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第四十七話 料理勝負で検証 その一

 

 《スキル【弓術(基礎)】が【弓術】に変化しました》

 《スキル【短剣術】【剣術】【大剣術】【小太刀術】【太刀……が

 スキル【武器マスター】に統合されました》


「ふむ……ひとまずこんなものか……」


 太刀系のスキルを獲得してから更に五日後、元々所持していた武器のスキルを含め、訓練場に用意されていた使ったことのない武器のスキルを全て対人戦闘が可能なレベルまで鍛え上げ、それらが統合された上位のスキルを獲得した。


 細かいことを言えばまだ使ったことが無い武器はあるのだが、他のスキルと同様に、ここまで様々な武器が使いこなせるのであれば他も使えるだろうという判定か、今持っているスキルを組み合わせればその武器が使えるという判定なのだろう。


 実際、〈ショーテル〉という変わった形の剣は【剣術】と【鎌術】を組み合わせて使うような代物だったらしく、剣でありながらそれを使いこなすことで【鎌術】スキルが鍛えられたし、〈薙刀〉は刀と槍、〈ハルバード〉は斧と槍を組み合わせたような武器なので、それらが個々に使いこなせれば全く使えないということは無いと思われる。


「ではまた……」


 赤く染まる空を見上げて自分が解散を宣言すると、訓練を手伝ってくれたコンラート殿は汗をぬぐいながら笑顔を向け、優雅に挨拶をして頭を下げる……流石に弓というこんな訓練場で一対一で相手をする機会の少ない相手と戦うのは難しかったのか、その顔にはいつもより疲れが浮かんでいるように見えた。


 そういう自分も遠距離から和弓で訓練用の矢を放ってきたり、逆にすぐに間合いを詰めてきたり、薙刀を振り回してこちらの放つ矢を叩き落としてみたりするコンラート殿との戦いでかなり疲れたので、頭を下げ続ける彼に見送られながら従者を連れて自室へと戻りすぐに湯浴みをする。


 城の生活は堅苦しいところもあり慣れないと少し不便ではあるが、気楽に宿泊まりをする冒険者の生活と違って毎日風呂に入れるというのが実にありがたい。


 しかもここの風呂は何故か日本文化に染まっているグラヴィーナ帝国だけあって、流石に温泉が引かれているわけではないそうだが、その香りだけでも心安らぐ広いヒノキ風呂だったりするので、それに浸かるだけで訓練で疲れた身体がほぐれてしまう。


 何か特別な効果があるのかとステータス画面を開いて見たところ、お風呂に浸かっている間は【疲労回復UP】という効果が付与されていたので、個人的な気分だけの問題ではなく実際にそういう仕様になっているらしい。


「オルスヴィーン殿下……お疲れさまでございます」


 広い風呂でゆったりとした時間を過ごして疲労回復に努めた後、自室に戻ってスキル画面を眺めながら今後のレベル上げ方針を考えていると、長い髪をお団子ヘアにまとめた黒髪黒目の若い女性がお茶を入れてくれた。


 彼女は王都でヴェルンヘル殿下に仕えていたメイドのような役職のようで、その恰好が和服であったり、あちらのメイドと違って無口を徹底しているわけでは無かったりするようだが、ジェラード王国からこちらに来るまでの旅からずっと色々なことをサポートしてくれている。


「ありがとう、クラリッサ」


「いえ、これが私のお仕事ですから」


 本当はそういった役職の人間にお礼などを言うのはあまり良くないらしく、旅の間もダーフィン殿に度々注意を受けていたのだが、従者に敬称を付けて呼ぶことほどは悪くないようで、こちらはその内あまり気にされなくなった……いや、諦められたのかもしれない。


 着替えの手伝いからドアの開閉、食事の際に給仕をしたりと、彼女が活躍する場面は多すぎるので、その度に一々お礼を言っていては切りが無いが、一息ついた時たまにお礼を言うくらいならいいだろう……それが彼女、クラリッサ殿の仕事とはいえ、自分がその行為によって助けられているのだから。


 まぁ実際は……お茶を入れてくれるのはともかく、着替えの世話までしてくれなくてもいいというのが本音なのだが……。


「それで……例の件は上手くいきそうか?」


「……」


 自分が【万能感知】で周りに誰もいないのを確認してからクラリッサ殿にそう尋ねると、彼女の表情はそれが答えだというほどに陰り、状況が良くないというのを明示した。


「うーむ、やはりそう上手くはいかないか……」


「……申し訳ございません」


 毎日レベル上げに勤しんでいる理由である、王位継承戦での優勝……そのさらに先の達成目標である、グラヴィーナ帝国での魚料理の普及……自分はそれに向けて、他のアプローチも検証してみるべく、訓練以外にも並行して様々な作業を進めている。


 その一つが彼女に依頼した用件……この城の料理人の買収……。


 買収と言っても、本当にお金を積んで悪の道へ引きずり込もうとしているわけではなく、あくまでも紳士的で平和的な解決をしようとしているところだ……少なくとも今のところは……。


 そして、今クラリッサ殿に頼んでいるのは、その一つ目の案、料理対決による買収……目には目を、歯には歯を、料理には料理を、ということで、勝ったら魚を仕入れてもらうという条件で彼女にこの城の料理人に対して料理勝負を挑んでもらっており、今のところずっと引き分けが続いている。


 いや、おそらく引き分けというのは料理人がメイドに負けるわけにはいかないという苦し紛れのあがきで、実際は彼らも彼女の腕を認めているのだろう……でなければこちらを負けとしてさっさと勝負を終わらせているはずだし、最近なぜか夕食のレベルが日に日に上がっているという現象が起こるはずがない。


 クラリッサ殿が作る料理から何か学びを得るほどには認めているが、プライドを捨てて負けを認めるほどまでの絶対的勝利には至っていないのか……はたまた、彼女からはまだまだ技術が搾り取れるというあくどい考えからわざと結果を先送りにして様々な料理を作らせているのか……どちらにせよこのままでは勝負がつかなさそうである。


「いっそもう自ら勝負を挑んでしまおうか……」


「力が及ばず……大変申し訳ございません……ですが、もう暫く……私にチャンスを頂けないでしょうか」


 ふむ……まぁ、自分が行ってしまっては脅しのような形になって、料理勝負をするまでもなく要求が通ってしまうだろうからな……それは最終手段にした方が良さそうだ。


 これは、自らが戦わないで育てた仲間を戦闘に出すような、育成系ゲームの検証も兼ねているのだ……まだまだ時間はあるのだから、わざわざ自分から検証の機会を失うようなことはしないでいいだろう。


「うむ、では引き続き頼むとしよう」


「誠にありがとう存じます……」


 一介のメイドが、何年も王族に料理を振舞っている料理人と対等以上に渡り合えているのは、自分がクラリッサ殿に料理を教えて、その技術とレシピを持って戦いに行かせているからだ。


 もちろん、クラリッサ殿に元から料理スキルがあり、ものを覚えるスピードも早く、自分が教えたことをちゃんと再現できる器用さもあったから成しえたことだが、それだけでは普通の料理人と勝負が出来ても、宮廷料理人と一戦交えることは出来ない。


 ジェラード王国からこの国にくるまでの旅の間、彼女がずっとその他の雑用もこなしながら料理人役もやっていたので、自分が持っていた食材や調理器具を提供したり、調味料の使い方などを教えたりして、彩のない保存食だらけになるはずだった旅の食事を豊かにした。


 王族が雑用係に対して直々にそういった事を行うことに対して、最初はダーフィン殿が怪訝な顔で注意してきたり、彼女自身も恐縮を通り越して死地に赴くような表情をしていたりしたが、それで実際に料理がおいしくなると分かると誰も文句を言わなくなり、クラリッサ殿とも少しずつ打ち解けていくことが出来た。


 今回の検証……もとい料理勝負を思いついたのも、旅の途中のそんな経験があって、少しずつ彼女の料理スキルが上がっていたからではあるのだが……今、彼らと引き分けでいられているのは、この世界の料理がまだそれほど発達していない状況で、自分が現代の高度な料理知識を持っているからだろう。


 それにしても、ここグラヴィーナ帝国はジェラード王国と比べて高度な料理が数多く存在していて結構手強い……聞くところによると、技術を高めることが生き甲斐というドワーフが長年治めていた国だから、料理技術も高度になっているということなのだが、彼らが得意なのは鍛冶や機械だけというイメージが強かった。


 確かにそれらと同じように技術を高める行為ではあるだろうが、刀を生み出すだけでなく日本甲冑まで作り出し、挙句の果てに和服や和食にまで手を出すとは、彼らの技術欲は本当に見境が無いな……。


 ここの料理長もそんな料理技術を研究して高めているドワーフらしく、それを補佐する料理人もそうらしいので、料理スキルの修練度だけなら元の世界でも下地がある自分よりも上という可能性もある……クラリッサ殿が真っ向勝負で挑むのはやはり難しいのだ。


 ……? 真っ向勝負で挑むのは難しい……?


「ふむ……なるほど……よし」


「? どうかなさいましたか?」


「真っ向勝負が難しいのであれば、搦め手で挑んでみようじゃないか」


「……??」


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる

【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる

【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる

【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる

【五感強化】:五感で得られる情報の質が高まる

【知力強化】:様々な知的能力が上昇する

【身体強化】:様々な身体能力が上昇する

【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える <UP!>

 └【短剣術】【剣術】【大剣術】【小太刀術】【太刀術】【大太刀術】【戦斧術】【槍術】【短棒術】【棍棒術】【杖術】【棒術】【戦鎚術】【鎌術】【鞭術】【弓術】【投擲】

【体術】:自分の身体を高い技術で意のままに扱える

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる

【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【隠密】:気配を薄くして周囲に気づかれにくい行動ができる 

【鍵開け】:物理的な鍵を素早くピッキングすることが出来る

【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる

【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる

【伐採】:木を的確に素早く伐採することができる

【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる

【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる

【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【鑑定・計測】:視界に収めたもののより詳しい情報を引き出す

【マップ探知】:マップ上に自身に感知可能な情報を出す

【万能感知】:物体や魔力などの状態を詳細に感知できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる



▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】


▼アイテム一覧

〈1~4人用テント×9ずつ〉〈冒険道具セット×9〉〈キャンプ道具セット×9〉

〈調理道具セット×9〉〈登山道具セット×9〉〈その他雑貨×9〉

〈着火魔道具×9〉〈方位魔針×9〉〈魔法のランタン×9〉

〈水×60,000〉〈枯れ枝×1,000〉〈小石×1,800〉〈倒木×20〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1096日分〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×870〉〈獣生肉(上)×965〉〈鶏生肉×245〉

〈獣の骨×747〉〈獣の爪×250〉〈獣の牙×250〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×90〉

〈スライムの粘液×600〉〈スライム草×100〉

〈棍棒×300〉〈ナイフ×3〉〈シミター×2〉〈短剣×3〉〈剣×3〉〈大剣×3〉

〈戦斧×3〉〈槍×3〉〈メイス×3〉〈杖×3〉〈戦鎚×3〉〈弓×3〉〈矢筒×3〉〈矢×10,000〉

〈魔法鞄×4〉〈風のブーツ×4〉〈治癒のアミュレット×4〉〈集音のイヤーカフ×4〉

〈水のブレスレット×4〉〈装飾品×10〉〈宝石×6〉〈高級雑貨×10〉

〈一般服×10〉〈貴族服×5〉〈使用人服×2〉〈和服×1〉

〈ボロ皮鎧×1〉〈革鎧×1〉〈チェインメイル×2〉〈鋼の鎧×2〉

〈バックラー×1〉〈鋼の盾×2〉

〈金貨×45〉〈大銀貨×5〉〈銀貨×8〉〈大銅貨×8〉〈銅貨×6〉

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