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第三十一話 魔物狩りで検証 その一

 街で大量の買い物を済ませた翌日、日課のジョギングなどを済ませた後、宿屋〈旅鳥の止まり木〉の食堂でグリィ殿と安い方の朝食を食べながら、自分はアイテム一覧画面を開いて昨日の戦利品をチェックしていた。


「うーむ……やはりこの国の食に関する発展は謎だ……」


「……?」


 グリィ殿のおつかいの結果、香辛料もそうだが、野菜や果物まで土地の気候に関係なく様々なものがこの街の市場で手に入ったらしい……確かにここアルダートンは他領からの流通の交点にある商業都市だが、それにしても元の世界の日本並みに様々な食材が集まりすぎている。


 造船技術が発展していないと聞いていたから海を渡った別の大陸から食材を輸入するのは不可能だと思うし、今いる大陸が大きかったとしてもまだ未開拓地が残っているということはその広大な面積も活かせていないはず……そうなると、やはり魔法で気候に関係なく作物を育てられるような仕組みがあるということだろうか。


「だが、それでも味噌や醤油は無いのか……」


「えっ、まだ足りない食材があったっすか!? 裏通りの露店まで含めて街にあるそれっぽい店を全部回ってきたっすけど」


「いや、自分の探している調味料はおそらくこの国には無いのだろう……というか、そんなところにまで買いに行っていたのか?」


「そりゃあ美味しいもののためなら……いや、街の食材や調味料を全部買うミッションだったっすから!」


「そうか、それで結構余ると思っていた軍資金も殆ど使い果たしたわけか……」


「そ、そうっすよ? ちょっと味見とかもしたっすけど、本当にちょっとだけっすから」


 うむ……まぁグリィ殿がおつりをどうしたかは置いておいて、きっと街にあった全ての食材と調味料を買い揃えてくれたのは事実だろう。


 自分が街の探索をした時の記憶によれば、肉料理などにそのまま使えるナツメグやクローブはともかく、クミンやウコンは香辛料ではなく薬の材料として売っていたはずだし、カメムシソウやパクチーとも呼ばれるあの独特の香りがするコリアンダーの葉が市場で万人受けする香辛料として売っているとは思えない。


 そのどれもが胃腸の働きを高めたり腹痛に効いたりする薬効を持っていることから、グリィ殿が店員からその情報を聞いて、食べ過ぎによる腹痛を懸念して仕入れたのだろう……昨日合流したときに「味見したけどこの調味料は美味しくなかった」と報告していたから、大量の食べ歩きでお腹が痛くなっては近くの露店でこれらの漢方を買って食べるというのを繰り返していたのだと思われる。


「まぁ、結果的に色々な調味料が揃ったので問題ない……これでキャンプになっても良い食事が採れるだろうし、さっそく装備を整えて冒険者ギルドに行こう」


「ついに街の外の依頼っすね……美味しいキャンプ飯のために頑張るっす!」


 彼女にとっては依頼はついでで食事がメインなのだろうか……まぁ、もしかしたらグリィ殿に限らず、多くの冒険者は依頼でたくさん稼いだり有名になるという目標よりも、その日何とか食べられるように仕事をするという考え方の方が多いのかもしれないな……。


 自分は何やら美味しい料理を想像してヨダレを垂らしているように見える気が早い彼女の顔にそんな正当性を持たせると、亜空間倉庫から自分が昨日購入した装飾品などの装備や冒険者道具、それから耐性や自然治癒のスキルが高く自分ではあまり使わなそうな薬も渡した……手荷物としては多いが魔法鞄があれば大丈夫だろう。


 食材もいくつか渡しても良かったのだが、服飾雑貨店〈鋼の乙女心〉でボリー殿に聞いたところ、自分の買った魔法鞄は大量のアイテムを魔法で繋げられた別空間に収納は出来ても内部で外と変わらない時間が経過するので、保存加工のされていない食材はそこに格納したからと言って腐らなくなったりはしないらしい。


 大きな流通経路を抱える商人の中には冷却効果のある魔法鞄を持っていたりする者もいるが、それでも完全に腐敗を止めることは出来ない上に、そういった別の効果を付与した魔法鞄は高いうえに容量も小さいため、貴族のわがままで内陸に少量の鮮魚を届けるくらいの用途くらいにしか使われていないとのことだ。


 周囲に合わせてそれだと言い張っている収納魔法も似たようなものらしいので、やはり自分の亜空間倉庫は異常な性能のようだ……この手に存在するということは魔法などで実現する方法があるのだとは思うが、聞く限り魔法もそこまで発展していないように思えるし、面倒ごとにならないように詳しい性能は秘密にしておいた方がいいかもしれないな……。


 そんなことを考えながら自分も昨日買った装備に整えると、昔からの憧れだったらしい魔法の装備を身に着けてハイテンションなグリィ殿を連れ、街の外で行う依頼を受けるために冒険者ギルドへと向かった。



♢ ♢ ♢



「おはようエネット殿」


「ひぃっ……オースさんっ……お、おはようございます……」


 冒険者ギルドに行くと自分はまっすぐ依頼受付のエネット殿の元へ行き、相変わらず何かに怖がっているように落ち着きがない彼女の様子を不憫に思いながら、依頼の張ってあるボードでこれからやろうとしている検証と方向性があっていそうな物を探しだし、その中でも期限の長いものをピックアップして受付カウンターへ持っていった。


 新しい武器や防具も手に入ったのでそれらを使った戦闘の検証も兼ねて、討伐依頼をメインに拾っていったが、次の冒険者ランクに進むための貢献度もサクサク集める予定なので、ついでに出来そうな魔物や猛獣が多く出没する地域での素材収集依頼も受けようと思う。


 念のためグリィ殿にも受けたい依頼は無いか聞いてみたが、難しく無ければ何でもいいということで選定を一任されたので、手分けして検証を行った時と同様、受ける依頼は自分のほうで全て選ぶことにして、グリィ殿には代わりに今日のキャンプで食べたい献立でも考えておいてくれと言っておいた。


「というわけでエネット殿、この依頼の受注処理を頼む」


―― バサバサッ ――


「……こ、こんなにたくさん……まとめてですか?」


「ああ、別にルールに反してはいないだろう?」


「そ、それはそうなんですけど……うぅ……また半分以上失敗する気じゃ……」


「いいや、今回はそういう検証はするつもりはない……内容をよく確認してみてくれ」


「え……? あ……どの依頼も〈アルダートン西の森〉で達成できる……?」


「そういうことだ」


 ボードに張り出していたりする依頼書には親切なことに、依頼人に直接会って何かを手伝うような内容の依頼だけではなく、外で特定の獣を倒したりする討伐依頼や、特定の薬草を探したりする収集依頼に関してもどこに行けばそれが達成できるかが記載されている。


 どの地域で害獣に悩まされているなどの依頼なら場所が指定されているのでもちろんなのだが、素材が欲しいからどこかで動物や魔物を倒して持ち帰って欲しいといった依頼にも場所が書かれているのは、それらが出没しやすい場所などの情報が自然と集まってくる冒険者ギルドが他の冒険者にも情報を広げて達成効率を上げるために記載しているそうだ。


 戦闘でも採取でも最終的には冒険者の力量が求められるが、事前情報があるかないかだけで生還率も上がり、生きて依頼を達成することが出来ればその冒険者の成長にもつながるので、ギルドにとっても冒険者にとってもいいことだらけだろう。


 そして依頼それぞれの達成に繋がる地域が分かるなら、こうして同じ地域で達成できそうな依頼を一気に受けて、一度の外出で同時にいくつもの依頼を達成してしまうこともできるということ。


 エネット殿の反応を見るとたくさんの依頼をまとめて受ける低ランク冒険者は珍しいのかもしれないが、おつかい系のクエストが大量にあるゲームなどでは、街にいる住人全員に話しかけて頼みごとを全て引き受けてから、街の近くで達成できそうなものを一気に進めて消化するというのが基本だったと記憶している。


「一応これで全部の依頼が受注完了しましたけど……本当にこれ全部を期限内に終わらせる予定ですか……?」


「ああ、自分たちならもう一つ上のランクの討伐依頼でも問題なくこなせるはずだ……グリィ殿もそう思うだろう?」


「え? はいっす! どんなランクのご飯が来ても残さず食べるっす!」


「ほら、彼女もこう言っているし大丈夫だろう」


「えぇと……グリィさんは全然聞いてないようですけど……」


「というわけで行ってくる……七日後にまた会おう」


「あっ、ちょっと……」



 そして自分は依頼の受注も済んだのでエネット殿の手から受注書を受け取ると、涎を垂らしながらまだ今日の献立を悩んでいたグリィ殿を連れて冒険者ギルドを後にした……。



「今日を含めて一週間の依頼は七日後では期間外ですよぉーっ……」



「……」



「うぅ……また私の休憩時間が無くなるのでしょうか……」


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる

【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる

【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる

【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる

【五感強化】:五感で得られる情報の質が高まる

【知力強化】:様々な知的能力が上昇する

【身体強化】:様々な身体能力が上昇する

【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる

【短剣術(基礎)】短剣系統の武器を上手く扱える

【剣術(基礎)】:剣系統の武器を上手く扱える

【槍術(基礎)】:槍系統の武器を上手く扱える

【短棒術(基礎)】:短棒系統の武器を上手く扱える

【棍棒術(基礎)】:棍棒系統の武器を上手く扱える

【鎌術(基礎)】:鎌系統の武器を上手く扱える

【体術】:自分の身体を高い技術で意のままに扱える

【投擲】:投擲系統の武器を高い技術で意のままに扱える

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる

【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる

【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる

【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる

【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる

【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【鑑定・計測】:視界に収めたもののより詳しい情報を引き出す

【万能感知】:物体や魔力などの状態を詳細に感知できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】


▼アイテム一覧

〈1~4人用テント×9ずつ〉〈冒険道具セット×9〉〈キャンプ道具セット×9〉

〈調理道具セット×9〉〈登山道具セット×9〉〈その他雑貨×9〉

〈着火魔道具×9〉〈方位魔針×9〉〈魔法のランタン×9〉

〈水×87,000〉〈枯れ枝×650〉〈小石×1,800〉

〈パン・穀類・芋・豆・種実・果実・野菜など大量の食材×1000日分〉

〈砂糖、塩、魚醤、ワイン、ビネガー、胡椒、唐辛子、山椒、生姜、胡麻、ニンニク、ナツメグ、クローブ、シナモン、クミン、コリアンダー、ウコンなど大量の調味料×1000日分〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×900〉〈獣生肉(上)×1000〉〈鶏生肉×250〉

〈獣の骨×747〉〈獣の爪×250〉〈獣の牙×250〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×90〉

〈棍棒×300〉〈ナイフ×1〉〈シミター×2〉〈短剣×3〉〈剣×3〉〈大剣×3〉

〈戦斧×3〉〈槍×3〉〈メイス×3〉〈杖×3〉〈戦鎚×3〉〈弓×3〉〈矢筒×3〉〈矢×100〉

〈魔法鞄×4〉〈風のブーツ×4〉〈治癒のアミュレット×4〉〈集音のイヤーカフ×4〉

〈水のブレスレット×4〉〈着替え×10〉〈ボロ皮鎧×1〉〈革鎧×1〉〈チェインメイル×1〉〈鋼の鎧×1〉〈バックラー×1〉〈鋼の盾×1〉

〈大金貨×73〉〈金貨×2〉〈大銀貨×8〉〈銀貨×4〉〈大銅貨×7〉〈銅貨×9〉

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[良い点] ~今日を含めて一週間 特別なことを何も言っていない会話からきれいな落ちになるの好き。
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