈1~4人用テント×9ずつ〉〈冒険道具セット×9〉〈キャンプ道具セット×9〉

〈調理道具セット×9〉〈登山道具セット×9〉〈変装セット×1〉〈その他雑貨×9〉

〈着火魔道具×9〉〈方位魔針×9〉〈魔法のランタン×9〉

〈水×60,000〉〈枯れ枝×1,000〉〈小石×1,800〉〈倒木×20〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1095日分〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×870〉〈獣生肉(上)×965〉〈鶏生肉×245〉

〈獣の骨×747〉〈獣の爪×250〉〈獣の牙×250〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×90〉

〈革×275〉〈毛皮×99〉〈スライムの粘液×550〉〈スライム草×100〉

〈棍棒×300〉〈ナイフ×3〉〈シミター×2〉〈短剣×3〉〈剣×3〉〈大剣×3〉

〈戦斧×3〉〈槍×3〉〈メイス×3〉〈杖×3〉〈戦鎚×3〉〈弓×3〉〈矢筒×3〉〈矢×10,000〉

〈魔法鞄×4〉〈風のブーツ×4〉〈治癒のアミュレット×4〉〈集音のイヤーカフ×4〉

〈水のブレスレット×4〉〈装飾品×5〉〈宝石×6〉〈高級雑貨×10〉

〈一般服×10〉〈貴族服×4〉〈使用人服×2〉〈和服×1〉

〈ボロ皮鎧×1〉〈革鎧×1〉〈チェインメイル×2〉〈鋼の鎧×2〉

〈バックラー×1〉〈鋼の盾×2〉

〈金貨×43〉〈大銀貨×4〉〈銀貨×1〉〈大銅貨×5〉〈銅貨×1〉

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