第二百四十六話 盗賊ギルドからの追放で検証
「お前ら二人を、盗賊ギルドから追放する」
「……え?」
レイザー盗賊団を壊滅させた翌日。
ダルラン領都、盗賊ギルドの本拠地、ボスの執務室に呼び出された自分とリヤ殿は、部屋に入るなり、ジャン殿からいきなりそう言い渡された。
昨晩は、盗賊ギルドとずっと敵対していたレイザー盗賊団を壊滅させたことを祝し、この本拠地のホームにて盛大な祝勝会が開かれ、自分とリヤ殿はその勝利の功労者として称えられていただけに、その決定はあまりにも衝撃的だった。
「なんでだよ! 昨日はあんなに褒めてくれてたじゃん!」
「うむ、自分も納得がいかない。非正規ルートとはいえ、きちんとイベントをクリアしたのだから、これでギルドを追放されるのは明らかに不具合だろう」
「まぁまぁ落ち着け。ちゃんと説明するから、二日酔いの頭に大声を響かせるな」
ジャン殿は自分たちの抗議に対して、片方の手で自身の頭を押さえながら、もう片方の手を振って近づいてきた自分たちを追い払うような仕草を見せる。
いくら自分とリヤ殿が功労者として取り立てられていたとはいっても、祝いの中心にいたのは、やはりずっとこの時を夢みていたジャン殿であり、ギルドのメンバーたちから代わる代わる酒を注がれ続け、相当な量飲まされていたからな……。
アルコールによる酩酊状態にも効果のある【毒耐性】系のスキルも持ってはいるようだが、流石にギルドに貯蔵されていた酒樽を全て空にする勢いで行われた祝勝会には勝てなかったようだ。
「……で、殆ど牢屋で捕まってたぼくはともかく、一人で敵の大将を倒してきたオースを追放するって、どんな理由なのさ」
「いやそう拗ねた顔すんなって。お前も立派に活躍してたよ。お前がいなかったら、あの変な恰好をした魔法使いを倒すのにはそうとう苦労させられただろうしな」
リヤ殿の言う通り、自分はレイザーを倒すため、彼とその手下が宝物庫から出てくるのをずっと待っていたり、出てきた彼らと短くも激しい戦いを繰り広げていたりした。
逆に言えば、その間、ボスやリヤ殿がいた牢屋区画でどのような戦闘が行われていたのか直接見ることは出来なかったのだが、後から聞いた限り、リヤ殿は魔法使いとの戦いで相当活躍していたそうだ。
昨日の祝勝会でたびたび話題に出ていたのだが、彼女は時間を置いて魔力が回復する度に魔法使いの目に閃光の魔法を浴びせたり、彼の着ている服や頭に乗せていた葉っぱに火をつけたりと、相手の行動を妨害する役割を担っていたらしい。
魔法使いとしての実力は比べるまでもなく敵側の方が格上なので、彼と戦うのが彼女だけであればそんな小細工は通用しなかっただろうが、リヤ殿の本業は盗賊。コソコソ隠れて工作活動をするのはお手の物だ。
盗賊魔法使いと正面から戦っていたのは、近接戦闘も含めた総合戦闘力としては同格の実力者であるジャン殿。
彼の猛攻を捌くことに意識を割かなくてはならない盗賊魔法使いは、姿を隠しては魔力の回復を待ち、魔力が回復すると死角から現れて魔法を浴びせ、また隠れる、というリヤ殿の戦法に対して、相当イラついたことだろう。
通常、魔法使いが戦士などを相手に気配を消す時は、幻影や消音の魔法によって視覚や聴覚で感知されないようにするのだが、その方法ではどうあがいても魔力を完全に消すことは出来ないので、相手も魔法使いであった場合や、魔法感知が得意な騎士が相手だった場合には通用しない。
だが、リヤ殿は違う。
魔法使いではない彼女は、魔法ではなく、その身に宿した卓越した技術によって、相手の視覚や聴覚に察知されないよう気配を消した上で、身体から放出される魔力を完全に抑えることで、より完璧に気配を消す。
身体に蓄えられる総魔力量も含め、彼女が元から魔力に乏しかったことも、ここでは良い方向に転び、より高い効果を発揮したのだろう。
どこから近づいてくるかも分からないリヤ殿に意識を割いてしまえば、正面から襲い掛かってくるジャン殿の攻撃に対処できず、かといってジャン殿との戦いに集中しすぎると、その隙にリヤ殿が小さくとも厭らしい妨害を仕掛けてくる……。
自分が合流した時、おそらくレイザー盗賊団の中で一番年齢が高いであろう彼が、様々な感情が入り乱れたような顔で大の大人とは思えないほどボロボロと涙を流し拘束されていた所を見るに、それはいじめに等しい戦闘だったに違いない。
「ではなおさらだろう? なぜ、そんな功労者であるリヤ殿と自分が追放されなくてはならないのだ?」
「それはだな……その……あれだ……うーん……いや……どこから話すべきか……」
ジャン殿は、何かとても困ったような、悩んでいるような顔で頭をかくと、なんとも歯切れが悪そうに、ポツリ、ポツリと話し始めた。
彼が話し始めた内容は、リヤ殿の過去に関する話……。
彼女が他の多くのメンバーとは異なる経緯で盗賊ギルドに入ったということは、ギルドのあちらこちらで出てきた会話イベントから薄っすら察してはいたが、彼女は赤ん坊の頃にジャン殿に拾われ、それからずっと、盗賊ギルドのメンバー全員で協力して育てられていたそうだ。
そして、ボスは今まで、彼女に対して、盗賊ギルドの入口に捨てられていたところを拾ったと説明していたようだが、実際にはそうではないらしい。
盗賊ギルドのメンバーの一人が、とある商人夫婦の命を奪うこととなり、その夫婦の子供だけが生き残った。
当時そのメンバーの指導役だったジャン殿は、遺されたその子供を引き取り、成人まで健康に育てることを商人への贖罪にすることを決めたそうだ。
「……で、その商人夫婦の命を奪った盗賊ギルドメンバーってのが……今回倒した盗賊団の頭領……レイザーなんだ……だから、その……この機会に、本当のことを話そうと思ってな」
ジャン殿は、今までもずっと、いつ打ち明けようか迷っていたのだが、今回、リヤ殿の実の両親の敵討ちが叶ったことで、ようやく真実を打ち明ける決意が固まったそうだ。
リヤ殿はジャン殿や他の盗賊ギルドの仲間を慕っていたからな……そんな中で、彼女が今所属している集団が、実は親の敵だったなんて、進んで伝えたいとは思えないだろう。
だから、それで償いになるとは思えなくとも、せめてその両親の敵を討って誠意を見せてから伝えたかったと、そういうことなのだろう。
「あと、まぁ……余計な情報かもしれないが、レイザーは別に、リヤの両親の命を直接奪ったわけじゃねぇ……だから許せってわけじゃねぇが、少なくとも、直接復讐しようなんて真似はしないで、後の処理はこのまま騎士の連中に任せてくれ」
それはきっと、過去に仲間だったレイザーのためではなく、本当にリヤ殿が変な気を起こさないための補足なのだろう。
それでも、それから彼が話し始めた内容や、彼の複雑な表情を見る限り、直接ルール違反を犯したわけではない彼をギルドから追放し、ハグレ盗賊の頭領に至るきっかけを作ってしまったことに関しても、後悔の念があるのかもしれない。
過去にレイザーが犯した罪……。
それは、子供が生まれたことを機にもっと住みやすい街へ引っ越しするところだった商人夫婦から、その引っ越し資金を含めた金銭から宝飾品まで全て盗んだこと。
盗賊ギルドの信念通り、命以外を盗んだだけで、直接危害を加えたわけではない。
……だが、その盗んだことが、問題だった。
その日、引っ越しの荷物を運んでくれる親戚の馬車を送り出し、家の引き渡し手続きを済ませた彼らは、持ち家を売って得た大金を自分たちが乗る馬車に積み込むと、道中の護衛を雇うために冒険者ギルドへと向かうところだった。
レイザーはそのタイミングで、数人の仲間と共に商人夫婦を拘束し、彼らが手に入れたばかりの大金や、馬車に積んでいた宝飾品など、金目の物を全て奪っていったのだ。
それは、ギルドから指示された仕事ではないが、別に禁止されているわけでもない、単純な窃盗行為。
彼は、商人が家を売ったお金を持ち運んでいた際に、鞄にしまった金貨袋が鳴らすジャラジャラとした音を耳ざとく聞いて、窃盗のターゲットを決めてしまう。
数人の盗賊が物陰から突然現れ、叫ぶ間もなく拘束された商人夫婦は、彼らと交渉することも出来ないまま、ただただ馬車から自分たちの荷物が持ち去られるのを眺めることしかできなかった。
そうした経緯で手持ちの金銭が無くなった彼らに対して、依頼時に前払いで料金を納める仕様の冒険者ギルドはもちろん、ギルドなどに所属していないフリーの傭兵なども、護衛を引き受けてくれない。
本来、そんなときに頼りになるのが国に仕える騎士たちなのだが、これまた運悪く、その時ちょうど近隣で凶悪な魔物の被害が発生しており、その対処のために多くの騎士が出払っていた。
街を防衛するための騎士しか残っていない詰め所では、出払ってしまっている彼らの帰還を待ってから出発することを勧め、その間は詰め所の空いている部屋に泊まっていいと言ってくれたようだが、引っ越し先で次の仕事が決まっていた商人は、それを辞退したそうだ。
馬車からお金になりそうなものは全て盗られていたが、引っ越しの道中で最低限必要になる食料や馬の餌は残っていた……。
護衛なしであれば出発すること自体には問題ないというその状況が、彼らの間違った選択を後押ししてしまったのだろう。
だが、不運というものは……。
続くときには、本当にどうしようもなく続いてしまう。
商人たちは、その引っ越しの道中、本来であれば滅多に遭遇しない魔物の群れに遭遇してしまった。
本来であれば事情を話すことで護衛をしてくれたであろう騎士が出払っていた原因……凶悪な魔物に住処を追われた格下の魔物たちが、餌を求めて街道を彷徨っていたのだ。
ジャン殿は、その当時、まだ盗賊ギルドのボスという立場ではなく、物を盗む仕事のリーダーを務めていた。
そんな彼の元に、物を盗む仕事チームの部下であったレイザーが訪れ、大量の盗品を換金して欲しいと頼んできたことで、彼らが商人から金品を巻き上げたことを知った。
虫の知らせというやつだろうか……。
ジャン殿はその報告を聞いて、胸がざわつくような、嫌な予感がしたらしい。
盗賊というのは、こういった予感を大事にするものだ。
ジャン殿は数人の部下を引き連れて、レイザーが金品を巻き上げたという商人の様子を見に行った。
だが、時既に遅し、商人たちが護衛なしで街を出発したことを聞くこととなる。
ジャン殿を中心とした数人のギルドメンバーは、馬貸しから人数分の馬を駆り、商人たちが向かった方向へと馬を走らせる……。
……しかし、彼らが商人の乗る馬車に追いついたとき、馬車は倒れ、多数の魔物が、その馬車を引いていたのであろう二頭の馬や、馬車から散らばった人間の食料を貪っているところだった。
ジャン殿は、連れてきた部下たちと魔物の群れに突っ込み、追い払った。
その魔物は、別に戦闘が主な仕事というわけでもない彼らでも、追い払うだけであれば対処可能な程度の魔物だったようだ。
……逆に言えば、戦闘の経験が全くない商人では、追い払うことすら叶わないであろう魔物だった。
ジャン殿たちが魔物を追い払った時、商人夫婦は、既に命を助けることは出来ない程の致命傷を負っていた。
そして、そんなボロボロな状態の彼らは、最後の力を振り絞り、魔物を追い払ってくれたジャン殿たちに感謝の言葉を贈ると、二人で懸命に守ったらしい赤子を差し出し、教会に預けて欲しいと伝え……息を引き取った。
彼らがこんなことになった原因は自分の部下だというのに、感謝され、その誤解も解かせてもらえないまま、赤子を託された。
その日は、その時の彼の心境を写したような灰色の雲から、悔し涙を隠すのに十分すぎる雨が振っていたらしい。
「俺は、その商人にも、その子供であるお前にも、恨まれこそすれ、感謝されるような人間じゃねぇんだ……」
「……」
長い……すいぶんと長く感じる沈黙が流れる。
リヤ殿は話の途中から顔を伏せており、彼女の表情を伺い知ることは出来ないが、ボスの話に決して小さくはないショックを受けているのは明白だろう。
今まで親のように育ててくれたジャン殿や盗賊ギルドの元仲間に、実の両親の命が奪われていた。
彼らがこの年まで健康に育ててくれているという事実はあれど、その理由や経緯は、彼女の望んでいたものではないだろう。
ただリヤ殿と一緒に仕事をしているだけの存在でしかない自分には、今の彼女の感情を推し量ることはできなかった。
「……贖罪は済んだから、出て行けって、そういうこと?」
「え……いや、そうじゃなくてだな……」
「じゃあ! どういうわけなのさ!」
顔を上げ、そう叫んだリヤ殿の目から、大粒の涙がこぼれた。
その感情は、悲しみか、悔しさか、また別の気持ちなのか……。
少なくとも、喜びなどのポジティブな心境ではないことは確かだろう。
「お前は元々、商人の家の子で、盗賊じゃねぇ。だから別に盗賊を続ける必要はねぇんだ……成人したんだから別の道を進んでもいいってのは、前から言ってるだろ?」
「でも、ぼくは育ててくれた皆に感謝してるし……」
「感謝なんてのもする必要なんてないんだ。言った通り、俺たちがお前を育てたのは、善意なんかじゃなくて、仲間が犯した過ちの尻ぬぐいなんだから」
「でも、大事に育ててもらったのは事実だし……」
「だから……」
平行線の討論……。
よく分からないが、会話から察するに、ジャン殿は彼女に盗賊以外の道に進んで欲しくて、だがリヤ殿の方は、盗賊を続けたいと思っているのだろうか?
まぁ、自分はどちらでもいいのだが……いや、というよりも……。
「うーむ……この話、自分に関係あるだろうか? もし関係ないのであれば、ムービーをスキップできないだろうか?」
「……」
「……」
「……お前、空気読めないって言われないか?」
「よく言われる」
どうやらこのジャン殿とリヤ殿の問答は、スキップできないムービーらしい。
「はぁ……いや、お前を一緒に呼んだのは、お前にリヤを、王都まで連れて行って欲しいと思ったからだよ」
「王都に?」
ふむ、ギルドから追放されるかもしれないということ以外、自分にはあまり関係ない内容だと思ったが、話の行きつく先は自分にも関係があったようだ。
「王都の王立学校で学べば、商人にでも職人にでも、冒険者にでもなれるんだろ? 俺はリヤにそういう表社会で真っ当に生きられる道に進んで欲しいんだ」
「だからっ! なんで盗賊はダメなのさ!」
「まぁ、なんつーか……将来的にリヤを表社会に出すってのは決めていたから、お前らにはあえて振ってなかったんだが……盗賊ギルドの仕事の中には、今まで振ってた仕事とは違う、もっと汚くてあくどい仕事もある。だから基本的には盗賊の仕事も、盗賊の存在自体も、世間から嫌われてるんだ……俺はお前に、世間から嫌われて欲しくない」
なるほど、自分やリヤ殿が上級の仕事を受注できなかったのは、仕事の成功率や達成数が足りなかったからではなく、単純にボスがそういった仕事を振るのを止めていたからだったのか。
レイザー盗賊団のアジトで入手した錬金炉を探す工程で、盗賊ギルド中をあちこち漁っていた際、ボスやリーダーの部屋から、難易度的には自分とリヤ殿に振っても良さそうな水準なのに、なぜか振られていない依頼書を発見していたので、その理由もずっと気にはなっていたのだが、これで謎が解けた。
メモ画面に「不具合の可能性あり」と書いておいた備考を消しておこう。
「ふむ、承知した。では、自分はジャン殿の要望通り、リヤ殿を王立学園へ連れて行こう」
「ちょ、ちょっと待ってよ! ぼくはまだ承諾してないし、納得もしてないんだけど!」
「うーむ……だが、このままここに残っても、ジャン殿はリヤ殿に上級の依頼を受注させる気はないのだろう?」
「ああ、そうだな」
「なら、先にボスの要望に応えるしかない」
「でも……」
「……で、ボスの要望に応えた後に、リヤ殿の要望を聞いてもらえばいいのだ」
「は?」
自分の提案に理解が追いついていないのか、ジャン殿とリヤ殿は親子のように揃って首を傾げる。
だが、自分の提案は実にシンプル。
二人の要望を”同時に”叶えるのが難しいのであれば、順番に叶えればいいだけ、というものだ。
これは、検証と同じである。
ストーリー上などの理由で競合が発生する別々のイベントを、同時に検証することが出来ないように、二人の意見を同時に叶えることは出来ない。
であれば、少々面倒かもしれないが、どちらかを後回しにして、地道に一つずつ検証していくしかないのだ。
「ジャン殿も、別にリヤ殿が他の選択肢を一通り検討した結果、やっぱり盗賊の道を進みたいと思ったのであれば、それは構わないだろう?」
「え? あー、まぁ、そうだな……俺はとりあえずリヤに盗賊以外の道も選べるんだと知って欲しいだけだからな」
「そうなの? もう役目は果たしたから追い出したい。とかじゃなくて?」
「何バカなこと言ってんだよ。俺が、いや、俺たちがお前を引き取って育てた最初の理由は、確かに仲間の罪を償うためだが……お前のギルドでの仕事を認めてないわけじゃないし、お前が出て行ったら出て行ったで寂しいとも思うさ」
「うむ、そうであるな。リヤ殿の盗賊としての才能は確かなものだ」
「……お前は不確かだがな」
「ふむ……」
検証は完璧にこなしているはずなのだが……その功績はジャン殿の耳には届いていないようだ。
やはり各仕事のリーダーから受けられる下級の依頼だけでなく、ボスから直接受けられる上級の依頼を検証しなくてはならなそうだな。
「じゃあ、学校で勉強してみて、そっちが合わなそうだったら、戻ってきていい?」
「うーん、まぁ、本当に合わなかったらな」
「そっか……」
リヤ殿はその答えに満足したようで、目の下はまだ流した涙によって赤くなったままであるものの、柔らかな笑顔を見せるまでには回復したようだ。
ジャン殿やリヤ殿の気持ちが何が原因でどんな変化をしたのか察することはできないが、とりあえずイベントは進行したのだろう。
「うむ、話はまとまったようだな。では、自分は出発の準備をしてこよう……」
―― ガチャ ――
イベントが一段落したと認識した自分は、今回のイベントでリヤ殿が検証チームに加入してくれることになりそうだと認識して、その準備をするために部屋を出ようと、執務室のドアを引く……。
「「うわぁぁぁああああ!!」」
―― ドタドタ ――
……だが、そのドアに寄りかかっていたのだろうか、自分が引いたドアの向こうから、何人もの盗賊ギルドメンバーがこちらへ倒れ込んできた。
確か彼らは、ジャン殿と共に、特にリヤ殿と仲が良かった盗賊ギルドメンバーだ。
彼女が仕事の空き時間をギルドの本拠地で過ごしている時に、よく彼らと軽口を叩き合っている姿を見かけている。
状況から推測することしかできないが、彼らは今日ここでボスがリヤ殿に盗賊ギルド追放を伝える事を知っていて、その結果が気になり、聞き耳を立てていたのだろう。
マップ画面を開いていれば、彼らがドアの向こう側にいたことに気づけたかもしれないが……流石は一流の盗賊。
こんなところでその力を発揮していていいのか分からないが、自分の気配察知系のスキルではその存在に気づかない程の隠密スキルで、室内の様子をうかがっていたようだ。
「ふむ……」
まぁ、よく分からないが、このイベントは自分には関係なさそうだな。
自分は重なって倒れ込んだ状態で恥ずかしそうな表情を浮かべている彼らの横を通り過ぎ、盗賊ギルドを後にする……。
こうしてリヤ殿を検証チームに招待できそうな展開に発展したのだから、この場の検証は彼女に任せればいい。
「よーし皆! 今日は今後のリヤの活躍と、学校卒業後の再開を願って、朝まで飲み明かすぞぉぉおおー!」
「「おぉおおおおー!!!」」
「……俺、二日酔いだし、欠席でいいか?」
「ふふっ、あは、あははっ! ダメだよ、今日はボスも一緒に飲むのっ! もちろん、ぼくが帰ってきた時もねっ」
自分はそんな賑やかな会話を背中で聞きながら、楽しげに笑う彼女の検証チーム加入の準備に向かった。
▼スキル一覧
【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。
【魔王】:人知を超える魔法を操り、魔物を従える。
【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる。
【言語理解】:様々な言語を読み、書き、話すことが出来る。
▼称号一覧
【魔王】:勇者の枠を超え、魔王としての役割を果たした。
▼アイテム一覧
〈水×999,999+〉〈土×999,999+〉〈石×199,510〉〈木×18〉〈薪×1,400〉〈布×200〉
〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1,850日分〉〈保存食×19,995〉〈飼料×1,800〉
〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×400〉〈獣生肉(上)×400〉
〈獣の骨×700〉〈獣の爪×250〉〈獣の牙×240〉〈羽毛×30〉〈魔石(極小)×66〉
〈革×270〉〈毛皮×90〉〈スライム草×90〉〈抑制の首輪×5〉
〈着替え×980〉〈本×90〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×1,098〉
〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×8〉〈盗賊道具×1〉
〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉〈採掘道具×1〉
〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉
〈音信のイヤリング×1〉〈交易品×200〉〈錬金炉×1〉
〈教国軍の消耗品×199,200〉〈教国軍の装備品×19,990〉〈教国軍の雑貨×99,180〉
〈盗賊団の消耗品×1,000〉〈盗賊団の装備品×100〉〈盗賊団の雑貨×997〉
〈金貨×517〉〈大銀貨×1,948〉〈銀貨×1,856〉〈大銅貨×116〉〈銅貨×60〉
▼ 商業ギルドからの借金
オース名義:金貨2枚
グリィ名義:金貨2枚