第三十四話 魔物狩りで検証 その四
街の外での依頼初日の夕方……あれから二人で森の中を歩き回り、なんとかクリーパー十体の討伐を成功させてからキャンプ地に帰って来た。
他の獣や魔物も何体か見かけはしたが、モリイノシシやアルミラージにはグリィ殿がクリーパーに捕まって暴れている間に逃げられてしまい、討伐できたのはこちらに向かってきたアナコンダが一体だけ。
何体ものクリーパーに捕まっては救助されてを繰り返していたグリィ殿が、クリーパーばかり意識していたようで、草むらで昼寝中だった足元のアナコンダに気づかず踏んでしまい、その身体が成人の足程の太さがあり五~六メートルほどの長さの大蛇に襲われたのだ。
流石にクリーパーとは違ってその何百キロという怪力の持ち主に捕まったら命が危険だと感じ、彼女が踏む前からそこに蛇がいると気づいて短剣を構えていた自分がすぐに飛び出して、寝起きで機嫌が悪そうなアナコンダと目が合って悲鳴を上げるグリィ殿の目の前でその蛇の頭を切り落として仕留めてしまった。
蛇の血がもろに顔面にかかってグリィ殿は追加で悲鳴を上げていたが、まぁこれを教訓に何かを探している時もそればかり集中しないで周りにも注意を向けてくれればと思う。
ちなみに道中で目が合った瞬間に全力で逃げられたアルミラージは想像通り額からまっすぐな角が一本生えているウサギで、アルミラージと呼称してはいるが、他の魔物も含めて本当にその名で発音されているわけではなく、この世界の言語を【人族共通語】スキルで自分の理解できる単語に訳した形がそうなっているだけだ。
ファンタジー系のRPGをいくつもプレイしている自分の知識がそんな翻訳をしているのだとは思うが、アルミラージの実態としてはただ皮膚病で額に腫瘍が出来ていたウサギだろうと言われているように、起源となったどこかの世界学者が書いた書籍にあるように竜の島に住む角のあるウサギだというのは元の世界で生まれた架空の生き物の情報のはず。
その書籍に書かれていた容姿と違って体毛が黄色ではなく白だったり、角も黒色ではなく黄色っぽかったりするが、知っている見た目とほとんど変わらない姿をしているということは、もしかするとこの世界は元の世界の知識を持った誰かが作ったゲームの中ということなのかもしれない。
まぁ物理法則も含めて同じような世界構造のようだし、似た環境ということで偶然同じような生き物のイメージが生まれていることも考えられるので、まだ実在する異世界という線も捨てきれないが……。
その他、薬草系は探していなかったので特に採取していないが、魔物が踏み荒らしたのか冒険者の誰かが落としたのか枯れた獣除け草があったので、何かに使えるかもしれないと思ってそれを拾ってきたというのが森を数時間探索した結果の全てだな。
「オースさーん、考え事もいいっすけど、そろそろご飯を作ってもらえると助かるっすー……もう私は散々魔物に襲われてヘトヘトっすー……」
「む? そうだな、すまない……斥候としてはまだまだでも、グリィ殿は囮として活躍していたからな……何か栄養があって疲れが取れる料理を作ろう」
「ぐぬぬ……明日からはまた頑張るからよろしくお願いするっす……」
「うむ、明日からは別行動だからな、グリィ殿は今日以上に頑張ってもらわないとだろう」
「え……?」
自分は点になった目でこちらを無言で見つめているグリィ殿を無視して、亜空間倉庫から魔道コンロや今回使う食材を取り出していく。
初日の夕食に選んだ料理は、日本でキャンプといったら定番の料理であるカレーだ……もちろん、市場にカレー粉などは売っていなかったので、スパイスの調合から始めるインド式のやり方で作ろうと思う……といっても、インドにはカレーという食べ物は存在しないし肉料理はタブーということがあったりするので実際には色々と違うだろうが……。
とにかくまずは食材の下準備……現代日本と違って粉末のスパイスは売っていなかったので、雑貨屋で買った簡易的な調合器具のすり鉢を使って、クミンシードや、コリアンダー、乾燥しているウコンをパウダー状にして、ついでにニンニクや生姜もペースト状にしておく……おそらく【調合】スキルなどが影響して短時間でそんな芸当が出来たが、あるなら事前にパウダー状のものを買った方がいいだろう。
そして今回はチキンカレーにしようと思うので、鶏肉を一口大に切って、先ほどパウダーにした三種や塩と一緒に容器に入れて下味をつけておく……本当はヨーグルトも一緒にあえておくと肉が柔らかくなっていいのだが無いものは仕方がない。
ジャガイモやニンジン、玉ねぎやトマトなどの一緒に煮込む食材や、ズッキーニやナス、パプリカなどの焼いて上に乗せる食材も切って下準備が済んだら、本格的なカレー作りの開始……オリーブオイルを多めにひいた鍋を火にかけてクミンシードを入れ、そこから気泡がシュワシュワ出てきたら、ブラックペッパー、クローブ、シナモンを追加してさらに炒める。
本当はカルダモンやベイリーフも入れたいところだが、グリィ殿が買ってきてくれた香辛料の中に見当たらなかったので仕方ない……もしかしたら薬の原料やハーブなどをメインで取り扱っている店に匂い消しやお茶の葉として売っているのかもしれないので、今度アルダートンに帰った時にでも確認してみよう。
十分に炒められてオリーブオイルに香辛料の香りがついたら、みじん切りにした玉ねぎを追加して、それが半透明になるまで時々かき混ぜながら炒め続ける……油もオリーブオイルではなくひまわり油などのほうがいいかもしれないが、この世界には時代や文明のせいか食用油がそれしか流通していないようなのでここも妥協だ。
玉ねぎが半透明になったら、香辛料と一緒に磨り潰しておいたニンニクや生姜を加えて軽く炒め、そこに切ったトマトとコリアンダーの葉であるパクチーを投入して水分が飛ぶまでまた炒める……水分が飛んでペースト状になってきたら、パウダー状にしたスパイス三種と塩と唐辛子を加えてさらに炒める。
「うむ、それっぽい香りになってきたな」
「くんくん……うわー、この食欲をそそりまくる暴力的な香りはなんすか」
「これはカレーという料理だな……グリィ殿は見たことないか?」
「うーん、ないっすねー……流通の中心都市アルダートンで見ないってことは、他国の料理かなんかっすか?」
「うむ……まぁ、そういうことになるだろうな」
発祥の地と言われているインドでどんな道を辿って出来たのか分からないが、日本でもカレーが伝わるより前にクローブが丁子、カルダモンが小荳蔲、他にもカレーに使う色々なスパイスが生薬や単体の香辛料として伝わっていたが、実際にカレーという料理が普及し始めたのはイギリスで作られたカレー粉が渡って来た後だった。
実際にここまで作ってみて、カレーベースを作るだけでこれだけ手間と時間がかかっていることを考えると、他にも簡単に作れて美味しい料理が既にたくさん存在するこの国では自然発生しにくい料理なのかもしれない。
食材も手に入りにくく調理器具もたくさんは持っていけないはずの野営……キャンプでこの手間のかかるカレーが定番料理として挙げられるのも、カレー粉が渡ってきて、固めの肉でもそれを加えて煮込むだけで簡単に美味しく食べられたんぱく質が確保できるというところから軍人が遠征中に食べ始めたのが起源だろう。
スパイスの調合比率も元の世界の知識があったから難なく出来たが、薬の原料としてしか認知されていないものも含めた何種類もの香辛料をバランスよく一から調合し、順番を守って長時間炒め続けることでやっと基本となるベースが出来上がる料理なんて、既に色々な料理が溢れているこの世界で……しかも野営で開発しようなんて誰が思うのだろうか……。
……まぁ、作ってしまったものは仕方がない。
自分はあとでファビオ殿にでもカレールーの開発をしてもらおうと思い、多めに作ったカレーベースをいくつか小分けにして亜空間倉庫に格納すると、今回使う分のベースだけ残った鍋に下味をつけておいた鶏肉を放り込み、磨り潰したブラックペッパーを振りかけて炒めていく。
鶏肉に火が通ったら切っておいたジャガイモやニンジンを入れ、軽く炒めたら水を加えてクローブやシナモンなどのホールスパイスは取り除いてクミンパウダーを追加する。
煮込んでいる間に上に乗せる用の野菜を串にさして焚火で焼いておき、鍋のジャガイモやニンジンにちゃんと火が通ったら木の器に出来上がったカレーを入れ、その上に焼きたての野菜を乗せれば完成だ。
「完成? 完成っすか!? さっきからもう匂いだけでお腹がグゥグゥなってるっす!」
「うむ、味見もしたが想定通りになっていた、グリィ殿も食べていいぞ」
「いやっほーう!! さっそく頂くっす!! はむはふ……んん!? んんんんー!?!? なんすかこれ、メチャクチャうまいっす!!」
「滋養強壮の効果がある調味料や香辛料も入っているからな、疲れた身体には嬉しい料理だろう」
「はいっす! なんだか食べると元気が湧いてくるっす! というか、辛くて美味しくて一緒に食べるパンも止まらないっす!!」
「うむ、喜んでもらえたようで何よりだ」
生まれて初めて食べたのであろうグリィ殿は今回のカレーで満足してくれているが、個人的にはもう少し香辛料を集めてミックススパイスのガラムマサラを作って使うことで深みを持たせたり、パンよりもライスやチャパティ、ナンなどと一緒に頂きたいと思ってしまう。
現代日本人の贅沢な悩みなのだろうが、一度味わった贅沢度を下げるのは容易ではないと言われるし仕方のない事だろう……自分はそれも検証だと思って受け入れているが、日本人の中には風呂のない生活や、エアコンやパソコンが無い生活が耐えられないという人もいるかもしれない……。
まぁ、ガスコンロの代わりに魔法を使ったコンロがあるくらいだし、冒険者ランクを上げながら生活を向上させていく内にきっとそれっぽい環境に近づくだろう……自分の目標はこの世界を隅々まで検証すること……気ままに、少しずつ、色々なものに触れながらのんびりやっていこう。
自分は並列思考でそんなことを考えつつ、グリィ殿と雑談を兼ねた今日の反省会をしながら久々のカレーを楽しんで、昼に作って冷ましておいたソミュール液に同じく用意しておいた獣肉を投入してから就寝した。
グリィ殿と交代で火の番や見張りをする予定で自分が先に休みを取ることになったが、彼女は見張りの担当をしている間も眠ってしまうことがあるので、【万能感知】スキルは発動しておいて寝ている間も危険の接近に気づけるようにしておく。
聞くところによると一人で冒険者をやっていたころはどこかのパーティーに一時的に入れてもらうようなこともしておらず、朝早く出発してギリギリ日帰りで帰れる範囲の依頼ばかりしていたらしいので、こうしてパーティーで野営をして交代で見張りをするような経験が少ないとのこと。
それはグリィ殿に限った話ではなく、ランクなしの無印から始めた冒険者はだいたいそんな感じらしい……それなら慣れてなくて見張り中に眠ってしまうのも仕方がないか……とも思ったが……自分が今ぼんやりと考え事をしていて寝付く前に彼女の方から寝息が聞こえ始めた事を考えると、経験不足ではなく単純にグリィ殿の特性かもしれない……。
まぁ、彼女には明日から日中にかなり働いてもらうことになるのでいいだろう……自分は寝るのを諦めてテントから出ると、空になったテントに代わりに爆睡していたグリィ殿を放り込んで、焚火をつつきながら星空を眺めて夜が明けるのを待った……。
♢ ♢ ♢
「ふぁ~あ……おはようございま……って、あれ? 私、いつの間に見張り交代してテントに入ったんすかね?」
「おはようグリィ殿、まだ頭がぼーっとしているなら川で顔を洗ったりしてくるといい」
「そうっすね……昨日いつ寝たか覚えてないくらいなんで、そうさせてもらうっす」
「うむ……そうだ、一人で川に行くならこのお香を持っていくといい……近くに置いておけば獣や弱い魔物が近寄ってこなくなるだろう」
「ありがたいっすー……じゃあ、行ってくるっすー」
自分は眠そうな目を擦りながら去っていくグリィ殿を見送ると、今日の朝食作りを始める……と言っても、グリィ殿が寝ている間に準備は済ませてあるのであとは実際に調理をするだけだが……。
一人での見張りは本当に時間が有り余っていたので、先ほどグリィ殿に渡したお香を作ったり、いつもの日課である素振りやジョギングをして時間をつぶしていた。
お香作りは簡単で、森で拾ってきた枯れた魔物除け草と、大量に持っている枯れた枝葉の中で樹液が多く含まれていそうなものを調合器具で粉末にしたあと、それらを水で練って固めて乾燥させるだけ……自分の場合は練り材に適した枝葉を【鑑定】で見極められたが、元の世界だったら通販でも売っているタブの木の樹皮や枝葉を粉末状にしたタブ粉を購入して使うのがいいだろう。
冒険者ギルドに獣除け草の採取依頼が来るということは、おそらく自分で作らなくても薬屋などに行けば売っているのだろうが、まぁ材料もあって簡単に作れるということで検証も兼ねて作ってしまった。
そんなことよりも今は朝食作り……今日の朝食に選んだ料理は、商業都市アルダートンで自分たちがいつもお世話になっている宿屋〈旅鳥の止まり木〉で毎朝食べているオートミールだ。
まずは鍋に乾燥オーツ麦と水、それから暇だったから粉末にしておいた色々なナッツのパウダーを入れて、水が温まるまでかき混ぜながら火にかける……本当はクリーミーに仕上げるために水ではなく豆乳か、ビーガンというわけでもないので牛乳などを使っても良かったのだが、グリィ殿が買ってきてくれた食材の中に無かったのでナッツパウダーを加えることで少しごまかしてみた。
水が温まったらシナモンパウダーと砂糖を加えて、オーツ麦が食べやすい硬さにふやけるまでしばらくかき混ぜ続ける……ここも本当は砂糖ではなくハチミツにしたかったが、聞くところによるとこの世界では砂糖よりもハチミツの方が価値が高く、市場などで一般的に売ってはいないそうだ。
どうやら養蜂の技術が無いとかではなく、養蜂できるサイズの蜂がいない……つまりファンタジーでよく魔物として登場する大きな蜂しか存在しないので、ハチミツを手に入れるならその数匹を相手にするだけでもやっかいなモンスター蜂が百匹以上同時に出てくる巣で戦闘に勝利して手に入れなければならないらしい。
それなら魔法などで環境を整えたり収穫を楽にしたりすることが可能そうなサトウキビの大量生産をする方が効率的だし、この時代の文明としてはちぐはぐな価格差になるのも頷ける……まったく、この世界にはデバッガーとして興味をそそられる情報が多くて困ってしまうな。
自分はそんな考え事をしながらも、良い感じにふやけたオーツ麦を火からおろして木の器によそうと事前にサイコロ状にカットしておいたリンゴを乗せて、簡単で手間いらずなのに栄養豊富なオートミールを完成させた。
「ふむ、グリィ殿もちょうど帰ってきたようだな、朝食が出来ているぞ」
「やったー飯っすー! 今日の朝食は……って、いつも宿で食べてるやつじゃないっすか」
「料理的には同じものだな」
「はぁ、まぁどちらかと言えば好きな方なんで別にいいっすけど……せっかくのキャンプなのに豪華な肉料理じゃないっていうのは何かもったいない気がするっすねー」
「うーむ……その街の食事よりキャンプ料理の方が豪華なのが普通だみたいなセリフは、おそらく他の冒険者が聞いたら頭がおかしいんじゃないかと思われるから避けた方が良さそうだというのはともかく……まぁとにかく食事にしよう」
「はーい、いただくっす……はむはむモグモグ……ん? もぐもぐムシャムシャ……んん!? オースさんどんな魔法を使ったっすか! これ、いつもより美味しいっす!」
「そうか? 個人的にはやっぱり少し物足りないのだが」
「オースさんの舌はおかしいっす……一体過去にどんな食生活を送ってたんすか」
「ふむ……まぁ色々とな」
宿のものより美味しく感じるのは、おそらく粉末のナッツを入れて少し濃厚な味わいになったオートミールに、シナモンと砂糖とリンゴという最強の組み合わせが加わったためだろう……ナッツとリンゴはともかく、シナモンや砂糖はそれなりの値段がするので、安さを売りにしている宿でそんなものを提供できるわけがない。
大丈夫だとは思うが、グリィ殿には宿で今までのオートミールを食べた時に不満を零さないようにと念のため注意したりしつつ朝食を食べ終え、時間経過の無い亜空間倉庫に格納しているためまだ瑞々しいブドウをデザートに食べながら、自分たちが今日行う作業や依頼の予定を説明した。
「え? 今日からずっとこのキャンプで留守番っすか?」
「そうだ、グリィ殿には拠点を守っていてもらえばそれで問題ない」
「ぐぬぬ……まさか、昨日あまりに活躍しなかったからお役御免に……」
「いや、そうではない……今日からここで色々と保存食の作成をしていくので、それが獣や魔物に荒らされないように守っていて欲しいのだ」
「美味しい食事の護衛!! それは私に適任っすね!!」
「……今日作り始めるのはドライフルーツだから大丈夫だが、午後からは生の肉を乾燥させる作業だからそれはつまみ食いしないようにな……食中毒でお腹を壊すだけならまだしも、危険な寄生虫や細菌に当たって命を落とす可能性がかなり高い」
「うぐっ……死ぬのは勘弁っす……我慢するっす……」
「うむ、それが賢明だろう」
自分はそう言って夜のうちに薄切りにしておいたリンゴと、半分にカットして種も取り除いたブドウ、その他にも種を取ったり食べやすくカットした洋ナシやスモモ、プルーンなどを取り出して、雑貨屋で買っておいたザル……というか、乾燥した樹皮や植物の茎などで作られた底が浅く広いカゴに並べていく。
それを風通しが良くなるように木の枝などを組んだ上に乗せれば、あとは二~三日そのまま放置しておくだけである……このドライフルーツ作成では検証のために一日ごとにつまみ食いして出来を確認する予定ではあるが、グリィ殿にも言った通り肉の保存食作成ではそんなことをすれば命に関わるので、ちゃんと寄生虫や細菌に対抗できる何らかの手段を得てから検証してみようと思う。
ということで、その肉の保存食の第一弾であるジャーキーを作るため、昨日からソミュール液に漬け込んでおいた肉の一部、薄切りにしてあるものを大鍋ごと取り出し、鍋の中のソミュール液をそのままに濃い塩味のついた薄切り肉だけを雑貨屋で買った大きな壺に移すと、塩抜きするために壺いっぱいに水を張った。
おそらくこんな事をしなくても、亜空間倉庫の便利な指定格納機能を使えば塩抜きだけでなく乾燥なども一瞬で出来て、それだけでなく寄生虫や細菌の類を分離することだって可能だとは思うのだが……まぁそれはおいおい検証してみるとして、とりあえず料理の検証も兼ねて今回はちゃんとした工程を踏んでみよう。
自分はソミュール液だけ残った鍋を亜空間倉庫に、水と肉が入った壺を魔法鞄に仕舞うと、依頼の薬草を探してくるために森を探索する装備に整えた。
「では、行ってくるからドライフルーツの護衛は任せたぞ」
「了解っす! 私の食べ物を取ろうとしたら例えドラゴンでも撃退してやるっす!!」
うむ、グリィ殿をこの役に選んだのは正解のようだな……フランツ殿や他の冒険者の話を聞く限りドラゴンが来たら流石に今の自分でも撃退するのは難しそうだが、闘志に燃える今のグリィ殿ならもしかしたらやってくれるかもしれない。
自分は装備をもう一度点検すると、昼までに戻ると言ってグリィ殿をその場に残し、一人で森の中に入って行く……。
保存食を乾燥させている間にそれを護衛する人員が必要だから……昨日の戦闘を見る限りグリィ殿と二人で行動しても自分一人で行動しても効率が変わらなそうだから……そういった理由ももちろんあったが、元々この依頼を受けた時から一人で行動する時間を作ることは決めていた。
自分がこの依頼中に本当にやりたかったのは、新しく購入した装備を使ったアクションの検証……。
3Dアクションゲームには、リアルタイムアタックなどのスーパープレイで知られるように、想定外の挙動をする様々なバグが存在する事が多く、それがユーザーの間で親しまれていたりする……髭の配管工がヤッフーと尻でジャンプし続けてワープするバグや、退魔の剣を持った緑衣の勇者が爆弾を使って空中を歩くバグなど、挙げ出したらキリがないほど不可解な不具合が大量に存在するのだ。
そしてそれら複雑なバグは慣れていなかったり集中できなかったりすると、発生させるために意味の分からない行動を何度も行使しなければならないため、一人でじっくり検証した方が効率がいい……他の理由はついでで、自分はそのためだけにグリィ殿をキャンプに残して単独で森に入ったとも言える。
「ふむ……なるほど……よし」
「まずはしゃがみながら盾を構えて剣で突きを繰り出すところから始めよう」
こうして自分は森の中で一人薬草を探しつつ、「フンッ」「セイッ」「ハァッ」と勢いのいい声を上げながら剣を振り回したり、意味もなく盾を素早く構えたり戻したり、前転やバク宙、横跳びやジャンプ切りを繰り返すという奇妙な行動を始めた……。
▼スキル一覧
【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。
【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる
【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる
【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる
【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる
【五感強化】:五感で得られる情報の質が高まる
【知力強化】:様々な知的能力が上昇する
【身体強化】:様々な身体能力が上昇する
【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる
【短剣術(基礎)】短剣系統の武器を上手く扱える
【剣術(基礎)】:剣系統の武器を上手く扱える
【槍術(基礎)】:槍系統の武器を上手く扱える
【短棒術(基礎)】:短棒系統の武器を上手く扱える
【棍棒術(基礎)】:棍棒系統の武器を上手く扱える
【鎌術(基礎)】:鎌系統の武器を上手く扱える
【体術】:自分の身体を高い技術で意のままに扱える
【投擲】:投擲系統の武器を高い技術で意のままに扱える
【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる
【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる
【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる
【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる
【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる
【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる
【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる
【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる
【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる
【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる
【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る
【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる
【鑑定・計測】:視界に収めたもののより詳しい情報を引き出す
【マップ探知】:マップ上に自身に感知可能な情報を出す
【万能感知】:物体や魔力などの状態を詳細に感知できる
【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる
【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる
▼称号一覧
【連打を極めし者】
【全てを試みる者】
【世界の理を探究する者】
【動かざる者】
【躊躇いの無い者】
【非道なる者】
【常軌を逸した者】
【仲間を陥れる者】
【仲間を欺く者】
▼アイテム一覧
〈1~4人用テント×9ずつ〉〈冒険道具セット×9〉〈キャンプ道具セット×9〉
〈調理道具セット×9〉〈登山道具セット×9〉〈その他雑貨×9〉
〈着火魔道具×9〉〈方位魔針×9〉〈魔法のランタン×9〉
〈水×23,000〉〈枯れ枝×600〉〈小石×1,800〉
〈パン・穀類・芋・豆・種実・果実・野菜など大量の食材×979日分〉
〈砂糖、塩、魚醤、ワイン、ビネガー、胡椒、唐辛子、山椒、生姜、胡麻、ニンニク、ナツメグ、クローブ、シナモン、クミン、コリアンダー、ウコンなど大量の調味料×948日分〉
〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×870〉〈獣生肉(上)×999〉〈鶏生肉×248〉
〈獣の骨×747〉〈獣の爪×250〉〈獣の牙×250〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×90〉
〈ドライフルーツ(作成中)×30日分〉〈肉の保存食(作成中)×30日分〉
〈棍棒×300〉〈ナイフ×1〉〈シミター×2〉〈短剣×3〉〈剣×3〉〈大剣×3〉
〈戦斧×3〉〈槍×3〉〈メイス×3〉〈杖×3〉〈戦鎚×3〉〈弓×3〉〈矢筒×3〉〈矢×100〉
〈魔法鞄×4〉〈風のブーツ×4〉〈治癒のアミュレット×4〉〈集音のイヤーカフ×4〉
〈水のブレスレット×4〉〈着替え×10〉〈ボロ皮鎧×1〉〈革鎧×1〉〈チェインメイル×1〉〈鋼の鎧×1〉〈バックラー×1〉〈鋼の盾×1〉
〈クリーパーの屍×10〉〈アナコンダの屍×1〉
〈大金貨×75〉〈大銀貨×8〉〈銀貨×4〉〈大銅貨×7〉〈銅貨×9〉