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第二百六十二話 恋愛要素で検証 その四

 

「というわけでアーリー殿、自分の恋人になってくれるか?」


「はぁ……あんた、カヤちゃんのことがあって、まだ懲りてないの?」


 ジェラード王国、王都、王立学校。


 自分はあれからも告白の検証を続け、カヤ殿に眠らされていた一週間の検証遅れを取り戻すように、魔法研究学科、魔道具研究学科の検証を終わらせ、錬金術研究学科の検証に突入していた……。


 ……全身包帯ぐるぐる巻きな上に、松葉杖をついた状態で。


「検証は止められない」


「うーん、なんかもう、そこまでくると逆に尊敬するわね」


 カヤ殿に信じられない規模の魔法を放たれた自分は、防御魔法や耐性スキルで何とか魔法による直接的なダメージは免れたものの、その場所は学校の屋上。


 魔法の余波で吹き飛ばされ、気絶したまま空中に放り出された自分は、そのまま大の字で地面に落下して、全身の骨という骨を折ってしまったらしい。


 本来であれば屋上からの落下するくらい、かすり傷一つつかないところなのだが、カヤ殿の魔法を防ぐ過程で魔力を全て使い切ってしまったので、落下時に耐性スキルが発動しなかったのだ。


 加えて、彼女の放った魔法は、【魔力妨害】という凶悪な状態異常まで付く、大変厄介極まりない代物だったようで、魔力の回復自体も時間がかかった上に、魔力が完全に回復した後もスキルをうまく発動することが出来ず、怪我の治りも遅くなった。


 自分のステータス画面を確認すると、この状態異常はあと半日ほどで消えるようだが、最大魔力量だけで言えば既に教皇様をも遥かにしのぐ自分の魔力を全て使わせた上に、こんな凶悪な状態異常が一週間も効力を発揮するなど、とんでもない魔法である。


「自分よりもカヤ殿の方が【魔王】と呼ばれるのにふさわしいと思わないか?」


「いや、その二つ名はオースくんのものであってるでしょ」


「なぜだ」


「あんたがカヤちゃんにしたことを思い出してみなさいよ」


「……いつも通り検証に協力してもらった」


「はぁ……本当に呆れる検証バカね」


「う、うーむ……とりあえず謝りに行った方がいいだろうか?」


「いいえ、まだ暫くの間は止めておいたほうがいいわ……命が惜しかったら」


「……そうか、すまない」


 やはり恋愛要素のフリーデバッグは苦手であるな……。

 何をやっても裏目に出て、大抵バッドエンドに繋がる……。


「じゃ、またね」


「ああ……いや、待ってくれ。告白の返事を……」


「NOに決まってるでしょ? ここであたしがあんたに止めを刺さなかっただけ、ありがたく思いなさい」


「う……うむ」


 人とのコミュニケーションとは、難しいものだな……。



 ♢ ♢ ♢



 そしてそのさらに数日後。


「……ということで、仲間への検証はヴィーコ殿が最後なのだが、自分の恋人に……」


「気持ち悪い。失せろ」


「まだ最後まで……」


「言わなくていい。消え去れ」


「……」


 これまでの傾向からして、おそらく断られるであろうというのは予想していたが、なかなかに辛辣な返答だな……。


 カヤ殿の一件があり、流石に自分の行動は全校生徒に知れ渡ったようで、あれから自分の告白に対して良い返事を返してくれる生徒の割合は一割を切り、恋人になることを了承してくれていた生徒たちも、その半数近くが関係の解消を申し出てきた。


 現在は告白の検証段階で、まだデートイベントの検証に進めていないため、その機会を少なくするわけにはいかないと、関係の解消を申し出てきた生徒に対して引き続き関係を継続したいという旨は伝えたのだが、残念ながらその誰もが一方的に謝罪の意を示すと逃げ去ってしまった。


 ヴィーコ殿の耳にも当然、そんな自分の不甲斐ない検証結果が届いていると思われるので、きっとその結果に呆れてしまい、検証に付き合わない道を選ぶことにしたのだろう。


「だがヴィーコ殿、カイ殿に断られている以上、仲間の中で……」


「知るか。今すぐ帰れ」


「自分の今の検証結果に怒っているのだろう。だが……」


「違う。いいから出ていけ」


「何故だ! 学校の中でも帰り道でも捕まらないから、こうして家まで訪ねてきたというのに……!!」


「だからだろうが!! こんな夜更けに他人の家に窓から入ってきて、訳のわからんことを喋り始めるな!!!」


 うーむ。ヴィーコ殿はいつも不機嫌だが、今日は特に不機嫌だな……。


 同じ冒険者パーティーの仲間で、なおかつ男性キャラクターと恋人関係になれるかどうかの検証は、二周目に回した方がいいだろうか。


「はぁ……」


「いや、ため息をつきたいのはどう考えてもこちらだろう……というか、ついでだから聞いておくんだが、お前の告白に対して了承した男子生徒はいるのか?」


「ああ、そこはいることが確認できているので問題ない」


「……そ、そうか」


「まぁ、同性相手の攻略難易度が高く設定されているのか、恋人になることを承諾してくれる人数は少ないのだが……異性から関係を解消されることが増えている現在、結果的に男女比のバランスが均等に近づきつつあるというのは、なかなか興味深い検証結果ではないか?」


「いや、こっちに振るな……。まぁ、その、なんだ……世の中にそういった関係があること自体には否定しない。だが、少なくともボクにその気が無いことは認識しておけ」


「なるほど、まぁその気がないなら仕方ないな」


「やっと諦めたか。アホ王子」


 本人からここまでハッキリと拒否されたとなれば、流石にヴィーコ殿は攻略対象ではないのだろう。


 これ以上不可能なことに時間を割くよりも、一週目で検証するのを諦めて、二周目の検証項目に回した方がいいな。


「では、今日はもう遅いし、続きの検証は明日にしよう。ヴィーコ殿、魔道電気を消してくれ」


「ああ、そうだな。さっさと休むとしよう」


「おやすみ」


「良い夢を」


「……」


「……って、平然と隣りで寝ようとするなぁぁああああ!!」


 そして自分が明日からの検証に備えて寝ようと彼の隣で横になると、その脇腹を蹴られてベッドから落とされた。


「ヴィーコ殿、静かにしないか。近所迷惑だぞ」


「迷惑なのは貴様だ!! さっさと家から出ていけぇぇえええ!!!」


 次いで、首根っこを掴まれて、そのまま身体強化系のスキル全力発動で、開けっ放しだった窓から放り投げられた。


 うーむ、公爵家の長男らしく、二人並んで寝ても余裕がありそうな広く大きいベッドで寝ているのだから、その半分を自分に分けてくれても良いではないか……。

 全く、心が狭い公爵令息様だ。


 自分はヴィーコ殿の敷地の外まで飛ばされ、頭から地面に突き刺さりながらそんな不満を漏らすと、仕方なく自分の屋敷へと帰っていった……。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【魔王】:人知を超える魔法を操り、魔物を従える。

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる。

【言語理解】:様々な言語を読み、書き、話すことが出来る。


▼称号一覧

【魔王】:勇者の枠を超え、魔王としての役割を果たした。


▼アイテム一覧

〈水×999,999+〉〈土×999,999+〉〈石×199,440〉〈木×300〉〈薪×1,240〉〈布×175〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1,778日分〉〈保存食×19,995〉〈飼料×1,700〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×311〉〈獣生肉(上)×311〉

〈獣の骨×1400〉〈獣の爪×500〉〈獣の牙×500〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×100〉

〈生皮×250〉〈革×270〉〈毛皮×90〉〈抑制の首輪×5〉〈スライム草×2,000〉

〈着替え×980〉〈本×90〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×1,098〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×8〉〈盗賊道具×1〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉〈採掘道具×1〉

〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉

〈音信のイヤリング×1〉〈交易品×300〉〈錬金炉×1〉

〈教国軍の消耗品×199,113〉〈教国軍の装備品×19,990〉〈教国軍の雑貨×99,180〉

〈盗賊団の消耗品×1,000〉〈盗賊団の装備品×100〉〈盗賊団の雑貨×997〉

〈金貨×577〉〈大銀貨×1,948〉〈銀貨×1,831〉〈大銅貨×116〉〈銅貨×60〉


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