第二十五話 手分けをして検証 その一
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商業都市アルダートンの南門付近にある宿屋〈旅鳥の止まり木〉。
昨日ファビオ殿からの依頼、屋敷の大掃除を終わらせた自分とグリィ殿は、いつも通り食堂で安い方の朝食セットを食べながら今日の依頼について相談していた。
「別々に依頼を受ける……っすか?」
「うむ」
この間エネット殿にFランクの依頼を色々見せてもらったところ、街の中での依頼で複数人を指定しているというのは意外と少なく、殆どが一人用の依頼だったのだ……まぁ、そもそもFランク冒険者だけでパーティーを結成することが稀なので、必然的にそういった依頼の方が多くなるのだろう。
納品依頼や討伐依頼など街の外で行う依頼であれば成果の分だけ報酬が貰える形で人数制限などは特に無いのだが、お手伝い系の依頼だとそんなに人が多くても逆に困るということも多いので仕方がない。
自分はどうしようか悩んだ結果、グリィ殿も自分と組む前はどうだか分からないが、パーティーを組んでからの彼女を見る限り、一人でも二回に一回は依頼を達成できそうな気がしたので、各自で別々に依頼を受けて達成してもしなくてもお互いの報酬を山分けするという形で進めてみてはどうだろうと思ったのだ。
「私はそれでもいいっすけど……多分一人だとあまり稼げないんでオースさんから貰ってばっかりになっちゃうっすよ?」
「心配しないで大丈夫だ、自分もそんなに達成率は高くない予定だからな」
「……いや、それもそれで食べて行けるか本当の意味で心配っすけど」
別々に依頼を受けるのは物理的に人数制限がある依頼が多いこともあるが、何より手分けして効率的に検証するためだ……そういった面でもグリィ殿であれば自分が細かく指示を出したりチェックリストを渡したりしなくても細かく検証してくれそうなので、今回の試みはかなりいいアイデアだと思える。
今回で街の中で行うFランク依頼を一通り検証し終えて、その後は街の外の依頼で貢献ポイントを稼ぎながら勉強をして、来たるEランク昇格試験に向けての準備をしようと考えているのだ。
「まぁ宿代はあと半月くらい支払い済みの期間が残っているから、暫くは食事代などで銀貨一枚ほどあれば生活できる……失敗が続いても食べていくだけなら問題ないだろう」
「うーん、まぁそうっすね、昨日の達成報酬で結構もらえたっすから……じゃあ暫くはそれで進めてみるっすか」
「うむ」
そういうわけでグリィ殿に同意をもらえた自分は、朝食を食べ終えると冒険者ギルドへと向かって、エネット殿にまたお手伝い系の依頼をリストアップしてもらうことにした。
最近は特にエネット殿の前で検証も行っておらず、依頼の達成率もいいからか、彼女は自分が話しかけても前のように怯えたりせずに、ニコニコと笑顔のまま接客してくれることが多い……依頼を受けるのがスムーズなので自分としては今のままの方がありがたいのだが、果たしてこの手分けして検証する期間が終わっても彼女の笑顔は消えないでいてくれるだろうか……。
自分はそんなことを考えながら、エネット殿から渡された依頼のリストを眺めて自分たちが受ける依頼を選別する……内容的にはグリィ殿が受ける分は彼女自身に選ばせても良かったのだが、どのジャンル依頼が検証済みで、どのジャンルの依頼の検証がまだ終わっていないかを把握しながら進めていく必要があるため、彼女が挑む依頼も自分が決める事にした。
「ふむ……ではこの依頼を自分が受けて、グリィ殿にはこちらの依頼を受けてもらうことにしよう」
「了解っす!」
「お二人とも頑張ってくださいね」
エネット殿にも別々で依頼を進めていくと言う作戦を説明すると、Fランク依頼の人数制限に関して自分たちよりも詳しい彼女はすぐに納得してくれて、自分たちは無事にそれぞれの依頼の受注処理を完了させると、ニコニコと笑顔な彼女に見送られながら冒険者ギルドを後にする。
彼女はきっと昨日までと同じように今日からも自分たちが危ないながらも達成の報告を持ち帰ってくるものだと思っているのだろう……しかしきっとそうはならない。
今までのグリィ殿のなりふり構わない検証を見る限り、自分がフォローしなければ失敗となる可能性が高いだろうし、自分の方だって、危ない検証を次々にやってのける彼女がいなければそれを自身の手で行うことになるのだから……物によっては依頼失敗を免れないだろう……。
「うむ、まぁ初回くらいはちゃんと依頼を達成して帰ってこようか」
こうして自分とグリィ殿による街の依頼の手分け検証期間がスタートした……。
……と思っていたのだが。
最初の依頼くらい達成して気持ちのいいスタートを切ろうと思っていた自分を冒険者ギルドの外で待ち構えていたのは、その輝かしい最初の依頼の依頼主ではなく、昨日ファビオ殿の依頼で出会った商人見習いのユーリ殿だった。
「……というわけで、お手数なのですが今から店に来ていただけないでしょうか……もちろん、お忙しければ後日でも構いません……オース様のご都合が最優先です」
なんだか昨日話した時よりも姿勢が低く、報酬が上乗せされるほど完璧に依頼を達成して見せた尊敬というよりも、それを超えた畏敬のような雰囲気を感じるユーリ殿が言うには、つい先ほどファビオ殿のところにアドーレ殿の孫娘である薬師見習いのアーリー殿がやってきたらしく、なにやら商売関連で話があるらしい。
ユーリ殿の謎に恐縮した態度はそれもそれで謎ではあるが、アーリー殿とファビオ殿の間に発生した話で自分が呼ばれることになったというのも気になった……ユーリ殿の言う通り今の都合を優先すれば、今日締め切りの依頼を受けてきたばかりなので、また改めて後日伺う方向で話を進めればいいのだが……。
「ふむ……なるほど……よし」
「まぁ依頼は三回に一回くらい成功すればいいだろう」
そうして自分は最初の依頼を依頼主に会うこともせずにすっぽかして、ファビオ殿とアーリー殿が待つ〈ファビオ商店〉に向かう事にした……。
▼スキル一覧
【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。
【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる
【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる
【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる
【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる
【五感強化】:五感で得られる情報の質が高まる
【知力強化】:様々な知的能力が上昇する
【身体強化】:様々な身体能力が上昇する
【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる
【短剣術(基礎)】短剣系統の武器を上手く扱える
【剣術(基礎)】:剣系統の武器を上手く扱える
【槍術(基礎)】:槍系統の武器を上手く扱える
【短棒術(基礎)】:短棒系統の武器を上手く扱える
【棍棒術(基礎)】:棍棒系統の武器を上手く扱える
【鎌術(基礎)】:鎌系統の武器を上手く扱える
【体術】:自分の身体を高い技術で意のままに扱える
【投擲】:投擲系統の武器を高い技術で意のままに扱える
【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる
【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる
【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる
【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる
【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる
【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる
【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる
【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる
【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる
【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる
【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る
【鑑定・計測】:視界に収めたもののより詳しい情報を引き出す
【万能感知】:物体や魔力などの状態を詳細に感知できる
【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる
【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる
▼称号一覧
【連打を極めし者】
【全てを試みる者】
【世界の理を探究する者】
【動かざる者】
【躊躇いの無い者】
【非道なる者】
【常軌を逸した者】
【仲間を陥れる者】
【仲間を欺く者】
▼アイテム一覧
〈一人用テント×1〉〈調理道具×1〉〈食器×2〉〈布×20〉〈ロープ×7〉〈杖×1〉
〈村人の服×1〉〈盗賊の服×4〉〈麻袋×5〉〈水袋×5〉〈毛布×5〉〈松明×8〉〈火口箱×1〉
〈水×87,000〉〈枯れ枝×650〉〈小石×1,800〉〈軟石鹸×9〉〈パン×10〉
〈治癒薬×4〉〈上治癒薬×15〉〈特上治癒薬×5〉〈解毒薬×15〉〈上解毒薬×5〉
〈鎮痛薬×15〉〈風邪薬×25〉〈緩下薬×15〉〈止瀉薬×15〉〈鎮静薬×10〉
〈筋力増加薬×5〉〈精神刺激薬×5〉〈麻酔薬×5〉
〈毒薬×50〉〈猛毒薬×15〉〈劇毒薬×5〉〈麻痺毒薬×15〉
〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×900〉〈獣生肉(上)×1000〉〈鶏生肉×250〉
〈生皮×550〉〈上質な生皮×197〉〈皮屑×18〉〈獣の骨×747〉
〈獣の爪×250〉〈獣の牙×250〉〈羽毛×50〉
〈魔石(極小)×90〉〈棍棒×300〉
〈ナイフ×1〉〈シミター×2〉〈槍×1〉〈メイス×1〉
〈ボロ皮鎧×1〉
〈大銀貨×5〉〈銀貨×27〉〈大銅貨×6〉〈銅貨×2〉
▼残り支払予定額:グリィ
〈大銀貨×20〉