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第二百四十三話 ハグレ盗賊団との抗争で検証 その三

 

「おいおい、侵入者を二人捕らえたって報告があったが、一人しかいねぇじゃねぇか」


「ってことは、今アジトを滅茶苦茶にしてやがんのは、もう片方の侵入者か?」


 レイザー盗賊団のアジト。牢屋区画。


 上級居住区画から出てきて、中央区画で縛られて気絶している仲間を発見し、アジト中のアイテムが盗まれているのを見てきた怒れる盗賊団員たちは、そんな状況を作った人物を締め上げようと、下級居住区画を探し回った後、牢屋区画へとやってきていた。


 倉庫区画で装備を整えられればもう少しまともな恰好になっていたのかもしれないが、今の彼らの見た目は、毛皮の服を身に纏い、カットラスのような片刃の片手剣を所持しているのみ。


 眼帯をしている者や、腹巻をしている者、スキンヘッドの者や、クマの頭を素材とした帽子を被っている者など、キャラクターごとに様々な個性はあるものの、誰もが額に青筋を浮かべており、大層お怒りな様子であるという部分は統一されているようだ。


「……」


 そんな彼らが睨んでいる先には、牢屋にとらわれた少女が一人。

 威勢よく盗賊団員を睨み返してはいるが、大柄で筋肉質な男たちに囲まれている今の状況的には、そう余裕のある心持ちではないだろう。


 体型的にも、服装的にも、どちらかと言えば少年のように見える囚われの少女、リヤ殿は、両手を後ろで縛られた状態で牢屋に入れられ、〈抑制の首輪〉を付けられた状態で、武器の類も取り上げられているので、逃げることも抵抗することも出来ないように見える。


「おい、ボウズ! もう一人いたお仲間はどこにいる!」


「……トイレに行った」


「はぁ?」


 ふむ……そういえば、リヤ殿と別れるとき、誰かが自分を訪ねてきたらトイレに行っていると伝えて欲しいと頼んでいたな。


 トイレに行っているというのは嘘で、普通に他の場所を検証した後、こうして戻ってきて、高い天井まで伸びる柱の上の方にしがみつく形で身を潜めているのだが……なんとも律儀なことだ。


「ふざけてんじゃねぇぞ! お前の仲間がオレ達のアジトをめちゃくちゃにしてんのは分かってんだ!」


 リヤ殿と会話していた盗賊団員は、自分がリヤ殿に頼んでおいたその返答が煽りに聞こえたのだろうか、持っていた剣の柄で思い切り牢屋を叩いたのだが……。


 ―― カツン ――


「……?」


 その衝撃音は、重い鉄の道具で重い鉄の構造物を殴っている音にしては可愛らしいものだった。


 ―― カツン、カツン ――


 盗賊団員は前のめりになっていた姿勢を戻し、再度、剣の柄で二回ほど牢屋を叩くが、返ってくる反応は、先ほどと同様……。


 その攻撃で牢屋の扉が揺らぐような気配もなく、その衝撃音は金属同士が直接ぶつかる音ではなく、漆などの樹脂か何かでコーティングされた物を叩いたような音となっている。


「なんだこれは……お前、牢屋に何かしたか?」


「ぼくは何もしてないけど、キミ達が探しているもう一人が何かしてたね」


 リヤ殿の言う通り、牢屋の様子がおかしいのは、そのもう一人である自分が、牢屋に防護魔法をかけたからだな。


 力づくでも破ることは可能だが、貴族レベルの魔力を込めて、Bランク冒険者程度の力で攻撃しないと無理だろう。


 彼の周りに控えている他の盗賊団員も含めて、彼らは中々の実力を持っているので、複数人で息を合わせて同時攻撃されたらどうなるか分からないが、少なくとも単体でどうにかできるものではない。


 そして……。


「鍵を貸せ!」


 その盗賊団員が仲間が持っていた牢屋の鍵を奪い取って、扉に付いている錠前を開けようとするが……。


「くそっ! なんで開かない!」


 残念ながらその鍵も物理的に施錠した上で、魔法的な施錠を重ね掛けしておいたので、その魔法を先に解かないと、物理的な鍵も開くことはない。


 ふむ、この状態がしばらく続くなら、盗賊団の頭領と戦っていてもよかったかもしれないな……。


 数分前、宝物庫の開かない扉を前に悩んでいた自分は、結局、近づいてくる敵の頭領と手下を隠れてやり過ごし、リヤ殿の方へ来たのだが、自分が懸念していた魔法の扱いに長けた盗賊団員は、すぐにはこちらへ向かってこなかったようだ。


 マップ画面を確認すると、他の場所を調べていたのか、何か装備を整えていたのか、今になってこちらへ向かってきているようだが、このタイムラグがあるなら、別に自分が助けに入る必要は無かったかもしれない。


 なぜなら……。


「っ! リヤ!!?」


 その魔法の扱いに長けた盗賊団員が合流する前に、アジトの入り口から侵入してきた盗賊ギルドの襲撃隊が合流するからだ。


「くそっ、増援か!」


 牢屋の鍵を開けるのを諦めたらしい盗賊団員は、カシャカシャと鎧の擦れる音をさせながらこの区画に入ってきた盗賊ギルドの面々と対峙する。


 侵入してきた彼らの先頭に立っているのは、盗賊ギルドのボス、ジャン殿。


 いつもの動きやすさ重視の簡素な革鎧ではなく、胸部分や腕当て、脛当てなどの広い部分に金属板があしらわれた防御性能の高い軽鎧を装備しており、狭い場所でも振り回しやすそうな片手斧を両手にひとつずつ持っている。


 彼は何より先にリヤ殿が牢屋に閉じ込められていることに驚いた様子だったが、敵盗賊団員が武器を構えて身構えると、それに合わせて武器を構え、敵を睨んだ。


「お前ら! うちのリヤをどっから攫ってきやがった!」


「はぁ? 何言ってやがんだ、そっちが先に乗り込んできたんだろうが!」


「……リヤの方が、乗り込んできた?」


 互いの勢力が、頭上にハテナを浮かべ、睨み、対峙し合ったまま、相手の様子をうかがう。


 おそらく、どちら側の勢力も、今の状況が正確に把握できておらず、頭の中でまだ情報が整理しきれていないだろう。


 レイザー盗賊団の方は、気が付いたらアジト中の仲間が倒れていた上に、倉庫に保管されていた装備品の類だけでなく、殆どの区画から家具や装飾品なども含めた取得可能アイテムが全て消え去っていた状況……。


 盗賊ギルドの方は、気合を入れてアジトに突入したら、あちらこちらでトラップが既に発動済みの状態になっており、そのせいで殆ど一本道のような状況になっていた洞窟を抜けた先で、鍵がかかってないどころか開けっ放しになっている扉を通過してみると、ギルドに置いてきたはずのリヤ殿が何故か牢屋に捕まっている状況……。


 各キャラクターに自然な動きを反映させている優秀なAIでも、流石に情報が多すぎて処理に時間がかかっているのかもしれない。


「まぁいい、とりあえずリヤを救出するのが先だ! てめぇら、目の前の奴らを一人残らず打ち倒せ!」


「「うぉぉおおおお!!!!」」


 そして、AIは考えることを止めたようで、元々用意されていたスクリプトなのだろう、戦闘フェイズへと移行した。


 プレイヤーの介入結果をここまでイベントに反映してくれるなんて、本当に優秀なAIだな。


「野郎ども! 侵入者を叩き潰すぞ!」


「「おぉぉおおおう!!!!」」


 互いの勢力の武器と武器がぶつかり合い、牢屋区画の空間に金属音が鳴り響く。


 この区画は、そこそこ広い半球ドーム状の空間で、壁際にぐるり一周、いくつもの牢屋が設けられた作りになっている。


 空間は頑丈な岩山の中を削る形で作られており、ところどころに天井を支える役割を果たす柱部分が残されているので、自然に崩落してしまうような可能性は低いだろうが、戦闘が激しくなり、その柱部分が壊されたりしたらどうなるか分からない。


 今のうちにリヤ殿を救出しておいた方がいいだろうか……。


「む……?」


 自分がそう思ってリヤ殿の方へ視線を移すと……。


「静まれぇぇえええい!!!」


 そう考えるのが一足遅かったようで、そこには、牢屋から引っ張り出したリヤ殿を人質に取って大声を上げる、奇妙な恰好の盗賊団員が立っていた。


 おそらく、これが件の魔法トラップを担当した、魔法の扱いに長けた盗賊団員だと思われるのだが……。


 その見た目は、盗賊というよりも、祈祷師や霊媒師といった類のもの。


 鹿か何かの頭蓋骨を杖頭にした身長丈の魔法杖を持ち、毛髪がかなり後退した頭には、それを隠すように葉っぱで作った冠を乗せ、人間の頭蓋骨のようなものが並ぶ首飾りを身に着けた姿……この世界で初めて見るタイプのファッションであるな。


「っ!? リヤ!!!」


 盗賊魔法使いの声で、盗賊ギルド側もレイダー盗賊団側も戦闘を一時停止する。

 そして敵に捕らわれたリヤ殿の姿を視界に捉えたジャン殿は、戦っていた敵と距離を取りつつ、リヤ殿に向かって大きな声を上げた。


 武器を構えたまま敵からの追撃を警戒してはいるが、その意識が敵よりもリヤ殿の方へ傾いているのは明らかだ。


 今のところは敵側も盗賊魔法使いやギルド側の出方を伺っているが、リヤ殿を拘束している盗賊魔法使いが何か大きな行動を起こし、それによりボスの意識がこれ以上削がれるようなことがあれば、彼らがその隙を逃してくれることは無いだろう。


「別にぼくのことは放っておいていいよ……勝手に乗り込んで捕まったのは自己責任だし、ギルドにとって正しい選択をするのが大人でしょ」


「……くっ」


 リヤ殿の言う通り、ギルドの目的を優先するならば、彼女のことは放置して、このまま盗賊団を壊滅させるべく戦闘行動を継続するべきだ。


 ジャン殿はそのために今回の計画を立てて、そういった状況で正しい判断が下せるメンバーだけを連れていくため、リヤ殿を今回の作戦から外したはずである。


 だが、ジャン殿は動かない。いや、動けないでいる。


 盗賊ギルドのボスである彼が、彼自身が、ギルドとして正しい判断を下すことに躊躇しているのだ。


 うーむ……そろそろ助けに入ったほうがいいかもしれないな。


 自分がそんな考えに行きつき、亜空間倉庫から投擲するのにちょうど良さそうな小石を取り出し、それを投げるために思い切り振りかぶったところで……。


「なぁ、変な恰好をしたおじさん」


「ん? ワシのことか?」


 この均衡状態を誰よりも早く破ったのは、盗賊魔法使いでもなく、ジャン殿でも、自分でもなく……リヤ殿自身だった。


「別にぼくの命をどうしようと構わないけど、少しの間だけでも、この首輪を取ってくれないかな? さっきから息がしづらくて苦しいんだ」


「これか? ……むー、そうだな。別に魔法を使えるほどの魔力も持って無さそうだし、最後の頼みくらい聞いてやろう」


 リヤ殿は盗賊魔法使いに首につけられている装飾品を外してくれるよう頼むと、盗賊魔法使いは少し迷った後、彼女の頼みを聞くことに決めたようだ。


 おそらく、この盗賊団で使われているその首輪の鍵は共通なのだろう。

 盗賊魔法使いは懐からひとつの鍵を取り出し、リヤ殿の首につけられた首輪を外す……。


 ……付けられたままだと魔力操作が困難となる、〈抑制の首輪〉を。


「……【点火イグナイト】」


 瞬間、リヤ殿は袖口から一枚の紙を取り出し、一言呟くと、その紙から上がった炎が、彼女の手首に巻きつけられたロープを焼き切り、リヤ殿の両手が自由な状態になる。


「へ?」


「【閃光フラッシュ】!!」


 そして彼女がすかさず懐から取り出した紙を盗賊魔法使いの目の前にかざし、また一言唱えると、今度はその紙が眩い閃光を放った。


「眩しっ……目がぁぁああああ! ぐぉっ!!」


 薄暗い洞窟で急に目の前で放たれた眩い閃光に目が眩んだ盗賊魔法使いは、続けざまに放たれたリヤ殿の蹴りを腹部に受け、うめき声をあげながらその場に倒れこんだ。


 リヤ殿はすぐに盗賊魔法使いから距離を取ると、この区画の入り口側へ向かって声を張り上げる。


「ボス! 今!」


「! てめぇら、再戦だぁああ!! 突っ込めぇぇえええ!!!」


「「うぉぉおおおお!!!!」」


 突然の出来事に全員の動きが止まっている中、リヤ殿に声をかけられたジャン殿が真っ先に意識を取り戻し、盗賊ギルドメンバーに掛け声を上げる。


「どけどけどけぇぇえええええ!!」


 そしてそのまま、文字通り道を切り開くようにして盗賊団の群れの中を突き進み、リヤ殿の元へと急ぎ向かって行った……。


 その指示や行動は、盗賊ギルドのボスとしては無謀な選択なのかもしれない。

 数では勝っているのだから、確実な勝利を求めるなら、先ほどまでと同じように、一人に対して複数人で対応できる陣形を維持すべきだ。


 ここに集まっている敵は確かに、単体の実力で盗賊ギルドのボスに敵うレベルの者は居なそうだ……だがそれはボスだけであるし、一対一であればの話だ。


 実力差のある者同士の戦いでも、数が変われば、優位性も変わる。

 盗賊ギルド側が最初に選んでいた陣形で危なげなく戦えていたのもその証明であるし、その逆が起こることも明白だ。


 数の優位を維持したまま相手を追い詰めることもせず、相手を取り囲むような戦法でもなく、敵陣の中央を突っ切ろうなんて、せっかくの優位性が台無しだろう。


 相手が利口であれば、先頭を走るジャン殿が他のメンバーと分断されるような形で大人数に囲われ、彼が集中攻撃されてしまう、という未来が予想できる……。


 ……だが彼は、盗賊ギルドのボスは、どこまでも盗賊ギルドのボスだった。


「うらぁぁあああ!!」


「させるか!」


 先頭を行くジャン殿を孤立させようと敵が横から浴びせる攻撃を、すぐ斜め後ろに追従している襲撃隊メンバーが捌き、阻止……そのメンバーに対する横からの攻撃を、さらにその斜め後ろに位置するメンバーが阻止している。


 日本の代表的陣形で言うところの、魚鱗の陣といったところだろうか。


 あれは大将が先頭ではなく中央に配置される陣形のはずだが、その陣形の長所である仲間のフォローがしやすい点は、今の状態でも活かされているようだ。


 特に細かく陣形を指示したわけでもないのに、彼らは自然と正面突破に有効なこの陣形で戦闘することを選択し、一糸乱れぬ呼吸で互いをフォローし、目的に対してまっすぐ突き進む。


 これほどの連携は、荒くれ共をかき集めた、自己主張が激しい盗賊団には出来ないだろう。


 物は盗っても命は盗らない。


 たったそれだけしかない信念の元に集い、それだけを守り続ける盗賊ギルドの、強固で、温かな団結力が、チームワークをここまで育て上げたのだ。


「リヤ、大丈夫か?」


「う……うん……」


 ほどなくして敵陣を切り抜けた盗賊ギルドは、リヤ殿の居る区画の奥側へと辿り着く。

 ボスはリヤ殿の元へと駆け寄り、仲間たちは反転して武器を構えなおす。


 ボスと盗賊ギルドのメンバーとの間にも確かな絆が感じられた戦闘だったが、彼らとリヤ殿との間にも、それに近い、いや、もしかしたらそれ以上の絆があるのかもしれない。


 無茶をしたせいで盗賊ギルドの誰もがあちらこちらに傷が出来ており、明らかに敵盗賊団側よりもダメージを負っているはずなのに、ここは絶対に通さないという気迫は、彼らよりダメージが少なかったはずの盗賊団員が後ずさるほどのものになっているようだ。


「このバカが! こういうことになりかねないから俺は……」


「ごめん……」


 ジャン殿に強く抱きしめられたリヤ殿は、目に涙を浮かべる……。


 魔法が使えるほどの魔力を持っていないという弱点を活かし、格上相手に果敢に立ち向かった姿は見事だったが、自身よりもはるかに強そうな相手に命を握られるような経験をして、怖くなかった訳が無いだろう。


 数え年な上に十五歳で成人とされるこの世界では、リヤ殿は大人という括りなのかもしれないが、現実世界で考えると彼女はまだ中学生ほど。

 なんでも親の手を借りずに自分自身の力でやりたがる反抗期だとしても、保護者が必要な子供なのだ。


「ちくしょう……やっと目が治ってきた」


 そんな彼らの横で、ぬらりと人影が立ち上がる。


 その気配を察したジャン殿は、リヤ殿を立ち上がらせると、彼女を背後に隠すようにして下がらせた。


「まさか、その程度の魔力で魔法が使える人間がいるとはな……」


 相変わらず独特なファッションセンスが目につく彼は、まだ目にダメージが残っている様子ではあるが、これでも盗賊団員の中では頭領であるレイザーの次にレベルが高い相手だ。


 キャラクターレベル、スキル構成から判断すると、その強さはジャン殿よりも上。


 リヤ殿のことを庇いながらの戦闘になるのであれば、その差は決して埋められることは無いものになるだろう。


 だが……。


「大丈夫……ぼくのことは気にしないで」


「おい、いい加減に……」


「違うよ、今度のは本当に大丈夫」


「……」


「ぼくのことを信じてよ」


 ……。


 ふむ……もうここはジャン殿たちに任せておいて問題なさそうだな。


 自分は、盗賊魔法使いに向けて投げようと構えていた小石を、そっと亜空間倉庫に戻した……。


 リヤ殿に何かある前に助太刀しようと思っていたのだが……まさか、彼女があそこまでスクロールを使いこなして、機転を利かせた行動に移せるとは。


 それに、今の彼女とジャン殿の様子を見る限り、もうリヤ殿がピンチになるようなことは無さそうだ。


 ……キャラクターの強さは、レベルやスキル、パラメータだけで測れるものではない。か。


 自分自身分かっていたはずのことだが、リヤ殿のおかげで、今一度、そのことを実感させられたな。


「うむ、これは負けていられないな」


 自分は気配を消したまま、張り付いていた柱から牢屋区画の奥へ進む出入口の方に飛び降り、そのままひとりでアジトの奥へと進み始めた。


 宝物庫の前で、頭領と手下を隠れてやり過ごしてこちらに来たのは事実だが、おそらく今から向かってもまだ彼らとの戦闘検証に間に合うだろう。


 彼らが宝物庫に入ると同時に、宝物庫の扉を閉めて鍵をかけ、扉全体を【要塞(フォートレス)】の防護魔法で覆ってきたからな。


 まぁ、頭領レイザーのレベルやスキルの内容的に、しばらく攻撃を続けられたら力づくで破られてしまうだろうが、その扉を開けたこちら側の道も、亜空間倉庫に大量に格納されていた土で埋めておいた。


 マップ情報から宝物庫の中身を確認した限り、大容量の魔法鞄が置かれていたので、そちらも地道に土を掘って魔法鞄に詰め込む作業を続ければ突破できるだろうが、少なくともこんな短期間では不可能だ。


「ふむ……なるほど……よし」


 盗賊団の頭領、レイザーの戦闘レベルは、おそらくソメール教国の教皇様と同程度。

 アーリー殿の特性ポーションなどのバフ系アイテムも所持していない今、彼との戦闘は中々に有意義なものになるだろう。


 だが……。


「目標クリアタイム、三分以内だ」


 リヤ殿とジャン殿たち盗賊ギルドメンバーに、あのようなパラメータ以上の力を見せつけられたのだ……。


 超一流のデバッガーである自分が負けるわけにはいかないだろう。


 自分は装備画面を開き、しばらくは必要となることは無いだろうと思っていた〈ミスリル合金の軽鎧〉装備に切り替えると、右手に〈木刀〉、左手に〈ミスリル合金の短剣〉を持ち、盗賊団の頭領、レイザーの元へと向かっていった。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【魔王】:人知を超える魔法を操り、魔物を従える。

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる。

【言語理解】:様々な言語を読み、書き、話すことが出来る。


▼称号一覧

【魔王】:勇者の枠を超え、魔王としての役割を果たした。


▼アイテム一覧

〈水×999,999+〉〈土×999,999+〉〈石×199,510〉〈木×18〉〈薪×1,400〉〈布×200〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1,850日分〉〈保存食×19,995〉〈飼料×1,800〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×400〉〈獣生肉(上)×400〉

〈獣の骨×700〉〈獣の爪×250〉〈獣の牙×240〉〈羽毛×30〉〈魔石(極小)×66〉

〈革×270〉〈毛皮×90〉〈スライム草×90〉〈抑制の首輪×6〉

〈着替え×980〉〈本×90〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×1,098〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×8〉〈盗賊道具×1〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉〈採掘道具×1〉

〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉

〈音信のイヤリング×1〉〈交易品×200〉

〈教国軍の消耗品×199,200〉〈教国軍の装備品×19,990〉〈教国軍の雑貨×99,180〉

〈盗賊団の消耗品×1,000〉〈盗賊団の装備品×100〉〈盗賊団の雑貨×1,000〉

〈金貨×517〉〈大銀貨×1,948〉〈銀貨×1,856〉〈大銅貨×116〉〈銅貨×60〉


▼ 商業ギルドからの借金

オース名義:金貨2枚

グリィ名義:金貨2枚


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― 新着の感想 ―
宝物庫で頭領をやり過ごし…というのを読んで、命がかかっていそうな牢屋の検証を優先したのかと思いましたが、どちらの検証も諦めていなかったとは!さすがです(笑)
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